異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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42.作戦会議

 さて、昨日は最後の外泊だったわけだが、翌日になっても筋肉痛が来ることはなく一安心と言ったところだ。

まぁ、おっさん特有の翌々日に筋肉痛が来るタイプかも知れないが、こないことを祈ろう。

 

「あ、しまった地下の掃除忘れてた」

 

 クランハウスに帰ったとき、地下がまだあったことを今更に思い出した俺。

 

「別に地下は気が向いた時でいいのでは? 取りあえず今はこの屋敷に住めるようになることが先決でしたし。それより先生、作戦会議と行きましょう。

早ければ今夜にも現れるであろう。この屋敷を事故物件とした怪異、それに対しての対策が必要です」

 

 俺の呟きにユウカが反応し、談話室で皆で作戦会議と相なった。ちなみにハレは交代要員として再びキヴォトスに戻っている。

ハレが自分からキヴォトスに帰還すると言ったのは驚いたが、ひょっとしたら幽霊が怖いんじゃないだろうか、と疑わざるを得ない。

 

「対策と言っても、怪異の正体もまだ分かっていない状態です。どう対策します?」

 

「んー、とりあえず不動産屋の物言いからして実体はあるっぽいよね。なら普通に銃で撃退でいいんじゃない?」

 

「そうかなー。何かに取り憑いてるだけで、実態は幽霊そのものって可能性もあるよ。ついでにもう一つ言うなら、居住者の誰かに取り憑いて、惨劇を起したのかもしれないしー」

 

「幽霊……本当に幽霊の仕業なのかな? 別の、何かモンスターの仕業ってことは?」

 

「モンスターの仕業なら、冒険者たちを雇ったときに退治されているはずよ。まぁ、それを言うなら教会のクレリックが幽霊なんていないって断言したのも気になるけど」

 

「幽霊がエネルギー体なら、アリスの光の剣の出番でしょう! エネルギーにはエネルギーです!!」

 

 上から、アコ、ミカ、ホシノ、カヨコ、ユウカ、アリスである。

 

「そういえば、ミカがこの前ちょっと言ってたよね、聖別された弾丸を使えばいいとかなんとか。ひょっとして、シスターフッドが供与してるっていう銀の弾丸でも使うのかな?」

 

 みんなが議論している中俺は以前ミカが発した言葉が気になり、そう疑問を投げかける。

 

「うん、それそれ。でも、私的にはシスターフッドに借りを作ることになるからイヤなんだよねー」

 

「うーん、シスターフッドの誰かが引けてればよかったんだけど……」

 

「その点は大丈夫でしょう。最初に召喚された時も言いましたが、今は先生の異世界転移に関してキヴォトス全土で協力体制が敷かれています。

異世界でのミッションに役立つと言えば、シスターフッドも否は言わないでしょう」

 

 そこで声を掛けてきたのは意外にもアコだった。トリニティの組織だから、皮肉や罵声の一つでも飛ぶかと思ったが、極めて理性的なセリフだった。

 

「うーん、でも私がシスターフッドに行くとこじれそうなんだよね。アズサちゃんに代わりに回収してもらうことになるかなー」

 

「分かった、善は急げだ。早速アズサ経由でシスターフッドに連絡して、銀の弾丸を供与してもらうことにしよう」

 

 俺はそういうや否や、アズサにトークを飛ばし、銀の弾丸を回収してもらうように依頼する。

アズサ経由で帰ってきたのは準備にはそれなりの時間がかかるということで、すぐには無理だったが夜までには間に合わせてくれるようだ。

 

「幽霊対策はその銀の弾丸でいいとして……。さっきホシノが言ったみたいな憑依対策はどうしようか。こっちの世界に憑依を防ぐようなアミュレットとかアクセサリーとかないかな?」

 

 カヨコの言葉に俺もそういえばその辺は調べてなかったなと思い当たる。

というより、冒険者協会の依頼にもゴースト退治というのはあったのだが、俺らのパーティーにはクレリックがいないためにその手の依頼は受注することが出来なかったのだ。

 

「それに関しては心配無用です! 私が使えるようになった、わ・た・し・が、使えるようになった光魔法の一つにターンアンデッドというのがあります!

