【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第171話 再会

「話を戻すぞ。『牙』は国家機密レベルの重要事項の筈だ。何故お前が知っている」

 

「僕の友人が1号の牙でしたので。彼が戸張君を殺そうとして、逆に救われたようです。その結果、前『牙』を全滅させ、僕にこの情報を託しました」

 

「! ……そう、か」

 

 淡々と言い放つ伽藍堂。そこにどんな感情があるのかは窺い知れないが、憐憫や同情は侮辱と同義。僅かではあるが、伽藍堂結城という男を理解出来た気がした。

 

「……ん? 待て、金城の死は……」

 

()()()()()()()。軽蔑しますか?」

 

「ハッ、気にするな。事前に教えてもらえれば、オレが奴の頭を握り砕いてやりたかったというだけだ」

 

 忘れてはいけない。この男、最終手段とはいえ美少女二人と殺人も視野に入れていた事を。

 暴力の行使そのものについて、躊躇いは微塵も無い。それを振るう相手が、かつての同僚であったとしても。

 

「それで、具体的にオレは何をすれば良い?」

 

「DAG上層部の頭を全てすげ替えるまで、戸張君と娘さん……焔那さんを守っていただければ。それと、近いうちに彼らからコンタクトが来る筈です。その時の内容を全て教えて下さい」

 

「『牙』の誘いに応じるか?」

 

「別に応じなくて構いませんよ。既に彼らの情報は掌握しています。それに、潜入捜査は苦手でしょう?」

 

「……そうだな。お前の掃除が終わるまではどれくらいかかる」

 

「来年の三月までに必ず。少なくとも、今は正しい時期じゃありません。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「? 青嵐……?」

 

()()()()()()()()()()()と言えば分かりますか?」

 

「!! そうか、もうそんなに経ったのか」

 

 国内におけるDAGの発展は、三鶴城礼司が現れる前と後で明確に分かたれている。

 【勇者】という奇蹟のスキルと、三鶴城礼司の人徳。この二つが噛み合い、この国のダンジョンアタッカー達は爆発的な進化を遂げた。

 その威光は海外にも知れ渡り、各国もおいそれと手を出せなくしていた。『勇者』の存在は、一種の抑止力の役割も果たしていたのだ。

 とくれば、上層部が二匹目のドジョウを狙うのは明らか。彼らは第二の三鶴城礼司探しを始めた。

 

「元々、国力もとい軍事力の強化という名目で、第一と第二世代の()()実験は進められていました。

 結果生まれたのが、生まれつきスキルを持った超人、第三世代。しかし、DAGの目論見はここで頓挫してしまいます。遺伝するのは親の持つスキルの極一部。その上個々人の能力にバラつきが大きく、更に全員がダンジョンアタッカーになるという保証も無い。国力の強化という面では不安定な要素が多々ありました」

 

()()()()()()()()()()()()()()()が言うと、説得力が違うな」

 

 皮肉に皮肉を返す。

 伽藍堂結城と、妹の叶。この二人もまた、当初は次代のDAGを担う者として注目されていた。

 しかし、彼らはあまりにも()()()()()()()()()。そんな二人を見て人々が抱いた感情は、ある種の畏怖・諦観。

 完璧とは絶望である。どれ程手を伸ばしても届かない星を眺める様に、『もうアイツだけで良いんじゃないかな』という空気が少しずつ蔓延していった。

 その危惧を感じ取ったDAGは方針を転換。今度は人工的に、かつ制御の容易い『勇者』を作る箱庭を用意した。

 それが、国立青嵐高校。通称、『勇者』製造工場。

 青嵐高校の目的は、次代を担う新たなダンジョンアタッカーの生成。それを『国が作った』という実績。しかし目立った成果は上げられず、結局は伽藍堂叶という()()()に縋っている状況だった。

 そして、『三年目』というのは……。

 

「思い出した。秋に行う予定の国際交流戦の事か」

 

「ええ。他国の同世代のダンジョンアタッカー達を招聘して競わせる……歯に衣着せぬ言い方をすれば、格付け戦です。

 この国のダンジョン産業が他国より遅れている事がバレてしまえば、()()()()()になってしまうかもしれません。それを防ぐ為にも、国と上層部はなんとしても結果を出したい筈です」

 

「ああ。設立前から、我が国はずっと情報を秘匿していると責められていたからな……正直、内輪揉めをしている場合じゃないだろう。どうするつもりだ?」

 

