「そうだ……思い出した。私はサラ=マクミラン。マクミラン家の長女。レムレースの祝福を受けディーマンと化したために幽閉され殺害された……」
「うわぁ、急に流暢になるな!」
思い出したって話し方とかそういうのまで思い出したのか、今までの片言言葉じゃなくて滅茶苦茶流暢な日本語で話し出すサラ。
ついでに靄みたいになってた状態から、肖像画の少女をもう少し成長させたような見た目の半透明の少女へと変わる。そして、その頭の左右にはご立派な悪魔の角が生えておられた。
「あ、今のは私にも聞こえました」
「確かに、今までは先生の独り言しか聞こえませんでしたがこれは聞こえますね。ついでに姿もはっきりと」
おっと、どうやら今のサラの声は生徒たちにも聞こえるらしい。どういうカラクリだろうね。
「えっと、思い出したということは、この屋敷でゴースト現象を起こしてたのはやっぱりキミなのかい」
「その問いは正解でもあり不正解でもあるわ。このゴースト現象を起こしたのは私ではない。私の意思にリンクしてレムレース神が浮遊霊を呼び寄せてこの館で惨劇を起させた、というのが正解よ」
俺の問いによどみなく答えるサラ。というか、割と素直に答えてくれるんだな。
「リンクして、というのは?」
彼女の答えでそこだけが要領を得なかったので続けて質問を重ねる。すると、サラはんーと考え込むようなしぐさをする。
「私自身推測なのだけど。おそらく、この家に誰かが住むことで住人に対して起こる私の拒否反応をレムレース神が受け取って、住人を追い出すべくそういう指向で構成された亡霊を呼び寄せたのだと思う。
私を祓いに来たクレリックや冒険者に反応しなかったのは、あれを一時的に屋敷に逗留する「お客様」だと認識してたからだと思う。
生前の記憶はもはやおぼろげだけど、お母さまからの「お客様はおもてなしするものよ」という言葉を忠実に守ってきた結果ね」
「ていうか、やたら素直に答えてくれるけど、私たちのことは……」
うん、ここ重要だ。今までははぐらかしてたが、彼女の意思にリンクして亡霊を呼び寄せるということは、我々はお客様でなく新しい居住者と認識されていたはずなのだ。
の割には思い出す前は、本人はこっちを居住者ともお客様とも認識してなかったっぽいがどういう理屈だろうね? 深層心理とかかな?
「うん、認識してる。先生たちはこの家に住むのよね。いいわよ、住んでも。ただ、その前に私を成仏させてくれると嬉しいわね。そうでないと、これから毎夜ゴーストカーニバルよ?
流石に先生たちも安心して寝られないでしょう?」
「その、ゴーストカーニバルを止めることはできないのでしょうか?」
アコがそうサラに尋ねるが、サラはゆっくりとかぶりを振った。
「言ったでしょう。このゴーストカーニバルは私が起こしてるわけじゃない。私の意思に反応したレムレース神が起こした霊障よ。私はあくまで触媒に過ぎないの。レムレース神に愛されすぎたが故ね」
「で、でも。貴女を祓ってそれで解決なんて……」
ユウカ君。キミさっき祓う気満々じゃなかった? いや、日記の内容を受けて同情心が芽生えたんだろうけどね。
「ありがとう。でももういいの。クソ親父への復讐は済んでるし、これ以上現世にとどまって迷惑かけ続けるわけにもいかないから。
出来ることなら自分で成仏したいのだけど、この結界のせいで現世に縛り付けられてるみたいでね。
あ、今更結界を消しても無意味よ。そこから生じた副次的なものの結果だから」
結界消せば成仏するんじゃねと思ったがそうは問屋が卸さないみたいだ。じゃあ、教会からクレリックでも呼んで成仏させてもらうかなー。
あ、そうだ。最後にこれだけは聞いておきたかったんだ。
「一つ聞いていいかな? どうも貴族社会においてはディーマンは忌むべき存在みたいだけど、うちのカヨコは市井にいて差別されたことがないんだ。
ディーマンって世間的にはいったいどういう存在なんだい?」
俺がそう聞くと、サラはきょとんとした顔でしばらく沈黙したのち口を開いた。
「そんなことも知らないの? と言っても私も箱入りだったからそんなに知ってるわけじゃないけど。一言でいえば悪神といえども神は神という感じかしら。
あと一口に悪神と言っても、全員が全員悪の手先だったりするわけじゃないわ。中には人に益をもたらすような悪神も存在している。
そういった、益をもたらす悪神に祝福されたディーマンは地域によるけど貴族社会以外では祝福の子として歓迎されてるわ。
ちなみに私に祝福を与えたレムレース神は、ネクロマンサーが主に信仰してたりするから基本的に嫌われる傾向にあるわね。
でも、市井の人たちにとっては、目の前のディーマンがどの神に祝福されたかなんて分からないから、人に害をなさない限りは放置というのが一番多い反応でしょうね。
貴族社会以外は、だけど」
貴族社会クソだなー。
「貴族社会クソですね」
アコの言葉と俺の内心が一致した瞬間である。
「なるほど。だとすると、どの神に祝福されたかっていう情報、っていうかそんなのはそもそもないけど、そういうのは秘匿した方がよさそうだね」
「そうだね、カヨコ。この世界実際に神がいて、それが下界に直接的に影響与えてるから、適当な神様の名前を借りるのもマズそうだしね」
「? そこのお姉さん尻尾生えてるからディーマンかと思ったけど違うの?」
「違うよ。少なくともディーマンって種族ではない」
「ふーん。まぁいいわ。それより早く成仏させてくれないかしら。あ、でもさっきみたいに痛いのはイヤよ。苦しまずに成仏させてね」
「アリス。一応聞いてみるけど穏便な感じの除霊魔法とか覚えてたり……」
「残念ながら攻撃魔法しかありません……。アンデッド専用となるとさっき使ったターンアンデッドしかありません」
うん、なんとなく予想はしてたけどそうなっちゃうかー。
「素直に、教会のクレリック雇おうか……」
「そうですね……」
風の刃にいたクレリックのデニスさんに頼めばいいんじゃね?
という考えが一瞬頭をよぎったが、風の刃とはまだ一回一緒にクエストを受けた間柄でしかない。
そこまで親しくないのに、友人面して頼みごとをするというのはよくないだろう。
まぁ、そもそもからして風の刃とすぐに連絡取る方法なんてないんだけどね。
まぁ、この幽霊事件はこの後、教会からクレリックを派遣してもらって無事解決。
のはずだったんだけどなぁ……。
悪神と市井の人々の関係に関しては
TESシリーズのデイドラ信仰が近いものがあります。
おおっぴらに信仰してると言えないものではあるけど、
デイドラの中には良きデイドラ(とされる者)もいて、それを信仰してたとして後ろ指刺されることはあまりないです。
でも、一部の人にはデイドラ信仰というそれだけで敵視される。
そういう感じの設定です。