異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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36.異世界のゲマトリア

 そして、宿にたどりつくと、交代要員であった、アル、ヒナ、シロコ、ユウカを呼び出し、

現状異世界で活動している人員全員が宿の一室にて揃う。

 

「先生、どうしたの急に。交代じゃなくて全員を招集するなんて……」

 

「取りあえず、今来てもらった四人には事態の説明をするね。昨日私たちが解決したゴブリン退治の依頼に関してだけど……」

 

 そこで、俺はさきほど受付のおっちゃんから受けた話を4人にする。全てを話し終えた時、特にシロコが過敏に反応した。

 

「『色彩』……「恐怖」に反転した私を産んだ元凶……。でも、それがこの世界にどう関係しているの?」

 

「多分だけど、この世界に関しては直接は関係ないと思う。なにせゲマトリアの研究対象である神秘がこの世界にはないからだ。

ドラウは異世界への扉を開く行為をもって神秘を解明すると言っていた。それは、対象である神秘がこの世界にはないからだと推察できる」

 

「先生、そう考えるのは早計では? 探せばこの世界にもその神秘とやらがあるかも……」

 

「いや、それは無いんだ。本来のこの世界には神秘は存在しない。これは確定だ」

 

 アコの推察をばっさりと否定する。

 プレイヤー情報ではあるが、神秘というのはすなわちブルアカに置ける生徒のことを示しているからだ。

それを知っている俺は神秘がこの世界には、本来ないと断言が出来る。

 

「そ、そうですか。とすると、ドラウは異世界から神秘を輸入、この言い方もどうかと思いますが、それを解明するのが目的だったと?」

 

「あぁ、そうみている」

 

 そして、俺をこの世界に送った存在もそれが目的と見るべきだろう。

なにせ現状、俺はそいつの思惑通りに神秘である生徒たちをこの世界に召喚してしまっている。

今のところ、その存在との接触はないが、接触したその日には研究対象として生徒たちが捕えられるであろうことは想像に難くない。

 

「しかし、神秘の解明ってあの黒服がおじさんにやろうとしたことだよね? 具体的にはどんなことか分からないけどさー。

というかそもそもとして、色彩の嚮導者とやらは先生がやっつけたじゃん。それなのにまだ色彩への対抗手段っているのかなー?」

 

「ホシノ。それは私たちの事情でしかないよ。ゲマトリアにはゲマトリアなりの理由が何かあるはずだ。それに色彩の嚮導者は確かに私たちが撃破したが色彩それ自体を滅ぼしたわけじゃないんだ。

引き続きそれの対抗手段を模索するのはおかしいことではないよ」

 

「それもそっかー」

 

「でも、先生が掲げた大目標にも光明が見えてきたね。ドラウが異世界への扉を開いていたということは、この世界には異世界と行き来する手段が確かに存在しているってことだから。

問題は、その扉に欠陥があって人間が行き来出来ないってことだけど」

 

「そうだね、シロコ。さきほど言ったようにこの世界にはゲマトリアの研究すべき神秘がない、だから他のゲマトリアも異世界への扉に関しては研究しているはずだ。他のゲマトリアを探せば私がキヴォトスに戻ることが出来るかもしれない。

ただ、問題なのは――、」

 

「問題?」

 

「なぜ、ゲマトリアはわざわざこの世界で神秘の研究をしようと思ったかなんだ。神秘自体はこの世界にない、なのに何故わざわざ神秘を召喚するという手間を踏んでまで、この世界で研究を始めようと思ったのか」

 

「? それはこの世界に魔法が普通にあるからではないんですか? 神秘の解明に対して科学的なアプローチより魔法的なアプローチの方が近くなる、と考えたゲマトリアがこの世界にいるのではないでしょうか?」

 

「あ」

 

 アリスから、「何言ってんだおめー」的な視線と共に、もっともらしい理由が語られる。

 

「そ、そうか。この世界のゲマトリアは魔法的なアプローチで神秘を解明し色彩に対抗しようとしているということか……!

それなら、ドラウが高度な魔法とされるインビジリティを会得していたのも納得がいく。研究の為に魔道を極めていたと考えれば不自然さはない」

 

 それが理由なら、わざわざこの世界を使って研究をしようと思い立った理由も分かる。

ていうか、よりにもよってアリスに指摘されるとは……。いや、違うな。普段から魔法のことばっかり考えてるから思考がそっちよりなだけだ。きっとそうだ。

 

「多分だけど、この世界のゲマトリアは普通にキヴォトスと行き来出来てるはずよね。そうでないとそもそも色彩も神秘も関知出来ないもの。

でもそうすると今度は、人間が行き来すると意識が消失するという部分に矛盾が生じるような気がするのよね」

 

「いや、ヒナ。人間じゃないよ「ヒューマン」だよ。この世界に来ていたゲマトリア、ドラウはダークエルフだった。

まぁ、多分ダークエルフってのはこっちの世界での呼称で本来は違うのかもだけど、少なくともこの世界における主たる種族であるヒューマンとは区別できるものだ。

それにひょっとしたら、ドラウが研究が中途半端で一方通行でしかこの世界に来れなかったということもあるかもしれない。

いずれにせよ現段階では情報が少なくてそれ以上の判断は出来ないね。返す返すも私らでドラウを尋問できなかったのが悔やまれる」

 

「し、仕方ないわよ。あの時点では私らに関係してるかどうかってのは分からなかったんだし。先生のせいじゃないわ」

 

 アルが慰めてくれるが、それでも悔しいことは悔しい。

くそっ、あいつもあいつだ。目の前にお前の研究対象である神秘が山盛りだったのに、何の反応もなく逃げようとしてんじゃねーよ!

あの時点で何か反応してくれれば、俺らも尋問に参加できたものを!

 

「ともかく、これで現状の私たちの目的ははっきりした。他のゲマトリアを探し、異世界に通じる扉でもってキヴォトスに帰還する。これを今後の大目標とするよ」

 

 俺がそういうと、皆が一斉にうなずき目標の再設定をする。

 

「ん……。分かった。じゃ、今回はこれで解散? 先生ともっと一緒に居たいけどメンバー制限もあるし、一旦キヴォトスに帰るね。先生、また呼んでくれると嬉しい」

 

「カヨコー、先生に迷惑かけないようにねー」

 

「アコ、先生をよろしくね」

 

「では、先生。またの時に」

 

 各々別れの挨拶をすませ、生徒送還でキヴォトスへと送還する。

キヴォトスの方へは現在の連絡役であるユウカが情報を回してくれるだろう。

 

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