コナン君に怪しまれれば死なずに済むと思ったけどワンチャン捕まる可能性出てきた   作:Splite

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コナン君に怪しまれれば死なずに済むと思ったけどワンチャン捕まる可能性出てきた

 

 

「ねぇ、コナンくん」

「どうしたの?千代子さん」

 

 山梨の山奥にあるとある山荘。小五郎、蘭と共に旅行に来たコナンは吹雪が吹き荒れる中、急遽避難した山荘で一人の人間が背後から刺され殺されるという事件に遭遇した。この吹雪では外部の犯行は無い。恐らく殺人犯はこの山荘に泊まっている内の誰か。この吹雪で警察が来れない中、早く犯人を見つけないと第二第三の被害者が出てしまうかもしれない。そんな焦りの中、コナンは事件の第一発見者、岩舩千代子(いわふねちよこ)に話しかけられた。

 

「大丈夫?」

「え?」

「その、多分死体見ちゃったでしょ?気分とか悪くなってない?」

 

 被害者の死体を見つけた千代子の悲鳴で真っ先に現場に駆けつけたのはコナンと小五郎だった。恐らく人生で初めて殺された死体を見た千代子は死体発見当時酷く錯乱していたが、現場にコナンがいたことは覚えていたらしい。その心配は有難いと同時に、少し鬱陶しかった。コナンの中身は高校生探偵工藤新一。子供では無いし、死体は見慣れている。心配は有難いがその心配で現場を追い出され、事件の解決が遅れては溜まったものでは無い。

 

「大丈夫だよ!!」

 

 心配をかけさすまいと、コナンは明るく答える。そんなコナンに安心したように胸をなでおろした千代子は続いて口を開く。

 

「そっか…じゃあ」

 

 千代子はそっとしゃがみコナンの耳元に口を寄せた。

 

「お手並み拝見といこうか、――工藤新一くん」

 

 その言葉に江戸川コナン、もとい工藤新一はばっと目を見開いて焦ったように千代子の方を見る。

 

「や、やだなぁ…何言ってるの?というか新一兄ちゃんのこと知ってるの?」

「そりゃ有名な高校生探偵様だからね。それと、私にシラを切っても無駄だよ。私は君が工藤新一だと、そう確信している」

 

 江戸川コナンが工藤新一だとバレれば周りの人間に危害が及ぶ。バレる訳にはいかない、そう思い言葉を取り繕うが千代子には通じなかった。

 

「お前何者だ?」

「ただの事件に巻き込まれただけの一般人だよ」

 

 嘘だ、とコナンは思った。ただの一般人が一目見ただけでコナンの正体に気づくわけが無い。以前に会ったことがあるか、それとも調査されていたのか。いずれにしても只者では無い。この人が黒の組織の一員だった場合、コナンだけではなく周りの人間にも危害が及びかねない。そんなコナンの警戒が伝わったのか千代子はふっと笑って言った。

 

「安心して。私は君の敵では無いよ。味方でもないけどね」

「その言葉を素直に信用出来るとでも?」

「んー、まぁ無理だろね。ただ、此処で君の正体をバラさないのが君の敵では無い証拠にならないかな」

 

 この山荘は電波が届かない場所では無い。警察に電話は繋がるし、ネットだって繋がる。SNSに新一の情報をばらまこうと思えばばら撒けるのだ。それをしないということは今はバラす気がないのか。それとも油断させてバラすつもりなのか。警戒を続けるコナンを見ながら千代子は言葉を続ける。

 

「あと、私は今回の事件の犯人では無いよ。殺人犯と閉じ込められて困ってるぐらいだ。早く事件を解決してくれないかな、名探偵くん」

 

 

 その後、これ以上何も話すことはない、と話を切り上げようとした千代子にコナンは必死に言葉を畳み掛けたが、どこで正体を知ったのか、何者なのか、本当に今回の事件の犯人では無いのか、その質問に千代子が答えることは一切無かった。

 ならば、この危険人物を一人にしておく訳にはいかない、と千代子に懐いたフリをしてコナンは常に近くにいる事にした。今回のトリックは難しく、第二第三の被害者が出てしまったが、その間千代子はずっとコナンの側に居たので、千代子のアリバイはコナン自身が証明する事となった。どうやらこの怪しげな女は本当に今回の事件の犯人では無かったらしい。そして真犯人は千代子と一緒に旅行に来ていた会社の同僚だった。恋人関係で被害者たちに恨みがあったらしい。

