異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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39.クランハウス借家

「で、どうだ。そろそろクランを設立する気になったか?」

 

 いつものように依頼をこなそうとおっちゃんのカウンターに周ると開幕おっちゃんからそんなことを言われた。

 

「クランですか。確かに考えてはいるのですがね」

 

 おっちゃんの言葉にとりあえずは当たり障りのない返事をしておく。

ミカを召喚してからというもの、俺たちは全員のランクをCにするために奔走していた。

護衛依頼とか、純粋にモンスターを退治するだけではない依頼とかも受けたりしていた。

ちなみに、護衛依頼ではあるが、今までそれなりに受けたのだが一度足りとてモンスターの襲撃を受けたことがないともっぱらの評判だ。

 

 理由はなんとなくわかる。多分カヨコが出してる恐怖オーラ(便宜上名前を付ける)でモンスターがそもそも寄って来ないのだろう。

実際モンスター討伐の依頼ともなると、モンスターが逃げまくって大変だったことがある。

シッテムの箱による索敵と銃の射程が無ければ普通に失敗していた依頼であり危なかった。

 カヨコが「ごめん、私のせいだよね……」と落ち込むのを慰めたり、色々大変だったがその様子は割愛させてもらう。

 

 まぁ、野盗とかの襲撃は普通にあったんだけどね。

その際、銃で手加減、というのも変な話だが、生徒たちはみな銃の扱いに慣れているので急所を外しての銃撃を中心にやっているので、今のところ殺人は発生していない。

重傷になった場合は、俺の回復魔法で回復させてる関係上、生徒たちには一切かけてないのに、回復魔法のレベルが上がってたりしてる。

今なら、部位欠損未満の怪我なら瞬時に回復させることが出来るぐらいに上達しているのだ。

俺としては生徒たちにかけてあげたいのだが、そもそもみんな怪我しないし怪我してほしくないので悩ましいところだ。

 

 ……今回は野盗相手でもなんとかなったが、正直生徒たちに殺人を経験させるのは先生以前に、大人としてやってはいけないことだと思っている。

どうしてもしなければいけない、そんな時が来たときは俺が泥をかぶる覚悟だ。

その時の為に最近は射撃の練習をすることを怠ってはいない。アコなどからの拳銃のレクチャーを受けながら、日々射撃は上達している。

 

っと、回想が長くなったな。ともかく、そんな感じで今は交代要員を含め全員がCランクにランクアップしている。

これ以上のランクアップは一定以上のギルドへの貢献と、ランクアップ試験が必要で、俺たちはまだ貢献の方が足りてないのでBには上がれないでいる。

全員がCランクになったのでおっちゃんからはそろそろクラン作れと冒頭のセリフになるわけだが。

 

「ひょっとして、クランハウスを借りる金がないのか? まぁ、大所帯のうえなぜか先生がいない状態でお前らがパーティー組んでるの見たことないからやりくりが大変そうなのは分かるが……」

 

「え? クランハウスって賃貸でいいのですか?」

 

 ここにきて驚愕の事実である。俺としては購入せにゃならんとばかり思ってたからな。

 

「いや、普通は賃貸だぞ? もしかして買うつもりだったのか? そりゃ及び腰にもなるか。クランハウスがどの程度の規模を想定しているのか知らんが、おとなしく賃貸にしとけ。

ないとは思うが、クランが解散ってなったら購入してた場合もてあますからな。賃貸ならそこらへんは割と手続きが楽だ」

 

「なるほど、ご助言ありがとうございます。でしたら、賃貸の方向性で探してみることにしますね」

 

「おう! 紹介状書いてやるから、ハウスを借りれたらすぐこっちにこい、手続きの準備しといてやるからよ」

 

「よし、みんな行こうか」

 

「えへへ、先生との愛の巣かぁ……。どんな間取りがいいかなぁ。迷っちゃうなぁ」

 

 すでに脳内ピンク状態のミカ。ていうか、愛の巣ってシロコと同じ反応してるなコイツ。

 

「ようやっと、安宿を卒業というわけですか。正直こっちで睡眠とるのはストレスでしたし寝具にはこだわりましょうね」

 

 アコがそういうが俺もそれに同意だ。ていうか、キミらはキヴォトスに帰ったときにいい寝具で寝れるんだろうけどキヴォトスに帰れない俺はずっとその安宿で休んでるんですけど!?

