異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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64.王都観光

「天気よーし。絶好の修学旅行日和だね」

 

 みんなで魔法の書を回し読みした翌日、その日は快晴で絶好の観光日和であった。

 

「しかし、本当に連絡要員を残さなくてよかったんでしょうか……。なんか、悪いことしてるみたいです」

 

 みんな期待に顔を輝かせている中、一人だけ沈痛な表情のユウカ。ユウカは真面目だなぁー。

 

「まぁ、連絡要員を残さなかった事例は今日が初めてってわけじゃないしさ。屋敷の掃除した時もそうだったでしょ。

観光もそんなに時間かかるわけでもないし、少しぐらいなら大丈夫でしょ。それよりもっとスマイルスマイル。折角の修学旅行なんだから明るくね」

 

「はぁ、分かりましたよ。先生がそこまでおっしゃられるなら今日は余計なことは忘れて楽しむことにします」

 

「うん、それがいいよ。さて、それじゃまずはどこに向かおうか。昨日私も調べてたんだけど、アリスが言ったようなコロッセウムやら美術館やらがあるみたいだね。

他にも王立図書館とかもあるけど、こっちは多分みんながあんまり楽しめないだろうしね」

 

 現時点で完璧に文字の読み書きが出来るのは俺だけである。なので、図書館に行ったところで楽しめるとは思えない。

まぁ、そもそもウイやシミコ、メルとかならともかく今いる面子で所謂文学少女的なキャラはいない。そういう意味でも楽しめるような場所ではないだろう。

 

「コロッセウムかぁー。あんまり血が出るのは嫌だなぁ。それに殺し合いを観戦するってのもちょっと……」

 

「あ、そこは大丈夫みたいだよハレ。確かに、人同士の戦いもあるみたいだけど、それは夜の部限定らしいから。昼間は人間対モンスターがメインの興行らしいから。その内容も人間側が喰われるような陰惨なのは滅多にないって話だし」

 

 ついでに言うと、夜の部では盛んに賭博が行われていたりするらしいが、そこはわざわざ言うことではないだろう。そもそも夜の部は見に行かないし。生徒たちに賭博させるのダメ、絶対。

 

「先生、それなんだけど、普段は確かに先生が言ったような興行をやってるみたいだけど、今は学生による剣術大会が行われているそうよ。

オースティン王国の各地にある騎士学校の学生による剣術大会で、結界によって致命的な一撃はカットされるっていう安全な大会みたい」

 

 おっと、ヒナから訂正が飛びましたよ。ていうか、ヒナも観光場所について調べてたのか。俺の調べではそこまでの情報を得られなかったのだが。

 

「そうなんだ。でも、騎士学校か……。騎士ってアレでしょ。末席ではあるけど一応貴族でしょ? ヒナやアルたちが差別されないか心配だよ」

 

「その点は大丈夫よ。私がそれを教えてもらったのはディーマンの人だったから。その人も見に行くって言ってたし。ディーマンは貴族によって差別はされているけど、公衆の面前で差別するような常識知らずはいないということでしょうね」

 

「そうなんだ。まぁ、それなら大丈夫かな……。ヒナに聞いておきたいんだけど、剣術大会はいつから始まるか分かる?」

 

「朝の第二の鐘がなったときが開始時刻らしいわ」

 

 こういう時時間で表現できないのがもどかしいのだが、この鐘というのは測ってみた結果3時間おきに鳴らされるというのが分かっている。

朝の第一の鐘が6時に鳴るので、第二の鐘は9時に鳴るということなのだ。そして、現在時刻は手元の時計で午前7時。

さらに言うならこの世界はキヴォトスと同じ1日24時間なので、こうしてキヴォトスの時計がそのまま使えるのだ。

 

「第二の鐘ということは、始まるまでまだ2時間近くあるね。じゃあ、先に美術館の方行っちゃおうか。確か市内をめぐる乗合馬車があったはずだしそれに乗っていこう」

 

 俺の号令で皆で乗合馬車の駅まで行って馬車に乗る。14人の大所帯なせいで、ほぼ俺たちだけで席が埋まってしまったのを申し訳なく思いながら、俺たちは馬車に揺られて美術館へ。

 

「王立美術館前~。王立美術館前~。お降りの方はお急ぎくださいー」

 

