【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第192話 祝! 初めてのコラボ配信!

「お兄ちゃん。コラボの事なんだけど……こういうのはどうかなって」

 

「ん?」

 

 一晩明け、昨日と同じように食事を共にした俺は、開口一番ヨルフィに話を切り出された。

 

「私(ワタクシ)やお兄ちゃんって、基本的にダンジョンアタックの配信しかしてないじゃない? 後は料理だったり勉強会だったり……」

 

「あー、確かに。俺が他に見せれる事って、それぐらいだし……」

 

「けれど、この前『至強』の三鶴城様と配信をしたでしょ? その時に思い付いたんだけれど、普段から観に来て下さっている方だけじゃなく、新規視聴者の獲得を目指した配信が良いかなって」

 

「……なるほど! 折角のコラボなんだし、特別感が欲しいって事か」

 

「うん、そう!」

 

 確かに今までの配信は、あくまで俺が知ってる、或いは出来る範囲でしかやってこなかった。コラボだって、DAGの繋がりから生まれていたものだし、自然とダンジョンアタック関連になってたし。

 そう考えると、三鶴城さんとやった様に、俺が相手側に合わせる配信は確かに良いと思う。

 

「それじゃあ、どんな内容が良いと思う?」

 

「任せて! 実はお兄ちゃんの同意だけが必要だったから、用意は殆ど出来てるの」

 

「え、そうなの?」

 

 いやぁ、ホントに流石だ。視聴者の事も考えながら段取りまでしっかりしてるなんて、俺よりもちゃんとしたムーバーだ。

 ……俺、行き当たりばったりな配信しかしてないな。年下に計画性の無さを分からせられてる……。

 

「予(・)約(・)も済ませてるから、早速行こっ! お兄ちゃん」

 

「はーい……って、まだ朝の七時だけど。お店空いてないんじゃ」

 

「だから行くの。エリー、車を回してきて!」

 

「ふぁ、ふぁい……!」

 

 いきなり名前を呼ばれた真野さんが、パンを捩じ込みながら慌てて駆け出していく。

 そんな急がなくても大丈夫ですよ。まだ朝ですsいねえ! 速いなあの人!?

 彼女が出て行くのを合図に、使用人の皆さんが一斉に片付けを始める。そのままの勢いで俺もクリーニングを受け、広間を出る時には荷物まで持って準備万端な状態にされていた。

 あまりにスムーズな連携で感動してしまう。皆さん凄い綺麗な動きだったな……家政夫としては負けられない、しかし見習うべき動きだ。家政夫じゃないけど。

 

「さあ行くわよ! 夏休み特別配信に!」

 

 ヨルフィの弾む様な声がこだまする。

 全身からウキウキとした気分が伝わってくる。それだけ、今日のコラボを楽しみにしてくれてたのか。

 ……いや。立派に屋敷を仕切っていても、彼女はまだ中学生。たまには普通の女の子として、羽目を外したい時があるのかもしれない。

 まだお店も空いてない時間から出掛けるのは、彼女なりの現実逃避なんだろうか。

 勝手な思い込みだと思う。けど俺は、彼女のお兄ちゃんなんだ。ならば、少しでも頼れる兄貴分として彼女を支えてあげたい。

 

「おー!」

 

 さあ、今日は気合い入れて頑張るぞ!

 

     ◇

 

「皆様、ご機嫌よう。トライティーの明日を担う、田中ヨルフィよ。今日は訳あって、朝早くから配信をさせてもらうわ」

 

“おはよー!”

“きちゃ!”

“今日早いね”

“ゼッターから来た”

“コラボコラボコラボ”

 

「ふふふ。そう、遂にこの日が来たわ! かねてから匂わせていたコラボよ! 今最も熱いダンジョンアタッカーが、ゲストとして私(ワタクシ)のホームグラウンドである名新屋に来て下さったの」

 

“お、キタキタ”

“ヨルフィちゃんかわええな”

“声響くな”

“え、この子ダンジョンアタッカーなの?”

“winner:何処だ”

“おはようヨルフィちゃん! 今日も可愛いね”

“今日はダンジョンじゃないのかな?”

 

「早速お呼びしましょう! 今回のゲスト兼私(ワタクシ)のお兄ちゃん! スイッチ様〜!」

 

“うわ出た”

“お兄ちゃん!?”

“winner:は?”

“おかしい。お兄ちゃん枠は俺の筈……”

“様子のおかしい人です”

 

「はーい、スレ民の皆さんやっほーです。スイッチでーす」

 

“おーす”

“どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!!”

“声響くからうるさいな”

“え、ガチの兄妹? それともネタ?”

“ガチな訳ないだろ”

“おっすおっす”

“お、珍生物じゃん”

“よく寝れたかスイッチ”

 

「今日は、初めて他の人のチャンネルにお邪魔してまーす。後お兄ちゃんっていうのは勿論ネタだから、変な誤解はしないようにお願いしますね」

 

「そうよ! 血縁関係は無いから問題ないわ!」

 

“うん……うん?”

“winner:あ?”

“そうかな……そうかも”

“これアカンのでは”

“初っ端から飛ばすな”

“これ炎上案件か?”

