「今のところ何も起きませんね……」
「まぁ、初日にいきなり来るとは限らないよね。でも、最長で1週間とか言ってたから、そう時間はかからないだろうけど」
アコの警戒に対してそう呟くが、俺は現在がんじがらめに縛られている状態だ。
というか、この状態だと指揮がロクに出来んのだが、その点みんなどうするつもりなんだろうか。
一応、シッテムの箱は目の前に置かれて起動状態ではあるが、タップもスワイプも何もできんので、画面とにらめっこしながらの指揮しか出来ない。
まぁ、アロナならそこらへん気を利かせて、こちらがタップしなくても画面切り替えたりとか機能切り替えたりとかしてくれるだろうが。
そういやすげー今更なことなんだが、アロナはともかくプラナはどうしてるんだろ? 時系列が箱舟事件以降になってるから、このシッテムの箱内にはすでにプラナがいるはずなんだが。
まぁ、それに関してはこの事件終わった後で確認するとしよう。というか、アロナが特筆して何も言わないということは多分普通に同居してるんだとは思うが。
「いやー、それにしても魔法は便利だねー。ライト、だっけ。その一言だけで光源を生み出せるんだから。ていうか、これどれくらい持つの?」
「はい、1回の魔法行使に対しておよそ8時間ぐらいは持ちます。なので、一回唱えるだけでほぼ一夜持ちます」
そう、俺たちの目の前にはアリスが光魔法で生み出した光源、ライトが鎮座している。
光魔法ということなのでひょっとしたらこの光源にもゴーストをどうにかする力があるんじゃないかと思ったのだが、アリス曰く、そういう力はないとのことだ。
単純に光源として使えるだけらしい。でも、それにしても一回で8時間はかなり持つよな。ダンジョンとか潜ることあったらすごい便利そうだ。
「来ないねー、幽霊。やっぱり皆で集まってるからダメなのかな? ほら、映画とかでよくあるじゃん。「お前らと一緒になんか居られるか! 俺は一人で寝る!」っていうお約束。
あれ、やらないと来てくれなかったりしないかな?」
「ミカさん。それをやるにしても誰がやるんですか? 私は嫌ですよ。犠牲者一号に立候補するのは」
ミカの冗談(?)にユウカが否を突き付けるが、でも確かにそういう分かりやすい状況がないと来ないかもという理論には少し頷けるものがある。
とにもかくにも、いい加減状況が進展してほしくはあるが――、
ウフフフフ アハハハハハ……
「ん? 今誰か笑った?」
「被害妄想も大概にしてください、誰も先生を笑ったりなんて……」
「いや、そういのうじゃなくてもっと楽しそうな笑い方だったんだけど……」
ウフフフフ アハハハハハ……
「ほら、やっぱり聞こえた!」
俺がそう大きな声を出すと、他の子たちにも聞こえたのか、全員が即座に臨戦態勢に入る。
「ユウカ、ミカ。扉の脇でカバーリング。合図をしたら扉を開けて。他の人員は扉の前で戦闘態勢」
「はい」「分かったよ先生」
ユウカとミカを扉の前で待機させ、タイミングを計る。もう一度声が聞こえた時、その時が突入のタイミングだ。
ウフフフフ アハハハハハ……
「今!」
俺が合図するとともに、ミカがバンッ!と勢いよくドアを開け放ち、廊下に躍り出る。ユウカもその後に続き廊下に出る。
パラララララ
すると、次の瞬間に響き渡る銃声。なんだ、何に向かって発砲してるんだ? くそっ、こっちからじゃ状況が確認できん!
「ユウカ! ミカ! 何があったの!? 状況を報告して!!」
俺が耳につけてる無線機に向かって叫ぶとすぐに返事が返ってくる。
「ユウカです。廊下にて謎の西洋人形を発見。銃撃、ミカさんが確保しました」
ユウカから簡潔で分かりやすい報告が上がってくる。西洋人形? ひょっとしてチャッキー的なアレが怪異の正体なのか?