そう思うが、言ったら変にこじれるだけなので言わないことにする。俺は大人だからな!

 そしておっちゃんに紹介を受けた不動産屋へたどり着く。

 

「いらっしゃいませ。紹介状をお持ちなら拝見いたしますよ」

 

「こちらです」

 

 おっちゃんから渡された紹介状を不動産屋に渡す、それと同時に席を勧められるが、こっちは大人数なので全員が座れるほど椅子がなかった。

正直生徒を立たせたくはなかったが、俺が代表者なので俺が座らないわけにもいかずに生徒を立たせる羽目に。みんなごめんね。

ちなみに、椅子を勧められた際、即座に隣を確保したミカという例もある。

 

「拝見いたしました。10人規模のクランハウスをご所望ということでよろしいでしょうか?」

 

「はい。まぁ、それぐらいですね」

 

 交代要員が実際にこの世界にいるわけではなくキヴォトスから召喚して交代する関係上、クランハウスの規模自体は7人ぐらいでいいのだが。

まぁ、広い分には不都合はあるまい。

 

「でしたら、ご紹介できる物件はこの3つになりますね。月の家賃はこちらから、金貨5枚、金貨7枚、大金貨1枚になります。」

 

「先生! これにしよう! 広くてお風呂も付いてる!! 私これがいい!!」

 

 3つの物件の見取り図を眺めていると、一番高い家賃大金貨1枚の物件を猛烈にプッシュするミカ。

 

「どれどれ」

 

 ミカに言われてその物件を見る。なるほど、確かにミカの言う通り広くてお風呂に相当するところもあるな。

というか、他の物件と比べてこの物件やたら広ない? 金貨7枚の奴に比べても倍以上あるように思うんだが。

 

「すいません、この物件なんですが……」

 

「あ、それは当方のお勧めでして。元貴族の邸宅ですので、家具も必要最小限は揃っておりますし、そちらのお嬢様のおっしゃる通り風呂も付いています。

まぁ、風呂自体はご自分で沸かしていただく必要がございますが、とてもお勧めの物件となっております。欠点としましては売りに出されてから少し時間が経ってしまっていますので、入居前にお掃除が必要といったところですが」

 

 なんか、俺が質問する前にマシンガントーク営業をしてくる不動産屋。ちょっと待て、まず俺の質問をさせろ。

 

「えぇ、お勧めなのは分かりました。ただ、これ金貨7枚の物件と比較しても、広すぎですし、とても大金貨1枚で収まるとは思えないのですが……」

 

「えぇ! そこはもう、こちらも盛大に勉強させていただくことになっていますので! そちらのお嬢様もお気に入りのご様子ですので、是非! 是非ご入居の方を!!」

 

 俺の言葉を遮るかのような再びのマシンガントーク。なんか怪しいな。

 

「ひょっとしてこれ事故物件じゃないでしょうね?」

 

「とととととと、とんでもない! れっきとした! 清浄な物件ですとも!」

 

「これは……確実に事故物件ですね。どうします先生? この広さに風呂付きは魅力的ですけども……」

 

 不動産屋の挙動不審さに、これがいわゆる事故物件であることを確信するアコ。でも、この広さと風呂付きは魅力的なんだよなぁ……。

 

「えー、いいじゃないこれで。幽霊なんて可愛い同居人だよ。いざとなれば聖別した銃弾でも使えば、幽霊なんてちょちょいだよ。

あーでも、シスターフッドに借りを作っちゃうことになっちゃうかー。それはちょっと面倒だね」

 

「いえ、幽霊というわけでは……」

 

 なんか小声で不動産屋が言い訳してるが、ばっちり聞こえてるからな。ていうか、幽霊じゃなかったら何が問題なんだこの物件?

 

「……取りあえず内見させてもらってよいでしょうか?」

 

「はい! すぐに準備いたしますので!!」

 

 俺が内見を申し出るとすぐに復活した不動産屋。さて、どんな事故物件なのか見せてもらおうじゃないか。

 

 

 

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