【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第113話 【済】黄昏樹海最奥

視界がグラグラする。全身が痛みを訴え、指を動かすのさえ億劫だ。

 

「ハァ……ハァ……」

 

今使えるありったけを出し切った。

その上で……クソ。

 

「負けた……」

 

「ヒュー…ヒュー…ゴホッ。ざけんじゃねー、どこをどう見て『負け』っつってんだこのヤロー。俺の方がボロボロだろーがよー。何で蹴られたオメーじゃなくて、蹴った俺の骨が折れてんだよ」

 

俺の近くで倒れていた一号改め、数多さんが、一つ星のHPポーションとマナポーションを飲み終えて上体を起こしていた。

 

「俺はオメーに勝ったとは思ってねー。まだ何か隠してたっぽいしなー」

 

「!」

 

気付かれてたのか。

『変生』。確かに、これを使えばもしかしたら結果は違っていたかもしれない。

けど……。

 

「……別に隠してた訳じゃねえよ。それを使ったら俺の中で何かが変わる。そんな気がしたから使わなかったんだ」

 

「……なるほどなー。ま、()()それでいんじゃねー?」

 

「それにそっちだって、もっと危険な技隠してただろ。使わなかったって意味ではお互い様じゃねえか」

 

「!ヒヒハハ、どうせ見せるなら()()()技の方が良いだろー?()()()()はオメーには必要ねーし、()()()()()()はそもそも一朝一夕で覚えられるモンでもねーしなー」

 

「クソが、どんだけ引き出しあんだよ……そうだ、思い出した!数多洸!伽藍堂さんの友達じゃねえか!」

 

どこかで聞いた名前だと思ったら、車の中で伽藍堂さんが話してくれた人じゃん!そりゃ強いわ!

いやーその名前がずっと気になって集中出来なかったんだよなー!それで油断しちゃったんだから、負けたのは仕方ないよなー!?

 

「んー?オメー、やっぱアイツの知り合いなのかー?オメーの命を狙う相手として、真っ先に名前出してたもんなー」

 

「伽藍堂さんとはなんやかんやあって……まあ多分、無事和解は出来て知り合いくらいにはなってる……と思う」

 

「ほーん。てかアイツ、俺の事まだダチだって思ってくれてたんだなー」

 

「は?あの人、アンタの事滅茶苦茶教えてくれたし、すっごい褒めてたぞ?アンタの事話す時、あからさまに態度が柔らかくなってたし、今でも大事な友達だと思ってるぞ」

 

「ほーアイツがねー……教えてくれてありがとなー」

 

「あ、どういたしまして」

 

……というか、良いのか?この人、俺を殺す為に来たんだよな?何となく良い雰囲気出しながら普通に喋ってるけど、結局狙われてる事に変わりはないんだし、何かしら手を打たないと駄目なんじゃ?

そう考えたら、俺を狙ってきた奴等……D災の()()()への殺意が沸々と湧き上がってきた。悪い思考は一度浮かび上がれば止められず、再びドス黒いモノが込み上げてきて、衝動のままに動きたくなる。

 

その時、数多さんがスマホを弄りながら話しかけてきて、思考が中断される。

 

「安心しなー。オメーの件は撤回させっからさー」

 

「……は?そんな事出来るのか?」

 

「出来る出来る。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに、もう一回やれって言われてもなー。ダチと恩人だけはやれねーよー」

 

「……」

 

「あー謝ろうとしなくて良いよー。元々こっちの都合だしなー」

 

何と言えば良いのか分からず、黙り込む。

この人は「撤回させる」なんて言ってるけど、実際そんな事が出来るのか?人を死んだ事にして、汚れ仕事までさせる様な奴等が、いくら強いって言っても自分より立場の低い人間の言葉を聞くとは思えない。

 

まさかとは思うけど……。

 

「アンタ……」

 

「あーそうだ。ユウとか他の奴らにはさー、俺は生きてるって教えねーでくれよー?絶対信じねーし、どうせならサプライズ的に登場したいじゃーん?」

 

「え、あ、それは良いんだけど……」

 

「それと、牙の事は他の奴に言うなよー?その事を知った奴らにも危害が及ぶかもしれねーし、何よりDAGと国の醜聞として最悪過ぎるからなー」

 

「!!……チッ、分かった」

 

権力の言いなりになるのは悔しいし、正直に言えば、D災に関わった奴等をこの手でブチ殺してやりたい。

けど、今の俺はあまりに何も知らなすぎる。そんな状態で無理矢理動けば、先輩や周さん……羽場さんも巻き込んでしまうかもしれない。そんな自分勝手な行動は、もうする訳にはいかなかった。

 

「ヒハ、まーオメーにお願いばっかじゃ釣り合い取れねーから、少しだけ独り言でも聞いてけよー」

 

「……何だよ。まだ何かあるのかよ」

 

最悪な気分のまま、気晴らしのBGM程度に数多さんの声に耳を傾ける。

 

「むかーしむかしって訳じゃねーが、とある場所で未登録の新ダンジョンが見つかった。未登録のダンジョンが見つかった場合は?」

 

「三つ星以上のダンジョンアタッカーによる調査」

 

「せいかーい。でー、調査に踏み入ったダンジョンアタッカーが見つけたのは、()()()()()()()()()()()()()()だった」

 

「!!それって……」

 

「おっとー?これは独り言だぜー?こっからは中断禁止なー?……で、『モンスターは共食いしない』。それが共通認識だったから、調査に来たダンジョンアタッカーはDAGにいち早く報告して指示を仰いだ。それを耳にした上層部の一部が、そのダンジョンの存在を秘匿、そしてそのモンスターの『捕獲』を要求した」

 

「は?何でだよ」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………?」

 

「……あ、無料公開はここまででーす」

 

「はぁ!?」

 

「俺はオメーに勝ったとは思ってねーけど、負けたとも思ってませーん。俺に勝たないとスマホの中身は見せられないって言ったよなー?それに今のは唯の独り言ですがー?独り言に何ケチ付けてるんですかー?」

 

「ふざっけんな!気になる部分で止めてんじゃねえ!!いくらですか!」

 

このっ……この野郎!人の弱みに付け込むような商売しやがって!俺の心を弄んだな!何て酷い野郎だ!

 

「ヒハ。てかさー、それ以上に気になる事があんだよねー。オメーも違和感ぐらいは感じてんじゃねーのかー?」

 

「おい話変えんな。いきなり何だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダンジョンが生まれる前から、()()()()はどこかがおかしい。何となく分かるだろー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界史の話なんかしてんじゃねえ!」

 

「ちげーわクソガキ!この世界そのものがおかしいっつってんだ!」

 

「それより俺が勝てば今度こそ教えてくれるんだろ!?オラ立て、二回戦目だ!」

 

「ざけんな脳筋ゴリラが!オメーと争う気はもうねーんだよ!」

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