【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第188話 集いし星々

 戸張が田中ヨルフィの家に着いた時を同じくして、東城。

 都内某所のコンクリートジャングル。その中に点在するレンタルオフィスにて、DAG上層部の思惑を叩き潰す為の非公式パーティ、『捜星』の面々が顔を揃えていた。

 

「……改めて見ると、凄え連中が揃ったもんだな」

 

 彼らの先陣を切って13号の牙を爆散させた男、黒木が居並ぶ面子を見ながら感嘆の息を漏らす。

 

「なんや、東城は肌に合わんおもとったけど、意外と悪うないやん。えらいヤバーいのがぎょうさんおって、見てて飽きんわ。お義兄さん僕に妹さんを下さい君も、そう思うやんな?」

 

「……あの。そろそろ勘弁してくれません?」

 

「今日集まったのって、この人の公開処刑の可能性ないか?」

 

 黒木や遠隔一筋、ヴォルケなど、パーティに属さない在野の強豪。

 

「お子さん、何才になったんだったか」

 

「もう小二ですよ。あの日から、時間の流れが早く感じます。嬉しいやら焦るやら……」

 

「今度、『至強(ウチ)』に連れてきてくれよ。リーダーもきっと喜ぶ」

 

「はは、その内ね。あ、ありがとうございます」

 

「もったいないお言葉にございます」

 

 名実共に国内最高峰のパーティで隊を纏め上げる猛者に、メイド姿で給仕をしているが、その実はパーティリーダーを務める程の実力を持つ怪物。

 

「何じゃ何じゃ、お主もこの会に参加しとったのか! お? 伝承者(はなしずき)を名乗りおって、どの辺が変わったんじゃ。この無口な唐変木めが」

 

「……見た目は幼くなっても、中身は相変わらずだな。頭の小さくなった老人が、己をまだ小学生と呼称しているとは……世も末らしい」

 

「その本と一緒にバラバラにされたいか? お?」

 

 まだダンジョンアタックの為の装備が整っていなかった、苛烈な時代を生き残った死なずの化石。

 同じ場所に集うには、あまりに人間性が違い過ぎ、あまりにも(色んな意味で)強過ぎる。

 その様な化け物達が今、自分達を従える主の到着を待ち続けていた。

 

「オーホッホッホ! 何たる豪華絢爛なお歴々なのでしょう! 一般通過貴族たる私、少々お花を摘みに行く回数が多くなってしまいそうですわー!」

 

「……ああ、うん。そう」

 

「そこなメイド様ー! 私と黒木様にもお代わりをお願いしますわー! ついでに新しいお茶菓子も!」

 

「亜継です。只今参りますので、少々お待ちくださいませ」

 

「ええいうるせえ。耳元で叫ぶな」

 

 いつの間にか隣に座っている、豪奢な縦巻きロールの金髪を揺らすお嬢様。しかし、とても上品とはいえない態度と声の大きさが、気品のある姿を台無しにしている。

 そんな彼女の喧しい口撃をあしらいながら、黒木はこのカオスな空間をどうやり過ごそうかと思案していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは」

 

 

 

 

 

 その緩慢な考えは、たった一言で終焉を迎えた。

 黒木だけではない。全員の動きが止まり、入室してきた存在に強制的に意識を向けさせられる。

 

「皆さん、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」

 

 四つ星以上のダンジョンアタッカーという、限られた者にのみ許された超人達。

 多くのダンジョンアタッカーが三つ星以下の星数で生涯を終える中、その壁を叩き壊し、或いは乗り越える力と才を与えられた、真の特別。

 今日、この場に集められた者達は、全員がそれぞれ特別な才能と、それに見合う格を持つ者達だ。

 そんな彼らの格が、たった一言で理解させられた。

 

「はじめまして。あの掲示板のマスター兼、『捜星』リーダーの伽藍堂結城です。今日はよろしくお願いします」

 

 この男は、次元が違う。

 初めて見る者や噂程度しか知らなかった者は、彼から放たれる圧倒的な覇気に息を呑み、改めて相対する者も彼の浮かべる笑みの前に屈する。

 唯一、彼に普段から付き従っている亜継だけが伽藍堂に一礼し、何事も無かったかの様に側に仕える。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

「ありがとう、亜継さん」

 

 時が止まった室内。伽藍堂が緩やかな動作で席に付き、威圧感が消失した事で、ようやくそれぞれの時間が動き出す。

 

(……相変わらず、冗談みたいな空気してるな。人としての密(・)度(・)が桁違いだ……!)

