【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話 作:ゲスト047562
「名新屋の特産品とか、お土産って何ですっけ?」
「知らん」
「俺がいないからってハメを外し過ぎないで下さいね。ちゃんとお土産買ってきますから」
「オレは子供か。いるか」
荷物の準備は万端。夏休みの補習も乗り越えた。宿題は、暇な時に向こうで済ませるとして、これで大丈夫かな。
後は羽場さんの食事事情が心配だけど……作り置きしたご飯、ちゃんと食べてくれるよな? 残したら起こりますよ?
「ほら、早く行け。新幹線の時間があるだろ」
「あ、そうですね。それじゃ、行ってきまーす」
「ん」
羽場さんの見送りを受け、家を出る。
久しぶりの遠出だから、少し緊張するな……まだ時間に余裕はあるけど、予約してある新幹線の時刻とかちゃんとチェックして、早めに移動しよう。
「にしても、今度は新幹線で名新屋かぁ……」
また随分遠いなぁ。山櫛から東城も遠かったのに、まさか東城から名新屋に行く日が来るとは。
正直、一年も経たない内にこんなに何回も遠出をする事になるなんて思わなかった。しかも今回は、ガーランドウェポンズと双璧をなす大企業からの正式なコラボ。緊張するなというのが無理な話だ。
「……え。菓子折りとかいる?」
どどどどどうする!? 何も用意してなかった! 東城駅で何か買った方が良いか? いやでも別に挨拶じゃなくてあくまで対等なコラボだし……。
「やあ照真君、おはよう」
「んえ?」
悩みながらマンションを出た所で、先輩の声が。
顔を上げると、いつもと姿が違う先輩がいた。
麦わら帽子にサングラス、白いワンピース姿。如何にも夏休みを満喫する気満々の出立ちだ。透き通る様な白い肌とのダブルコンボで、凄く眩しい。
「おはようございます、叶先輩」
「! ふふ……ああ、おはよう。こんな朝早くに家を出るのは珍しいね?」
あ、マズい。今回のコラボ相手は、GWの敵なんだよな……。今まで先輩と仲良くさせてもらった手前、あまりそんな事を言いふらしたら駄目だ。
それに、情報は何処から漏れるか分からない。通りすがりのスレ民が、『スイッチ、東城駅で見たよwww』なんてスレで教える可能性だってあるのだ。アイツらならやる。だって俺が自分でしたもん。
ここは一先ず、穏便かつスマートな返事で煙に撒こう。
「あ、あはは。まあ夏休みですし、補習も終わったから、ちょっと遠くのダンジョンまで行こうかな〜って……」
うん、嘘は言ってない。完璧な解答だ……!
「それより、先輩もお出かけですか? 綺麗ですね、似合ってますよ」
「……ふふふ。ありがとう、その言葉が聞けただけでも、この服を選んで良かったと思えるよ。私も今から東城を出るところなんだが、良かったら途中まで一緒に行かないかい?」
「え、良いんですか?」
その申し出は有り難い。東城駅はダンジョンにも劣らない
正直、東城駅は迷う自信しか無かったから、土地勘のある先輩が案内してくれるのは凄く助かる。
「ありがとうございます。俺、新幹線は小学校の修学旅行くらいで……」
「気にしないでくれ。私達の仲じゃないか」
「あはは、そうですね」
二人で並んで、東城駅まで歩いて行く。
遠出をするというのに、何だか穏やかな空気だ。いつもと変わらない日々を過ごしているみたいで、少し心が落ち着く。
……良いお土産とか聞いたら駄目だよなぁ。誰に渡すのか絶対聞かれるし。
「どうしたんだい?」
「あ、何でも無いです」
「照真さーん!」
東城駅に着いた時、またもここ最近で聞き馴染んだ声。
俺達に大きく手を振りながら、周さんが走ってきた。
お、おお……! ノースリーブの服だから、山が! 山脈が大移d「ん?」
「ハイ! おはようございます!」
「アハハ、どうしたんですか?」
「その服似合ってますね!」
「ありがとうございます!」
ふう、危ない危ない。見慣れてきた光景とはいえ、やっぱり動くモノに目がいっちゃうからね。ほら、俺も男ですから。
というか、どうしてここに?
