罰として2話投稿いたします
「ワタシハサラ。ナマエハソレシカオボエテナイ」
「サラちゃんだね。サラちゃんはこの家に住んでいた貴族さんの家族ってことでいいのかな?」
「ソウ。センセイタチハ、ワタシノイエニナンノゴヨウナノ?」
何の御用。何の御用と来たか。正直に答えれば「この屋敷に住みに来た」になるんだが、そう答えるのはまずかろうという予感がある。
ていうか、俺たちが住み着いたから防御反応で祟りに来たんじゃないのか?
なんか、そこらへんすごくちぐはぐだな。ひょっとしたらこの幽霊、黒幕じゃないのかもしれん。
「この家にゴーストが出るって聞いてね。それを退治してくれと頼まれたんだ」
うん、嘘は言ってない。嘘は。実際に不動産屋に除霊してくれと言われてるしな。
「ゴースト? ソンナノガコノイエニイルノ?」
「うん?」
なんか反応がおかしいぞ? ひょっとしてこの子自分がゴーストになったのに気付いてない?
ていうか、ここに来るまでに襲ってきたチャッキー人形もゴーストもこの子の配下とかそういうのじゃないのか?
「あ、いや。そうなんだ。だからキミが何か知ってないかと思ってね」
「ワタシガシッテルカギリ、コノヤシキニゴーストハイナイヨ」
「そうなのかい? でも、私たちはここに来るまでに人形やゴーストに襲われたんだけど」
ここは正直に言っていい場面だろう。
「エッ、ナニソレシラナイコワイ」
「えっ」
「エッ」
なんだそれ。明らかにこの屋敷に住み着いてるゴーストなのに知らないとかある?
「ひょっとして、キミこの屋根裏から一度も出たことがない?」
「ウン。デモ、センセイタチノマエニモイロイロヒトガキタノハシッテル。キョウカイノクレリックサントカ、ホカノキゾクサントカ」
うん? なんかちょっと変だな。クレリックは分かるが、他の貴族ってどういうことだ? そこは冒険者じゃないの? いや、ひょっとしたら元貴族の冒険者ってこともありえるか。
しかし、寝ずの番してたそいつらはスルーで、俺らはダメだったのはなんでだろうな。
「ちょ、ちょっと待ってね。整理するから」
「ウン」
俺はそこで後ろを振り向き生徒たちに向き直る。
「ということらしいんだけど、どう思う?」
「いや、何がということでなのかさっぱりなんですが。私にはさっきから先生が虚空に向かって会話してるようにしか見えません」
「えっ。あの子の声聞こえないの?」
「あの子があのモヤだというのはなんとなく察しはつきますが、その声らしきものは聞こえてませんね。繰り返しますが、私には先生が虚空と会話してるようにしか見えません」
「えー、あんなにはっきり聞こえるのに……」
「先生、ひょっとしてこの屋敷の幽霊と会話してるの?」
アコとの会話に割り込む形で発言するカヨコ。
「うん、そうなんだけど。カヨコにも聞こえてない系?」
「聞こえてない。先生には聞こえるんだ」
「うん、じゃあ幽霊が言ったことそのまま伝えるけど……」
そう言って先ほどの会話内容を生徒たちにも聞かせる。
「まず疑問なのですが、その言葉は真実なのでしょうか?
いえ、サラさんが嘘をついてるという意味ではなく、本人はそうと信じ切っているだけという可能性もあります。
無意識のうちに本人が屋敷のゴーストや人形を操っていたということもありえますし」
最初に疑問を呈してきたのはアコだ。まぁ、その可能性に関しては俺も考慮はしていたことではあるが。
「でも、少なくともサラに敵意はなさそうだよね。ちゃんと話は通じてるみたいだし」
「だとしたら、下の階のあのゴーストカーニバルはどう説明つけるんですか? 私としては、もうこの幽霊祓って解決したいんですけど」
カヨコはサラに肯定的だが、ユウカはさっさと祓ってしまいたいようだ。まぁ、幽霊なんて計算で算出出来なさそうな存在だもんな。数学の徒であるユウカにとっては受け入れがたい、か。
「でもさー。不思議なのはこの屋根裏、サラちゃん以外の幽霊が全然寄り付かないんだよね。おかげで私たちも休めたんだけどさ」
「んー、それはこれが原因じゃないかなー?」
ミカの疑問に、ホシノが反応し屋根裏部屋の隅でごそごそしだす。
「ほらこれ。なんか結界の要っぽいのが、この部屋の4隅にあるんだよね。これって、ひょっとしたらゴーストを閉じ込める為の結界とかじゃないかな?
外のゴーストが入ってこれないのはその副次的な作用なだけだったり。私の勘だけどさ」
ホシノが提示したのは何か魔石っぽい何かだった。どうも、魔石自体に結界の作用があるらしく少し動かしたところで結界が崩れるとかはないようだ。
「む、ここにきてファンタジー的な知識が無いのがアダとでましたね。マジックキャスター? でしたっけ、もしくは高位のクレリックとかだとすぐに看破できたのでしょうけど、今の私たちではこういったことへの知識がありません」
「いえ、ホシノの意見は正しいです。確かにその石から聖なる力を感じます。おそらくゴーストを逃がさないための結界で間違いないでしょう」
「さっきも思ったけど、アリスいつの間にそういうのが分かるようになったの?」
「私にもよくわかっていないのですが、魔法を鍛えた結果、魔力を知覚する機能が芽生えたようです。ゴーストの位置が分かったのも、ここが家の中で唯一魔力の気配があったからです」
アンドロイドに、魔力感知のスキルを目覚めさせるとか魔法パネェ。いや、生物ならまだ分かるよ? でも、機械の身体よ? どうやって魔力感知の機能を搭載したのか。もう一度言うけどマジ魔法ぱねぇ。
「ゴーストを逃がさないため……。とするとサラがやっぱり鍵だね。最初の館の持ち主はここからサラを出したくない理由がなにかあったんだ」
「分かった。それ含めて聞いてみるね」
カヨコがそうまとめると、俺は改めてサラに向きなおる。
「お待たせ、サラちゃん。少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「ナニ?」
「サラちゃんはここからでようとは思わなかったの?」
「ダッテココハ、ワタシノイエダカラ……」
違うそうじゃない。
「いや、そうじゃなくて、この屋根裏から出ないの? って意味なんだけど」
「ベツニデルヒツヨウハナイカラ」
ふむ? 出る必要はないというが妙だな。さきほどの会話で分かってることは、この幽霊は自分が幽霊である認識がない。
ゆえに、まだ生きていると考えてるはずでそれなら食事やら睡眠やらの生理的な欲求を解消するためにはこの屋根裏を絶対に出なければならない。
なのに、出る必要はない、と本人は考えている。ここに鍵がありそうだな。
「じゃあさ、私と一緒にここを出る――いや違うな、私にこの屋敷を案内してくれないかな? さっきも言ったが私たちはこの屋敷の幽霊退治を任されてここにいる。
屋敷の住人であるサラちゃんが案内してくれたら、幽霊退治もスムーズに進むと思うんだ」
「イヤ」
「えっ」
「ダメ、ワタシハココカラデナイ」
「うーん、頼むよ。それにお屋敷の人がいるのに勝手に土足で歩き回るのは流石に不躾じゃない? だから、サラちゃんに案内してほしいんだけど……」
「イヤッタライヤナノ! ワタシハココヲデナイノ! ユウレイタイジナンテカッテニヤッテ」
こまった、完全に意固地になってしまった。だが、カヨコの言う通り、かたくなに外に出ようとしないサラに秘密がありそうなのは間違いないだろう。