俺の予定ではユウカは初期パートナーであり
ずっと先生と行動を共にする予定だったのになぜこんな展開に……
ユウカ『あとですね、先生。申し訳ないのですが当分そちらにはいけそうにないのです』
先生『ユウカが、唯一私と連絡を取れる存在だから、かな?』
ユウカ『はい。先生の力で強制的に召喚してもらうことは可能でしょうが、それをやった場合のこちらでの騒動を考えますとどうにもその手段は取りづらく……』
ユウカ『今後も定期的に連絡を取り合い、先生の現況を報告する義務が私に生じてしまったようで、今の状況で強制召喚などした日には暴動が起きます。代行からも釘を刺されてしまいました』
先生『まぁ、冷静に考えるとそうなるよね。私自身そこまで想像できてなかった。私のミスだ』
ユウカ『いえ。どちらにせよ誰かが帰還して先生の状況を報告する必要はありましたので。そういう意味では私が適任だったと思います』
言外にアルは不適格と言ってるのだが、俺もそう思う。だが、俺もそれをわざわざ口には出さない。
先生『分かった。じゃあ定時連絡は欠かさないことにして、私たちはなんとか人里を目指すよ』
ユウカ『先生頑張ってください。あと、早急に募集ガチャを引けるようになってください。他の生徒たちの圧がツラいです』
先生『現状、どうやったら青輝石が手に入るか分からないからなぁ。そっちに関しては頑張ってはみるけど、あまり期待しないで』
ユウカ『本当に頼みますよ、先生? もちろん先生の安全が第一なのは変わりませんが募集ガチャも大事です。でないと私が先生の手伝いをすることも出来ないんですから』
先生『分かったよ。あ、時計を合わせておこうよ。そっちの時間は?』
ユウカ『あっ、確かに時間合わせをしておかないとダメですよね。こちらの時間は現在午前10時25分です』
先生『オッケー。それじゃ、7時、12時、18時 ぐらいに定時連絡を入れるよ』
ユウカ『それってご飯の時間では……? いえ、分かりやすいとは思いますが』
先生『じゃあね、ユウカ』
ユウカ『はい、次の連絡をお待ちしています』
そこで長く続いたユウカとのトークを一旦打ち切る。
「待たせたねアル。さぁ先に進もうか。出来れば今日中に人の痕跡を見つけたい」
「で、結局ユウカは来ずに私一人で先生の警護をすればいいってことかしら?」
まぁ、トークが終わってもユウカを召喚しないとなれば、アルでもそれぐらいは察するか。
「うん、そうなるね。アルには負担をかけるかも知れないけどよろしくお願いするよ」
「まっかせなさい! アウトローたる私にはそれぐらい朝飯前よ! さっ、行くわよ先生!」
頼りにされたことが嬉しいのかウッキウキで先頭に立ち森の中を歩いていくアル。アルはあんまり露骨に態度には出さないけど、なんだかんだ先生のこと好きだよね。
いや、ブルアカの生徒で先生嫌いって生徒いないとは思うが。いや、いるか。登場したてのRABBIT小隊とか、百鬼夜行の花鳥風月部とか。
まぁ、RABBIT小隊みたいに、そのうちデロデロになりそうな気はするのだが。ていうか、異世界転移したから今後ブルアカの新シナリオ読めないんだよなぁ……。
そこがちょっと心残りだったりする。
閑話休題。
さて、一向に変わり映えしない景色に辟易としながらも森の中を歩く俺とアル。
そろそろ昼飯かなと腹時計が告げるぐらいのころ、ようやっと景色に変化が見えた。
「先生! 道よ! しかも轍がある。おそらく馬車の轍よこれ!」
アルもいい加減変化のない景色に飽き飽きしていたのか、道を見つけた時は全身で喜びを表現していた。
「確かに、これは馬車の跡っぽいね。ということは、これをたどっていけば……」
「人里にたどり着くってことね! よーし、俄然やる気が出てきたわ! じゃあ、さっそく追いましょう!」
「慌てちゃだめだよアル。時間ももう昼時だ。一旦落ち着けるのも兼ねて昼ごはんにしようよ」
「お昼ごはんって、私何も持ってないわよ? 先生も異世界転移させられたのよね? 持ってるとは思えないんだけど。それとも今から狩りでもするの?」