 

「では、これから『捜星』オフライン会議を執り行います。よろしいですか?」

 

「あ、あの! その前に一つ、いっすか?」

 

 恐る恐る手を挙げたのは裁定者(パニッシャー)。

 まだ全員の緊張が解けきってない時に彼へ尋ねるこ事が出来るその胆力は、伊達にパーティを率いてはいない証だろう。

 

「何かな? 裁定者さん」

 

「今日集まったのって、逃げた7号の件じゃなくて『捜星』の今後の動きについて……で合ってるっすよね?」

 

「うん」

 

「あの……悠長過ぎないっすか? 確かに、コテハンの付いてないメンバー全員が探してるっっつったって、いつ一般人に被害が出るか……」

 

「ふふ、良い質問だね」

 

 伽藍堂が笑みを浮かべる。突然美しい笑みを向けられ、裁定者の顔が赤く染まる。

 

「7号……網走潮(あばしりうしお)の動向だけど、これといって協議出来る状況じゃない。彼は牙だった頃の経験から、監視カメラの位置を把握して動いてる。警察が捜査網を敷いているし、僕達が無理に介入したら『捜星』の存在がバレてしまうリスクにも繋がる。だから、あくまで自然な流れで彼を追い詰めた方が得策なんだ。彼も指名手配されてるのは理解している筈、進んで人前に出て被害を出す様な真似はまだ出来ないさ。今はそれで納得してくれないかな?」

 

「……あ、あ。ウス」

 

(半分くらい聞いてなかったこれ)

 

 狼狽える裁定者の様子とかつての自分の姿が重なり、黒木は勝手に同情する。

 同時に、憐憫の情を覚える。裁定者にではなく、今絶賛逃走中の網走に対して。

 

(大人しく俺達に殺されておけば良かったな……この人に狙われた時点で、勝ち目なんかある訳ないのに)

 

 7号はまだ知らない。自分に向けられている殺意の数を。

 絞首台に登るだけだった死刑囚が、死ぬついでに一人の命を奪っただけ。その程度の認識ではあり得ないレベルの化け物共が、血眼になって己の行方を探している事など、分かる筈が無いのだ。

 

(この会議が無きゃ、俺も参加してたんだけどな……流石にマスターの言う事は拒めないな)

 

「良いですか? 他の質問はまた後で受け付けますから、急がなくて良いですよ」

 

「ご主人様、スイッチ様が新しいスレッドを建てられたようです」

 

「ん?」

 

「ああ、ありがとう。叶が掲示板に来たらまた声をかけて」

 

「かしこまりました」

 

 ここに至ってかなりプライベートな報告に、全員の目が点になる。

 スイッチは分かる。彼は今やDAGの名物ムーバーであり、色んな意味で話題に事欠かない。かく言う黒木も、ダンジョンアタッカー特有のプライドが故に誰にも言ってないが、彼のチャンネルをこっそり登録してその配信を酒の当てにしている。

 が、伽藍堂結城が他人にそれ程入れ込む姿はまるで想像出来ない。亜継は慣れた様子で済ましているが、彼女は深淵に触れすぎて感覚が麻痺しているのかもしれない。

 あ(・)の(・)伽藍堂が興味を示した、スイッチの掲示板。

 まあ? 別に? ちょっとした興味だけど? 強者の振る舞いを学ぶ為にもね? 的な様子で、視線だけスマホに目を移して検索をかけると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【急募】ワイ将、ゴージャスな部屋での休み方知らな過ぎ問題www【スレ民】

 

「……」

 

(み、見てえ〜……! 何やってんだスイッチ。相変わらず話題が尽きないな。てか、今もしかしてスイッチと喋るチャンスか? スキルとか色々聞きてえし……)

 

「失礼。それでは、記念すべき第一回『捜星』会議を始めましょう」

 

 黒木、誘惑と苦悶の耐久レース。スタート。

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