「……もしかして、周さんも旅行ですか?」
「はい! 奇遇ですね」
「ああ、凄い偶然だね。皆が同じ日に旅行するなんて」
「へー、ホントですねぇ」
珍しい偶然もあるものだ。けどまあ、夏休みは学生にとって旅行シーズンなんだし、こういう事もあるか。旅行行った事無いけど。
お馴染みの面子が揃ったところだが、早速分かれる。俺はもう予約の新幹線があるし、二人の旅行の邪魔をして新幹線に乗れなかったら困るしな。
「えーっと……八のB……八のB……ここか」
いやー時間に余裕を持って出てきて良かったー。ちゃんと予約されてる車両に間に合ったし、駅の構内の観光も少しだけ出来た。
後は名新屋までゆっくり……。
「やあ、先程ぶりだね」
「奇遇ですね♪」
「ん?」
さっき分かれたばかりの二人がやって来た。そして、何の迷いも無く両隣に陣取る。
「え、あ、え?」
「隣席同士、よろしくね」
「あっ、名物のスッゴクカタイアイスありますよ」
あの結構気まずいんですけど。こんな偶然あります? 何で二人共驚いてないんですか?
「ほ、ホントに凄い偶然ですねー……」
「ああ。だが知人がいれば、自然と気も紛れるだろう?」
「アタシも緊張してたから、照真さんがいてくれて助かりました」
「そ、そうなんですか」
そこは先輩も仲間に入れてあげて下さいね?
おかしい……う、うん。気を取り直そう。流石に同じ駅で降りるって事は無い筈だし、名新屋で降りればそろそろ……。
「案外速いものだね」
「アタシ名新屋は初めて来ました」
「おかしいですよねぇ!?」
最初から最後まで目的地が同じ事ある!? どう考えても仕込まれてるでしょ! 誰だリークしたの! スレ民か!?
「どうしたんだい? 確かに
「重なり過ぎたら必然ですよ! 今はどっちかというと怖い方が勝ってますからね!?」
この間のメイドさん事件や早朝襲撃事件やら、最近の先輩は少しおかしい気がする……暑さで頭をやられたんですか? もう秋が無くなるくらい暑いですからね。
恐怖で足が後ずさって行く。すると、途端に二人がしおらしくなる。
「……照真さんは、アタシといるのが嫌でしたか?」
「え? いやそういう訳じゃ」
「そうか……そんなに苦痛を感じさせてしまったのか。すまない、私の配慮が足らなかったばかりに」
「足りないのは配慮じゃなくて遠慮で」
「ごめんなさい……アタシ達、ここまでなんですね。さよなら……!」
「待て待て待ってええええええええええ!!??」
その別れ方はマズいって! 公衆の面前でカップルの破局みたいに見えちゃうって!!
慌てて二人の腕を掴んで引き止める。
「大丈夫ですから! ホントにちょっと驚いただけですから! 別に嫌じゃないですから!!」
「じゃあ横失礼しますね♪」
「それじゃあ私も」
「エエエエエエッッ!!?」
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は涙を堪えながら去ろうとする二人の手を掴んだと思ったら、いつの間にか宇宙人の如く腕を組まれていた!
な、何を言ってるのか俺も分からない……。
「ふふ」
「えへへ」
……まあ、二人が嬉しそうなら良いんですけど。というか良いんですか? 俺にばかりかまけてないで、そろそろ自分達の予定に戻った方が良いのでは?
「あの、俺そろそろ待ち合わせがあるんで……」
「じゃあ途中まで一緒に行こうか」
「あはは、もう大丈夫ですよ。お二人は旅行楽しんできて下さいね」
「いえいえ、アタシもこの後はまだ……」
「お兄ちゃあああああああああああああん!!!」
甲高い声が響く。何事かと声のする方向を向けば、小学校高学年くらいの女の子が俺に飛びかかってきていた。
人型の砲弾が、俺の腹部にスッポリと収まる。
「グフッ」
「本当にお兄ちゃんだぁ。ウフフ、hshshshsh……」
「おい」
先輩が恐ろしい程の無表情で、飛んできた女の子を引っぺがす。
最初の勢いとは裏腹にあっさりと離れた少女は、髪や衣服を整えて綺麗な一礼をしてみせた。
可愛らしい子だ。背丈は小学生の高学年くらいで、エメラルドグリーンな長い髪をウェーブにしている。外国の人の血が入っているのか、少しツンとした顔をしているが、童顔過ぎてイヤイヤ期の赤ん坊みたいな可愛らしさがある。
この子が、ガーランドウェポンズのライバル企業、トライティーの……。
「初めまして、スイッチ様。
「よろしくお願いします。
その前にお兄ちゃんって何ですか?」
「貴方様が、
「?????」
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PS:作者より
新規で見てくださる方が増えてきたので、少しだけ更新してみようかなと思いました。
本になっているので、良ければ買っていただけると嬉しいです。3巻が出るかもしれないので。
ついでに、新しいシリーズも少し書いてますので探して下さると嬉しいです。