異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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予約投稿ミスったので本日は2話投稿です。


46.ディーマンの亡霊

「困った。意固地になってしまった。これ以上聞き出したり、外に連れ出そうとするのは難しそうだ」

 

「一人で納得してないで通訳してください。通訳」

 

 おっとそれもそうだ。アコに言われて俺は先ほどのサラとの会話を生徒たちに話す。

 

「んー、結界が作用して屋根裏から出ないように意識操作されてるのか。元からの性質で屋根裏から出たがらないのかどっちだろうね?」

 

「そりゃ、前者でしょうよ。後者だったらこんな結界を設置する必要なんてないんですから」

 

「じゃあ、結界を解除する? あの石が要になってるんだったら、一か所に集めるとかしたら結界は解けるんじゃない?」

 

「それに関しては最後の手段にしたいかな。その前にやりたいことがある。書斎や書庫は最初の持ち主の持ち物は完全に無くなってたけど、この屋根裏にならなにかあるかもだ。

まずはここを調べよう。その前に――、」

 

 生徒たちと話し合うと、俺はもう一度サラに向き直り。

 

「サラちゃん。ちょっとこの部屋色々調べてもいいかな? 調べちゃまずいところとかあったら事前に教えてくれると嬉しいかな」

 

「スキニスレバ」

 

 サラからの返事はそっけないものだったが、完全にコンセンサスが取れたようでなにより。

 

「よし、家主から家宅捜索の許可が下りたよ。この屋根裏を調べよう。みんな手分けして」

 

 そういって、皆で手分けして屋根裏を捜索する。ところで、屋根裏と一口で言ったがそこには机があったり本棚やキャビネットがあったりと普通の部屋と変わらない内装をしていた。

それ以外にも最初の住人は倉庫代わりにも使っていたようで、色々な荷物が雑多に置かれている。

まぁ、一番強烈に印象に残るのは半白骨化してる腐乱死体だけどな! 気にしないようにしてたけど、これだけはインパクトキツすぎてダメだわ。

 

「これは……ミニアチュールって奴かな?」

 

 探索した俺が目を付けたのは、キャビネットの引き出しに入ってた写真ぐらいの大きさの細密画だった。書かれているのは家族の肖像画だった。

おそらくはここに最初に住んでた貴族の家族画だろう。

 

「うわー、綺麗だねー。これだけで結構価値ありそう」

 

「ホシノ……。いくらアビドスが金欠だからって売るのはダメだからね」

 

「失礼だな先生は。いくら私でもそんなこと考えるわけないじゃない。ていうか、そんなことしたら祟られそう」

 

 ほんとかなー。価値ありそうの所で目が¥マークになってた気がするぞ。

それはともかく俺はそのミニアチュールに目を落とす。そこに描かれていたのは4人家族の絵だった。父母と少年、幼い少女の絵が描かれている。

おそらくこの幼い金髪の女性こそがサラなのだろう。

肖像画であって、写真ではないためこの絵から家族の関係性を類推するのは難しいが、肖像画だってタダじゃない。こうやって肖像画を作るってことは家族仲はよかったのかもしれない。

 だが、だとすると解せない。なぜ、サラはこの屋根裏で腐乱死体になり、亡霊となってこの家に取り憑いているのか。

死んだときの記憶を聞くことが出来ればいいのだが、それはやってはいけないと俺の勘がそう警告している。

 

「先生、ちょっと来て」

 

 俺を呼んだのはミカ。呼ばれたほうを振り返ると、ミカは腐乱死体の傍にいてこっちに手招きをしていた。

う……、その死体には寄りたくないんだが、ミカが呼んでるから仕方ない。

 

「どうしたのミカ?」

 

「この死体。よく見たら、縄で縛られてたみたい。縄自体はちぎれちゃってるけど、切れ端が残ってる。柱の方にも傷がついてるし、ホラ」

 

 そう言われてよく観察すると確かにこの死体。柱のすぐ傍で死んでいた。ミカがいうように縄の切れ端と柱についた縄の跡が見て取れる。

 

「本当だ。これはいったい……」

 

 ますます謎に包まれて来たぞ。なんで、この家の住人なのに屋根裏で縄で縛られて死んでるんだ? しかも貴族の家で、だぞ?

醜聞ってレベルじゃないスキャンダルだろうに、この家の住人は一体何をしたんだ?

 

「それだけではありません。こういうのも発見しました。あいにく私には全部は読めませんでしたが、拾える内容からして、この家の住人の手記か何かかと。」

 

 そういって、今度はユウカが一冊の本を差し出してきた。ちなみに、生徒たちも少しはこの世界の文字が読めるように、と勉強をしはじめているのである。

まぁ、まだ勉強途上で全部読めるという訳ではないのだが。

 それにしても俺が会話も読み書きも両方できるのはなんでなのだろうね? 幽霊とも会話できるみたいだし、召喚されたときに授かったチートか何かなのか?

