異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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モモトークを台本形式にしたのは
今回みたいなネタをしてみたいと思ったからです。



07.先生と俺

ユウカ『すいません、先生。どうも代行では抑えきれないようで私が説明する必要がありそうです。一旦失礼しますね』

 

 そのトークと共に、ユウカからのトークは一旦途絶える。

だが、そんなことより俺は自分の名前が消えたという事実に混乱し通しだった。

 

(今の俺はなんなんだ? 地球に居た俺なのか? それとも、地球の俺の記憶を持った先生なのか? とするとこれは転生ではない? どちらかというと憑依に近いか)

 

 だが、この事実が分かった所でどうなるという問題もまたある。生徒たちは一部を除きみんな先生呼びだし、呼称で難儀することはない。

いや、この後人里に着いたときに困るぐらいか。でも、その時はその時で偽名なりなんなり使えばいいしそこまでの問題ではない。

 ってそうじゃないそうじゃない。そんな単純な問題じゃなく俺という存在が何者なのかということだ。

 俺は自身を”俺”であると認識していたが、ユウカやアルの反応を見る限り外見的特徴はまぎれもなく先生のそれであるはずだ。

外見は先生で、中身だけが俺に入れ替わった? やはり現象としては憑依が近い、か。

 

 ここで俺の正体を生徒たちに伝えるべきだろうか? いや、それは全くもってノーだ。

ここで正体を伝えて離反でもされたら俺は終わる。こんな異世界に放り出されたら、待っているのは紛れもなく死、だ。

演じ切るしかない……、生徒たちの先生を、ブルアカの先生を!

正直先生みたいな大人を演じ切れるかは不安なのだがやるしかない。俺だって腐っても大人だ。彼女らの規範となるような行動ぐらいとれるはず……!

 

「せ、先生、どうしたの!? すごい脂汗だけど」

 

 うずくまって今の思考を続けていたらどうやら脂汗が出るほど懊悩していたらしい。アルが心配そうに俺を覗き込んでくる。

 

(このアルの心配も先生に対してなんだよな……、俺に対してじゃない)

 

 改めて自覚した今の俺の状況を噛みしめ、自分自身に対して戒めることにする。俺は先生ではない、と。

 

「ごめん、これから先の状況を想像するとちょっと恐怖を覚えちゃって」

 

「だ、大丈夫よ、先生! アウトローでハードボイルドな私がついてるのよ! これから先どんな困難があっても、この私がパパっと!」

 

「いや、そっちじゃなくてキヴォトスの方。ほら、これ」

 

 今の状況にアウトローでハードボイルドなんて関係ないだろうと思うが、そこはまぁアルなので。

とりあえず、さきほどのユウカとのトークをアルに見せる。

 

「うぅ、確かにこれは今後に恐怖を覚えざるを得ないわ。わ、私も今は帰りたくないかなー、なんて……。帰って便利屋のみんなやヒナに見つかったら何言われるか」

 

 相変わらずの百面相を見せてくれるアル。今の状況に不安を覚えるが、アルみたいなコメディリリーフが傍にいてくれてるおかげで少し精神を落ち着けることが出来ている。

本人にコメディリリーフなんてのはどうやっても言えないセリフだが。

 

ピロリン

 

「お、ユウカからトークかな?」

 

ユウカ『先生、かくれんぼなんてしないで出てきてよ。あ、それともキヴォトスのみんなを鬼にした鬼ごっこでもしてるのかな? 早く出てきてくれないと私何するかわかんないよ?

先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生』

 

「ヒエッ……」

 

 今の声は俺ではない。横から俺のスマホを覗いていたアルの声である。俺も同じ声を上げたい気分だ。

ていうか、これユウカじゃない。送ってきてるの間違いなくミカだろ。

 

先生『ミカ、人のスマホを強奪するのはよくないよ。ユウカに返してあげて。ミカはいい子でしょ?』

 

ユウカ『流石先生。すぐにバレちゃったね。やっぱりこれも愛の力なのかな? 分かった、いい子にしてるから必ず私をお迎えしてね』

 

 愛の力もクソも、こんなトーク送ってくるのどう考えてもミカしかいないんだが。ミカがユウカからスマホを強奪してトーク打った情景がありありと想像できるわ。

 

ユウカ『すいません先生。ユウカです。ちょっと面倒なことになりまして』

 

先生『うんまぁ、それはさっきのミカのトークを見ればわかるけど』

 

ユウカ『どうも思ったよりも信じない派が多くてですね。私とアルさんで共謀して先生をどこかに隠してるのではないかという疑いをかけられまして』

 

ユウカ『その流れで、現状唯一私が先生と連絡を取れるということを漏らしてしまって先ほどのように』

 

先生『なるほど、よくわかった。今の私を自撮りして送った方がいいかな?』

 

ユウカ『すいません、お願いしてよろしいでしょうか?』

 

 まぁ、これで信じてくれるかどうかは分からないが、キヴォトスのどこにもいないという証拠にはなるかもしれない。

この森、キヴォトスになさそうな環境だしな。

 

「アル、もうちょっと寄ってくれる」

 

「え? ひょっとして私と一緒に自撮りする気!? やめてよ、嫉妬の嵐が私に向くのが目に見えてるわ!」

 

 アルも一緒にトークを眺めていたので、俺が何をするのかすぐに察したようだ。

 

「え、でも。アルと一緒にキヴォトスのどこでもない所にいるって証明しないとだし……」

 

「そ、それはそうだけど……わ、分かったわ。撮りましょう」

 

「よし、じゃあ撮るよー」

 

カシャ

 

 自分のスマホでアルとのツーショット写真を撮り、即座にユウカのモモトークに写真を送付する。

ちなみに、アルはにこりともしていない。というより完全に怯え顔になっている。

 

先生『今送ったけど、届いた?』

 

ユウカ『届きましたよ。今、総出で背景の植物に関して解析を行っている所です。これでキヴォトスに生息していない植物とかだったりしたら話の信ぴょう性が増しますので』

 

先生『あ、なるほど。そういう手があったか』

 

ユウカ『そのつもりじゃなかったんですか、先生? まぁ、結果オーライとしておきますけど』

 

ユウカ『あ、解析結果が出ましたね。やはりというか未知の植物だったようです。これで私の説明にも信ぴょう性が出るようで一安心です。……なぜか美食研究会がハッスルしてますけど』

 

 美食研究会はまぁ、はい。未知の植物ってことは未知の食材でもあるしな。そりゃアイツらもハッスルするわ。

とりあえず、キヴォトス側でも現状の確認が取れたようで一安心と言ったところか。

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