【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第172話 お帰りなさいませ♡ご主人様

「ふぃいいい〜〜……」

 

 今日は疲れたなぁ。色々あった一日だった……。

 身体検査に行ったら伽藍堂さんに会って、『至強』に行く途中であまにゃん……シュウさんに会って、三鶴城さんと配信して戦って……とにかく、凄い濃い日だった。

 それにしても、三鶴城さんの戦い方は参考になったな。マジックスキルを武器として使うなんて考えもしなかった。銃弾みたいに、撃てば終わりだという思い込みを壊されたのは良い経験だった。

 

「んー……それでも悔しい」

 

 結果自体は納得の敗北。けど、やっぱり負けるのは嫌だ。

 もっと強くならないと。もう負けたくない。

 それに、師匠の技術と三鶴城さんの戦い方……この二つを組み合わせる事が出来れば。

 

「……うん。疲れた」

 

 とにかく、少し休んで考えを整理したいな。

 滅茶苦茶動いたし、精神的にも疲れてるし……今日は早めに寝るか。

 そんな事をボンヤリ思いながら、スマホでスレ民達と戯れる。買い物でパンパンになったエコバッグを揺らしながら、通い慣れた自室のドアを開ける。

 

 ガチャ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ♡ご主人様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バタン

 

「……ふぅ〜。疲れてるなぁ、俺」

 

 まさかメイドさんに出迎えられる幻覚を見るなんて。幻覚じゃないなら、俺が部屋を間違えたんだな。

 表札を確認。『戸張』と書いてある。うん、俺の部屋で合ってるな。じゃあやっぱり幻覚だな! 俺が疲れてるだけで何もおかしくない!

 ……いやおかしいな? ここ俺の住居ぞ? 羽場さんならまだしも、何でメイドさんがいるんだよ。しかも先輩にあまにゃんさんに良く似てた様な気もするし……先輩のメイド姿とか、妄想の中でも殺されるのでは?

 

「……い、一応スレ民に報告しよ」

 

「どうされましたか? ご主人様」

 

「ウッパス!?」

 

 ドアから離れようとしたら、後ろから肩をぐわしと掴まれる。そのまま中へ引き摺り込まれてしまった。

 げ、幻覚じゃなかった!? 何で先輩とシュウさんがメイド服を!?

 

「というか、何でウチにいるんですか!?」

 

「このマンションのオーナーは私でございます、ご主人様」

 

「まさかの職権濫用!?」

 

「今日も一日お疲れ様でした。疲れた貴方を癒す為に、アタシ達が精一杯おもてなし致しますね!」

 

「その気持ちは有り難いですけども!?」

 

 出来れば事前に教えて欲しかったなぁ!?

 いきなり「お帰りなさいませ」って言われるのは恐怖でしかないよ! 顔見知りだからギリギリ許せるだけで!

 

「ところで、いかがですか? 私のメイド服は」

 

「え、可愛いですけど」

 

「スイ、ご主人様! アタシは!?」

 

「最高だと思います。ハイ」

 

まあなんだかんだ言っても、俺もホラ、健全な心を持つ男子高校生なのでね? 嬉しくないとは言ってない。

 先輩とシュウさんのメイド姿は、言葉を無くすぐらい可愛い。コスプレ用だと一目で分かるメイド服も、二人が着ると本物に見えてしまうくらいだ。

 唯、何でそれを着てるのかとか、何で俺に奉仕するのかとか理由が分からないから怖いんですよね?

 

「では。今日も頑張ったご主人様に、ささやかながらお食事をご用意しております」

 

「え。でも……」

 

「手荷物をお預かり致しますね」

 

 何か言う前に買い物袋とバッグを奪われ、あれよあれよと椅子に座らされる。

 あの、何で当たり前みたいにウチの間取り把握してるんですか? 

 なすがままの俺の前に、シュウさんがケチャップでハートが描かれたオムライスを置いた。

 

「お待たせしました〜。萌え萌えオムライスです」

 

「も、え……ん? メイド喫茶の真似事?」

 

「それじゃ、魔法をかけますね〜」

 

「あ、ホントに何も説明ねえや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しくな〜れ♡萌え萌えキュンッ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

おっっっっっっっっデッッッッッッッッッ!!

 

「オデッッ!!」

 

「ご主人様!?」

 

「だ、大丈夫です……!」

 

 あ、あっぶねええええええ! シュウさんが胸でハートを作った事で、思い切り強調された胸に、目がブラックホールみたいに吸い込まれた……。

 咄嗟に自分を張り倒していなかったら、また先輩から冷気が漂うところだった……!シュウさん、何て危険な技を……。

 

「い、いただきます……」

 

「は、はい。召し上がれ」

 

 ……あ、普通に美味いオムライスだ。

 

     ◇

 

「……それで。いい加減説明してくれませんか?」

 

 皆でご飯を食べ終えて、心なしか小綺麗になっている部屋で向かい合う。

 流石にもう勢いだけで誤魔化されないぞ。

 

「何で俺の部屋にいるんですか? 有り難かったですけど、何で色々してくれたんですか? 理由を教えてください」

 

 理由……そう、理由だ。二人には何度も説明しているが、俺にはそこまでされる理由も価値も無い。彼女達にここまで与えられて、まだ殆ど返せてないのだから。

 タダほど高いモノは無い。俺はそれを嫌というほど知っている。二人は悪くないのに、つい睨んでしまう。

 ……いや不法侵入は悪いな? 危ない危ない、感覚が麻痺してた。そこはちゃんと反省してくださいね?