幽霊を消し去るほどの威力はありませんが、退けるぐらいの威力があります! それを使えば、憑依状態の解除ぐらいは出来るはずです。勇者の魔法っぽくはありませんが!!」

 

 そうだよな、ターンアンデッドなんて勇者というより僧侶の魔法だもんな。でも、そこで「勇者の魔法っぽくないから使いません!」とかわがまま言わずにちゃんと使ってくれるあたりアリスも成長してるんだなーと思わされる。

ていうか、いつの間に光魔法鍛えてたんだ。普段の戦闘では使ってる風じゃなかったのに。

 

「となると、アリスをいかにして守るかがカギになりそうですね。アリスが憑依されてしまったらピンチです」

 

「その時は、アリスに銃弾を集中砲火してくれて構いません! ひょっとしたら銃弾で傷つけられて驚いて幽霊が逃げていくかも知れませんし!!

 

 って、ちょっと感心したら次に出てきたのは脳筋極まりない解決方法だった。いや、そりゃキミらは多少の銃弾ではビクともしないけどさぁ! もうちょっとこうあるだろう。

 

「いや、アリスちょっとそれは……」

 

 流石にここは苦言を呈すべきだと思って発言するが――、

 

「あはっ、なるほどいい案だね。仲間から一斉に銃を向けられてそれがぶつけられるとなったら、幽霊もびっくりして憑依解除しちゃいそうだね」

 

 ミカァ! そこで賛同するんじゃない! それに賛同するってことは自分の時にもそれをやられる可能性があるってことだぞ!

 

「まー私たちは憑依されてもいいかもだけどさー。先生が取り憑かれたらどうすんのさ? それでそのターンアンデッドが効かなかったらどうするのさ? ぶっちゃけアリスちゃんが憑依されるより先生が憑依されたほうがピンチだと思うんだけど」

 

「よし、アミュレット買いに行こう。先生、お金出して」

 

「御札とかこういう時効くんでしたっけ? 部屋全体にも貼った方が効果がありそうですね」

 

「特異現象捜査部に調査依頼をだしましょうか。どっちかが引けてればよかったんですが、ともかくゴーストやそれに類する事象に関する対策が聞けるかもしれません」

 

「先生には悪いけど、先生をぐるぐる巻きにして縛ったら憑依されても大丈夫なんじゃないかな?」

 

「「「「それだ!」」」」

 

 俺の憑依への危機感をホシノが煽ると、全員が突然慌てたように対策を練りだす。そして、最終的にはミカの一言で俺ががんじがらめに縛られることが決まった。

 

「あの、ちょっと……みんな……。少しは手心というものを……」

 

「すいません先生! でも、これは先生の為なんです!」

 

「いや、あのだね。縛るにしても夜からにして、今は普通に……」

 

「夜にしか幽霊が出ないというのは、危険な先入観ですよ先生。今まさに来たって不思議はないのですよ。大丈夫です、ご飯は私が手ずから食べさせてあげますから」

 

「あ! アコずるい! 先生にあーんさせてあげるのは私の役目なんだから!!」

 

「みんなちょっと落ち着いてー!!!」

 

 取りあえず、そこで懇切丁寧に説得することで夜まで縛られることは回避された。

いや、夜になったら縛られるのは変わらなかったのだが。

ちなみに、銀の弾丸に関しては夕ご飯の時間ぐらいに準備が整い、アズサを召喚することで持ってきてもらうことが出来た。

各人、銀の弾丸用のマガジンと通常のマガジンを用意したりして、気付いた時にはもうとっぷり日が暮れ、夜がやってきた。

さて、こっからが正念場だぞ。

……ってかっこつけても、今の俺は縛られてるんだよな……。

 

 

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