【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第175話 対羽場焔那用作戦

 目の前で鍋が煮立ちそうになっている。

 炊飯器が、炊けた事を知らせる音を鳴らす。

 

「……平和だ」

 

 俺は今、ようやく、平和を噛み締める事が出来ている……!

 色々あった外出から終えた後の、伽藍堂先輩とシュウ(メイド)さんの襲撃。

 危なかった……何故か分からないけど危なかった。タイミング良く羽場さん達が帰って来てくれてホントに良かった。お陰で大事なナニカを失わずに済んだ。

 先輩達を部屋から叩き出したその親子は今、リビングで向かい合っている。会話は無く、俺でも分かるくらい重苦しい空気が漂っている。

 ……『クソ親父』発言してたし、家族仲は良くないんだろうな。まあ俺に突っかかってくる様子もないし、結果的に平和だな、うん。

 

「あ、羽場さん(親)。夕飯食べますか?」

 

「……ああ」

 

「羽場さん(娘)、とりあえず話は夕飯の後にしませんか? 家事終わったら、俺はとっとと引っ込むんで」

 

「……チッ」

 

 うーん、いつにも増して怖い。()()で少しでも機嫌が良くなってくれればいいけど。

 という訳で、今からスレ民考案の『胃袋ゲットだぜ!』作戦を開始する! 失敗したらスレ民のせいにすれば良いから問題ないな!

 

「それじゃあ、いただきます」

 

「いただきます」

 

「……ン」

 

 羽場さん達がおかずを口にする。

 すると、不機嫌そうだった顔が驚愕に染まり、もう一方は驚きで身を固くした。

 ふっふっふ……はーっはっはっは! 気付いたみたいだな。そう、今日の味付けは一味違う!羽場さんの奥さんから、トークアプリのMINEで羽場家のレシピを教えてもらったのだ!

 聞けば、羽場さん(娘)は上京してから一度も実家には帰ってないらしい。ならば、この味に懐かしさを感じる筈! いや感じて下さいお願いします!

 

「羽場さん(親)の奥さんから、秘伝のレシピを教えてもらったんです」

 

「何? お前達、いつの間に連絡を──」

 

「いや普通しますよ。心配してくれてましたし」

 

「そ、そうか……」

 

「それで、羽場さん(娘)に久しぶりに実家の味を食べて欲しいと思ったんです。普段の感謝も込めて」

 

 目を見開いて固まる羽場さん(娘)に頭を下げる。

 はい、ここで敵意はありませんよアピール。重要ですね。

 

「いつもお疲れ様です。自分の事もあるのに、監視の仕事でずっと付き添ってもらっちゃって。ホントにありがとうございます」

 

 ……ん? 反応ないな。このまま畳み掛けてみるか?

 

「今日のご飯は、羽場さん(娘)を大切に思ってる人がいる事を伝えたくて用意したんですよ」

 

 羽場さん(親)の奥さんの事ですね。ちゃんと「貴方は大事な家族だよ」アピールを欠かさない点は高評価ですよ奥さん!

 

「俺が東城で無事に過ごせてるのは、羽場さん(娘)のお陰です。ホントに感謝してます。だから、羽場さん(娘)が頑張ってる分俺もサポートしますから」

 

 だから殺さないで下さいね。役に立ちますよ、俺。

 

「これからもよろしくお願いします」

 

 ここで笑顔! 大事なのは誠意ですよね、分かってますよ。

 ど、どうだ……!? 何もアクションがこないぞ?

「遺言はもういいのか?」からの首チョンパとかされないか警戒しながら、羽場さん(娘)のご機嫌を伺う。

 

「……ッ」

 

 な、泣いてる──ッ! お、俺何かやっちゃいました!?

 ……いや、違うか。馴染みのない地で、頼りに出来る人がいない中でひたすら自分を磨いてきたんだ。しかも、家族とも絶縁に近い状態で。心を休める時なんて、無いよな……。

 沢山辛い事我慢してきたんですね。良いですよ、俺は何も見てませんから。あ、おかわりいります? どうぞどうぞ、好きなだけ食べて下さい。だから殺すのは勘弁していただけますでしょうか、へへ。

 

「ンンッ。あー……照真」

 

「あ、はい。何ですか羽場さん(親)」

 

 羽場さん(親)が再起動した。何かやけにソワソワしてるな……羽場さん(娘)の手前カッコつけたいのか?

 

「あー……あれだ。同じ名字の奴を呼ぶ時、誰の事を指してるか分からないだろう」

 

「え? んー、まあそうかもしれませんね」

 

「その……だったら、オレに対しては……あれだ。別の呼び方などが、あると思うのだが?」

 

 確かに。一理あるかもしれない。

 今のままの呼び方だと、その内どっちかを呼んでいるか分からなくなりそうだしな。

 

「そうですね。分かりました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 支部長!」

 

「は?」

 

「え? ギルマスの方が良いですか?」

 

「…………いや、支部長で構わん」

 

 おかしいな。明確に分かる呼び方をしたのに、支部長の声に力が無くなってる。

 ……まあいいか。ほら、羽場さんと話し合いして下さいね。拗れた親子仲を直すチャンスですよ。ただでさえ怖い顔しtアッアッごめんなさい言い過ぎました。はい、大人しく引っ込みます……。

 

=====

 

第2巻の発売が2/17に決定致しました。

番外編「とある男の末路」を含む二つを収録致しました。

 

メロンブックス様限定で特典SS「写真」を収録させていただきました。

手に取っていただけると嬉しいです。

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