コナン君に怪しまれれば死なずに済むと思ったけどワンチャン捕まる可能性出てきた   作:Splite

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服部、ジン回。


私の知らないところで物語が進んでいる気がする

 

 

 その日コナンと蘭は平次と和葉の通っている高校の文化祭に来ていた。蘭が和葉に誘われたのだ。コナンはそのおまけ。和葉達のクラスに遊びに行ってみれば、大阪らしく焼きそばを提供しているらしかった。忙しそうにしていたが、和葉は蘭を見つけると、蘭ちゃん!と駆け寄り、空いてる席へ案内した。和葉と蘭が話している内にとコナンは平次に小声で話しかけた。

 

「なぁ、服部」

「なんや、工藤」

「お前、俺の正体他のやつに話したか?」

「んな事するわけないっちゅうねん。なんや、なんかあったんか?」

「実は…」

 

 俺は千代子さんと出会った事件のこと、その時に千代子さんに正体を見破られたこと、その後別の事件で俺の正体を服部と博士も知っていると当てられた事をかいつまんで話した。

 

「その女、何者なんや?」

「俺が知りたいくらいだ…名前に聞き覚えないか?」

「ん〜あるような、ないような…。その千代子っていうやつの写真ないんか?」

「あー、隠し撮りしたやつなら…」

 

 服部に以前撮った千代子さんの写真を見せる。

 

「なんか、見た事あるような…」

「本当か!?」

「あ〜あかん、思い出されへん」

 

 どこで見たんや…と頭をかきながら思い出そうとする服部に、頑張って思い出せ!と発破をかけていると、ふと蘭と和葉ちゃんの会話が耳に入ってきた。

 

「和葉ちゃん達の学校って野球に強いんだね。垂れ幕に色々書いてたよ」

「甲子園行ったこともあるんやで」

 

 和葉ちゃんのその言葉に、服部があーー!と叫ぶ。その声に驚き教室内の視線が服部に集まり静寂が訪れる。服部がその視線に咳払いをし、虫がおったんや、失礼失礼と言うと教室は元の騒がしさを取り戻した。和葉ちゃんだけは、も〜何やってんの平次!そんなんで叫ぶなやと怒っていたが。

 

「工藤!探偵甲子園や!!」

 

 服部が再び小声で俺に話しかける。

 

「あ?探偵甲子園って前に探偵が集められた事件のことか?」

 

 以前、探偵甲子園というテレビ局の企画と称して、服部やおっちゃん、白馬など様々な探偵が離島に集められたことがある。結局それは犯人が計画した偽企画で、殺人事件が起こってしまい、そこにいた探偵達で事件を解決した。

 

「実は、越水の様子が気になってな。何回か面会しに行ったことがあるんや」

「越水って…確か犯人の越水七槻さんか?」

「そうや」

 

 その事件の犯人は同じくそこに集められた探偵の筈の越水七槻だった。彼女は自分の親友を陥れた探偵を探すために、探偵を集めた偽の企画をでっち上げたのだ。犯行のバレた越水七槻はその場にいた復讐相手を殺そうとナイフを取り出したが、それを止めたのは服部だった。

 

 越水七槻は、自分も元々探偵だったのに恨みに駆られて殺人事件を起こしてしまった事を悔いていて、警察に手錠をかけられた時、今にも消えて居なくなりそうだった。服部もその様子を見ていたので、心配になり面会しに行ったのだろう。

 

「それでその時に越水が漏らしてたんや。本当は千代子さんも呼ぼうと思ってたって」

「!!?」

「誰なのか聞いたけど教えてくれんくてな。でも、もしかしたらその越水が漏らした千代子っていうやつが、工藤の正体見破った女かもしれん」

 

 有用な情報だ。勿論、その千代子という人物が俺の知っている千代子さんと別人の可能性もあるが、越水七槻を辿っていけば千代子さんの正体が分かるかもしれない。

 

「それにや、前に船の上で行われたパーティで殺人事件あったやろ」

「ああ、副社長に社長が殺された事件だな」

 

 千代子さんに出会う前、蘭が福引で豪華客船を当てて、そこで開かれたパーティに参加したことがある。チケットは四人分あり、園子やおっちゃんを誘ったのだが予定が合わず、そこで和葉ちゃんと服部を誘ったのだ。そこで社長がボウガンで殺される事件が起き、俺と服部で解決した。

