ただ笑顔を撮りたいだけの少年が救世主として世界を救うまでのお話   作:ヒナニウム欠乏症

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ありがとうございます。
そして、お待たせいたしました。
最初のシチュエーション案が二つあったんですが、どっちにすれば話がちゃんと進んでくれるか悩んで選択しました。

それでは、どうぞ。


1-1.ぼーいみーつがーる・せーぶざぼーい?

『――しかし、どうしたものでしょうねぇ。今回の候補たちは』

 

『暴力的なのは構わないのだが……"あれ"はどうにかするべきだ。あれでは"選別"も上手く行かないぞ』

 

『そうですね……ならば、こうしましょうか』

 

 

 ――心を、折ってしまえば良いのです。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「――ちょっと、何してるのよ!」

 

 声がする。くぐもった声がする。

 

「――こいつのせいで俺たちは負けたんだぜ? これくらいしなきゃイライラしっぱなしだろ!」

 

 目を開けようとする。瞼が開かない。腫れ上がっているのか、じくじくとした痛みと熱が顔を包んでいるように感じた。

 

 腹の奥から、粘液がせり上がってきた。ぼちゃ、と。鉄錆のような香りがする赤色の粘液を吐き出す。今日は軽いほうだな、と俺は持ち上がらない瞼の隙間から見える色から思った。

 

「ねえ、大丈夫? 起きてってば――」

 

 心配そうな声を、彼女がかけてくる。まただ。また彼女は俺を助けに来た。

 

 

 何故だろう?

 

 

 その疑問は、俺が意識を失うと同時、思考メモリから揮発するように消えていった。

 

 意識が、暗転する――

 

 

 

 目覚めると、そこは俺に宛行われている一人部屋だった。

 

「あ、起きた。……良かった」

 

 彼女の声がした。痛む身体を起こし、彼女の方を見る。赤色のヘイローが所在なさげに揺れている。右の目が見えない。触れてみると、湿布の香りと冷たい温度があった。

 

「……あの人達、誰もそれくれなかったから。ちょっと黙って取ってきちゃった」

 

 何故そんな危ないことをするんだろうか。バレれば確実に大目玉だ。俺の問いに、少女はむくれたような表情を浮かべて、

 

「何よ。嫌だったの? 何で?」

 

 そんなことは無い。そっちが心配で仕方がないだけなのだ。

 

「……うちは、そっちが心配。だからこうしてるのよ」

 

 辞めた方がいいと俺は思う。俺は知っている。彼女がここで孤立している傾向にあることを。その要因が、俺の面倒を見ているからだということを。これ以上俺に構えば、彼女は決定的に一人ぼっちになるだろう。

 

「うち、強いから。知ってるでしょ、ここで一番強いって」

 

 彼女は、俺の言う事なんて聞いてくれやしない。確かに彼女は、俺なんかと違って強い人間だ。身体能力も"演習"も一番の成績で、普段の生活態度も良い。新入りながら、彼女は既にここで一番の人間だ。既に職員連中からも信頼を得ているのだろう、俺とは違う理由で、一人部屋を手に入れているのだから。

 

「後でご飯、持ってきてあげるよ。だから、ここにいて! いい!?」

 

 力強く扉を閉めて、少女は部屋から出ていった。みしぎし、と。体内から響く慣れた痛みに顔を顰めながら、俺は薄っぺらい布団からどうにか身体を退かす。ドアの振動が、俺の身体を突き抜けるように走った。

 

 何を怒っているのだろう。俺はそう思う。彼女は何に怒っているというのだろう。やはり、俺にだろうか。だが、俺は彼女に怒られるようなことなど何もしていないのだ。

 

 

 ――まさか、ここで暮らす彼らが俺に向けた怒りに怒っているということは無いだろう。

 

 

 そんな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女は怒りっぽいのかもしれない。俺はそう思った。

 

 

 

 河駒風ラブは怒っていた。本当に怒っていた。

 

「何で、何も言わないのよ。……血が出るまで殴られて! 歯が抜けるまで蹴られて! 拳銃で撃たれて! 痛いはずじゃない、苦しいはずじゃない!」

 

 自室でベッドのマットレスを殴る。キヴォトスで暮らす人間向けに作られた家具は、幾らこの年代にしては飛び抜けた身体能力を持っているラブのパンチでも、壊れはしない。ぼずん、とマットレスが歪んだ。

 

 少女が思うのは、この孤児院で暮らす彼女と同じような境遇――恐らくは、両親に捨てられたかそれに類するもの――にあると思われる少年、写野リヒトのことだった。

 

