「これは……、ひょっとしてこの向こうがボス戦って奴なのかな?」
5階層のトレント騒動以降、大した障害もなく10階層までたどり着いた俺たち。
そして、10階層にたどり着いた俺たちが見たのが、この目の前にあるワープゲートである。
これが迷宮型のダンジョンの場合なら、荘厳な扉と共に、上部にエンブレムなんかあったりして、いかにもボス戦って感じを醸し出すのだろうけど、ここはフィールド型のダンジョン。
扉やらそういった冒険者の移動を阻害するようなオブジェクトが置けないので、こういう形になっているのだろう。
そういえば、入り口もこんな感じのワープゲートだったしな。
だが、その割りに各階層の移動は階段で行われてるあたりダンジョンというのは謎が多い。
「入り口にあったのと同じものかな? これが、入り口にでも繋がっていたら今までの探索が徒労に終わるから、ちょっと躊躇しちゃうよね」
「問題ありませんよミカさん。ちゃんとこのワープゲートはボスのいるフィールドに通じてるゲートになってます。地図で何度も確認しているので間違いありません」
「……そういえば、ボスの情報仕入れずに来ちゃったね。おっちゃんに礼金でも積んで教えを乞うべきだった」
「ネタバレはいけません先生。冒険を楽しむためにネタバレをするなどやってはいけないことです!」
「そうは言うけどねアリス。ゲームのネタバレと違ってこっちは命がかかってるんだから、事前に情報を仕入れておくのは大事だよ。まぁ、それを忘れちゃった私が言うことではないんだけど」
「まぁ、大丈夫でしょう。あの受付さんは私たちがFランクの頃から面倒を見てもらってる人です。私らの実力に関しては把握してるでしょうし、私たちで攻略できないようなダンジョンは紹介しないでしょう」
「余裕のあることはいいことだと思うけど、みんな慢心だけはしないようにね。「強者は油断してもなお強者だが、慢心した瞬間に弱卒に変わる」なんて言葉もあるぐらいだ」
アコは余裕のある発言をするが、俺がそれをたしなめる。名言っぽいけど、このセリフどこで聞いたんだっけか。いい言葉だからなんとなく覚えてたんだが。
「そんな言葉初めて聞いたんですが、まぁその通りではありますね。慢心はしないでおきましょう」
「それじゃ、みんな最後に装備とかのチェックだ。弾薬は大丈夫だね。ちゃんと弾は出る? 整備とかもしておく?」
「そこまでは必要ないかな。そもそもそんな短時間でジャムるような物でもないし。だから、準備に関しては問題ないよ」
「整備と言えば、そろそろ光の剣の整備に戻りたいかもです。見えないところで何か不具合が生じてるかも知れませんし」
お、整備に関して言及したら、まさかのアリスが整備に戻る発言だ。これはアリスをキヴォトスに返すのもそう遠くないかもしれない。
「まぁ、みんな問題はなさそうだね。それじゃ、入るよ。ボス戦だからトラップはないだろうからアリスが先頭でお願い」
「分かりました! あ、先生。私が先にボスを倒してしまってもいいんですよね!?」
「あーうん。倒せるなら倒しちゃってもいいよ」
とりあえず投げやり的に返事するが、なんとなくこういうダンジョンのボスは全員揃わないと出てこないのではという予感がある。
まぁ、みんなは我こそは手柄が欲しいとかそういうタイプじゃないので、アリスが単独でボスを撃破してしまっても問題はないと言えばないのだが。
「では行きます!」
アリスが先頭でワープゲートの中に次々と入っていく。俺もワープゲートをくぐるが、その先にあったのは先ほどと同じような空があり木々がありと言った感じなのだが、今までのダンジョンと一つだけ違う点があった。
それは空に浮かんでいるのが太陽ではなく月であるということだ。月であるがゆえに、その明かりはかなり暗く周りを見通しにくくなっている。
「ボス部屋……、なのですよね? 今までのダンジョンと違って特殊な環境だからそうだとは思うのですが、それにしてはボスの姿が見当たりませんが」
全員がワープゲートから出たのだが、ボスが出現する素振りはない。本当にここボス部屋? と俺も思うが、俺もちゃんと地図で確認したので間違いないはずだ。
「ボスでないね……。間違いってことはないハズだけど」
そう思って俺はシッテムの箱に目を落とすと、マップの奥の方に赤点が一つ見える。
「いや、ボスはちゃんといるね。でも、これじゃ見えない。アリス、ライトお願い」
「了解です。ライト!」
アリスにお願いして光源魔法を唱えてもらう。ライトの光球が夜空に輝き、隠れていたボスの姿が明らかになる。
grrrrrr……gyaoooooo!!
