「あ、覚えたよー先生。これがレストだね。レスト」
貴族屋敷に籠ること一週間。ひたすら魔法を鍛えた結果。ミカがついに目的とする魔法レストを習得した。
ちなみに、アリスが覚えた魔法は直接的に戦闘に使うような魔法ばっかりだったことをここに記しておこう。
「おめでとうミカ。これでやっとサラを祓えるね。ついでだ、この足で屋根裏に行っちゃおうか」
「そうだねー。とっととしまいにしちゃおう」
ミカと頷き合って、屋根裏へと向かう。そして、臭いたつ死臭。サラを祓ったらここも掃除して弔ってやらんといかんな。
「あら先生。わざわざ私に会いに来るということは、私を祓う手段でも確立したってことかしら?」
屋根裏の自分の死体の上に浮かんでるサラが、こちらを迎え入れてくれる。
「あぁ、そうだよ。苦痛なくゴーストを祓う魔法を覚えてきた。これでキミをやっと成仏させることが出来るよ」
「……自分で頼んでおいてなんだけど、わざわざ本当にそれを実行してくるとは思わなかったわ。というか、私としては教会のクレリックが来るものと思っていたのに。
自力で魔法を覚えるなんて手間まで掛けてくれるとは思わなかったわ」
「君がいわゆる悪霊だったらそうしていたかもね。でも、話を聞く限り君に非はない。そんな存在を問答無用で祓うのはなんか違うなって思ってね。それだけさ」
というか、イクソシズムで祓うって選択肢も確かにあったのか。サラに言われるまでその選択肢全く頭の中に入ってなかったわ。
生徒の誰も、特にアコあたり、それ指摘しなかったのはやっぱりサラがいわゆる悪霊じゃなかったからなのかも。
「じゃ、ミカ。お願いね」
「はいはーい。それじゃ成仏してね。レスト」
「あぁ……ようやくこの屋敷の頸木から解放されるのね……。ありがとう先生。改めて礼を言うわ。天使の翼の貴方にもね。さようなら……」
ミカの魔法によってサラは満足そうな顔を浮かべながら成仏していく。これで完全にこの貴族屋敷は霊障から解放されただろう。
「あとはこの屋根裏の掃除と、サラを弔ってあげないとね。死体がこのままじゃ可哀想だ」
正直この腐乱死体には触りたくはないのだが、そんなことは生徒の前では言えない。重ねて言うが他の人が嫌がることを率先してやってこそ、だ。
「確かにこのままだと可哀想よね。でも、弔うっていってもどこに埋めればいいのかしら?」
「普通に考えたらマクミラン家の墓に埋めるんだろうけど、サラの境遇を考えるとそれはちょっとまずいよね」
「ん……、街の共同墓地とかないかな? 埋葬するとしたらやっぱりそういう場所になると思う」
ヒナ、カヨコ、シロコが次々と発言する。まぁ、シロコの提案が一番現実的かな。
「受付のおっちゃんに聞いてみるかなー」
困ったときの受付のおっちゃんである。丁度、ドラゴン殺しの剣の落札報酬が届いてる頃だろうし、ちょうどいいタイミングではある。
「なんというか、いいように便利使いしてる感あるけど、実際あの人便利だよね。色んな事知ってるし」
ハレめ、俺が思ってても口に出さなかったことを。
「とりあえず、明日は不動産屋に行ってから協会かな。こういう場合の埋葬方法を聞いておかないと」
俺がそう締めくくり、宿へと帰還する俺たち。この1週間夜更かし気味だったので、今夜はがっつりと寝ようと思う。
年取ると夜更かしがつらくなるからなー。
そして、翌日。不動産屋に除霊が完了したことを伝え、その足で協会へと赴く。
「というわけで、除霊は完了したんですが、屋根裏に残ったままの死体を埋葬してあげたいんですが、どうすればいいでしょうか?」
「なんでそれを俺に聞くかね……。俺のことを便利扱いしてねぇか?」
だって、まともに聞けそうな人っておっちゃんぐらいしかいないんだもの。
「というか、そんなかっちりと埋葬までしてやること自体珍しいというかなんというか。聖別したあとに、適当にその辺に埋めても文句は言われんと思うがな。
先生たちの出身地じゃ、ちゃんと弔ってやる決まりでもあるのか?」
異世界怖いでしょう。普通ちゃんと弔って上げるのが人間の心ってものじゃないの? その辺に埋めるってちょっと日本人的には実行しようもない非道なんだが。
「えぇまぁ。それにサラの生前の境遇を考えると、その辺に埋めるという選択肢はどうしても取れなくて……」
「お優しいことだな先生は。あぁ、皮肉じゃないぜ。心の底から感心してるのさ。まぁ、アレだ。
共同墓地を管理してるのはここの領主だから、領主館に言って手続きをすればいけると思うぜ。場所代とか色々取られると思うがな」
「なるほど。ご助言ありがとうございます。あ、そうだ。来たついでにドラゴン殺しの剣の落札の方はどうなってます? そろそろ結果が出たと思うのですが」
「ついでで聞くのか……。あぁ、そっちの方ならすでに売却は完了してるぜ。落札価格はちょっと高騰して大金貨200枚になったな。そっちに渡るのは大金貨20枚だな。ほらよ」
「大金貨200枚ですか。ずいぶん高騰したのですね」
「まぁ、ここらじゃ滅多にでない出物ってのもあったからな。それに競りが白熱すれば多少上振れするのも珍しくはない。で、この後領主館か?」
「はい、すぐにでも行きたいと思いますので」
「そうか。お優しいのはいいことかも知れんがあんまり入れ込みすぎないようにな」
おっちゃんとそう言葉を交わすと、俺たちはその足で領主館に行き、サラの共同墓地への埋葬の手続きをした。
そこでお役所よろしく、各部署をたらいまわしにされてちょっとキレそうになったが、我慢して手続きを進めた。
そこで墓地の場所代や各種手数料として、金貨2枚ほどの出費を強いられたが、それぐらいの出費など、今回の冒険で得た報酬からすれば誤差みたいなもんだ。
だが、諸々の手続きが終わるのにも時間がかかり、屋根裏からサラを共同墓地へと埋葬してやれたのは、実に1週間という時間が経過してしまっていた。
サラが既に腐乱死体だから、よかった(と言っていいものか)ものの、通常の死人でも同じぐらいの時間かかると死体が腐敗して大変じゃないか、と思ってしまう。
なにはともあれ、これにて幽霊屋敷の事件は完全決着である。ようやっとあの家に住むことが出来るな。