 

「なるほど、とりあえず読んでみるね」

 

 俺はユウカから手記を受け取ると読み始める。

さて何が書いているのか。

 

「聖暦3450年 11月5日

 

 我が家に二人目の子が生まれた。女児であったためサラと名付ける。

できれば予備の男が欲しかったが、女ならばそれはそれで政略の為に使うことが出来る。

わが家の発展のために頑張ってもらうとしよう

 

「これ、多分この家の主の日記だ」

 

 俺はその内容を生徒たちに音読する。続きを読むが、どうもこの家主、無精らしくて次の日記の内容は一気に日付が飛んでいた。

 

「聖暦3452年 2月5日

 

 なんてことだ、こんなことがあっていいのか。

サラが3歳となったため教会で洗礼を受けさせることになったのだがそれが問題だった

サラがレムレースの祝福を受けてしまったのだ。

こんなこと他人に話せるわけがない。司祭には他言無用と厳命し、家族にも絶対に口外を禁じた。

どうにかして隠し通すしかない。

 

「レムレース? なんですか、それ?」

 

「文脈からして悪神とかそういう類だと思うけど……取りあえず読み進めるね」

 

「聖暦3455年 9月10日

 

 日に日に状況は悪くなっていく、サラがレムレースの影響をどんどん受けているのだ。

先日も魔法を開花させたが、その属性も闇であった。

そのうち角や尻尾まで生えるのではないか、そんな予感すらする。

なぜこんなことになったのだ。我が家からディーマンが出てしまうなど一族の恥だ。

 

「!? ディーマンってアレだよね。私とか社長がそうだって言われてる種族……」

 

「あぁ、こんなところで情報が得られるとは思ってなかったけど。ディーマンってつまり悪神の祝福を受けて異形になった人類ってことなのかもね」

 

「でも、その割りには町の人からそんな差別するような目で見られたような感じはなかったけど。みんな普通に接してくれたよ?」

 

「今のところ、明確に差別してきたのは姫殿下の護衛のロイって人だけだ。この日記の著者もそうだけど、ひょっとしたらディーマンっていうのは高貴な血筋の人たちにとっては忌避される変化なのかもしれないね。

逆に一般市民にとってはそれほど忌避するようなことじゃないんじゃないかな」

 

 俺はそう結論付けると続きを読み始める。

 

「聖暦3458年 3月2日

 

 終わりだ。ついにサラに角が生え始めた。今までどうにか隠し通してバーネット侯爵家との縁談に漕ぎつけたのに。

こうなっては、病死を偽って排除するしかない。だが、レムレースは亡霊たちの神。

下手に死んでサラが亡霊になってしまっても困る。

なんとかする方法はないものか。

 

「最低ですねこの親。自分の娘が可愛くないんでしょうか。日記の初っ端から政略に使うとか言ってる時点でそういう予感はしてましたが」

 

 アコが侮蔑したような表情でそう感想を述べる。貴族なら大なり小なり家の発展を考えるものだろ、とは思うが理屈はそうと分かっても感情が納得するかは別なので黙っておく。

 

「次読むよ」

 

「聖暦3458年 8月23日

 

 なんとか方々の伝手を辿って、結界に使える聖石を手に入れることが出来た。

これを使えば、死後亡霊と化したサラも閉じ込めることが出来るだろう。

問題はどこで実行するかだ。 人知れず排除するためには業腹だが自分の屋敷内でするしかない。

地下? いや、地下は使用人も頻繁に出入りするためダメだ。

もっと他の場所がいい。使用人も入らない、家族も入らない。

となるとやはりあそこしかない。

あそこが使えなくなるのは口惜しいが背に腹は代えられない。

あそこで実行することにしよう。

 

「なんかここまで読んだらオチも想像付いちゃったんだけど」

 

「先生、この悲惨な物語にオチとか言っちゃうのちょっとどうかと思うよ」

 

 思わず素でコメントしたらミカに突っ込まれた。でも、この後の様子とか容易に想像できるんだもんよ。

取りあえず続きだ続き。

 

「聖暦3458年 9月8日

 

 やった! やっと奴を亡き者に出来た!

屋根裏に閉じ込めて、結界を張り、餓死させた。これで奴の亡霊も屋根裏から出てくることもない!

政略に使える駒が一つ減ったのは惜しいが、ディーマンが出た家などと言われれば末代までの恥だ。

これで今夜からは安心して眠れる。

 

「控えめに言わなくてもクズですね、こいつ。大人ってみんなこんな汚い連中なんでしょうか」

 

 ユウカが心底侮蔑したような表情で吐き捨てる。

 

「まぁ、貴族だしねぇ……。とりあえずオチまでは読むね」

 

「聖暦3458年 11月12日

 

一体どうなっている。奴は屋根裏からは出てこれないハズだ。

抱きこんだ教会のクレリックもそう言っていた。確実に封印できている、と。

なのに、何故! 何故我が家にゴーストが出るのだ!

いくら調伏しても何度でも出てくる! 使用人もゴーストを恐れて暇を申し出る始末!

大本を叩けばいいかもしれんが、アレがバレては全てが終わりだ。

どうすればいい!?

 

「ここから転げ落ちてくのかな。先生早く続き読んでよ」

 

「いや、もうここで終わってるね。正確にはまだ続いてるんだけど、こっから先は血まみれで読めそうにないよ」

 

「あらら」

 

 ホシノが続きを急かすし、俺も続きがぶっちゃけ気になるが、こっから先は読めるような状態にはなってなかった。

まぁ、今の段階でもこの状況への答えは見えてきたかな。

 

「オモイダシタ……。ソウダ、ワタシハ……」

 

 俺が日記を音読していた為、その内容を知ることになったサラ。ていうか、思い出したってどれくらい年月経ったんだろ?

今が聖暦何年かも俺たち知らないしな。

さてと、取りあえずこっからどうすっべか。

 

 

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