異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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05.陸八魔アル

「よく来てくれたね、アル。実は……」

 

「先生、早くシャーレに帰りましょう。今日私が当番だったのに、どこ探しても先生がいないんだもの。

こんなところで道草食ってる場合!? ……。って、あら? ここはどこ? こんな場所キヴォトスにあったかしら?」

 

 こっちの話を聞かずにひとしきりまくしたてたあと、今の状況が異常ということに気付いたのか、時間差で疑問符を浮かべるアル。

 

「うん、だからそれに関して説明したいんだけど、いいかな?」

 

「わ、分かったわ……。聞こうじゃないの」

 

 ようやっとアルが俺の話を聞く態勢になったので、ここはおそらくキヴォトスではないこと、異世界転移したであろうこと、今後の手伝いも兼ねてアルを召喚したことを告げた。

 

「異世界……ねぇ?」

 

「うーん、さっきまでは割と明確な証拠があったんだけど、クレジットに変換しちゃったからなぁ。でも、私についてくれば私の言ってることが嘘じゃないって分かるはずだよ」

 

「一応聞くのだけれど、キヴォトスに帰るアテはあるのかしら?」

 

「今のところそれはないね。ただ、アルやユウカ達生徒だったら、生徒送還のアプリを使えばキヴォトスに返すことが出来そうだけど……」

 

「つまり、帰るアテはないってことね。これはちょっとマズいわね……」

 

 アルは俺から帰るアテを聞き出すと、親指をかみながら脂汗を浮かべる。

 

「何がまずいの?」

 

「先生今日の当番把握してないの? 今日の午前は私だけど、午後はヒナなのよ。あのヒナが先生がいない、帰れないなんてなったらどうなると思う?

いえ、ヒナはまだマシかも知れないわ。流石に私も先の当番は把握してないのだけど、聖園ミカが当番になった日には地獄が出現するわよ」

 

 ミカ、ミカかぁ。確かにミカの先生に対する感情はヤンデレに近いもんだありそうだしな。実際はメンヘラというか、情緒不安定というかもうちょっと複雑なものだが。

だが、そんなミカだから、どんな手段を使ってでも”先生”をシャーレに戻そうとするだろう。

 

「そもそもからして、さっきのアルさんの申しようからして現在進行形で先生がシャーレから失踪している状態だものね。まだ先生の失踪は発覚してないけど時間の問題よ。

連邦生徒会長の失踪なんて比じゃないレベルで騒ぎになるでしょうね」

 

 その連邦生徒会長の失踪に関してはゲーム中でも謎な事件だからなぁ。ついでにいうと先生がキヴォトスに来る前の話だからどれくらいの衝撃だったのかは俺含めプレイヤーもあずかり知らぬところだろう。

 

「そもそも、先生に呼ばれたのが私とユウカの二人ってどういう人選なのよ。共通項が一切ないわ」

 

「多分だけど、ユウカは初期生徒だから、だと思う。まぁ、その理屈で言うと、ハスミとスズミとチナツも一緒に呼ばれてないとおかしいんだけど」

 

「その人選も一体どういう……ってあぁ、初めてシャーレを奪還したときのメンバーですね。それなら納得です」

 

 ユウカは一瞬疑問符を浮かべたが、頭の良い生徒であるからすぐに理解し、納得の感情を浮かべる。

普通に考えたら、大人のカードで初期状態で呼べるメンバーってこれにユウカを含めた4人のはず。本来ならこのメンバーが呼ばれてないとおかしい。

まぁ、正直チナツとか単体で来られても困るし、俺を守るという意味ではタンクであるユウカが来てくれたのが一番助かったのだが。

 

「なら、私は?」

 

「怒らないでね。アルはガチャで手に入ったんだ……」

 

「ガチャ? ガチャってガチャポンの? 周りにそういうのは見当たらないけど……」

 

「いや、確かにそれが原型とも言えるんだけど、ガチャっていうのは実機のガチャポンじゃなくてスマホのアプリのガチャだよ。ほらこれ」

 

 俺はそう言いながら、アルにスマホの画面を見せる。

 

「あぁ、そういうゲームの話ね。それなら分かるわ。他には誰か召喚出来ないの?」

 

「今のところアルとユウカだけだね……。募集で生徒を引ければ呼べる子が増えるんだろうけど、青輝石がないから今は引けないんだよね」

 

 青輝石に関しては最初に入っていたアプリである「青輝石購入」に一縷の望みを託したいところだが、おそらくはこの世界のリアルマネーを要求される感じがする。

クレジットはクレジットで手に入れなければならないが、青輝石も大事だ。そのバランスに関しては今後も悩みどころだろう。

 

「私としてはヒナ筆頭に重い子たちを早急に引いてほしいところだけどね。いや、ヒナには会いたくはないんだけど。でも、向こうで起きるであろう騒ぎを考えたら……」

 

 アルが百面相しながらそう言う横で、ユウカは顎に手をあてて何かを考え込んでるようだった。

 

「ユウカ、どうしたの?」

 

「いえ、先生。前言を翻すようですが、ちょっとここは私が一旦キヴォトスに帰った方がいいのではないかと思いまして」

 

「まぁ、確かに現状の私のことを説明する人はいた方がいいだろうけど……、ユウカ大丈夫?」

 

「何が大丈夫なのかよくわかりませんが、先生の現状を説明するだけでしょう? ただ、そうですね……。1時間、いえ2時間ぐらいでしょうか。それぐらい経ったらもう一度私を召喚してもらえますか?

少し試してみたいこともありますのでそれぐらいで。その間の先生の警護はアルさんにお任せします」

 

「なんだかよくわからないけど2時間の間先生を警護すればいいのね! それなら請け負ったわ! 今日は私が当番でもあるし、それぐらいお安い御用よ!」

 

 アルがにっこにこになりながら、俺の警護を請け負ってくれる。

まぁ、ゲーム中でも当番に設定すると「先生を警護してあげるわ」って言うし、便利屋の仕事としても護衛の仕事はあるだろうから、警護自体は得意なのだろう。

しかし、アルの武装はスナイパーライフルである。スポッターもいない状態でどうやってスナイパーライフルで要人警護をするのかと思うが深く考えてはいけないのかもしれない。

いつものアルお得意の「調子に乗ってハードボイルドっぽいセリフを決めてみただけ」状態でないことを祈ろう。

 

「お願いしますね、アルさん。では、先生。生徒送還で私を送還してください」

 

「うん、分かった。ユウカ、頑張ってね……」

 

 ユウカがキヴォトスに帰還したら質問攻めの嵐ではすまない事態が待ち受けているだろう。そのことをユウカが自覚してないのが少々怖い。

 

「はい? 頑張るとは……?」

 

「うんまぁ、多分大丈夫だと思うけど、一応ね。じゃ送還っと」

 

 ユウカの返事を待たずに、生徒送還アプリを起動。

 

『送還する生徒を選択してください。 早瀬ユウカ/陸八魔アル』

 

「早瀬ユウカっと」

 

『早瀬ユウカをキヴォトスに送還します、よろしいですか? YES/NO』

 

「毎回確認ダイアログでるのは親切でいいね。じゃ、いくよユウカ」

 

「はい、いつでもどうぞ」

 

「じゃ、いってらっしゃいユウカ」

 

 そして、俺がYESをタップするとユウカがブロックノイズのようなものに包まれながらその場から消失した。

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