 この男が何の策も用意せずに『粛清』をしている筈がない。それを確信しながらも、計画の全容が見えてこない。

 羽場は伽藍堂を睨み付ける。

 

「何も」

 

「……何だと?」

 

 しかし、返ってきた言葉は予想外のものだった。

 肩を怒らせ、伽藍堂に詰め寄る。狭い車内が、彼の圧で更に圧迫される。

 

「おい、どういう事だ。ふざけているのか」

 

「僕はいつだって真面目ですよ。正確には、今している事がその対策です。戸張君に手を出す連中を優先的に排除する。それが一番の対策ですから」

 

「……話が見えん。何故そこで照真が出てくるのだ」

 

「ふふ、すみません。これは説明の難しい話なので、結論だけ言わせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戸張君なら、間違えた()()を変えてくれる。その確信があるからです」

 

     ◇

 

 リムジンはやがて、戸張の住むマンションの前で停まった。

 そこで降りた羽場は、思わず固まってしまった。

 

「……」

 

「……焔那」

 

 暫く顔すら合わせてもらえなかった娘が、腕組みをしながら親の仇の如く彼を睨み付けていたからだ。

 彼女は父親から距離を置きながら、彼を無視して伽藍堂に話しかける。

 

「おい。どうだった」

 

「彼はシロだよ。大丈夫」

 

「……」

 

「何だ? 実の娘に疑われて声も出ないか?」

 

「……いや。仕方のない事をしていたからな、オレは」

 

「……ふん」

 

「では僕はこれで。今日はありがとうございました。後は親子水入らずでどうぞ」

 

 親子の間に深い確執がある事を知っている伽藍堂は、そう言い残してさっさと消えてしまった。

 二人の間に、気まずい沈黙が流れる。

 

「…………おい」

 

「っ」

 

 焔那がマンションへ向けて歩き出す。立ち止まったままの父親へ声をかける。

 顎でついて来いと命じられるまま、大人しく娘の後を付いていく。

 

「……焔那」

 

「……」

 

「すまなかった」

 

 エレベーターの中。人がおらず、物理的に距離が縮まったところで、羽場が切り出した。

 

「……それは、何の謝罪だ?」

 

「お前に今までしてきた事、お前がこれまで苦労してきた事全てに対するものだ」

 

「……遅過ぎるだろ……! オレが、どれだけ……!」

 

「そうだな。最低な親だ。許さなくて良い、無視されても当然だ。だが……謝らせてくれ。不甲斐ない父親で、すまなかった」

 

「……ッ」

 

 感情に任せて振るわれた手が、羽場の頬を強く打ち据える。

 渇いた音が響き、目尻に涙を浮かべた焔那が初めて目を合わせた。

 

「何で、今なんだ……ッ。ずっと恨んできた相手に頭を下げられたオレの気持ちが分かるか!?」

 

「……ああ」

 

「何がシロだ……! お前が何もしてなくとも、オレにとってクソ野郎なのは変わらない」

 

「……そうだな」

 

 エレベーターが目的階に到着した事を告げる。扉が開いても、暫く二人は顔を見合わせていた。

 

「……ここは人の邪魔だ。入れ、懺悔を聞く時間くらいならある」

 

「分かった。もう逃げんよ」

 

 空気が更に重くなるのを感じながら、焔那は自室の扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあご主人様、一緒にお風呂に入りましょう」

 

「違う! これ俺の知ってるメイドさんじゃない!」

 

「大丈夫ですよ。全部アタシ達に委ねて下さいね」

 

「いやいやいやいや!? 大丈夫じゃないって! 絶対これ駄目な奴!!」

 

「往生際の悪いご主人様だね。何も怖い事なんてありませんよ」

 

「あるって! 圧倒的に怖い人が目の前にいるんですけどぉ!?」

 

「このマンションは全部屋防音なのが素敵ですね。沢山声を上げても大丈夫ですよ」

 

「いやあああああああああ!! 奉仕されるうううううううううううう!!」

 

 メイドのコスプレをした伽藍堂叶とあまにゃんによって脱衣所に引き摺られている戸張の姿に理解が追いつかず、二人は持っていた荷物を落としてしまった。

 

=====

 

書籍版1巻発売中です。手に取っていただけると嬉しいです。

 

第2巻の発売が2/17に決定致しました。

番外編「とある男の末路」を含む二つを収録致しました。

手に取っていただけると嬉しいです。

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