あれは嘘だ。
というより、思ったより時間的な余裕が出来たので投稿しました。
「というわけで王都に行きたいんですが、王都行きの護衛依頼とかってありませんかね?」
「何がというわけでなのか知らんが、知りたきゃ掲示板みろ掲示板。というか、王都に行くつもりだったら、例のドラゴン殺しの剣王都に持ちこみゃよかったのに」
「それは私も後悔してるとこですが、急遽行く予定が出来てしまいましてね。まぁ、そうおっしゃるのでしたらこちらで掲示板確認いたします」
いつものおっちゃんとそんなやり取りをしながら掲示板を確認し、王都行きの護衛依頼がないか探し出す。
「うーん……。王都に直で行くような護衛依頼はないかー。経由地で改めて王都行きの護衛依頼を受けるかな。でも、経由地で王都行きの依頼があるかどうかも分からないからなー」
「先生。護衛依頼はなくても配達依頼はあるのではありませんか? それだったら王都に行くついでに受けれると思います」
俺が掲示板を見ながら悩んでいるとアリスが横からそんな提案をしてきた。おっと、それは失念していたな。よその都市に行くなら護衛依頼とだけ思っていたしな。
「おっと、配達依頼なら丁度いいのがあるぞ。俺から……ゴホン、ここの協会長から王都への協会長への手紙だ。シャーレが配達してくれるなら俺としても依頼を貼る手間が省けるってもんだ」
おっと、おっちゃん今失言したな? まぁ、このおっちゃんが協会長であろうというのは割と推測できることではあったしな。
ペルージャ最精鋭の風の刃を部下のごとき扱ったり、本来協会長が出張るレベルの会談も全部おっちゃんがやってたりしてたからな。おのずと正体も分かるってもんだ。
「協会長への手紙ですか。それって紹介状も兼ねてるとかですかね?」
「別にそういうわけではないが、協会長からの手紙の配達を任せられるって時点でそれだけで一角の冒険者であるって証明にはなるわな。で、この依頼受けるか?」
「受けます。まぁ、メインは王都に行くことでついでで依頼を受ければいいな、ぐらいでしたし。ちなみにですけど、王都行きは流石に乗合馬車出てますよね?」
「当たり前だろ。一日一便の頻度で出てるさ。乗合馬車に乗るんだったら北の門から出てるからそっちから行くといい」
一日一便と来たか。メインストリームであろう王都との交通機関なのにその頻度というのは、やはりインフラの発達してない世界だなと思わされる。
いや、むしろ一日一便でも多いぐらいなのかも知れんな。週一とかもありそうだ。
「ちなみに今更なんですけど、王都の名前って何なんでしょうか? 知らないと乗合馬車の駅で迷ってしまいそうで……」
「……そんなんも知らんで王都に行こうと思ったのかよ。王都の名前はエンゲラントだ。王都エンゲラント。ちなみにこの国の名前はオースティン王国だ。……これも知らなかっただろ?」
「はい、知りませんでした。教えていただきありがとうございます」
そういう国名ってことは、あの姫殿下はフェリシア・オースティンって名前になるってことかな? ミドルネームとかが入るかも知れんが、基本はそういう名前か。
というか我ながらよくもまぁあの姫殿下の名前覚えてたもんだ。
「なんというか、浮世離れしてるよなぁ先生たちって。ま、こっちとしてはちゃんと依頼をこなしてくれりゃ文句はないが。
それはそうと王都に行くなら早く行った方がいいぞ。まだ時間的余裕はあるが、乗合馬車は定員に達したらその時点で出発だからな。楽していきたいなら急いだほうがいい」
「おっと、それは急がなければいけませんね。それでは手紙の配達はお任せください」
俺はおっちゃんから手紙と割符(向こうで依頼料を受け取るのに必要らしい)を受け取ると、その足で北の門の方へと向かう。
「王都エンゲラント行きの乗合馬車はこちらでーす。定員残り7名です。王都へお越しの方はお急ぎくださいー」
