異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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38.聖園ミカ

 いつものごとく、何のエフェクトもなく宿屋にミカが降臨する。

そういえば他の面子と違って、ミカは「準備がいる」とは一言も言わなかったな。

まぁ、ミカ的には一分一秒でも早く”先生”に会いたかったのだろうとは思うが。

 

「ようやっと会えたね、先生。待ちくたびれて私おばあさんになっちゃうところだったよ」

 

 開幕そんな冗談を飛ばすミカだが、見た感じ精神は落ち着いてるように思う。頼むから暴走してくれるなよ。

 

「よく来てくれたね、ミカ。早速だけどシフトの調整をしたいんだけど……」

 

「ゲヘナの子がいるんだね……。ううん、やっぱり何も言わないよ。先生と一緒に居られるならそれぐらい我慢するよ」

 

「我慢するのはこちらも同じです。先生が居なければ貴女と組むなんてないでしょうから」

 

 だから、突っかかるんじゃないよアコ。しかし、アコはこれはこれでまだマシな反応であろう。

マコトなんて呼んだ日には先生の前であっても仲良くするようなビジョンが見えない。

 

「はいはい、仲良くって言ったでしょ。少なくとも私の目の届く範囲で仲良く出来なかったら容赦なくキヴォトスに返すからね」

 

「うん、わかったよ先生。仲良くするね。ほら、握手しよう?」

 

「仕方ありませんね」

 

 そういって、握手するミカとアコ。ミカがその怪力でもってアコの手を握りつぶすんじゃないかと冷や冷やしたが、アコの反応を見る限り普通に握手しているようだ。

よかった、ここでミカがまた拗らせるようだったら強制送還もありえた。

 

「で、ミカ。シフトの調整に関してなんだけど……」

 

「うん、分かってる。アズサちゃん。私と代わってくれないかな? 一時的な交代要員じゃなくてこれからずっと、ね」

 

「それは承服できない。私だって先生とともに戦いたい」

 

「アズサちゃんは今までで充分先生と一緒に戦ってきたじゃない。私だって先生と一緒に戦いたいんだよ?」

 

「断る。交代要員ならともかくこれから未来永劫ずっとというのはゴメンこうむる」

 

 うーむ、平行線。どちらも妥協する意思が全く感じられない現状、どうするのが最適なのか……。

 

「……別に同じ学校同士での交代にこだわる必要はないんじゃないかな? アリスの枠で交代しても……」

 

「イヤです。これから面白くなりそうなのに、ずっとキヴォトスでお留守番はお断りします!」

 

 カヨコがぼそりと挙げた提案に、アリスはばっさりと否定する。

まぁ、アリスはそうなるよね。分かってた。

しかし、どうやって決着付けようこの始末。

誰か特定の生徒をえこひいきとかはしたくないし……。やっぱミカに飲んでもらうしかないかここは

 

「ミカ。あんまりわがまま言っちゃいけないよ。他のみんなだって私とずっと一緒に戦いたいんだ。でも、そこをまげてみんな交代に賛同してもらってるんだ。ミカだけ特別扱いはできないよ」

 

 そんな事実は無い上、アリスなんてモロに特別扱いしてるように見えるがそこはそれ。少しでも説得に使える材料があるなら使わせてもらう。

 

「先生……。アリスちゃんはずっとこっちにいるって聞いてるけど? それは特別扱いじゃないの?」

 

 ぐっ、そこらへんの情報はちゃんと仕入れてたか。早速理論武装が崩されそうだ。

 

「私としてはちゃんとした交代要員が引けたらアリスも交代させるつもりだよ。特別扱いはしていない」

 

 まぁ、アリスのわがままを許容してきていたのは事実だが、実際そろそろアリスは交代させようとは思っていたしな。俺基準で特別扱いしてないのは嘘ではない。

 

「……分かったよ先生。じゃあ、1:9でどうかな、アズサちゃん?」

 

「徐々に割合を減らして、自分が一番狙ってる割合に持っていきたい交渉術だとは理解するが、それにしたって最初からその割合は法外だろう。5:5だ」

 

