【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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奈落の使者

時は、戸張達が勉強配信をしている間まで遡る。

 

「………」

 

伽藍堂結城は一人、公園にいた。

呼び出されたのだ。()()()()()()()()()人物から。

 

『後はよろしくー』

 

語尾を間伸びさせた簡素な一文と共に送られた、この公園の座標と目印。

目的地へ足を運んだ彼を待っていたのは、人ではなく、隅に隠す様に置かれたスマートフォンだった。

 

「……まさか、こんなサプライズが用意されてるなんてね」

 

ベンチに座り、スマートフォンの中身を見る。

そこに載っていたのは、DAGや政治家、警察がこれまで行ってきた不祥事やそれに伴う隠蔽工作、死刑囚との司法取引による()()()()、そして忌まわしきD災……国が黙認してきた、決して表に出てはいけない血塗られた歴史。

伽藍堂結城が喉から手が出る程欲しがった、彼等の醜態を示す決定的な証拠だった。

 

()()()()()()()()()()()()

 

この中で彼が特に注目したのは、「死刑囚との司法取引」の中にある文章。

 

 

 

 

 

 

[DAG【準不要候補者】リストNo.33数多洸。伽藍堂結城の懐柔失敗、及びその性格から他ダンジョンアタッカーに著しく悪影響を与える畏れ有。処分の為、1号と3号の牙を派遣]

 

[DAG【準不要候補者】リストNo.33数多洸を牙に配属。号数:1]

 

 

 

 

 

『強い厄介者』を体良く追い払いたい、しかしその強さは利用したい。人を殺すのに抵抗の無い人間も、場所次第では利用価値のある者も多い。

そんな両者の思惑の合致が生んだ、人間の()()()()()

そして、その人間は様々な理由で死亡させて人として生きる権利を奪い、首の動脈にGPS付きの爆弾を埋めて逃げられない様に束縛する。

実に最悪な合理性のマッチポンプだった。

 

冒涜的なその文章はまだ続く。

 

 

 

 

 

[【要】検体:戸張照真

人とモンスターの融合(疑)?資料の為、捕縛か死体の回収を要請。1号の牙を派遣]

 

[要請者----氏死亡。上記の要請を撤回。

それに伴う1号の叛逆により、現存の牙が全て終了。現行の計画を一時中断]

 

 

 

 

 

 

「………ふふ」

 

優雅に微笑むその姿は、正に天使の具現。しかし吐き出された息吹は、他の生命を絶やす程に冷ややかだった。

 

(まさか、DAGが警察とまで癒着しているなんてね。考えてみれば当然か)

 

ダンジョンの需要は、人々が思っている以上に高い。不必要に動植物を殺傷する事なく食物を得られ、人を超人に変え、マナという新たなエネルギーと新たな資源を勝手に生み続ける。

最早、ダンジョンは社会において無くてはならない存在なのだ。

故に、ダンジョンに関するスキャンダルを強引に揉み消してでも、DAGとの連携を強化しダンジョンアタッカーの頭数を増やさなければならなかった。

 

そこに目を付けた連中が、段々と私欲を交えた欲求を重ねていくにつれ、やがてソレは悪意を生み、そして権力で全て握り潰す癌の巣窟と成り果てた結果が、このサイクルを生み出していた。

 

(その悪意に巻き込まれたのか。そして……)

 

「……君が救ってくれたんだね」

 

“そいや今回はスキルカード見せてくれないんか?”

 

『あー今回は新しいスキル無いんですよねー。なので、増えたらまた一緒に見ましょうね』

 

自身のスマホで映すのは、戸張の勉強配信。彼は黄昏樹海で起きた事など無かったかのように、四苦八苦しながら呑気に配信を続けている。

そんな戸張を優しい目で見た後、伽藍堂結城は立ち上がる。

 

「ありがとう。今度は、僕が君達に報いる番だね」

 

聞こえもしない感謝の言葉を、画面越しに送る。

 

友人から送られてきたメールの続きも、戸張の配信を一ファンとして眺めるのも、一先ず脇に置かなければならない。

彼は理解していた。友人を殺した連中に、死よりも深い絶望を与えなければ、自身の胸の内に奈落の様に空いた穴から溢れ出す、この怨嗟の激情を鎮める事は出来ないと。

 

(ここまで準備を進めていて良かった。そうだ、彼に倣って掲示板の様な形で完全匿名性のネットを作ろうか。協力者もいる事だし)

 

これからの予定を考えながら、伽藍堂結城は公園を後にする。

楽しそうに浮かべたその笑みは、まるで奈落から生まれた死神の様に昏い光を宿していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、妹が婚約者として戸張を家に連れて来た際、彼の脳内で「戸張の幸せを護り隊」vs「妹に手を出す奴を排除し隊」の激しい争いが勃発し泡を吹いて倒れ、その末に怒りと悲しみと憐憫と喜びと親愛と祝福を猟奇的合体させた表情を浮かべる姿が見られるようになる為、周りの人間から「悪魔に取り憑かれ二重人格になった伽藍堂結城さん」という目で見られるのは、まだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『臨時ニュースです。本日未明、東城都の◯×公園内の植物が全て朽ちる現象が発生しました。今日公園にいた通行人も、突然体調不良になり病院へ搬送された人も相次いだとされ、池にいた魚もかつての様に泳ぐ事が出来なくなっております。警察は毒ガスを使ったテロの可能性があると、周辺一帯を閉鎖。現在も…』

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