【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第158話 光の旅路

流星を見た。

十年程前だろうか。まだ陽が落ち切る前の黄昏時、暗がりを裂いて通り過ぎていった橙の閃光に、当時中学生だった彼は目を奪われた。

 

「……今のは」

 

自分が見たものが信じられず、しかし高鳴る鼓動は確かに今見た鮮烈な光が現実だったと知らせる様だった。

それは、何も無かった青年には充分過ぎる光。流されるがままに日々を過ごしていた自分が、初めての衝動に突き動かされるまま、それを……人の形をした流星を追いかけ始めた。

 

「ん……?DAG、ダンジョンアタッカーズギルド?」

 

ネットで人型の流星を調べる毎日。

星に詳しい人の記事や胡散臭いオカルト記事。それらの中に、一際異彩を放つ広告があった。

 

「!これは……これが!」

 

危険なモンスターとの戦い。未知なる素材。超常的な力を勝者に与えるマナ。

ダンジョンについて、DAGについて調べる程、探し求めている人に近付いていく。

 

「あの光の人は、ダンジョンアタッカーだった……」

 

その結論に達した時、居ても立っても居られなくなった。

あの人に会いたい。そして言うのだ。『自分に夢と目標を与えてくれてありがとう』と。

その動機は彼の原動力となり、人生のスタートラインに立った様な気持ちを起こしてくれた。

その日から彼……三鶴城礼司は、生まれて初めて自分の為に頑張った。

勉学。スポーツ。コミュニケーション。

知識を貪り、体力を作り、共にダンジョンに挑んでくれる仲間を集める。

地道に、しかし妥協無く歩み続ける。その姿を見て、彼に気付いた者が次第に輪を作っていく。

 

秋鹿(あいか)犀党(さいとう)陸虎(りっこ)百々馬(どどま)。ありがとう」

 

「はは!気にすんなって、俺たちもダンジョンに興味あったし」

 

「やっぱ夢見るならでっかくだよなー」

 

「俺どんなレベルアップするかな?」

 

「トラはナイトじゃね?無駄にでけえし」

 

「ナイトになったら無駄じゃなくなるな」

 

「ナイトなら無駄になら()()()……そういう事だな?」

 

「何で二回言った?」

 

「おい俺をダシにすんじゃねえ!」

 

高校二年。同じ夢を共有出来る仲間達とDAGの試験を受け、無事に合格した。

そして彼らと共に立ち上げたパーティ。その名は……。

 

「『ダンジョン・ズー』結成だ!」

 

全員、名前に動物が入っているから。そんな安直なネーミングセンスを、皆で笑い合った。

 

     ◇

 

「いやー危なかったー」

 

「三鶴城マジサンキュー!流石に死ぬと思ってたぜ!」

 

「気にするな。助け合うのがパーティだからな」

 

「良い事言うねえ。じゃあこの前立て替えてくれた弾代も……」

 

「返せ」

 

「返せ」

 

「銃の代金まで立て替えてもらってそれは無い」

 

「早く返せよ」

 

「ッス……」

 

ダンジョンは想像以上に険しく、一筋縄ではいかなかった。最初の頃は何度も窮地に陥った彼らだが、その度に団結し一歩、また一歩と着実に強くなっていった。

それは昔のままでは決して手に入らなかった、刺激的な毎日。彼の生活は充実していた。

しかし、どれだけDAGを探しても肝心のあの光の人は見つからない。

ダンジョンアタッカーは最近生まれたばかりの超マイナーな職業。故に、数少ない仲間の情報ならばすぐに掴めると思ったのだが、早々に当てが外れてしまった。

 

「何だよ、また例の光の人か?」

 

「ああ、今日も見つからなかった」

 

「まあまあ、そもそもDAGという存在自体知らない人もいるし。UMAにでも間違えられてるんじゃ?」

 

「呼んだ?」

 

「馬は呼んでねえよ」

 

「大人しく道草食ってろ」

 

慰めようとして、結局ネタに走る仲間達と笑う。

彼らが気を遣ってくれているのは分かっている。しかし、彼は実際はあまり気にならなくなっていた。

確かに初めは、光の人に会いたいという一心だった。だが共に戦う友が出来て、彼らとここまで歩いてきた道のりが、三鶴城にとって大切な一部となっていたのだから。

 

「……む!皆聞いてくれ、今」

 

「あお前のジョークは良いや」

 

「去れ」

 

「それはホンマきつい」

 

「もっとマシなギャグ持ってこい」

 

「」ズーン

 

……まあ、これも彼らなりの親愛表現である。

 

     ◇

 

「……【勇者】?」

 

「お?レベルアップか?何取ったん?」

 

この日から、三鶴城礼司の()()は大きく動き出す。

 

「『自分を信じる人が多い程、自分と皆の身体能力を向上させます』!?ガチで言ってんのかそれ!」

 

「あ、ああ」

 

「え?それマジなら凄くね?全国民がお前の事信じるだけで世界最強のバフが俺らにもかかるって事だよな?」

 

「チートや!チーターやんそんなん!」

 

最初は実感が湧かなかった。しかし、このスキルを手に入れてから彼らの戦績は目に見えて向上していった。

その強さを、その凄さを。DAGやダンジョンアタッカーそのものの宣伝として国が使いたいとお達しが来るのは、ある意味必然だったのだろう。

 

「本日は、今話題の危険なダンジョンを踏破する超人軍団、ダンジョンアタッカーの方に来てもらっていまーす!」

 

「よろしくお願いします」

 

