ようやっと、借りた屋敷で寝れるようになった最初の夜。それは起こった。
ズドン、と大きな振動と共に、夜中に目が覚める俺。
「地震!?」
思わず部屋を飛び出し、当たりの様子を見る。廊下には同じように起きたのか生徒たちも出ていた。
「先生も起きたのね。ということは私の部屋だけの現象じゃなかったってことね」
「そのようだね。地震かと思ったんだけど、それにしては振動が一回だけだったし。サラを除霊した以上ポルターガイスト再びってことでもないしなんなんだろうね?」
起きだしたアルや他の生徒たちと一緒に廊下で顔を突き合わせる。
「取りあえず暗いので明かりつけますね! ライト!」
「ありがとうアリス。とりあえず、これを持って屋敷の探索かな。あの一瞬の揺れだと、タンスが倒れたりとかそういうのはないとは思うけど異常は異常だ。みんな寝てたところ悪いけど探索しようか」
「ごめんなさい先生。探索するなら着替えさせてくれないかしら。流石にこの格好は恥ずかしいわ」
ヒナにそういわれて初めて気づいたが、今はみんな寝巻姿だ。流石に年頃の女の子が寝間着姿で歩き回るのは良くないか。
「ごめん、配慮が足りなかったね。みんなまずは着替えよう」
俺がそういうとみんな一旦部屋に入り着替えだす。俺も一応着替えておくかな。ひょっとしたら敵が湧いてる可能性だってあるんだから。
そして、全員が着替え廊下で集合すると全員で屋敷の捜索に乗り出す。取りあえず2階の空き部屋からの探索かな。だが、どの部屋をみても特に異常はなかった。
次に、一階だがここも特に異常はなかった。書庫は相変わらず空っぽのままだし。他の部屋にも異常はない。
「2階も1階も異常はないね。とすると残るは――」
「……地下か、屋根裏か、だね。取りあえず地下から見ていこうよ」
シロコがそういうと、自分から先頭に立って歩き出す。そして、地下に降りるのだがどうも様子がおかしい。
地下の壁はレンガ造りであったはずなのだが、降りていくにつれなんというか壁面がのっぺりしてきたのだ。俺のつたない知識ではこういう壁をなんというかまでは分からないのだが、一言でいうと現代的な壁になって――、
「先生! こ、これって……!」
地下に降りたミカが驚愕の声を上げるが俺も驚愕してる。いや、おかしいだろ。なんでコレがここにあるんだ!?
「これは……クラフトチェンバー!」
そう、シャーレの地下にあるはずの謎の3Dプリンター。それがこの屋敷の地下に鎮座しているのだ。
「先生。一応聞くけど、最初に内見したときは普通の地下室だったんだよね?」
「あぁ、間違いないよ。食糧庫っていう体で紹介されて、私も実際にその様子を見てる。間違いなくこんなのがある場所じゃなかった」
ハレの確認にそう答える。というか、クラフトチェンバーがここにあるってことは今シャーレの地下はどうなってんだ? 何もなくなってるのか? 後で向こうにいる人員に確認してもらうか。
いやそんなことより。
「ていうか、クラフトチェンバーだけ置かれても正直もてあますんだけど……。キーストーンもないし、どう使えっていうの……」
俺がそう愚痴ると、ピロリンとスマホから通知音が鳴る。
「うん? 誰かからのモモトークかな?」
そう思いスマホを確認すると、今まで何の役にも立っていなかった「お知らせ」と「ミッション」に通知マークが表示されていた。
「お知らせ? 何の? それにミッションって今まで何もなかったのに……」
取りあえずお知らせの方から確認してみることにする。
「NEW!! 自宅を手に入れたことでクラフトチェンバーが解放されました! それに伴って、ミッション機能が使えるようになりました!