 

「あの時、手分けして客のアリバイ確認したり、手がかり探したりしたやろ?その時にこの千代子っていうやつがおったわ」

「本当か!?」

「ああ、あの時、事件発生前に妙な音が聞こえた、って言ってる客がおったって言ったやろ?それがこの女やねん」

「なっ!?」

 

 あの時、千代子さんがいた?全く気付かなかった。千代子さんはその事件の時から俺が工藤新一だと気づいていたのだろうか。そもそも俺があの場にいた事を千代子さんは知っていたのだろうか。

 

 思案していると、きゃーっと叫ぶ蘭と園子の声が聞こえた。声の先を見ていると出し物の焼きそばを食べたであろう生徒が倒れていた。駆け寄って確認すると既にその生徒は亡くなっていた。

 

 事件を解決するのに集中するために、一度千代子さんの事は保留にして、俺は服部と共に調査に乗り出した。

 

 

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 

 

 コナンが文化祭で事件に遭遇した日の夜、安室透、否バーボンはウォッカと共に任務に出向いていた。とある経営会社の社長を弱みで脅してお金を手に入れるという、簡単なもの。公安警察の降谷零としてはこういう事はしたくないが、潜入捜査を続けるためには仕方ない。良心は痛むが、やらなくては組織にいられなくなる。それに、こういう事は初めてでは無かった。必要に駆られて悪人とはいえ人を殺したこともある。降谷零の手はとっくに汚れていた。

 

「ウォッカ。時間です」

 

 社長が姿を現す時間までバーボン達は車の中で待機していた。運転席にバーボン。助手席にウォッカ。ウォッカは何やらスマホを操作している。

 

「ああ、もうそんな時間か」

「誰かにメールですか?」

「ああ、ちょっとな」

 

 バーボンがメールの中身を盗み見る。チラっとだけ文面が見えた。丁度ジンを切らしてる。ルシアンを作るのに足りないとか何とか。

 

 ――ルシアン。ウォッカとジン、そしてカカオリキュールで作るカクテルの名だ。ウォッカとコーヒーリキュールで作るとブラック・ルシアン。それに生クリームを入れるとホワイト・ルシアンとなる。

 

 聞いたことはないが、組織の構成員だろうか。コードネームを与えられた今でも組織について分からないことは多々ある。知らないコードネーム持ちの構成員も沢山いる。ルシアンもその一人だろう。

 

 ウォッカとジンを混ぜてつくるカクテルの名だから、二人と濃い関係を持っている人物だろう。部下か、もしくはそういう関係の人物か。女か男かも分からないが、組織の中でも発言権を持つジンの弱みになり得る人物の可能性もある。この人物について何か分かれば組織の解明により近づくかもしれない。

 

 降谷零はその人物について探ろうと密かに決意を固めた。

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 

 仕事帰り、三郎からメールが届いた。ジンが切れているから千代の好きなルシアンが作れない、作りたいならいつもアニキの飲んでるジンを買ってきてくれ、あと今日は帰れないとのこと。三郎、ナチュラルに私の家を自分家だと思ってるな。ちゃんと自分の家あるのに。

 

 飲みたい気分だったので寄り道して、いつも陣さんが飲んでいるジンを買った。あの人、もっと良いものを飲んでるのかと思いきや、スーパーで買える安くは無いけど高くもないジンを飲んでいる。聞いたらこれが意外に美味しいし、高いお酒は自分の家に置いてると言っていた。テメェに割られたら困るしな、という余計な一言もつけて。

 

 買い物も済ませたので家に帰る。玄関を開けようと鍵を探してる時、扉が開いた。

 

「わっ」

「あ?なんだテメェか」

 

 中から扉を開けたのは陣さんだった。

 

「陣さん、どこかにお出かけですか?」

「酒を買いにな」

「あ、いつものお酒なら買って帰りましたよ!」

「それを早く言え」

 

 陣さんが家の中に戻っていく。私が見るからに重い買い物袋を持っていたとしても、陣さんがそれを持つことはない。最初の方はちょっとムッとしてたけど、もう慣れた。陣さんはそういう生き物なのだ。