アリスの光源に照らされて、明るみになったその存在は……ってドラゴン!!?
ウッソだろお前。なんでここでファンタジーの最強モンスターが出てくるんだよ!!
「おおおお、ドラゴン! ドラゴンですよ先生! まさにファンタジーここに極まれりです! 色が黒いからブラックドラゴンでしょうか?」
「喜んでる場合ではありません、アリスさん! 先生もボケっとしてないでさっさと指揮を飛ばしてください。密集していてはブレスの餌食ですよ!!」
「はっ! それもそうだ! みんな散開するんだ!」
いきなりのブラックドラゴン出現に頭が呆けてしまっていたが、アコの言葉に正気を取り戻し、全員を散開させる。アコの言う通り密集してブレスでも喰らったら終わりだ。
「みんな! おそらく銃ではドラゴンの鱗は貫けない! 目や腹などのやわらかい部位を狙うんだ。それと誰か、グレネードの類を持ってない? 持ってたらドラゴンの咆哮やブレスの隙に口の中にいれるんだ!
おそらく他に通じるのはアリスは光の剣ぐらいだ。アリスは適宜相手の攻撃を妨害するよう動いてくれ!」
「先生! グレネードなら私が持ってる! みんな、ドラゴンの口に集中攻撃だ! 口を開かせてくれ!」
アズサが即座に返事し、アズサの指示で皆がブラックドラゴンの口に集中砲火を浴びせる。
guoooo!
皆の銃撃がドラゴンの口に直撃したのに、ブラックドラゴンは蠅でも止まったかのように前足で口をなでるばかりで、いっこうに口を開く気配がない。
「ここは私に任せてください! 光よ!」
しかしそこに発射されるのは大熱量を誇るアリスの光の剣である。戦艦の主砲レベルの熱光線がブラックドラゴンの口に直撃する。
gyaoooooo!
今までの銃は豆鉄砲ぐらいにしか感じていなかったのに、アリスの光の剣は効果覿面だったようで、ブラックドラゴンはたまらず口を開く。
「今だ!!」
そして、その隙を逃すアズサではない。アズサはすぐさまピンを引き抜くと、ブラックドラゴンの口めがけてグレネードを投げ込む。
「よし! 入った!」
グレネードがブラックドラゴンの口に入る。そして、数秒後――
GUAAAAAA!!
腹の中でグレネードが爆発したのか、ブラックドラゴンが腹を抑えて呻きだす。って今ので死なないのかよ! 頑丈だなドラゴン。
「くそっ。グレネード一発じゃダメか! アリス! チャージして最大出力だ! 頭を吹き飛ばせ!」
くそっ、グレネード作戦はダメか。こうなったら、アリス頼りで力押ししかない! そう思った瞬間、ブラックドラゴンは大きく息を吸い始める。
「まずい! ブレスが来る! みんな避けろ!」
そういって号令を出すがドラゴンの口の方向は――、
「先生!」
誰かがそう叫んで初めて気づく。ターゲットは俺か! まずい、このタイミングじゃ避け――
「させません! 光よ!!」
だが間一髪、アリスのレールガンのチャージが終了し、光の剣の全力射がブラックドラゴンの頭部を覆いつくす。
ブラックドラゴンは頭部を完全に消失し、しばらくふらふらしたかと思うと、ズゥンと大きな音を立てて倒れ伏す。
た、助かったぁ……。