ミッションをこなして、豪華報酬を手に入れましょう!」
全文以上である。いや、ミッションをこなして豪華報酬って、ソシャゲじゃないんだから。ってブルアカはソシャゲだったわ。とりあえず、ミッションの方も確認してみることにする。
「ミッション01 王都に行こう! 報酬:キーストーンx1
ミッション02 クラフトチェンバーでアイテムを作ろう 報酬:キーストーンx2
:
:
:
」
そんな感じでつらづらとミッションとその報酬が表示されている。ミッション報酬もキーストーンだけというわけじゃなく、色々あるのだが今は割愛させてもらう。
というか、クラフトチェンバーを動かすためのアイテムであるキーストーンは当たり前かも知れないが、この世界では獲得できないので、ミッション報酬で増やすことになるのだろう。
「ねぇ、みんな。これってどう思う?」
自分だけで考えても仕方ないので、俺はスマホの画面を見せみんなに意見を募ることにした。
「取りあえず、このメッセージを送ってきた奴は私たちをどうしても王都に行かせたいみたいってのは分かるわね」
「クラフトチェンバーがここにあるってことは、今シャーレの地下ってどうなってるのかしら」
「ん……、ミッションをこなして報酬ゲット。ますますゲームじみてきたね」
「んーー。でも、このミッションの通りに動いても大丈夫なのかな? なんか、策にはまってる感というか踊らされてる感をひしひしと感じるんだけど」
「先生、デイリーミッションはないのでしょうか! こういう奴には恒常のミッション以外にも毎日やるミッションとかもあるのがお約束です」
「先生。これって受けて大丈夫な奴なのかな? そもそも、このメッセージの発信源って何なの? ゲマトリアなの?」
アル、ヒナ、シロコ、ミカ、アリス、ハレの順番に皆がそれぞれ意見を述べる。
「最初はこれゲマトリアの仕業じゃないかと思ってたんだけど、この状況見るとそうじゃない気がしてきたんだよね。
なにより、ゲマトリアにクラフトチェンバーをこんなところに移動させることが出来るのかどうかって話だよ。やる意図も分かんないし」
「じゃあ、神様の仕業とでも言うの? それもそれでずいぶん荒唐無稽だと思うけど」
ミカがそう返事をするが、ぶっちゃけもうそれ以外に考えつかないだろう。
「まぁ、これが誰の仕業かなんて今考えても仕方ない。問題はこのクラフトチェンバーをどうするかだよ。ぶっちゃけると、クラフトチェンバーがあったとしても何に使えばいいのって感じなんだよね……」
「これって言ってみれば3Dプリンターなのよね。先生は普段なにを作っていたの?」
「うーん、みんなへのプレゼントとか家具とかそういうのかなぁ」
ヒナの疑問にそう答える。実際はそれ以外にも技術ノートや戦術BD、レポート等も作っていたのだが、そういうゲーム的な強化アイテムなんて現実になった今ではおそらく作れるようにはなっていないだろう。
「あれってコレ使って作ってたんだ。てっきり先生がどこかで買ってくれたものとばかり……」
あ、なんかアルがショック受けてる。すまんな安上りな代物で。
「で、実際どうしようか。ミッションの通りに動くべきか、完全に無視すべきか。私的にはミッションの攻略に行くに一票かな」
「私も攻略に一票」
「先生がそう言うなら私たちはそれに付いていくだけよ」
「使えるものがあるのに使えないままにしておくのってなんか気分良くないよね。だから、私も攻略に一票」
「もうこの時点で過半数だから、私の意見意味ないと思うけど、一応私も攻略に一票で」
「ミッション攻略に一票です!」
「私も答える必要あるのかな? まぁ、攻略に一票かな」
なんと全会一致である。アコあたりがいれば反対票が投じられたかも知れないが、今のメンバーだとこうなってしまうのもやむなしか。
しかし、ミカとハレは疑義を呈していたのに、攻略に周ったのはどういう心境の変化か。まぁ、あの時点で反対しても多数決的には無意味ってのもあるんだが。
「よし、それじゃクラフトチェンバーを動かすために、明日は王都に向かおう。ミッション攻略がこれからの私たちの道標だ」
そう締めくくることで今夜は寝ることにする。
しかし、以前のメッセージと言い今回のクラフトチェンバーの移動といい、一体だれがこんなことをやってるんだろうね? そいつは俺に一体何をさせたいというのか。
新生活の準備等ありますので、以降不定期更新になります。
更新する時間は以降も12時にする予定ですので、お待ちいただければ幸いです