【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話 作:ゲスト047562
目の前で鍋が煮立ちそうになっている。
炊飯器が、炊けた事を知らせる音を鳴らす。
「……平和だ」
俺は今、ようやく、平和を噛み締める事が出来ている……!
色々あった外出から終えた後の、
危なかった……何故か分からないけど危なかった。タイミング良く羽場さん達が帰って来てくれてホントに良かった。お陰で大事なナニカを失わずに済んだ。
先輩達を部屋から叩き出したその親子は今、リビングで向かい合っている。会話は無く、俺でも分かるくらい重苦しい空気が漂っている。
……『クソ親父』発言してたし、家族仲は良くないんだろうな。まあ俺に突っかかってくる様子もないし、結果的に平和だな、うん。
「あ、羽場さん(親)。夕飯食べますか?」
「……ああ」
「羽場さん(娘)、とりあえず話は夕飯の後にしませんか? 家事終わったら、俺はとっとと引っ込むんで」
「……チッ」
うーん、いつにも増して怖い。
という訳で、今からスレ民考案の『胃袋ゲットだぜ!』作戦を開始する! 失敗したらスレ民のせいにすれば良いから問題ないな!
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
「……ン」
羽場さん達がおかずを口にする。
すると、不機嫌そうだった顔が驚愕に染まり、もう一方は驚きで身を固くした。
ふっふっふ……はーっはっはっは! 気付いたみたいだな。そう、今日の味付けは一味違う!羽場さんの奥さんから、トークアプリのMINEで羽場家のレシピを教えてもらったのだ!
聞けば、羽場さん(娘)は上京してから一度も実家には帰ってないらしい。ならば、この味に懐かしさを感じる筈! いや感じて下さいお願いします!
「羽場さん(親)の奥さんから、秘伝のレシピを教えてもらったんです」
「何? お前達、いつの間に連絡を──」
「いや普通しますよ。心配してくれてましたし」
「そ、そうか……」
「それで、羽場さん(娘)に久しぶりに実家の味を食べて欲しいと思ったんです。普段の感謝も込めて」
目を見開いて固まる羽場さん(娘)に頭を下げる。
はい、ここで敵意はありませんよアピール。重要ですね。
「いつもお疲れ様です。自分の事もあるのに、監視の仕事でずっと付き添ってもらっちゃって。ホントにありがとうございます」
……ん? 反応ないな。このまま畳み掛けてみるか?
「今日のご飯は、羽場さん(娘)を大切に思ってる人がいる事を伝えたくて用意したんですよ」
羽場さん(親)の奥さんの事ですね。ちゃんと「貴方は大事な家族だよ」アピールを欠かさない点は高評価ですよ奥さん!
「俺が東城で無事に過ごせてるのは、羽場さん(娘)のお陰です。ホントに感謝してます。だから、羽場さん(娘)が頑張ってる分俺もサポートしますから」
だから殺さないで下さいね。役に立ちますよ、俺。
「これからもよろしくお願いします」
ここで笑顔! 大事なのは誠意ですよね、分かってますよ。
ど、どうだ……!? 何もアクションがこないぞ?
「遺言はもういいのか?」からの首チョンパとかされないか警戒しながら、羽場さん(娘)のご機嫌を伺う。
「……ッ」
な、泣いてる──ッ! お、俺何かやっちゃいました!?
……いや、違うか。馴染みのない地で、頼りに出来る人がいない中でひたすら自分を磨いてきたんだ。しかも、家族とも絶縁に近い状態で。心を休める時なんて、無いよな……。
沢山辛い事我慢してきたんですね。良いですよ、俺は何も見てませんから。あ、おかわりいります? どうぞどうぞ、好きなだけ食べて下さい。だから殺すのは勘弁していただけますでしょうか、へへ。
「ンンッ。あー……照真」
「あ、はい。何ですか羽場さん(親)」
羽場さん(親)が再起動した。何かやけにソワソワしてるな……羽場さん(娘)の手前カッコつけたいのか?
「あー……あれだ。同じ名字の奴を呼ぶ時、誰の事を指してるか分からないだろう」
「え? んー、まあそうかもしれませんね」
「その……だったら、オレに対しては……あれだ。別の呼び方などが、あると思うのだが?」
確かに。一理あるかもしれない。
今のままの呼び方だと、その内どっちかを呼んでいるか分からなくなりそうだしな。
「そうですね。分かりました!
支部長!」
「は?」
「え? ギルマスの方が良いですか?」
「…………いや、支部長で構わん」
おかしいな。明確に分かる呼び方をしたのに、支部長の声に力が無くなってる。
……まあいいか。ほら、羽場さんと話し合いして下さいね。拗れた親子仲を直すチャンスですよ。ただでさえ怖い顔しtアッアッごめんなさい言い過ぎました。はい、大人しく引っ込みます……。
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第2巻の発売が2/17に決定致しました。
番外編「とある男の末路」を含む二つを収録致しました。
メロンブックス様限定で特典SS「写真」を収録させていただきました。
手に取っていただけると嬉しいです。