 

「……ご主人、いや、戸張君。人の善意に、何か対価が必要かい?」

 

「え?」

 

「勝手に入っちゃったのはごめんなさい。でもアタシ達が、どれだけ貴方を大切に想ってるのか知ってもらいたくて」

 

「どういう……」

 

「君が家族想いなのは知っている。その愛を否定するつもりは無い。だが過去の経験なのか、君は()()()()()()()()()()()()()()んじゃないかな」

 

「!?」

 

 そんな事はない、と言おうとして声が出なかった。

 心臓が跳ねる。心のどこかで、これ以上何を支払えば良いのかと考えていた俺の思考を、先輩に当てられてしまったから。

 

「別に悪い事じゃない。だが君は、与えられた善意に対価で返そうとする意識が強過ぎる。それが心配なんだ」

 

「だから覚えていてほしいんです。少なくともアタシ達は、見返りが欲しくてこうした訳じゃありません。唯、自分がしたい事をしてるだけなんだって。戸張さんと一緒にいたい……アタシにはそれだけで良いんです。戸張さんは、それだけじゃ……ダメですか?」

 

「……」

 

 何も答える事が出来なかった。

 人の(さが)は、どうやっても変えられない。

 知っている。俺に向けて優しい顔をしていた父さんと母さんも、互いを見る目は冷たかった。『時間』という大切な対価を、俺へ愛情を注ぐ為だけに使ってくれていた事を。

 知ってしまった。人の心に巣食う、ヘドロみたいに気持ち悪い悪意。『誰かの努力』を対価に、自分の欲を満たそうとする人間がいる事を。

 俺は、自分が受ける幸せに対して、ずっと……ずっと、相応しい対価を探し続けていた。きっと今も。

 

「……すいません。分からないです」

 

 だから、せめて二人には誤魔化さずに伝えたかった。

 至近距離で、温かい眼差しを向けてくれる先輩とシュウさんに頭を下げる。

 

「俺は、まだ中途半端で……その、自分の事も全然分からなくて、あの……。けど、そんな俺にちゃんと言葉を向けてくれて嬉しかったです」

 

「戸張君……」

 

「戸張さん」

 

「なので。ちょっとずつですけど、ちゃんと二人の……ああいや、皆さんの気持ちを受け止められる様に、頑張ろうと思います」

 

 俺の始まりとなった人達でもある、掲示板の住民の分も、いつかちゃんと受け止める為に。

 そう宣言すると、二人は嬉しそう破顔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ今から『練習』をしましょうか、ご主人様」

 

「エッ」

 

「このままお風呂に行きましょう。たぁくさん()()()()()()()あげますね♡」

 

「エッエッ」

 

 二人が俺の手を掴んで、脱衣所に引っ張り込もうとし始める。

 あの、急に何で!? 早い早い! 俺ちょっとずつって言いましたよね!? というかいつの間にそんなに息の合ったプレーが出来るようになったn力強っ! 先輩はともかくシュウさん!? 一体何があったんですか!?

 

「何も怖くありませんよ。全てメイドである私達に委ねて下さい。さあご主人様、一緒にお風呂に入りましょう」

 

 怖いって! 今のこの状況が怖いんだって! ジャンルの違うヤバさが目の前で起こってるんですよ先輩! シュウさん!

 

「いやあああああああああ!! 奉仕されるうううううううううううう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を、しているんだ……?」

 

 突如、酷い懐かしく感じる声が聞こえてくる。

 全員の動きが一瞬止まり、声のした方を見る。そこには、俺と同じくらい表情の固まった羽場さんと……羽場さん!? 親の方の羽場さんがいる!

 並べて見ると、羽場さん(親)の面影が分かるなぁ……って違う! この二人はこの状況を切り抜ける助け! 心苦しいけど、先輩とシュウさんを止める言葉をかけ……! クソ、すぐに思いつかない! 何かないか!? 例えば、そう! 道路で職質を受ける羽場さん(親)みたいな怖い顔の……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不審者!!」

 

「「誰が不審者だ貴様!」」

 

「違うそうじゃない!」

 

 息ぴったりじゃないですか! 凄い似てますよ! とにかく助けて下さい!

 

=====

 

書籍版1巻発売中です。手に取っていただけると嬉しいです。

 

第2巻の発売が2/17に決定致しました。

番外編「とある男の末路」を含む二つを収録致しました。

オマケも一応作成中であります。

 

手に取っていただけると嬉しいです。

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