「いや、最初の荷物とガチャから、携帯食料をゲットしてるからこれを一緒に食べよう」
「携帯食料……、おいしいのかしら?」
「まぁ、取りあえず食べてみようよ」
携帯食料なんて名前つけたけど実態はジャーキーと乾パンである。乾パンで栄養を、ジャーキーで塩分とタンパク質を取る感じなのだろうか。
「塩辛い……」
まずジャーキーに口をつけたアルが言葉とともに顔をしかめる。
「水と一緒に食べなきゃだめだよ。ユウカと一緒に消費する予定の本数だったから、水には余裕あるから。飲んでも大丈夫だよ」
「い、いえ。出来るだけ我慢するわ。幸い味の方は悪くないし、こういう状況では水も貴重でしょう? 乾パン食べるにも水使うでしょうし、節約できるところはしないと」
堅実で真面目だなぁ。と本人に言ったら嫌がられるが、アルは本質的に真面目ちゃんなのだ。アウトローには向いていない。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした……」
二人して黙々とジャーキーと乾パンをかじる図ははたから見たらシュールであったであろう。でも、アルも言ってたけど意外と味は悪くはなかった。
ただ、ひたすらに塩辛くてもそもそしてただけで。
そんな状況でも俺は、さっき言ったユウカへの定時連絡を行っていた。
とはいっても、馬車の跡を見つけたよ、アルと一緒に携帯食料を食べたよ、以上の報告はなかったが。
「さ、ごはんも食べたし先に進みましょう! 早くこの跡を追って人里を見つけないと!」
「そうだね、行こうか」
言うが早いが、馬車の跡を追いかけ始めるアル。どっち側を行くのかとか全く決めずに歩き始めたのだが、アルの勘だろうか。
まぁ、どっちに行こうが人里には通じてると思われるので、特に気にせずに轍を追いかける。
どれくらい歩いただろうか。いい加減足が棒になりそうなぐらい歩いたぐらいで、前方から何かの音が聞こえてくる。
「聞こえた? 先生?」
「あぁ、これは戦闘音?」
「行きましょう先生! ここは便利屋が華麗に助けて謝礼ゲットよ!!」
そう言うや否や、戦闘態勢を取り前方に駆け出すアル。
こら、スナイパーライフルで突貫するんじゃない。そう思うが、ブルアカのゲーム中でも現実のスナイパーライフルの射程を考えると接射レベルの近さで戦闘してたし、アルにはその距離が適正なのかも知れない。
取りあえず、俺もアルとはぐれないように駆け出す。
しばらく走ると、前方にやたら豪華な馬車とその周辺で戦闘をする兵士らしき一団、そしてその馬車を襲っている一つ目の巨人が見えてくる。
「先手必勝よ、ノワールシュート!」
アルはその場で膝立ちになると、愛用のスナイパーライフルでスキルを放つ。スキルの発動ってこんな感じなんだーと思いつつアルのスキルを眺める。
アルが放った銃弾は狙いたがわず、一つ目巨人のでかい目ん玉に直撃する。
GUGAAAAAA!
一つ目巨人にダメージは与えられたようだが、まだ倒れるまではいかないようだ。
「まだ倒れないのね! 先生、お願いするわ!」
お願い? 何の? と思ったがそれがすぐにEXスキルの発動であることを悟った。確かゲーム中ではシッテムの箱を使って指揮を執っているという設定だったはず。
実際は指揮と言ってもプレイヤーがしているのはEXスキルの発動タイミングの調整だけだ。
逆説的に考えれば、生徒たちが発動するEXスキルはシッテムの箱からの指揮によって発動するということなのだろう。
「オッケーアル! ハードボイルドショット。目標一つ目巨人!」
いつの間にかタブレットに表示されてるゲーム中で何度も見た戦闘画面。それを操作し、アルのEXスキルを一つ目巨人を対象とし発動させる。
「アイサー!」
ダァン!
「あはっ、命中よ!」
あれ、ちょっと待てよ? アルのハードボイルドショットって確か……。
俺がそう思うなりハードボイルドショットのスキル効果が発動し、一つ目巨人が爆発に包まれる。