とりあえず、確保したということらしいが。
「はい、先生これ。包丁持って動き回ってたからとりあえず怪異かと思って撃ったよ」
悠然とした歩みでミカが一体の人形を持ちながら、部屋の中へ帰還する。
「人形……? こんな人形屋敷内にありました?」
「いんや、地下以外隅から隅まで掃除したけどこんなアンティークなかったよ。一体どこから現れたんだろうね?」
その人形はなんというか、西洋人形なのだが、頭髪は禿げ上がり、服も来ておらず、あちこちがボロボロになっている見るも無残な人形だった。
大きさ的には人間の赤ん坊ぐらいの大きさだろうか、少々大きめの人形だ。
「ていうか、可哀想ですねこの人形。ちゃんと手入れしてあげればもっと綺麗な人形なんでしょうに……」
ユウカが憐れみを感じた表情でそう言う。
「…………」
「アリスどうしたの?」
だが、そんな中アリスだけが真剣な表情でその人形を見つめていた。
「先生、この中には何もありません。ただの人形です。私にはわかります」
「え?」
え? アリスいつの間に霊媒師の真似事出来るようになったの? 光魔法を習得した影響か?
ていうか、霊媒師アンドロイドってそれ属性的にどうなのよ? 機械の身体と幽霊なんて相反する存在よ? それを両立してるって……、
なんて馬鹿なことを思い浮かべてると即座に部屋に異変が起きた。
ガタガタガタガタ
周りの家具が突然微振動をしだしたのだ。
「地震!?」
「いや、床は揺れてないよ! これは……ポルターガイストだ!」
俺がそういうや否や。部屋に設置された家具類が辺りを縦横無尽に動き回る。
その中でもひときわ大きい家具、椅子が俺の方に飛んで――、
「おっと、それは不許可だよー」
ダンダンダン
飛んできた椅子に対してホシノのショットガンが炸裂する。哀れ椅子は分解され粉々になる。俺の方に飛んできたのは木片とかそんなレベルにまでなっていた。
それが過ぎ去ったはいいが、次は机の上に乗っていた筆記用具が――、
「させない……」「させません!」
ダンダンダンダン
カヨコとアコのクロスファイアで筆記用具を器用に撃ち落し、再び俺の方に物が飛んでくることはなかった。
ていうか、キミらコンビネーション抜群ね。やっぱなんか因縁あるんでしょ?
「先生! ここに籠っては埒があきません! 打って出ましょう!」
「私たちの銃は面制圧に不向きです。私とカヨコさんで先生を持ちますので、移動しますよ!」
ユウカの言葉を受けて、俺はアコに持ち上げられる。うわ、こんな細い子に軽々持ち上げられるとかちょっとショック。
カヨコの方はシッテムの箱を持ってくれて俺の目の前に提示してくれている。
「いくよ、先生……」
「ミカ、行先は君に任せる。みんなを先導して!」
「分かったよ先生! それにしても! 見えない状態で襲ってくるなんて卑怯だよー。正々堂々姿を現して戦ってよ―」
ミカがそう愚痴りながら、先頭に立って皆を先導する。その矢先――、
ォォォォォォォォォ
「ゴースト!? 不動産屋め! 幽霊はいないって言ったじゃないか!!」
俺がそう一人ごちる中、低い唸り声と共に、ミカの前に半透明上のゴーストと思しき存在が姿を現す。別に、ミカの言葉に反応したわけじゃないだろうが、タイミングはばっちりだった。
それを確認した途端、ミカは慌てず騒がず、マガジンを抜き取り、別のマガジンに装填しなおす。
コッキング作業を完了すると、そのまま目の前のゴーストに照準を合わせ、自身の短機関銃を発砲する。
パラララララ
グオオオオオオオ!
その効果は覿面だった。目の前のゴーストは苦悶の叫びを上げながら消滅していった。
「流石シスターフッドだね。銀の弾丸の効果はてきめんだよ」
ォォォォォォォォォ
だが、無慈悲に再び響く低い唸り声に再登場するゴースト。
「うそー。あれで終わりじゃないのー!?」
ミカが思わず悲鳴を上げながら、立ち止まる。こりゃ、大元を絶たないとキリがないな。