 

 ちなみに、三郎がいない日に陣さんが来ることはたまにあるが、前世の記憶が戻ってからは初めてだった。少し緊張する。陣さんってあのジンなんだよな…。ラスボスって訳じゃ無いけど中ボス級のコナンの敵。工藤新一を江戸川コナンにした張本人。…買い物袋の中から勝手にジンを取ってぬりぃと文句を言ってる姿からは想像できないけど。

 

「そういえば陣さん」

 

 買ったものを冷蔵庫に入れている最中、陣さんに話しかける。陣さんは椅子に座って、コップの中に氷とぬるいジンを入れて勝手に酒盛りをしていた。

 

「なんだ」

「連絡先の私の名前、ルシアンで登録してるそうですね」

 

 陣さんのスマホ、元の世界で言うLINEも電話もメアドも私の事全部ルシアンで登録しているらしい。この前三郎から聞いてびっくりした。この人は私をどうしたいんだ。

 

「不満か?」

「私には岩舩千代子っていう名前があるんですが…。まぁでも、正直私はどっちでもいいんですけど、三郎が嫌がってました」

 

 どっちでもいいなんて嘘だ。出来ることならちゃんと本名の方で登録して欲しい。ルシアンとか、安室あたりに知られたら絶対何か勘繰られる。いや、岩舩千代子で登録されて、誰かに見られても困るか…。まぁ、陣さんが誰かに背後取られてスマホ盗み見られるとかない気はするけど。私が背後通るのすら嫌がるし。

 

「そのまま嫌がらせておけ」

「…陣さんって三郎が慌ててる姿結構好きですよね」

「テメェも同じだろ」

「…だって、可愛いし」

 

 三郎が慌ててる姿は可愛い。何であんなに図体がでかいのに、あんなに可愛くなれるんだろう。ちなみに、陣さんが三郎の慌てる姿が好きなのは普通に人が嫌がる姿が好きなんだと思う。陣さん、悪趣味だから。

 

「ところで、そいつはなんだ」

 

 陣さんが、私が帰ってきた時にテーブルに置いた二枚の紙に目線をやる。

 

「ああ。取引先に貰ったんです。東都水族館の入場券。二枚あるんで陣さん一緒に行きます?」

「何の冗談だ」

「ですよねー」

「アイツ誘えばいいだろ」

「三郎の事ですか?うーん、実を言うとそんなに興味無いんですよね。水族館の楽しみ方分からなくて」

「誰かにあげちまえばいいだろ、そんなもん」

「そうですね、そうします」

 

 正直に言うと、この水族館、もの凄く既視感がある。絶対劇場版で爆破される水族館だ。リニューアルオープンっていうの同じだし。流石に爆破されると分かっている場所に向かうほど馬鹿ではない。

 

 ただ、せっかく貰ったので、陣さんの言う通り人にあげた。桜子だ。これには理由があって、桜子がいつの間にか松田さんといい感じになっていて、デートに誘いたいと言っていたので、そのきっかけになれば、とあげたのだ。松田さんなら、爆弾を速やかに解体してくれそうだし、桜子は準レギュラーキャラだから死ななさそうだし。流石に観覧車が転がると分かりきっている所にただの人を寄越したりはしない。

 

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 

 

 後日、家でゴロゴロしているとジンさんから電話がかかってきた。

 

「テメェ今どこにいる」

「家ですけど」

「そうか」

 

 それだけ言うとピッと電話が切られた。意味が分からない。

 

 その次の日の朝、水族館に爆弾が仕掛けられ爆発したとニュースで報じられていた。どうやら、陣さんは私が万が一水族館に行っていないか確かめてくれたらしい。陣さんって思ったより優しいんだなー。そう思いながら朝食を食べた。

 

 

 

 




探偵甲子園 アニメ479話
船のパーティの事件 オリジナル
ちなみに、ウォッカは詰めが甘い訳ではなく、バーボンのこと舐めてる(ので警戒してないし、いつでも潰せると思っているし、実際今の状況だったら彼が本当に潰そうと思ったら潰せる)。だからと言ってわざと見せた訳では無いので悪しからず。
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