 

 さて、これでゆっくり話を聴ける、と千代子の方を振り向いたが、そこに千代子はいなかった。

 

「蘭ねーちゃん。千代子お姉さん知らない?」

「千代子さん?あれ、そういえばいないね」

 

 辺りを見回すが何処にも千代子の姿は無かった。そんなコナンの姿を見て、吹雪が収まり先程ようやく到着した警察がコナンに声をかける。

 

「岩舩千代子さんの事かな?彼女なら後日事情聴取を受けるから、とさっき帰ったよ」

「え!!?」

 

 

 

● ● ●

 

 

 

「はぁ〜何とか死なずにすんだ」

 

 私、岩舩千代子は転生者だ。と言っても思い出したのは昨日、あの山荘の中でだが。会社の同僚が死んでる所に居合わせてその衝撃で前世の記憶を思い出した。そして悲鳴を上げた数十秒後にやってきたコナンくんを見て思った。

 

 ――ここ、コナンの世界じゃん、と。

 

 名探偵コナン。高校生探偵工藤新一が黒の組織の一員に怪しげな薬を飲まされ、子供の姿になり、江戸川コナンと名乗って数々の事件を解決していく推理漫画だ。そう、推理漫画なので人がよく死ぬ。特にこんな山荘の中の事件なんか最悪だ。確実に第二第三の被害者が出る。その中に私が入ってしまうかもしれない。そう考えた私は必死に自分が死なない方法を考えた。

 部屋に閉じこもる?絶対に駄目だ確実に死ぬ。いっそ誰か殺して容疑者になる?駄目だ人を殺したくない。コナン一味と仲良くなる?駄目だ恐らくそれだけでは足りない。  

 そして考えついた。準レギュラー、レギュラーメンバーになれば死なないのではないか、と。コナンの世界では準レギュラーやレギュラーキャラは滅多に死なない。そして、そんなキャラになるにはどうするか。私が考えついた方法はコナンくんに新一だと知っている事を仄めかす、だった。多分、恐らく、こうすれば私は謎多きキャラとなり準レギュラーメンバー入りくらいはできるのではないか、と考えたのだ。私は普通の一般人だし、どれだけ怪しまれても本当に何も無いのだから支障は無い。まぁ、しばらく何かしら疑いの目はかけられるかもだけど、そもそもまたコナンくんと出会うかどうかも分からないし。死ななければ儲けもん、だ。

 

 コナンくんに盗聴器かGPSかを付けられる前にせっせと帰ってきたから余計怪しまれてるかもだけど、その内ただの察しの良い一般人に落ち着くだろう。

 

「ただいま〜」

「おかえり」

「あれ、来てたんだ、三郎」

 

 家の扉を開けると中から声がした。どうやら幼馴染の三郎が先に帰っていたらしい。

 ――魚塚三郎。私の二個上の幼馴染だ。幼い頃彼が引っ越してから会っていなかったが、数年前町で再会してからよく会うようになり、今では半同棲のように数日に一回は家に訪れるようになった。あまりにも訪れるので今では合鍵を渡し、私が家に居ない時でも転がり込んでいる。

 

 三郎にあの山荘であった話を聞いてもらうべく、リビングの椅子に座る。

 

「それで、社員旅行はどうだったんだ?」

「ねぇ〜聞いてよ。それがさ、殺人事件が起きてさ」

「っ、大丈夫だったのか!?」

「私自身は傷一つ負ってないよ」

 

 この心配性の幼馴染を安心させるべく、ふっと笑顔をうかべると後ろからガチャッとリビングのドアが開く音が聞こえた。誰かがリビングに入ってきたらしい。彼だろうな、と思いながら後ろを振り向き声をかける。

 

「陣さんも来てたんだ」

「ああ」

 

