【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第181話 ドキドキ⭐︎修羅修羅ぱにっく! 〜般若を添えて〜

『昨夜未明、二つの指定暴力団による抗争が勃発しました。両者共甚大な被害を出しており、警察は付近の民間人に被害が無いか……』

 

「怖。修羅の国かよ」

 

「……」

 

『……はい? あ、只今臨時速報が入りました。東城拘置所から死刑囚、網走潮(あばしりうしお)が脱獄したとの事です。被疑者は現在も捕まっていません。皆様、この顔を見たらすぐに警察へ──』

 

「こっわ。修羅の国だぁ……」

 

「……」

 

「あ、あはは……ね〜?」

 

「……」

 

 地獄。この様相を外から眺める者は、皆そう呼ぶだろう。

 必死に空気を明るくしようとする戸張。しかし悲しいかな、彼の努力は目前に座る三人の修羅には通じないようだった。

 

「朝っぱらから人様の家に押しかけるとは、常識が欠落しているのか?」

 

 修羅その一、羽場焔那。

 DAG第一世代の英雄を父に持つ、結城世代の一翼を担う才人。

 

「年端も行かない男性のベッドに忍び込んだ貴方に言われたくないですが」

 

 修羅その二、伽藍堂叶。

 戸張との存在しない思い出を他者に送り込む、最強の血族の末娘。

 

「玄関に結界まで張ってましたよね? 部屋限定といっても、スキルまで使うのはやり過ぎじゃないですか?」

 

 修羅その三、周心輪。

 照真の趣味嗜好を全て把握し、彼好みの女の子になろうと模索する(オブラート表現)、一般家庭から生まれた怪物。

 

「え、まあ……同棲してるんですし、偶々ですよ」

 

 そしてまたしても何も知らない男、戸張照真。今回一番の被害者なのだが、何故か同情する気になれない。

 現在、リビングは異様な空気に満ちていた。原因は勿論、昨夜の焔那による戸張夜這い事件。結果は、戸張が叶によって鎖で繋がれずに朝日を拝めている事からお分かりだろうが、それはそれ。焔那の暴挙によって生まれた二匹の怪物が、羽場を狩ろうと、もしくは戸張を()()()()なりふり構わずに押し掛けてきていた。

 向かい合う三人。静けさと怒気と殺気で、窓ガラスが悲鳴をあげそうである。

 一人は飄々とした態度を崩さず、二人は能面の顔に般若を浮かび上がらせる。戸張は、世紀末な空気を何とかフォローしようと空回りを繰り返す。ヤクザも裸足で逃げ出す地獄絵図の完成だった。

 

「……そうだ。偶然だぞ」

 

「「嘘だっっっっっっ!!!」」

 

「ヒィ!?」

 

 振り下ろされた手の衝撃で、机が撓む。空の食器が宙を舞い、軽やかな音を立てる。

 歪み軋み始める空間を前に、戸張は何事も無く終わるように祈る事しか出来なかった。

 

(ケテ……タス、ケテ……)

 

 無理である。

 あちらを立てればこちらが立たず。今の三人に、戸張の言葉は焼け石に水どころか火に油を注ぐ行為。

 そう判断した彼が取った行動とは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……俺今日日直なんで……」

 

 三十六計逃げるに如かず。戦闘におけるセンスは、かの『至強』リーダーである三鶴城も認める程だ。

 

「ああ、分かった。行ってらっしゃい、照真君」

 

「分かりました。気を付けて行って下さいね♪」

 

「ハイ。あの、皆さんも……その、ホントに。気を付けて下さいね? 分かってますよね?」

 

 『誰にも肩入れしない』という戸張の判断は正しかった。二人の怒りの矛先は焔那に向けたものであって、互いに自分の男であると主張している戸張に敵意を向けるなど、する筈が無いのだから。

 そそくさと逃げ出す戸張を笑顔で送り出す。再びリビングで向き直った時、笑顔は剥がれ落ちて再び能面が露になった。

 

「さて……どういう事でしょうか。()()旦那に手を出そうとするとは」

 

「そうですよ。()()()()照真さんに手を出すのは、いくら何でも許せません」

 

「ふざけた事を吐かすな。あいつは今、恋人の一人もいないだろ」

 

「そうですね。いるのは婚約者なので」

 

「お前は何を言ってるんだ?」

 

「そもそも、あの時同盟を断ったのは貴方だった筈ですが」

 

 同盟。戸張に嫌われまいと、叶と周の間に交わされた掟。

 『必ず戸張照真を手に入れる』『逃げられない為に包囲網を形成する』というシンプルな内容。彼を射止められるなら重婚も辞さない。

 その覚悟を持って作られたのが同盟である。尚、二人は「自分こそが正妻」だと考えている点については考慮しないものとする。

 焔那は以前、叶からこの同盟の誘いを断っていた。

 

「私達の目的を聞いて『自分には関係無い』と言っていた貴方が、今更彼に手出しするとはどういう了見でしょうか」

 

「ああ……あったな、そんな事。今ならお前達が執着する意味も分かる。ずっと一緒に過ごしてきたからな」

 

「「あ?」」

 

 唐突な同棲マウント。声が低くなる。

 焔那からすれば、彼女達に唯一勝ち得るアドバンテージの為、そこを全面に押し出すのは当然である。

 

「オレは戸張照真が欲しい。それに、一番奴を分かってやれるのはオレだけだしな」

 

「まだ寝惚けているようですね。彼は私の婚約者ですが」

 

「照真さんを一番理解出来るのは家族であるアタシですよ? 誰にでも優しい人ですから」

 

「ハッ、裸の付き合いも無いのにか? オレはあるが」

 

「「あ゛あ゛ん?」」

 

 裸族を止めろを言われただけである。

 

「私は中学からずっと慕われてきた先輩ですが」

 

 そんな事実はない。

 

「アタシは運命で結ばれた家族ですけど」

 

 この言葉が真実だと証明出来るのはいつになるだろうか。

 

「……今一度、お話を伺います。同盟を組みませんか? 彼は難攻不落、生半なアタックでは振り向くどころか気付きもしないでしょう。それを逆手に取り、外堀を埋めて私達と必ず結ばれる状況にまで誘導します」

 

「それは魅力的だな。オレが一番になれる可能性が低いという点を除けば、だが」

 

「……既成事実って手段しか取れなかったくせに」

 

「お?」

 

「あ?」

 

「は?」

 

『…………』

 

 三者三様、それぞれの想いを彼女達は語り合う。

 その光景を第三者、或いは掲示板の住民は、こう名付けるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修羅場と。

 

 

=====

 

第2巻発売中です。メロンブックス様限定で特典SS「写真」を収録させていただきました。

手に取っていただけると嬉しいです。

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