コナン君に怪しまれれば死なずに済むと思ったけどワンチャン捕まる可能性出てきた   作:Splite

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千代子と三郎回。よってコナンパート、掲示板回無し。
多分皆が求めてる感じの内容じゃないので飛ばしても大丈夫です。


閑話1

「ただいま〜!!」

「お帰ェり」

「三郎来てたんだ。陣さんは?」

「アニキは今日は来ねえって」

 

 仕事を済ませ、家に帰ると三郎が既に帰っていた。

 

 陣さんが家に来ない日は多々ある。前に「陣さんってモテるでしょ」と聞いた時に哀れなものを見るかのように見てきて「はっ」と吐き捨てられた事もあるから、多分まぁ、そういう事なんだろう。名探偵コナン本編でベルモットと関係を持っていた事が示唆されていたこともあるぐらいだし、女には困っていなさそうだ。

 

 そんなことを考えながら冷蔵庫の中から瓶を三つ取りだし、水を合わせコップの中に注ぎ混ぜ合わせる。

 

「千代はほんとに好きだなぁ、ルシアン」

「水で薄めてるからルシアンもどき、だけどね」

 

 初めてこのお酒を飲んだ時のことを思い出す。三郎と再会して、三郎の紹介で陣さんに出会って二人が家に一週間に二、三回来るようになるまで一年とかからなかった。一々持ってくるのは面倒だからと、私の家に二人の私物が持ち込まれるようになったのだが、その内のひとつにお酒があった。三郎はウォッカ、陣さんはジンが好きらしく、いつも家にストックを置いていて、二人ともよく夜に飲んでいた。

 

 

 

 

● ● ●

 

 

 

 

 

「陣さんって何でジンが好きなの?」

 

 ある日、いつものように家にストックしてあるジンをロックで飲む陣さんにそう質問したことがある。

 

「何故だろうな」

「まさか、自分の名前だから、とか」

「…さぁな」

 揶揄う様な私の声に、いつもなら怒って頭を鷲掴みにされるのにその日はされなかった。

 

「え、じゃあ三郎がウォッカ好きなのって魚塚だから?」

「普通に味が好きだから、だな」

 

 期待を込めて、陣さんと向き合うように座っていた三郎に聞いたが、特に面白い返答は無かった。別に名前が同じだから好きな訳ではないらしい。とはいえ、二人がジンとウォッカを飲み始めたきっかけに、絶対自分に似た名前の酒だから、が入ってると思う。ジンもウォッカも度数の高いお酒だ。そんな理由じゃないとロックで飲もうだなんて思わない気がする。――普段私がお酒を飲まないからそう思うだけかも、だけど。

 

「二人とも自分の名前のお酒があって良いなぁ」

 

 自分に似た名前のお酒があってそれを好きって言えるの、なんだか格好いい。私も自分に似た名前のお酒があれば飲むのになぁ。

 

「なら、――作るか?」

「アニキ」

 

 陣さんの提案に三郎が焦ったように声を出し陣さんの方を見た。互いに見つめあって沈黙が流れる。数秒だったか数分だったか、静まり返った空気の中、陣さんがふっと口元を緩める。

 

「冗談だ」

「勘弁してくだせぇ」

 

 はぁーとため息をついた三郎は優しい目で私を見つめ頭をわしゃわしゃと撫でた。この時はなんの事か分からなかったけど今思うと陣さんは私を組織に誘ったのだと思う。勿論その時の私は黒ずくめの組織に陣さんと三郎が入っていることなど知る由もないし、陣さんもこんななんの力もないただの一般人を組織に入れるわけが無いから文字通り冗談なのだろう。

 

「?よく分からないけど、私の名前のお酒を新しく作るってこと?千代子って名前なら日本酒かな…。てかそんな簡単にお酒って作れるの?」

「はっ」

 

 陣さんが私の言葉に吐き捨てた。当時は陣さんのその態度の理由が分からなかったけど、今なら分かる。陣さんの言葉の真意に気付けず馬鹿なやつだ、とでも思ったのだろう。真意に気付いたら気付いたで困って私の事を始末していただろうに。振り返ると、陣さんは意図してなのか意図せずなのか分からないけど時々組織のことを匂わせていた気がする。当時は黒の組織なんて頭に無くて、ずっとスルーしてたけど。今言われたらどうなるかな。まぁ、スルーとは思う。何となく、ちゃんとスルー出来る自信がある。

 

 それはさておき、当時の私は陣さんに馬鹿にされたような態度を取られたのが悔しくて、自分の名前のお酒を必死に調べた。そして見つけた。

 

「見て!千代子って名前のお酒はなかったけど、調べたらチョコリキュールあった!!名前似てるしこれを私のお酒ってことにする!」

 

 千代子とチョコ。傍から聞いたら響きだけで似てないと思うだろうが、なんと学生時代の私のニックネームはチョコだ。友達が可愛いからと呼び始めた。チョコとチョコリキュール。これは正真正銘私の名前のお酒と呼べるのではないか。

 

「まぁ、俺も魚塚でウォッカだし、千代子でチョコも似てるのか…?」

 

 三郎が呟いた。

 

 

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 

 

 後日、じゃじゃーんと、陣さんと三郎に買ってきた二つのお酒を見せた。

 

「何で二つなんだ?」

「調べたらチョコリキュールってカカオリキュールの一種らしくて。カカオリキュールも買ってきた!!」

 

 別に自分の名前のチョコリキュールだけでも良かったのだが、何となく気になって二つ買う事にしたのだ。

 

 早速、飲み比べてみようと、グラスにつぐ。私はお酒に強い方ではないので、ちょびっとだけ。陣さんが、そんなので味分かるのか?と聞いてくるので分かるよ!と答えて飲む。二つとも飲んだところで三郎が尋ねる。

