異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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34.後始末

「風の刃、ならびにシャーレ。ただいま戻りましたー」

 

 冒険者協会に入るなりそう言い放つ。一瞬中にたむろしてる冒険者たちの注目を集めるが、ふっと視線を逸らされる。

かと思えばほぼ全員がアリスの方を二度見する。二度見する理由は言わずもがなだ。あのダークエルフである。

結局最初から最後までアリスが抱えて持って帰って来たのだ。小さな少女が大の大人を片手で持ち運んでる光景に冒険者たちの視線は釘付けだ。

 そこから広がる冒険者たちのざわめき。アリスはそんな騒ぎを無視して、いつものおっちゃんの受付へと足を運ぶ。

 

「おじさん。勇者であるアリスが今回の黒幕を捕まえてきました! この功績でもって是非ランクアップを!!」

 

「待て待て、いきなり言われても何のことか分らんぞ。しかも、ダークエルフ? なんで縛ってるんだ?」

 

 アリスがキラッキラした実にいい笑顔でおっちゃんのカウンターにダークエルフを載せる。その突然の奇行におっちゃんは混乱するばかりである。

 

「すいません、受付さん。例の部屋でお話できないですか? ちょっと込み入った話でして……」

 

「こちらからもお願いする。今回の報告はちょっとここで話せるような内容ではなくてな……」

 

「分かった。ついてこい」

 

 俺とスミスさんの両方にそう言われて、尋常ならざる気配を感じたのか、おっちゃんは真剣な顔をしながら受付の奥へと俺たちを案内する。

 

「で、何があった? ゴブリン退治に行ってなんでダークエルフを連れ帰ってんだ?」

 

「はい、それなのですが――」

 

 部屋に付くなり、おっちゃんはソファに座ることもなく、俺たちの方に質問をぶつけてきた。

俺たちもゴブリン退治に行って実際にあったことなどを風の刃たちと共に色々と話す。

 

「――以上が今回の顛末です」

 

「ふむ」

 

 俺たちが最後まで話し終えると、おっちゃんは一言だけ呟いてしばらく考え込む。

 

「つまり、お前たちが言いたいのは、今回のゴブリン騒動はこのダークエルフが裏で糸を引いていたってことか?」

 

「彼からはまだ何も聞いていないので、それに関してはなんともですが、なんらかの関係があるとは思っています」

 

「それにしても魔法を封じるアーティファクトか……。一体どこで手に入れたのか気になる所だが、今はそれはいい。しばらくこちらに貸与してくれるってことでいいんだよな?」

 

「いえ、別にそちらに差し上げても構いませんが?」

 

 ハズレアイテムだし。ていうか、まだあるし。

 

「そうはいくか。こんな危険なアーティファクト。協会で保管するにはもてあます。尋問が終わったらそちらに返す、それでいいな?」

 

「分かりました」

 

 別に本当に上げてもいいのに……、とは思うがその言葉は飲み込んで了承の返事をする。俺は大人だからな!

 

「しっかし、集落を築くゴブリンとはな。全く前例がないことだからな。そいつらは本当にゴブリンだったのか?」

 

「あぁ、間違いない。あれは俺たちの良く知るゴブリンだった」

 

 スミスさんがそう断言する。俺らは同じく断言できるほどゴブリンのことを知ってるわけではないのでここでは黙っておくことにする。

ベテラン冒険者の判断の方が今は求められているだろうから。

 

「なら、問題はこのダークエルフが何を企んでいたか、だが」

 

 おっちゃんがダークエルフに視線を向けるが、ふいっと視線をそらすダークエルフ。そんな子供みたいなしぐさを……。

 

「じゃ、あとはこちらの仕事だ。こいつからばっちり目的を吐かせてやるからよ。魔法の使えないマジックキャスターなんてカモだからな」

 

「あ、受付さん。尋問するなら効果的な方法がありますよ。私の知ってる方法で強化尋問って呼ばれてる方法なんですけど――」

 

 俺はそこでそっと、強化尋問についておっちゃんに教えることにする。強化尋問がどんなものかはここでは詳細を省くが、単純に言えば溺死の感覚を味わわせる拷問の一種だ。

普通に殴る蹴るの拷問より手軽で効果的なのだ。

 

「本当にそんなのが効くのかぁ? まぁ、先生がそう言うならやってみるけどよ」

 

 哀れダークエルフは俺が教えた強化尋問によって、溺死の恐怖と戦いながら尋問されることになるだろう。だが、同情はしない。

 

「じゃあ、クエストはこれにて達成だ。お疲れさまだな風の刃にシャーレ。受付で達成報酬を受け取ってくれ。そうそう、今いるシャーレのメンバーに関してはCランクにランクアップだ。

そろそろクランの設立を考えておいた方がいいぞ。じゃあな」

 

 おっちゃんはそれだけ言うと、ダークエルフの首根っこを掴み引きずって部屋を出る。尋問部屋にでも行くのかな? と思うがこれ以上は俺たちには関係のないことだろう。

風の刃とともに受付に戻り、おっちゃんではない別の受付嬢から報酬を受け取る。何気におっちゃん以外の受付に並んだの初めてだな。なんだかんだであのおっちゃんとも長い付き合いだ。

 

「さて、依頼の達成となったわけだけど、どうだろう? これから打ち上げをするんだがよかったら参加しないかい? あ、料金は心配しなくてもこっち持ちだから。遠慮なく飲み食いしてもらっても構わないよ」

 

「やった、おごりよ! ご相伴に預かりましょう、先生!」

 

「いいけど、みんなはお酒はダメだよ。この世界……じゃない、この国では飲酒できる年齢かも知れないけど、私らの国では君らはまだ未成年なんだからね。飲むのは禁止、いいね」

 

「そ、それぐらい当然じゃない! 未成年はお酒ダメ。当たり前でしょ!」

 

 アルよ、そこで未成年飲酒なんてアウトローっぽいじゃない、とか言わずに素で未成年飲酒はダメとか言っちゃうから、君はアウトローになれないんだぞ。

そう思うが、それをツッコんでも誰も得しないので沈黙する。

 

「へぇー。先生たちの出身国ではお酒飲むのに年齢制限があるんだ。変わった国ね」

 

「流石に、幼児などに飲ませることはないにしても、ここでは割と低年齢の頃から酒を口にしていますからね。私も寡聞にして飲酒に年齢制限があるというのは聞いたことがないですね」

 

 エレインさんとデニスさんがそう感想を述べる。まぁ、最近はコンプラとかの問題で創作の中であろうと未成年飲酒、未成年喫煙に関しては厳しくなってるからな。

昔の漫画とかみたら未成年飲酒とか割と普通だったんだが。勿論それがいけないことだ、とはした上でなんだけどね。最近はほんと表現の幅が狭くなりもうした。

 

「ま、そんなのはともかくとして先生は飲めるんだろ? だったら、浴びるほど飲もうぜ! 打ち上げはパーっとやるもんだよパーっとな!」

 

 フレディさんがそういって俺の肩に手を置いてくる。パーっとか、そういえば最近は生徒の目もあったし全然飲んでなかったな。

 

「そうですね、たまにはそういうのもいいですね」

 

「よっし決まり決まり! パーっと飲もうぜ!」

 

 冒険の時と違って妙にテンションの高いフレディさんに絡まれながら、風の刃と俺たちシャーレは酒場へと繰り出す。

その日はほろ酔い気分ぐらいで抑えていたが、久々に酒を飲むことが出来て少々俺は上機嫌になっていた。

たまにはこういうのもいいよね。たまには、ね。

 

 

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