【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第12話 続・魔猪の塔3F

バッグから取り出すのは、イジェクションボアの牙。俺を囲う様に4本の牙を地面に突き刺し、刃の壁を作る。

 

「ぐっ……」

 

しかし、そこまでした所で体の力が入らず、膝を付いてしまう。

 

“おいおいおいおい”

“そりゃあの突進くらってるんだし…”

“winner:悪くないね。後ろは壁、両隣をイジェクションボアの牙で固める事で攻撃先を誘導している。マッハショットの防御力はモンスターでも最低クラス。牙に突っ込んで来たら最悪自殺になる可能性もある”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩”

“なるほど。確かにスイッチは割とモンスターの事調べてるし、それも知った上でのこれか”

 

チビ猪……マッハショットを睨み付ける。青く染まっていた世界は今は正常に戻り、まるで澄んだ空気の中にいるかの様に視界がクリアになる。

その中で、マッハショットから黄色い光が俺に伸びる。牙の壁を嫌がる様に、俺の正面に立つマッハショットから真っ直ぐ伸びる黄色い光は、更に強く光を放ち…

 

パアンッ!!

 

「シッ!!」

 

懐に忍ばせていた、欠けた牙を突進してきたマッハショットに突き立てる。衝撃が腕から全身に伝わり、身体が僅かに宙を舞う。

 

“おおおおおおおおおお!!?”

“やったか!?”

“フラグやめろwww”

“winner:懐に閉まっていたイジェクションボアの牙でマッハショットの眉間を正確に刺した。スイッチ君の勝ちだね”

“サンキュー先輩”

“さっきから思ってたけど、先輩音速の攻撃見えてたよな?”

“流石先輩ダンジョンアタッカー”

“ダンジョンアタッカーってやっぱ凄いんだな…”

 

背中を壁に強かに打ち付け、地面に倒れ込む。

身体中が悲鳴をあげる事も出来ず、一気に力が抜けていくのを感じる。

 

「ぅ……」

 

敵は死んだか?攻撃が来ないし、手応えはあった筈……自分の手の感触すら曖昧だけど。

 

“スイッチ立て!”

“起きてくれえええええええええ”

“マッハショットに勝ったぞ!ここで死ぬなよ”

“素材!!!素材!!!”

“肉食え!”

“スイッチ!!素材ガチャ!!”

“気付けスイッチ!”

“肉でてるぞ肉”

 

「………」

 

頭がボーッとしてきた。

そりゃそうか。1週間も何も食べず、命懸けのダンジョンであれだけ動いてたんだ。今まで動けたのが奇跡なだけで、いつこうなってもおかしくなかったんだよな。

ダンジョン内で、痛みも無く5体満足で死ねるだけ有情かな。いや、ダンジョン内で餓死って俺が初じゃないか?そうだったら面白いな。教科書にも「餓死注意」って載るかも。

そういえば、配信してたんだっけ……?

そうだよなあ…最期ぐらいは、ちゃんと挨拶しとかなきゃ……。

 

「………?」

 

力が抜ける身体を必死に動かし、配信中の画面を見る。

すると、ぼんやりとだが「肉」とか「素材」とかのコメントが見える気がする。

そうだ。敵を倒したんなら、素材ガチャが……。

 

「あ」

 

眼前に、大きな赤い物体が鎮座していた。白い筋が走っており、赤色とのコントラストでその存在感をより美しく際立たせている。

間違いない。アレは…!

 

「に、く……!」

 

“winner:牡丹肉。引き締められた肉質は、ハツともカルビとも取れる様な噛み応えを感じさせる。猪系のモンスターを狩ると稀に良く落とす為、ギルド査定ではキロ単位1000円”

“サンキュー先輩!!”

“サンキュー先輩!スイッチ肉やぞ!”

“ここで肉キターーーーー!!!”

 

グギュルルルルルゥゥゥゥ……!!

 

もう動かせないと思っていた身体が、目の前の食材を見た瞬間に活動を再開し始める。腹がソレを欲しがる様に音を立て、無意識に涎が溢れ止まらなくなる。

這いずる様に肉に近付いていく。1mと距離が離れていない筈なのに、まるで山の頂にあるみたいに遠く感じる。

しかし、遂に……!

 

「はっ、はっ……!」

 

グウウウウウウウ……!!

 

マッハショットが落としたにしては大き過ぎる量の肉に到達した瞬間、今までで大きく腹の音が鳴る。

その期待に応える様に、俺は目の前の肉に齧り付く。

 

「………………………………………う”ま”い”」

 

“良かったねえ;;”

“良いぞ、もっと食え”

“人生で一番美味い肉やろなぁ”

“良かった……ホントに良かった…”

“winner:おめでとう”

“スイッチ……良かったな…”

 

視界がボヤけ、頬を湿らせていく。鼻が詰まり、地面に水滴を落とす。

それすら気にせず、ひたすら肉を齧り続ける。口が食べ物を噛む感覚を取り戻すかの様に躍動し、歯が一片も栄養を逃すまいとひたすら肉をすり潰していく。舌が肉汁と涎を混ぜ身体の奥へ流し込み、喉が命の源を待ち構えている内臓へと落下を加速させる。

 

「……っく……!ひっ……、うまぃぃ………!!」

 

“こっちまで泣けてきたわ……”

“スイッチィィ…良かったよおおお…”

“くそ……こんなので泣く気なんて無かったのに…”

“ご飯沢山食べさせてあげたい…”

“winner:ダンジョン産の食材は消化と吸収が非常に早く、すぐエネルギーへ還元される。例え胃が縮小してても、ダンジョン産の食材なら、満腹中枢が正常に刺激されるまで食べる事が出来る”

“サンキュー先輩”

“先輩も感無量やろこんなん……”

“貰い泣きしてもうたわ…”

 

 

 

 

 

「復活の俺」

 

“調子乗んな”

“草”

“辛辣過ぎて草生える”

“5分間、無言で食べ続ける虚無映像からのこれよwww”

“謎ポーズ止めろやww”

“イケメンだから似合うのが絶妙にうぜええwww”

 

「おふざけは終わりにして。皆さん、ご心配おかけしました。そして初見の皆さん初めまして、昨日ダンジョンアタッカーとなりましたスイッチといいます。今、魔猪の塔をソロで攻略していってますので、良ければゆっくりしていって下さい」

 

“おう”

“顔色が良くなったら、唯のイケメンになったな”

“でもコイツdちゃん民なんだよね……”

“ソロ?新人が魔猪の塔を?”

“薄々勘付いてたけど、マジでソロで来てるのかコイツ…”

“スキル見せて?♡”

“さっき魔眼スキル使ってたろ?スキル追加されてんじゃね?”

 

「あ、スキル!」

 

確かに、何か今も視界が青みかがってるし、これスキルの影響か!

コメントで指摘された俺は、イソイソとスキルカードを確認することにした。

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