 

「で、どうなんだ」

「んー、あんまり好きじゃない、かも。ただ、チョコよりカカオリキュールの方がまだマシかな」

 

 名前の通りどちらも甘くて飲みやすいと言えば飲みやすいのだが、チョコリキュールの方はチョコの甘さにお酒のほろ苦さと独特の風味が混ざって、私には合わなかった。元々アルコール入りのチョコが苦手なので予想はしていたが、せっかく自分の名前のお酒なのに、と落ち込む。私も陣さんや三郎と同じように自分の名前のお酒を飲める人間でありたかった。…なんか格好いいし。

 

 カカオリキュールの方はほのかにカカオの匂いがするものの、お酒本来の味、が強いように感じる。甘さと独特の風味が混ざったチョコリキュールよりもカカオリキュールの方が一本の味になっていて好みだった。お酒あまり飲まないのに意外と思われるかもしれないが、私が普段お酒を飲まないのはそこまでお酒に強くないのと、酔った感覚を気持ちいいと思えないからで、お酒の味が苦手だからという訳では無い。

 

「…そうだ!」

 

 私が好きな感じのお酒にするにはどうすればいいのか、思いつく。ストックしてあったジンとウォッカをカカオリキュールに混ぜる。カカオリキュールの風味がジンやウォッカと近いように感じたし、何より好きな人達の名前のお酒を混ぜたら美味しくなるかも、という安直な気持ちからだった。

 

 混ぜている最中、ふと陣さんと三郎を見るとなんとも言えない顔をしていた。

 

「何でそんな微妙な顔してるの…?」

「いや…」

「なんでもねぇよ」

「?」

 

 この時は分からなかったけど、作中でベルモットがジンとベルモットを混ぜて作るマティーニの名前を上げて夜のお誘いをしていたから、組織ではお酒を混ぜるというのは、そういう行為のことを指すのかもしれない。多分、陣さんと三郎は二人でそういう行為をしている所を想像したのかも。確かにうげっとなる気持ちも分かる。私も想像しててなんだかゾワゾワした。

 

「出来た」

 

 綺麗に色が混ぜ合わさり、匂いも良い。これは飲んでみたら美味しいのでは無いのだろうか?

 

「なんでいきなり混ぜ始めたんだ?」

 

 三郎が聞いてきたので正直に答える。

 

「好きな人のお酒と好きな人のお酒とあんまり好きじゃないお酒を混ぜたら多少好きなお酒になるかなって」

「ガキだな」

 

 陣さんが呆れたように吐き捨てる。正直私もちょっと子供っぽいなとは思っていたのだが、自分以外の人に言われるとなんだか本当に子供になったような気がして恥ずかしくなる。

 

 そんな恥ずかしさを押しのけるように混ぜたお酒に口をつけた。その味に思わず呟く。

 

「美味しい…」

 

 チョコのような甘い風味と香り。でもそれでいて爽やかでジン、ウォッカ、カカオリキュールの三つの味を混ぜているのにチョコリキュールよりも調和とれていて、喉につっかえなく、スルッと入る味だった。

 

「ルシアン…」

 

 陣さんが何やら知らない単語を呟く。

 

「ルシアン?」

「そのカクテルの名前だ」

「へぇ〜ルシアンって言うんだ。陣さん詳しいね」

「まぁな」

 

 私が最初にこの三つを混ぜ合わせた人類だと思っていたが、先にこの味を見つけて名前をつけた人がいるらしい。この三つを混ぜ合わせようと思った人も、そうして作られたお酒の名前を知っている陣さんも凄い。

 

 私はこうして作ったカクテル――ルシアンを気に入り、それ以来よく作って飲んでいる。そのままでは度数が強いので、水を混ぜて、だけれど。

 

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 

 時は戻って現在。普段なら酔う前に自分で飲むのをやめることの出来る千代子だったが、過去の思い出に浸りながら飲んだせいか加減が出来なかった。目が半分閉じていて呂律も回っていない。今にでも寝てしまいそうだ。

 

「ねぇ、三郎。約束、覚えてる?」

 

 それでも、これだけは聞かねば、と、幼い日にした約束を口に出す。それは千代子にとって、とても大切な約束で、三郎が黒の組織の一員だとしても破るなんて考えられなかった。けれど、三郎が黒の組織の一員だと知った今、自分は破らなくとも三郎は破るかもしれない。そもそも、覚えてすらいないかもしれない。あの日、前世の記憶を思い出し、ここがコナンの世界と自覚してから千代子はずっと三郎に尋ねたかった。あの約束は今も生きてるのか、そもそも覚えているのか。普段なら、聞けない。お酒に酔っている今この時しか、聞けない。そのチャンスを千代子は逃さなかった。

 

「…珍しく酔ってるな」

 

 そんな千代子の様子を見て三郎が呟くように言う。そんな返事の分かりきったくだらない事を聞くなら、寝てしまえばいいのに、と思いながら。

 

「酔ってない!で、覚えてるの、覚えてないの、どっちなの…」

「勿論、覚えてるさ」

「良かったぁ…」

 

 限界がきたのかすぅっと寝息をたてる。そんな千代子に三郎は微笑んで、千代子の綺麗な黒髪を手に取った。その髪を見ながら、子供の頃、千代子と出会って過ごした日々。そして別れと約束を思い出す。遠い在りし日を思い出しながら千代子の髪にそっと口付けた。

 

「俺の大事な大事なお日様(おひぃさま)。代わりに守ってくれる誰かが現れるその日まで近くにいさせてくれ」

 




千代子の事をお日様と書いておひぃさま(お姫様)と呼ぶ男、魚塚三郎。
※二人の間に恋愛感情はありません。
今回出てきた約束の内容と千代子と三郎の過去回はそのうち。
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