メインストーリーで出番がある生徒です。
イベントをほとんど見たことないのでイベメインの生徒は
パーソナリティが把握できないのじゃ……。
「とりあえず、生徒送還を試してみるか」
「募集の方を先に試さないので?」
募集の方をスルーした俺にユウカが疑問を投げかけてくる。
「いや、だって青輝石がないから募集は出来ないよ。やるだけ無駄無駄」
これが俺の知ってるブルアカと同じシステムかどうかは知らないが、最初からスマホに入ってた『青輝石購入』というアプリがある以上募集が青輝石を使って行われるのは明白だ。
そして現在の青輝石の数はゼロ。試すだけ無駄というものだ。
「いえ、そうとも限りませんよ先生。この手のものはスタートダッシュとして最初は無料で出来るものです。試すだけならタダなんですから、まずは起動してみません?」
「ユウカもゲームとかやる方なんだっけ? でも、確かに言われてみればその通りかも。じゃあ募集のアプリを起動して、と」
『生徒確定スタートダッシュ無料10連ガチャを引きますか? YES/NO』
「おお! ユウカの言ったとおりだ。最初に10連引けるんだね。それじゃYESっと!」
YESを押すと、通知が10ついてるメールのアイコンから始まるブルアカのおなじみのガチャ演出がスタートした。
『
10000クレジット
携帯食料x10
水500mlx8
食器セット
サバイバルナイフ
メタルマッチ
リュックx2
携帯テント
寝袋x3
「アル」
』
「うん? なんだこれ?」
出てきたガチャ結果に眉をひそめる。最後の最後に生徒であるアルを引けているのはまぁ分かる。
だが、それ以外は意味不明だ。生徒じゃねーじゃん。これアイテムとかとごっちゃに引けるガチャってことなのか?
それにしても、このガチャ結果には作為を感じざるを得ない。どうみても「スタートダッシュ」用アイテムにしか見えないのだ。
明らかに、「このアイテムを持ってサバイバルしよう!」にしか見えない。
いわゆるハズレが一つもないうえに、生徒自体はちゃんと引けてるあたり、これを詐欺だとか言い出すのはためらわれた。
「これ、ガチャとか言ってますけど、明らかに最初から内容が確定してる奴ですよね?」
隣でスマホを覗き込んでいたユウカも怪訝な表情でそう愚痴る。
「そう思うよね。そして生徒はアル……アルかぁ」
「アルさんですか。ゲヘナの便利屋68に所属している生徒ですね。先生、彼女になにか思うところが?」
無料10連で引いた生徒のアルはまぁ、一般的には当たりとされる生徒ではある。
あるのだが、それはあくまでゲームの中での話である。その生徒が現実に存在するという今の状況で使えるかと言ったら――、
「いや、アルなら大丈夫か。なんと言ってもチョロいし」
「どういう評価ですか、それ。しかし、募集をしたはいいですが、何も起きませんね? てっきりこの場に現れるのかと思ったのですが」
「あ、ちょっと待って。これ開封できるや。取りあえずアル以外は今喫緊で必要なものばかりだから、この場にだすね」
そういって、俺は結果画面に表示されてる開封ボタンをタップする。するとボタボタと何もない空間からガチャで引いたアイテムが出てくる。
「いきなり何もないところから出てきましたね……。まぁ、これに関して言及するのはやめておきましょう。先生、アルさんも召喚しますか? どうも、このスタートダッシュガチャは彼女もいることが前提な内容に思いますが」
「んー、そう思ってさっきからタップしてるんだけど、召喚できないんだよね。多分だけど、生徒を召喚するには私の大人のカードを使えってことなんだと思う。とりあえず今はいいかな」
推定寿命を消費するカードは使いたくはないが、背に腹は代えられないということもある。いざとなった時に使うのをためらっていたら待っているのは死だろう。
寿命と今の命をトレードオフするのを割に合わないと見るべきかどうか。
「とりあえず、募集の方は試すことが出来た。次は生徒送還を試そうか」
「ダメです」
「え?」
「ダメです」
最初は真顔で、二度目はにこやかな顔で否定してくるユウカ。
「少なくとも、先生の安全が確保されるまで、生徒送還を使うのはダメです。試すのもダメです。ダイアログが出るまでもなく私がキヴォトスに帰ってしまったら先生はどうする気なのですか?」
「で、でも、これを使えばユウカをキヴォトスに返すことが……」
「ダメです」
今度はあきれも幾分か混じった怒り顔で俺の行動を制止してくるユウカ。
「そういうことは言いっこなしと言いましたよ先生。私がいなくなって、先生は人里にたどり着けるのですか? 一人ではまともに探索することもままらないでしょう?
もう一度私が召喚できるかどうかもまだ分からないのですよ? そのあたりの問題が解決するまでは送還はダメです。
それにここが中世ヨーロッパな世界観だと仮定して、先生一人では街に着いたとたんに人買いに攫われて奴隷コース一直線ですよ?」
「ど、奴隷って……。そういうのはユウカの方が危ないんじゃ。いや、ユウカの強さを疑ってるわけじゃないけど、不意を突かれたらいくらユウカでも……」
「ハァ……」
今度は完全に呆れたような表情で、ため息を一つつくユウカ。な、なんだ、俺変なこと言ったか?
「先生。中世ヨーロッパの世界観において、もっとも需要の多い奴隷とはどんな人だと思いますか?」
「え? そりゃ、ユウカみたいに若くてかわいい女の子じゃないの?」
中世ファンタジー定番だよね。女の子の奴隷を買ってイヤンアハンなことをするって。
「かっ、かわっ……! い、いえ、私に関する品評は置いておくとして、不正解です先生。正解は若くて健康な成人男性、ですよ」
「え? でも奴隷って言ったら……」
俺がそう反論すると、ユウカは心底軽蔑したかのような表情を浮かべ、言葉を続ける。
「イヤらしい先生が想像するようなイヤらしいことに使われる奴隷なんてほんの一部ですよ。奴隷というのはすなわち労働力なのです。
現在は機械に置き換わってるような単純作業や、鉱山、高所での作業、糞尿の処理など、危険だったりキツかったり、誰もやりたがらなかったりな仕事を奴隷にさせるものなのです」
そこイヤらしいを二回も言う必要あった? ねぇあった?
「そのために奴隷に求められるのは若くてかわいいではなく、健康で力仕事の出来ることなのです。ですから、若くて健康な成人男性の需要は常にあるのですよ。
ここで問題です。自衛手段もない、見るからに弱そうな、けど若くて健康な成人男性が何の後ろ盾もなく一人でふらふらと道を歩いています。それを見かけた人はどうするでしょうか? ちなみに治安は最悪とします」
「拐して人買いに売る……」
「はい、正解です。というわけで、先生の安全が確保されるまでは送還は無しです。ついでにアルさんも召喚しておきませんか、先生?
こういうのは一人より二人ですよ」
俺の解答に嬉しそうな笑顔を浮かべながら、ユウカはアルの召喚をせかす。
まぁ、一人より二人というのには同意するけどさ。
「大人のカードはあんまり使いたくないんだけどなぁ……。でも、仕方ないか」
「こい! アル!」
ユウカを召喚した時と同じように大人のカードを頭上に掲げ、アルを呼びだす。
「あ、先生! こんなところに居たのね! 探したわよ!」
アルは呼びだすなり俺を探していたと言いながらぷんすか怒りだす。