次第に取材やインタビュー、ダンジョンアタック以外に様々な仕事が舞い込んでくる様になった。

慣れない事態に四苦八苦しながらも、自分達の活動を色んな人達に知ってもらえる事が嬉しかった。

そうしていく内に、DAGも段々と騒がしくなっていった。

 

「すげー、見ろよこれ。今年のダンジョンアタッカーの募集人数、前年比の一千%増だってよ」

 

「わははは!馬鹿が書いたグラフだろこれ!」

 

「でも滅茶苦茶集まったなあ。これも我らがリーダー様のお陰って訳ですか」

 

「そんな事はない。私だけでここまで来たと思った事は一度もないからな」

 

ダンジョンアタッカー希望者で殺到しているDAG内を、遠目から皆で眺める。

現在、DAGはお祭り騒ぎの様相だった。我先にと試験を受けに行く様は、まるでかつての自分を見ているようだ。

 

「……ここからだぞ。忙しくなるのは」

 

「おう。無謀なダンジョンアタックを止めないとだしな。パーティ制度ってのを叩き込んでやらねえと」

 

「DAGからパーティ受け入れの要請はあったんだよな?」

 

「ああ。だが流石に全員は無理だからな。ウチはウチで、また試験をさせてもらう事にした」

 

「もうこの面子で野郎だけの馬鹿騒ぎするのも難しいか……よく頑張ったよな、俺ら」

 

「こいつさあ!この前告られたんだぜ、しかも元同クラ!」

 

「はぁ!?おい聞いてねえぞ!抜け駆けしやがって!」

 

「ざんねーん!俺はもうお前らといるステージ違います〜!恋人持ちで〜す!」

 

「ぶっ殺す!」

 

「やってみろやチンパンジー!!」

 

「フ、ハハハハ!」

 

いつもの様に馬鹿騒ぎを始める仲間達。何も変わらないやり取りに、三鶴城は笑った。

秋鹿の言う通り、時代はダンジョンアタッカー戦国時代とも言える、新たな混沌の波が押し寄せるだろう。その中で新しいルールややり方も生まれるだろう。

だが、肩書きを気にせずに馬鹿みたいな内容で笑えるこの関係は、決して変わらないのだと。それが嬉しくて、つい笑ってしまった。

そして、この光景を見てふと思う。

 

(……あの光の人は、自分の未来の暗示だったのだろうか)

 

かつて、眩い流星に憧れてダンジョンアタッカーとなった三鶴城。

そんな彼に憧れ、目指すべき目標として多くの人が彼を追いかけてDAGの門を叩いている。

その姿は正に、彼の生き方そのもので……気付けば自分が、数多のダンジョンアタッカー達を照らす大きな光となっていた。

 

(だとしたら、やはり感謝しないとな)

 

こうして多くの仲間に会えた幸運をくれた事に。

それを噛み締めながら、彼はより一層の研鑽を胸に誓う。

 

「そうだ。パーティ名を変更しようと思うんだ」

 

「あー。いんじゃね?名前に動物が入ってる人ばっかじゃねえもんな」

 

「『ダンジョン・ズー』じゃちょっとダサいか?」

 

「俺は良いと思うけどなあ、親しみやすくて」

 

「私も馴染んだ名前を変えるのは寂しいと思う。だが、『勇者』の二つ名を貰った決意表明としてな」

 

そう言って、彼は新たなパーティ名が書かれた紙を皆に見せる。

 

「……し、きょう?で合ってるか?」

 

「ああ」

 

「『至強』ねえ……どこから思いついたん?」

 

「先程も言っただろう?これから忙しくなると。多くの人員が入った今、戦い方の違いで個々人の戦闘能力に差が出てくるだろう。後衛職や前衛職の間で論争が起きるかもしれない」

 

「ふむ……」

 

「あー」

 

「皆、それぞれの違いや良さをまだ分からないと思う。私は、そんな彼らをちゃんと導いていきたい。それが、皆から目指される者としての責務だと考えている」

 

『至強』。その大きな名前に恥じない様、三鶴城は自分を律する。

そんな彼を、秋鹿や犀党、陸虎らが茶化す様に叩く。

 

「固え!どうでも良いけど力抜けって!いつもみたいに言えば良いだろ」

 

「どうせお前の言いたい事はアレだろ?」

 

「『皆がいてくれたから、ここまで来れたんだ』」

 

「はは!ガチで馬鹿の一つ覚えだろ。まあその程度の馬鹿でいんだよ、お前は!」

 

無責任な言葉から感じる、信頼と励ましの気持ち。

それに応える様に、三鶴城は再び笑みを浮かべた。

 

「ああ。私達だけではない、これからやって来る皆とだ。一歩ずつ共に至ろう、最強へ」

 

『おう!!』

 

無邪気に輝く誓いをここに立て、五人は拳を突き合わせた。

 

「よ()()()は、『至強』結成祝いをしよう!」

 

『は??』

 

ゲシッ

 

「ぐはっ!?」

 

「てめえそれが言いたかっただけかコラ!」

 

「パーティ名を駄洒落に置き換えるのは許さんぞ」

 

「私物化反対」

 

「や、やめろぉ!何をする!私は『勇者』だぞ!」

 

「仲間の意を汲んで二度とそんな親父ギャグ言うんじゃねえぞ、勇者様よぉ!」

 

「絶対後輩に見せるなよ威厳死ぬからなぁ!」

 

じゃれあいと分かっていても、仲間から足蹴にされる勇者など前代未聞だろう。ここまで無様な姿は決して晒せない。

それを理解して、彼らは新たなリーダーの門出を自分達なりに祝福した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らの誓いは、()()()全て崩れ去った。

 

=====

 

書籍版1巻発売中です。手に取っていただけると嬉しいです。

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