【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話 作:ゲスト047562
「うわああああ!!?」
「早く親父を逃がせ! このm」
「撃て! とにかく
『オーッホッホッホ!! さあ踊りなさい、死の舞踊を!!』
『駒野組』本拠地。巨大な和風建築で作られた石垣は焼け焦げて無残な姿を晒し、中から絶叫が聞こえる。
こちらの組員が相手取っている対象は、人ではなかった。
庭園の砂利を高速で滑り、滑った跡が轍となって刻まれる。自身に向けて放たれる銃弾をドリフトでかわし、行くてを阻む人間を跳ね飛ばす。
そして。
『bomb! ですわー!』
彼女の掛け声に合わせ、爆炎と共に火柱を起こした。
爆炎を起こした物体の正体は、正式名称『パンジャンドラム』。走行能力の稚拙さを理由に欠陥兵器と蔑まれた、走る(笑)爆弾である。
しかし、その兵器らしからぬドジっ子ぶりに、一部の熱狂的なマニアが付いた。そして、そんな彼らによってあらゆる魔改造を施された結果、パンジャンドラムはどんな悪路や障害も文字通り破壊する超兵器へと変貌を遂げ、現代へ蘇っていた。
『そう! そしてガーランドウェポンズやトライティーへの多額の資金援助によって、愛らしきパンジャンを最強兵器へと生まれ変わらせたスーパーサイエンティストこそこの私、一般人通過貴族様ですわー! 今こそパンジャンの教えを布教してまいりますわよー!』
パンジャンの教えとは何だろうか。
ともかく、そんな冗談みたいな悪夢の光景に、『泰弘會』が全面戦争を仕掛けてくるとリークを受けていた『駒野組』は、分かりやすく動揺していた。
「な、何だこれ……一体何が起きてんだよ!?」
「罪の精算だろ」
袋小路まで逃げ込み息を整えていた組員は、その声に振り向く。
視点が回転する。自身の背後にいた人影を捉えたと思えば、振り向いた勢いを止められずにまた正面に戻ってくる。それでも勢いは止まる事なく、男の視界は下を向き、砂利を映した後暗くなった。
血の池が出来つつある暗がりから、長い髪を一つに束ねた男が現れる。まるで侍の様な出立ちの男の手には怪しく光る刀が握られ、赤黒い血液が滴り落ちている。
「ふっ、此度の虎徹は血に飢えておる……」
『ヴォルケ様の武器のお名前は『村正』でしてよー!』
「……せ、正式名は『虎徹村正』だし。てか俺の演出にツッコミ入れてくんなし」
「いたぞ! 爆弾魔だ! てめ──」
「ちげえし!」
刀の男、ヴォルケ。決めポーズをスカされ、パンジャンの教えを伝えようとする爆弾魔と勘違いされキレる。因みに、一般通過貴族は遠隔操作で参加している為、パンジャンドラム越しに彼と会話していた。彼が爆弾魔と間違われるのも無理はないだろう。
そんな不憫なヴォルケだが、実力は折り紙付き。刃が空を裂き、直線上の岩や壁に綺麗な断面を生む。身を含んだ物体は、激しく飛び散る事なく断面を通じて地面に静かに落ちていく。
「まっ、こんなとこか」
山積みになった死体に向け、彼は魔晶を投げ込む。
「【サモン・ウィッカーマンバロール】」
魔晶が光り、周囲の死体が取り込まれていく。成人男性程の大きさにまで圧縮された死体の塊が、内側から突き破ってきた黒い木の根に巻き付かれ、炎を纏う。
「焼き尽くせ」
炎を纏う死体人形、ウィッカーマンバロールがヴォルケの命令によって動き出し、敷地内を徘徊し始める。
「……は? なn」
第一村人もとい最初の犠牲者が、ウィッカーマンに抱きつかれる。そして、悲鳴と血の煙を出しながら黒く炭化していく。
「こっちで声がしたぞ!」
「良いから逃げろ! もうここはダメだ!」
パンジャンドラムの群れに襲われ、ウィッカーマンに炭化させられ、しかし敵の全容はまるで見えてこない。
今までの相手とは格の違う。その事に気付き我先に逃げようと玄関へ殺到する組員達の前に、一人の女性が降り立つ。
「ああもう。一応抗争に見せかけるって作戦だったのに、台無しじゃない」
ピチッと決めたスーツ姿に七三分け。磨かれたかの如く光るオデコに手を当てた彼女は、目の前の惨状を嘆いていた。
