異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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52.トレント

「これで5階層っと。取りあえずは順調かな」

 

 俺たちはここまでさしたる苦労もなく、装飾品のダンジョンの5階層まで到達した。

まぁ、道中はトラップもほとんどなく、モンスターも弱い相手ばかりなうえ、地図もあるので苦戦する要素はないのだが。

 

「1階1階もそれほど広くないのが幸いですね。弾薬補給の問題も先生のアプリを使えば解決ですし、節約する必要がないのも大きいです」

 

「しかし、地上のモンスターはカヨコに恐怖して逃げ出したりしてたけど、ダンジョンのモンスターはそんなことなかったね。効くかなとちょっとは期待したんだけど」

 

「期待に添えられなくてごめんね、先生」

 

「いや、カヨコが悪いわけじゃないから。それに今のところモンスターで苦戦する要素はないから、全く問題ないよ」

 

 そうなのである。カヨコの恐怖オーラで雑魚戦は全部スルー出来るかと思ったのだが、モンスターは全く構わず攻撃してきたのだ。

明らかにこっちより弱そうなモンスターであってもだ。ダンジョンのモンスターは特殊な個体なのかもしれない。

 

「出てきてるモンスターと言えば、角うさぎに、イノシシに、謎の粘体生物だっけ。この世界のモンスターは一様に角が生えてるのかとばかり思ったけど、粘体生物には流石に角がなかったね」

 

「スライムっぽいやつだよね。ちょっとは苦戦するかと思ったけど、核みたいな物を撃てば死ぬから、脅威度は他のモンスターと大差なかったね」

 

「スライムと言えば、弱っちぃパターンと強敵のパターンがありますが、この世界のスライムは弱っちぃパターンのようですね! 光の剣でも一撃でした!」

 

 ハレ、ミカ、アリスが今まで出現したモンスターに関して評価を下す。でも、スライムに関しては弱いパターンかどうかは分からんぞ。

強いパターンだけど、銃弾には弱かったって可能性もあるし。

 

「今のところモンスターは脅威ではないけど、トラップの方には気を付けないといけない。野外ということもあって、トラバサミやくくり罠などの接地型トラップが厄介だ。

私たちは踏んでも影響ないけど先生が踏むと大惨事になる。これからも慎重に進もう」

 

 実際アズサがトラバサミを見つけられずに踏んづけてしまったことがあったのだ。だが、そこは頑丈極まりないキヴォトス人。

トラバサミの刃が皮膚に食い込むこともなく普通に素手でトラバサミを外し、なんのダメージも与えられなかった。

 

「そうだね。アズサには負担をかけるけどよろしくお願いするよ」

 

「うん。私に任せてほしい。トラップに関してはどういうものがあるかさえ分かっていれば、次からは対抗できるだろう。だから――」

 

 アズサがそこまで言うと、急に俺の視界からアズサが消えた。

 

「ア、アズサ!? ど、どこに!?」

 

「先生、上です!」

 

 アコの叫びに俺は上空を見上げる。そうするとそこには木の枝に足を取られて逆さ吊りになっているアズサが。

ていうか、スカートがめくれて――、

 

「せ、先生。見るな! 見ないでくれ!」

 

「ご、ごめん! み、見てないから!」

 

 いやちょっとだけ見ちゃったんだけど、ここは見てなかったという体にした方がいいだろう。

 

「これはトレントです! 木に擬態するモンスターです! ゲームで見ました!」

 

「み、みんな。アズサに当てないように攻撃して! アズサを救い出すんだ!」

 

 アズサの方を見れない関係上極めてアバウトな指揮しか出せない俺を許してほしい。

 

パララララ ドサッ

 

 軽快な発射音が鳴り、続いて地面に何かが落ちる音がした。発射音から推測するに、ミカかハレがトレントを撃ち、アズサを救出したといったところだろう。

 

「た、助かった。まさか木が襲ってくるとは」

 

「アズサ大丈夫? トラップ以外にも警戒するのが増えたみたいだね。あ、でも、一度トレントを認識した関係上、シッテムの箱で索敵が出来るみたいだ。トレントについては私に任せてほしい。

アズサは引き続きトラップの警戒をお願いね」

 

 ひょっとしてと思ってシッテムの箱に視線を落とすと、いつものように赤点でモンスターの位置が索敵出来ているのだが、トレントを認識する前と比べて明らかに赤点の数が増えているので、この増えた赤点がトレントなのだろう。

相変わらずアロナのチートパワーには恐れ入る。

 

「シッテムの箱にそのような機能があるのか。なら、トレントの発見は先生にお任せする。私は引き続きトラップの警戒にあたる」

 

「あ、ごめん。いきなりストップだ。ここから見えるあの林あるよね? あれ全部トレントだ」

 

「……迂回したいところですが、地図的にはこのまままっすぐが階下への道になってますね」

 

 地図係にしているアコが地図と現在位置を考えながらそう呟く。俺も横から地図を覗き込むが、迂回できるような道もなく、どうやらトレントの山を突っ切っていくしかなさそうである。

 

「ならば制圧前進あるのみです! アリスの光の剣で屠りますがよろしいですね!?」

 

「うん、そうだね。アリスの光の剣がどれくらいトレントに通じるか見てみたいしお願いできるかな?」

 

「お任せください! 光よ!!」

 

 バシュゥゥゥ!

 

 光の剣からエネルギーの本流が放たれるとともに、トレントの集団を薙ぎ払う。

 

 ブオオオオオ

 

 薙ぎ払われたトレントが悲鳴を上げつつ消滅し、マップ上の赤点が次々と消える。ついでに全く関係のない木も巻き込まれて薙ぎ払われているのはご愛敬だろう。

 

「うーん、一撃かー。怖いのは擬態能力であって、直接的な強さという点では大したことはなさそうだね」

 

「まぁ、さっきも私の銃ですぐに倒せたし、耐久力とかそういうのは確かにあんまりなさそうだよね」

 

 そうハレが言うので、さっきアズサを助けたのはハレなのだろう。しかしアサルトライフルで即殺というのは硬いのか柔いのかいまいち分からんな。

ハンドガンで一撃とかだったら柔いのは間違いないが、ハンドガンもってるアコは地図係だし、カヨコにわざわざ試させるというのもちょっとアレなので、柔いということにしておこう。

どうせ残ってる面子の武器はアサルトライフル2、サブマシンガン1、レールガン1なのだから、どれも確殺だろう。わざわざ危険を冒す必要はない。

 

「ひょっとしたら現地の冒険者は苦戦するかもしれないけど、私たちには関係ないね。ていうか、おっちゃんもこういうのいるなら教えてくれてもよかったのに」

 

「先生の気持ちは分かるけど、それは難しいんじゃないかな? こういう世界って情報もお金になるような感じだし、私たちだけ依怙贔屓するわけにもいかないし」

 

「分かってるよ。ちょっと言ってみただけさ。じゃ、先を急ごうか」

 

 ミカの言葉にそう返事すると、俺たちは先に進む。とりあえずあと5階層。何事もなくたどり着けるといいんだけど。

 

 

 

 

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