 変わった特徴を持った少年だった。身体の何処にもヘイローを持たない、灰混じりの白髪の男の子である。どういうことか、些細なことで怪我をしてしまうほど身体が弱く、運動も苦手な彼そのものには、目を惹き付けるような何かがあるわけでもない。しかし、仮にそれだけだったのなら、ラブが彼を気にかけることも無かっただろう。別に、この世界には動物の特徴を持ったような人間や、機械の身体の持ち主だって存在するのだから。まだ子供であり、世界の広さも知らない少女にとっては、彼はただの人であった。

 

 ならば、何故。

 

 それは、少女が彼に感じ取った異常性にあった。

 

 彼は笑う人である。いつもにこにこと、笑って過ごしている少年だ。

 

 そう。

 

 

 例え、同じ孤児院で過ごす人間から、凄絶な暴力を受けていようとも。

 

 

 孤児院の職員にそれを見過ごされ、そして放置されたままであっても。

 

 

 彼は笑う。にこにことしている。それが、まるで当たり前であるかのように。この世の摂理であるかのように。それが正しいことであるかのように。

 

 それが、ラブという少女にとっては許せなかった。

 

 ラブは子供だ。この世界の広さも、常識も、いまいちわからない。

 

 

 だが、彼女が孤児院にやって来た初日に見た光景が常識であり、それを見逃すことこそが正義なのだというのならば。

 

 

 少年の手足が昆虫標本のように広げられ、その柔らかい身体に鉛玉を撃ち込んでいくという「遊び」が許されることが正しいというのならば。

 

 

 ラブは悪であっていいと思う。悪であるべきだと思う。

 

 

 そんな痛みが、弱いものいじめが、残酷が正義だなんて、少女は思いたくなかったのだ。

 

 

「……何で、なのよ」

 

 ラブには出来ない。想像するだけで痛い。身体に穴を開けられ、そのまま嘲笑われることを我慢することなんて、出来やしない。きっと復讐に走るだろう。きっと報復を目論むだろう。だが、少年はそれをしないと言う。

 

 

『だって、それで彼らは笑顔になるだろう? なら良いじゃないか、俺はその方が嬉しいよ。俺好きなんだ、彼らの笑顔見るの』

 

 

 そう、へらへら笑いながら彼は言った。ラブは絶句することしか出来なかった。

 

 以来、ラブは彼をどう連れ出して、ここから出ていくかを考えるようになった。幸い、この施設から出ていく理由を作ることが可能なものが、施設の中にあることを少女は知っていた。 

 

 それは、火薬と爆弾だ。

 

 "演習"と称して銃火器の扱いを学ぶカリキュラムがあるこの孤児院には、そのための弾薬や爆弾が用意されている。どれも子供向けに、火薬の量や威力を落としたものだが、それも集まれば話は別だ。ラブは倉庫が開く度に、備蓄されている火薬や爆弾を少しずつ、この部屋に集めていた。そのために、少女はこの施設一番の孤児という立場を手に入れたのだ。

 

 これで施設を吹っ飛ばし、混乱に乗じて逃げればいい。自分はこの孤児院で一番強いのだから、ここから離れて彼を守って何処かで生きていけば良い。そう、本気で思っているのだ。

 

 ラブは井の中の蛙であるとしか言えなかった。少女よりも腕の立つ人間など、この孤児院の外にはごまんといる。それに気付けないほどに、少女は世間知らずで、そして焦っていた。日に日に傷を増やしていくリヒトをこれ以上ここに置いてはならない、という思いが、少女に焦りを齎していた。

 

「……明日。"演習"の準備のとき。そこで決めるわ」

 

 倉庫の鍵が開く演習の当日。そこで騒動を起こし、彼を回収。そして部屋を発破し、設備を爆破。その混乱に乗じて逃走する。就学前の少女が企てた、恐ろしいテロ計画であった。

 

「うちが助けてあげるから、ね?」

 

 少女は優等生の皮を被りなおす。全ては、この計画のために。悟られないよう、少女は静かに、そして普段通りの笑みを浮かべて、部屋から静かに出ていった。

 

 

 少女の背を、針付き時計の中に仕込まれていたカメラが、じっと見つめていた。




案① 廃墟スタートでアリウススクワッド系。
今考えているこの後のことをやることが出来なくなるので駄目。こっちのほうが既存キャラ使えるので書きやすそうだった。

案② 孤児院スタート。
シナリオ展開しやすいが孤児院スタートで仲間になるネームドいなくね問題に出会す。名前あるけど実装されてないNPC生徒を投入した。実装されてないキャラの過去は資源だってどっかで習った。本編の挙動にある程度繋げやすいキャラとしてラブを選択。具体的に言うと暴力思想やらせてもいい面倒見良さそうなキャラ。


というわけで原作の一〇年くらい前? から始まるらしいです。書ききれるのか?
章ごとにちょっと考える時間が挟まるので更新不定期です。ごめんなさい。
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