「どけえええええ!!」
「まっそれも想定内なのだけどねっ!」
半狂乱の人による雪崩。それに対して彼女が取り出したのは、不思議な武器だった。
先端がフック形状になった刀身、ナックルガードには三日月が付けられた、持ち手のあるバールの様な武器。護手鉤、護手双鉤と呼ばれる超マイナーな武器であり、『マイナー武器愛好会』というパーティの一人である彼女が得意とする得物であった。
「いきます!」
フックの部分で組員を引っ掛け薙ぎ倒す。ナックルガードで喉を裂き、人垣を作る。
玄関という狭い場所に群がる組員達を、そうして淡々と処理していく。しかし驚くべきは、その速度。
「え」
「止ッ──」
一呼吸をする間に三人が地を這う。断末魔を上げる前に正確無比な一撃が命を刈り取る。
それでいて彼女は、肉の激流を相手に
喉を潰し骨を砕き肉を抉り吹き飛ばしカチ割り……あらゆる方法で組員の肉体を弄ぶ様は、正に殺人技のバーゲンセール。
「な、何なんだこれ……!?」
『余所見厳禁ですわー! ここは怒りのデスロードですのよー!』
そうして血の臭いが周囲を満たし、四方に逃げ場が無いと理解して、ようやく気付く。
自分達は悪魔に嵌められたのだと。
しかしその相手はあまりに大きすぎて……彼らはついぞ、敵と呼べるモノに見える事無く終焉を迎えた。
「なーにが『似非武術家』だし。あんた、
『素晴らしいワザマエでしたわ! 過度な謙遜は嫌味になってしまいますわよ?』
「いえ、私は
「テメエら……ナニモンだ! 誰の差し金でこんな……!?」
屋敷を徘徊しながら呑気に話す二人と一機。ついでに追従してくる一体。
仕事を終えたばかりの彼らに横槍を入れてきたのは、屋敷の最奥にて座する枯れた老人だった。その手に握られた拳銃は煙を吹き出し、無駄な抵抗の跡が窺える。
「こんばんは、我々は──」
「死ね」
「判断が早い! 冥土の土産なんですから最期ぐらい名乗らないと!」
『結局遺骨になってしまわれますのにお優しい事ですわ』
「な、めんなあああああ!!」
老人……『駒野組』組長の前で、彼を見てすらいない彼らは言葉を交わす。
自分などハナから眼中にないと気付いた彼は怒りに震え、再び撃ちまくる。しかし、銃弾は何故か真横に飛んでいき、襖を撃ち抜いただけに終わった。
「あ……? っ……!?」
「申し遅れました。我々は世界の深淵を探す者、星の探求者。『捜星』というパーティです。手始めに、我々にとって障害となり得る暴力団を二つ潰しに来ました」
似非武術家と呼ばれた女性が何か喋っているが、歪な方向に曲げられた手首のせいで正常な思考を失っている男には、何を言っているのか理解出来なかった。
裏社会を牛耳る大物の無様な姿に、似非武術家は興味を失ったとばかりに一人と一機に提案する。その瞳には侮蔑と嫌悪、そして僅かな愉悦の光が宿っていた
「では、最後の獲物ですし全員で一緒にやりましょうか」
「えー、そこのパンジャン狂いの爆弾で全部持ってかれそうじゃん。巻き添えは勘弁してほしいし」
『あら、でしたらヴォルケ様に事前に三分割していただくのはどうでしょう。私も火力を抑えて差し上げますわ』
「私は大丈夫ですよ。あれぐらいの爆発じゃ怪我しませんから」
「……はあ?」
『……あらあら〜? 似非武術家様にはまだパンジャンの教えが満ちておりませんのね〜?』
「ざっけ……! て、めえら……ぜってぇ殺し」
「よろしいならカウントしますよ。さーん」
「にーい」
『いーち』
「地獄に落ちろおおおおおおおおおおおおお!!!」
「さーて終わった終わった。帰るかー」
『オーッホッホッホ! このまま遠隔一筋様達の下へ馳せ参じますわよー!』
「……はい。先に報告した方が良いでしょう」
恙なく終わった暴力団の殲滅。
その結末に違和感を覚えているのは、似非武術家だけだった。
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手に取っていただけると嬉しいです。