 彼は黒澤陣。私は陣さんと呼んでいる。陣さんは三郎の会社の上司らしく、たまに三郎と共に我が家にやってきてはお風呂を浴びたり一緒に夜ご飯を食べたり、泊まっていくこともある。初めて三郎が連れてきた時はその綺麗なプラチナブロンドの長髪に見惚れると共に、鋭い目付きに少しビビったけど、何回か来るうちにそんな風貌にも慣れた。今では多少軽口を叩いても許されるまでの仲である。

 …って、

 

「ジン…っ!?」

「あ?呼び捨てとは偉くなったものだな」

 

 陣…ジン…っ!?え、あの黒の組織のジン!??え、陣さんってジンじゃん。え、え、え。嘘、じゃあもしかして三郎って…ウォッカ…!?家ではサングラスしてないから分からなかったけどよく見れば確かに体格がウォッカな気がする。嘘…。何かしらグレー気味な仕事してる気はしてたけど、まさか真っ黒だとは思わなかった。え、どうしよう、コナンくんにめっちゃ怪しまれること言っちゃった。いや、私自身なにかした訳じゃないけど、怪しまれても良いからあんな発言したのに、もし黒の組織の一員であるウォッカとジンと繋がりがあるって知られたら、最悪私も黒の組織の一員って思われて捕まってしまうかもしれない。え、どうしよう…。

 

 まさかの繋がりにパニックになった私はそのまま意識を失った。

 

 

● ● ●

 

 

「千代…!!!!」

 

 突然倒れた千代子にウォッカは叫ぶ。幸い、ジンが頭を床にぶつける前に受け止めたので頭を打たずにすんだ。

 

「無事だ」

「良かった…」

 

 ウォッカはほっと胸をなでおろした。

 

「にしても此奴がいきなり倒れるとはな」

「事件に巻き込まれた疲れが出たんですかねい」

 

 ウォッカは千代子の手首に二本の指を当て脈を、おでこに手を当て熱を測る。どちらも異常はないようだった。

 

「…事件の犯人を殺しに行くとか言うんじゃねぇぞ」

「…そんなに酷い顔してますかい?」

「今の顔を見たらテメェが組織の中では温厚な方だと思ってるバーボンとキールがビビるぐらいにはな」

 

 その通りウォッカは組織の中では温厚な方ではあった。組織の仲間と世間話はするし、世話を焼くことも多々ある。だが、ジンと同じく命令とあらば人を殺すし、ノックには容赦が無い。温厚というよりただ協調性があるだけなのだが、組織の中では比較的新参者のバーボンとキールは普段ジンと二人でいる事の多いウォッカが組織の一員としてその仕事を行う姿を見る事が少ないので勘違いしてしまうのも仕方無かった。

 

「…ま、組織の関わらねぇ所でどう行動しようが構わねぇが、今動くと此奴に変な疑いがかかるかもしれねぇ」

「そうですねい…」

 

 ジンの言う通りだった。可能性は少ないが、今事件の犯人を殺すことで千代子と自分たちの繋がりや、ましてや千代子が事件の犯人を殺したと疑われる事態は避けたかった。

 

「…俺は寝る」

 

 言いたい事をさっさとウォッカに話したジンは倒れた千代子をウォッカに託して自分用の布団が敷かれている客室の中へと消えていった。

 

「千代…お前事件に巻き込まれすぎちゃあいねぇか」

 

 ジンがいなくなり自分と倒れた千代子しかいないリビングで千代子の顔を愛おしそうに、けれど心配そうに見たウォッカは小さく呟く。

 

 その言葉の通り千代子が事件に巻き込まれるのは初めてでは無かった。殺人事件は今回が初めてではあるが、以前に爆弾事件に巻き込まれたり、強盗事件に巻き込まれたり、事件では無いが事故にあいかけたりと、世界が千代子を殺そうとしているみたいだった。千代子と再会した時、世間話のように以前巻き込まれた事件の話をしてくるのだから、心配になり半同棲までするようになったぐらいだ。  

 それだけ事件に巻き込まれても飄々としている千代子が疲れで倒れるなんて、今回の殺人事件はよっぽど酷かったのだろう。そう考えると今にでも事件の犯人を殺したくなった。先程尊敬するアニキに釘を刺された以上暫くは何もする気はないが、ほとぼりが冷めたら犯人を殺そう。ウォッカはそう決めた。

 

 

 




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