“悲しいが燃えるかと言われたらうーん……”

 

「よろしくね、お兄ちゃん」

 

「うん……それは良いんだけど」

 

「今日は初コラボを記念して、シ(・)ョ(・)ッ(・)ピ(・)ン(・)グ(・)モ(・)ー(・)ル(・)を(・)一(・)時(・)貸(・)し(・)切(・)っ(・)て(・)配(・)信(・)し(・)て(・)い(・)る(・)わ(・)」

 

「スケールおかしくない?」

 

「え?」

 

“えじゃないのよ”

“そこショッピングモールかよwww”

“あー見たことあると思ったらジャイコかそこ”

“winner:良し分かった”

“名新屋のジャイコを貸切、だと……”

“分かっちゃいけない人がいるんですが”

 

「大丈夫。貸切と言っても開店前の時間だけで、普通にジャイコは営業するわ。それにジャイコにはトライティーも出資しているの。貸し切ってる間のスタッフの給料もこちらが負担するから、誰一人迷惑をかけてないわ」

 

「え? 俺がおかしいと思われてる? そうじゃなくて、ジャイコ貸切は聞いてないんだけど。コラボの規模じゃないよ?」

 

「あら? ゲストを迎える時はサプライズを用意するのが、お兄ちゃんの配信でしょ?」

 

「そんなノルマは無い」

 

“草”

“またしても何も知らないスイッチさんで草”

“サプライズの為に店舗貸切はやばすぎるやろ”

“ああうん、スイッチの視聴者だな”

“今日は大分はっちゃけてるな”

“この常識の振り切れ方は紛れもなくスレ民だわ”

“だから夏休みキッズしか観れない様な時間なのかよww”

“嘘やん”

“他をキッズ呼びするお前は何なんだよ”

“↑↑↑働け”

 

 ジャイコは俺も知ってる超大型ショッピングモール。場所によってその規模は変わるが、名新屋にあるジャイコはかなり大きい。

 それを、一部とはいえ貸切は俺の知ってる配信じゃないです。

 そう思うと、オーバードウェポンを宣伝で俺に貸してくれた先輩って、金銭感覚はまともだったのか。

 うーん、正直ここまで金銭感覚が違うと、将来が心配になってくる。いくらお金持ちでも、その財産は有限なのだから。

 

「……ヨルフィ。お金はもっと大事に、ちゃんと使わないと駄目だぞ?」

 

「え?」

 

 彼女の肩に手を置き、目線を合わせる。

 俺の言葉が理解出来なかったのか、彼女はキョトンと目を瞬かせた。

 

「そのお金は、全部が全部ヨルフィが稼いできた訳じゃないだろ? 父さんや色んな人達が頑張って頑張って、少しずつ積み上げてきた大きな山だ。それを削るばっかりだと、山はいつか崩れて無くなっちゃう。だから、もっと計画的に使おうな?」

 

「……うん。ごめんなさい、お兄ちゃん。私(ワタクシ)、お兄ちゃんと会えるのが嬉しくて……」

 

「あはは、俺はお金なんかよりも、その気持ちの方が嬉しいから。お金は使うのも良いけど、自分で貯めた時に初めて価値が分かるからな。今度は、もっとお金の使い方を知っていこうな?」

 

「うん!」

 

“てぇてぇ……”

“おいこらロリコンがよ”

“お兄ちゃん度高いですね”

“凄いな。まるで邪念が見えない”

“スイッチが真面目だと違和感あるな”

“俺の知ってるスイッチがいないぞ。偽者か”

“肩に手を置くのはやり過ぎでは?”

“兄妹なんだから良いだろ”

“おお、兄貴してる”

“いや逆に良くないでしょ”

“お金は大事と存じます”

“スイッチはその辺苦労してるからなー”

“winner:離れろ”

 

 五月蝿いぞスレ民。俺はいつも真面目でしょうが。後ロリコンじゃない、期間限定お兄ちゃんだ。

 

「ん、良し! それじゃあヨルフィ、今日は一体どんな企画を持ってきたのかな?」

 

「はーい! 今回のコラボはズバリ! お兄ちゃんのファッションショーを開催するわ!!」

 

「おーパチパチパチー」

 

“ファッションショーか。無難やな”

“確かにスイッチずっと同じ服だもんな”

“DAGのTシャツシリーズしか持ってないからいんじゃね? w”

“スイッチのファッションセンスは気になる”

 

「それじゃあお兄ちゃん。まずは自分の好きな服を試着してきてくれる? 私(ワタクシ)も、お兄ちゃんに合いそうな服を持ってくるから、見せ合いっこしよ?」

 

「ん? 分かった」

 

 服かぁ〜、いつも買ってくれた物か、父さんのお下がりのダルダルな奴しか着なかったから、自分で選ぶのは初めてだな。

 って言っても、所詮服でしょ? 何選んでも同じだと思うけど。

 

 ──数分後。

 

「じゃーん。どう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……顔は最高だよお兄ちゃん!」

 

「服の感想は?」

 

“ええ……”

“赤青チェック+紫オレンジストライプのチノパンはキツイ”

“うわぁ”

“この服装にいつものバックが更に痛々しい”

“ダッッッッッッッッサ”

“ガラモノばっかやん”

“パッチワークが失敗したモンスターか?”

“お前視覚バグってんのか?”

“ごめんきもいわ”

“危険色発してる昆虫みたい”

“ダサすぎて滅っ!”

“色に統一性無さすぎて目が痛いわ”

 

「はぁ? スレ民だってどうせこんな服しか着てないでしょ!? 好きな色が全部入った服の何が悪い!」

 

“全部”

“全部や”

“服はお子様ランチじゃないのよ”

“草”

“お前と一緒にすんなカス”

“寧ろ良く見つけたなww”

“ガチでポンコツやんwww”

“流石にスイッチと同じ感覚で服選んでねえんだわww”

“お前……自分で服選んだ事無いな?”

“全部駄目だろ”

“凄いな。たった数分で株価乱高下してるぞ”

 

「私(ワタクシ)が……私(ワタクシ)が何とかしなきゃ……!」

 

 そんなマズイ!? 俺のセンス普通じゃないの!? 嘘でしょ!?

 

 

 

=====

 

 書籍2巻発売中です。是非買って下さいね。

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