「あはっ、最初からフィフティフィフティーで提示するなんて、アズサちゃんは優しいね。2:8で」

 

「こちらとしても少しはそちらに同情する意思はないでもない。だが、私もそこまで譲歩する気はない。4:6だ」

 

「譲歩する気はないって言っておきながら、割合減らしてくれるアズサちゃんが私は好きだなぁ。3:7で」

 

「これ以上は私の限界点だ。譲っているのはそちらへの同情心以外はない。これ以上はないぞ。4:6だ」

 

「……分かったよそれで妥協するよ。じゃ、先生そういうことだからよろしくね」

 

 どうやら、アズサとミカの間で協定が締結されたようだ。交代要員としてミカをちょっとだけ優遇しろという協定か。

正直これもえこひいきなんじゃないかとは思うが、アズサも納得の上の交渉だろうし、これはちゃんと考慮にいれておかないといけないだろう。

全く、先生業も大変だな。

 

「じゃあ、先生。私は一旦帰還する。送還をお願いする」

 

「分かったよアズサ。それじゃ補習授業部のみんなによろしくね」

 

「ああ」

 

 そんなやり取りののち「生徒送還」アプリでアズサをキヴォトスに送還する。

まぁ、補習授業部のみんなによろしくとは言ったが、あんまりハナコにはよろしくしてほしくない先生心。

アズサ越しでも、先生のなりすましを見破られかねない。ハナコに関しては本当に最大限に注意した方がいいだろう。

 

「さて、それじゃまずはミカの冒険者登録から始めようか。と言ってもFからになっちゃうのがなぁ。まぁ、コツコツやるしかないけど」

 

「先生、それに関してですが、冒険者協会には師弟制度というのがあるそうです。

Cランク以上の冒険者の紹介があることで、暫定的にDランクから始められる制度らしいです。

もっとも、そのランクにふさわしくないとなったら、紹介したCランクにもペナルティがあるらしいですけど。

ついこの間Cランクに昇格したばかりですから、丁度いいと思いません?」

 

 そんな提案をしてきたのはアコだった。なんと、協会にそんな制度があるとは。いつ調べたんだろう?

 ていうか、アコがトリニティの生徒の擁護をするとは……。いや、単にランク上げのために付き合わされるのが面倒って思ってるだけかな? そんな気がする。

まぁ、便利そうだから利用させてもらおうか。

 

「そんなシステムがあるのか。それは便利だね。ミカだったら一人でも余裕で私たちと同じランクに到達できるだろうし紹介することに何の問題もないね」

 

「えー、私は先生と一緒のパーティーがいいなぁ。まぁ、先生がどうしてもって言うなら一人でもやってみせるけど」

 

「大丈夫だよ、ミカ。せっかく異世界に来たんだからそんな寂しいことはさせないよ。一緒に頑張ろうね」

 

「先生……。うん、私頑張るね」

 

 そんな感じで、冒険者協会に顔を出し、ミカを師弟登録しミカはDランクから始められることになった。

ちなみに、受付のおっちゃんには「また女が増えた……」的な視線で見られたがもはや気にしないことにする。

 だって、ブルアカで人間(?)の男キャラって先生以外だとゲマトリアとかカイザーPMC理事とか敵側のキャラしかいないんだもんよ……。

カイテンジャーですら胸あるから女の子だし。

 

 ちなみに、ミカの天使の羽に関しては流石に2回目とあって、反応する冒険者はいなかった。

……まぁ、最初のアズサが、戦闘天使発言して威嚇したこともあってミカもその同類と思われてるのかもしれないが。

こんなことミカには言えないな……。

 なにはともあれ、明日からミカを連れて本格的に依頼に赴くことにする。

カヨコ、ホシノ、アコ、ハレの冒険者ランクも上げないといけないしな。

 

 あ、ちなみに一緒に引いた時空魔法の書は誰も習得出来なかったことを付け加えておこう。

時空魔法……、便利そうだから使いたかったんだがなぁ……。

 

 

 

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