 ほどなくして、美術館まで着くと全員で降車する。ちなみに、市内の道はかなり舗装されてて”比較的”快適な乗り心地であったとは付け加えておこう。

まぁ、舗装されてるって言っても石畳だし、サスペンションもゴムタイヤもない馬車なので揺れることは揺れるのだが。それでも、街道を行く馬車に比べたら格段の乗り心地である。

 

「ここが美術館かー。それにしても美術館を作る余裕があるなんて、この王都は恵まれてるんだね」

 

「どうやら、何代か前の王様が建設した施設みたいですね。今になっても残ってるあたり影響力の強い王様だったのでしょうか?」

 

 ユウカが近くにあった石碑のようなものを読んでそう呟く。おぉ、ユウカはそれぐらい読み取れるほどこの世界の文字を理解してきたのか。

勉強家だなー。俺には最初っから日本語にしか見えないから、そのあたりで助けにはなれんのよな。先生が聞いてあきれるぜ。

 

「ま、施設の前でダベるより入ろうよ。この世界の芸術がどんなものなのかも気になるし」

 

 ミカがそう促してきたので、俺たちで連れ立って中に入ることにする。

入館料が一人金貨1枚と結構取られたが、貴族以外お断りとかそういう施設でなくてよかった。まぁ、高い入館料でそこらへんの庶民が入れないようにしているって感じだろうな。

一人1万円の入館料とか、現代日本であったら暴動ものだが。

 

「へぇー、中は結構綺麗なんだー」

 

「ん……、ちょっと意外。汚いとは思ってなかったけど、ここまで清潔感のある内装にするのは並大抵の努力ではできない」

 

 ホシノとシロコが言うように、美術館の中身は結構、というより現代と比べても遜色がないほどに綺麗で整っていた。

数代前の王様が作った施設だというがそれをここまで綺麗に維持しているとは、この王国に置ける芸術への力の入れようがうかがえるというものだ。

 

「最初に展示されているのは、この美術館を作った王様の銅像だね。まぁ、ありがちかな」

 

「名前は……ハワード14世、ですかねこれは。芸術派っぽい王様だから、失礼ですけどヒョロガリかと思ってましたが、結構筋骨隆々な王様だったんですね」

 

 またしてもユウカが銅像前の碑を読んでそうつぶやく。

 

「いやー、本当にその王様がこの銅像の通りとは限らないよ? こういうのは盛るものだし」

 

 モモイがユウカの言に反論するが俺も同感である。こういう肖像は基本的に盛りに盛って表現するというのが定番だ。

芸術家側の忖度というより、権力者側からの要望でそうなるものなのだ。

 とりあえず、銅像の前で話してるだけなのもなんなので、移動しつつ展示物をみんなで見ていく。

俺がこの世界で初めて見た芸術品と言えば屋敷の屋根裏にあったミニアチュールの家族肖像だが、流石に美術館に展示するとなるとサイズも大きく現代でも普通にあるような絵画が多い。

 

「全体的に風景画が多いわね。特に他国の情景を写した風景画が多いみたい」

 

 アルがそう感想を述べるが、全体的に風景画が多く、次いで肖像画、下がって入り口にあったような立体作品という風になっている。

 

「他国の風景画が多いってすごいよね。わざわざ他所の国に行って描いてきたってことでしょ? この交通機関の発展してない時代でそこまでする執念がすごいよ」

 

「いや、他国から買い付けた絵画かもしれない。そちらのほうが手間的には楽に済む」

 

 ミカとアズサでそんな会話をしているが、実際どっちなのだろうか。俺的にはアズサの推測に一票といったところだが。

 

「見た感じ立体物が少ないんですね。ほとんどが絵画です。最初にあったのが銅像だったから立体物ももっと多いかと思ったのですが」

 

 俺が先ほど心の中で指摘したのと同じような感想をアコが述べる。

 

「彫刻作品が少ないのは確かに気になるわね。銅像はお金がかかるから少ないのは分かるけど、彫刻だったら木を削るだけでも出来るわけだし」

 

「そういうのって、”木を削っただけ”とか思われて芸術的な価値があんまりないとかなのかもね」

 

「彫刻も立派な芸術なのにね」

 

 ヒナとそんな感想を言い合いながら美術館の展示を見終わる俺たち。

時刻はいい感じに午前8時半。今からコロッセウムにいけば丁度剣術大会が見れる頃合いか。

さてさて、この世界の剣術とやらを見せてもらおうか。

 

 

 

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