「すいませーん! 乗ります、乗らせてください!」
やっべ、残り7人ってこっちの人数と丁度だ。俺は大声を上げると、馬車の元に急ぐ。
「こちら丁度七名です。乗せていただきますか?」
「王都までですね。ではお乗りください。王都行き乗合馬車出発しまーす!!」
俺たちが乗車すると、乗合馬車は時間を待たずに出発する。
「なんとかギリギリセーフだったみたいね。ちょうど7人分の空きがあって助かったわ」
「出発してすぐでこんなこと言うのアレだけど、お尻痛いね……。やっぱこういう時代の馬車って振動がツラいね」
出発して5分と経ってないが即ハレが根を上げる。だが、その気持ちは分かるぞハレよ。
「確かにこれは私でもツラいね……。次乗る機会があったら向こうからクッションでも持ってきてもらわないとね」
道路が舗装されてない、いや正確に言うなら舗装はされているのだが、その舗装というのが砂利道であるので、やはりアスファルト舗装の現代の道と比べたらぶっちぎりの悪路という他はない。
「うぅー、細かい振動がツラい。ちなみに王都に着くのはどれくらいなの?」
「王都へは大体8時間ぐらいを見ています。途中馬の休憩なども挟みますので、そのぐらいですね」
ミカの言葉に御者がそう答えるが――、
「8時間!? 8時間もこの悪路で揺られないといけないの!?」
「悪路って……。別に普通の道だと思うがな。お嬢ちゃんたちお貴族様とかだったりするのかい? あ、いやお嬢ちゃんディーマンだからそれはないか」
アルがそう嘆くと他の客からそんなつぶやきが飛ぶ。やっぱり貴族=ディーマン否定派というのは一般庶民でも知ってることなのか。
「先生。もう次の休憩時で構わないから、キヴォトスからクッション持ってこさせてよ。これをあと8時間とか耐えられないわ」
「う、うん。分かった。向こうに連絡して準備してもらうね……」
というわけでモモトークで向こうと通信しクッションを用意してもらうことにした。
こんなことでキヴォトスを頼るのは正直どうかと思うが、頑丈であることと痛みを感じることは別ってことか。
そして、一回目の馬の休憩で街道に整備されてる休憩所で休憩することになったのだが、アコを急遽呼び出して全員分のクッションを持ってきてもらった。
クッションなんてかさばるようなものを持ち歩くのは冒険としてどうかってところなのだが、俺たちにはドラゴンからドロップした大容量マジックバッグがある。
これぐらいの容量は余裕で入るのだ。ていうか、このマジッグバッグどれくらい入るかちょっと実験したのだが、未だに底が見えないんだよな。
まぁ、一杯入る分には文句もないので助かってるが。
で、全員分のクッションを敷いて再び馬車の旅と相成ったのだが――、
「うぅ、まだ振動がお尻に……。さっきと比べたら遥かにマシだけどさ」
「エンジニア部あたり呼んで、サスペンションの開発をさせるべきでは……」
だが、相変わらずのアルとハレの文句は続く。
「それにしても、ヒナもシロコも文句言わないよね。まぁ、クッションを敷いてるってことは二人とも痛くはあるんだろうけどさ」
アリスはともかく、ヒナとシロコが特に文句言わずに乗り続けてるのがちょっと気になって二人に尋ねてみる。まぁ、アリスはアリスで乗合馬車の旅にうっきうきなだけだが。
「ん……、痛い事は痛いけど我慢できないほどじゃないし」
「別に二人に対する当てつけで言うのではないのだけれど、わがままを言うべきタイミングではないと思っているだけよ。クッションなんてかさばるだけだしね」
うーん、二人ともストイック。
「まぁ、自分たちで歩くよりはるかに楽だからそれぐらいは、ね。ともかく、あと6時間ぐらいだっけ。何事もないことを祈ろうよ」
俺がそういうとみんな頷いて馬車の先を見つめだす。
ていうか、こんなこと言うこと自体がフラグのような気がするが、大丈夫だよな……?