【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話 作:ゲスト047562
「お兄ちゃん。コラボの事なんだけど……こういうのはどうかなって」
「ん?」
一晩明け、昨日と同じように食事を共にした俺は、開口一番ヨルフィに話を切り出された。
「
「あー、確かに。俺が他に見せれる事って、それぐらいだし……」
「けれど、この前『至強』の三鶴城様と配信をしたでしょ? その時に思い付いたんだけれど、普段から観に来て下さっている方だけじゃなく、新規視聴者の獲得を目指した配信が良いかなって」
「……なるほど! 折角のコラボなんだし、特別感が欲しいって事か」
「うん、そう!」
確かに今までの配信は、あくまで俺が知ってる、或いは出来る範囲でしかやってこなかった。コラボだって、DAGの繋がりから生まれていたものだし、自然とダンジョンアタック関連になってたし。
そう考えると、三鶴城さんとやった様に、俺が相手側に合わせる配信は確かに良いと思う。
「それじゃあ、どんな内容が良いと思う?」
「任せて! 実はお兄ちゃんの同意だけが必要だったから、用意は殆ど出来てるの」
「え、そうなの?」
いやぁ、ホントに流石だ。視聴者の事も考えながら段取りまでしっかりしてるなんて、俺よりもちゃんとしたムーバーだ。
……俺、行き当たりばったりな配信しかしてないな。年下に計画性の無さを分からせられてる……。
「
「はーい……って、まだ朝の七時だけど。お店空いてないんじゃ」
「だから行くの。エリー、車を回してきて!」
「ふぁ、ふぁい……!」
いきなり名前を呼ばれた真野さんが、パンを捩じ込みながら慌てて駆け出していく。
そんな急がなくても大丈夫ですよ。まだ朝ですsいねえ! 速いなあの人!?
彼女が出て行くのを合図に、使用人の皆さんが一斉に片付けを始める。そのままの勢いで俺もクリーニングを受け、広間を出る時には荷物まで持って準備万端な状態にされていた。
あまりにスムーズな連携で感動してしまう。皆さん凄い綺麗な動きだったな……家政夫としては負けられない、しかし見習うべき動きだ。家政夫じゃないけど。
「さあ行くわよ! 夏休み特別配信に!」
ヨルフィの弾む様な声がこだまする。
全身からウキウキとした気分が伝わってくる。それだけ、今日のコラボを楽しみにしてくれてたのか。
……いや。立派に屋敷を仕切っていても、彼女はまだ中学生。たまには普通の女の子として、羽目を外したい時があるのかもしれない。
まだお店も空いてない時間から出掛けるのは、彼女なりの現実逃避なんだろうか。
勝手な思い込みだと思う。けど俺は、彼女のお兄ちゃんなんだ。ならば、少しでも頼れる兄貴分として彼女を支えてあげたい。
「おー!」
さあ、今日は気合い入れて頑張るぞ!
◇
「皆様、ご機嫌よう。トライティーの明日を担う、田中ヨルフィよ。今日は訳あって、朝早くから配信をさせてもらうわ」
“おはよー!”
“きちゃ!”
“今日早いね”
“ゼッターから来た”
“コラボコラボコラボ”
「ふふふ。そう、遂にこの日が来たわ! かねてから匂わせていたコラボよ! 今最も熱いダンジョンアタッカーが、ゲストとして
“お、キタキタ”
“ヨルフィちゃんかわええな”
“声響くな”
“え、この子ダンジョンアタッカーなの?”
“winner:何処だ”
“おはようヨルフィちゃん! 今日も可愛いね”
“今日はダンジョンじゃないのかな?”
「早速お呼びしましょう! 今回のゲスト兼
“うわ出た”
“お兄ちゃん!?”
“winner:は?”
“おかしい。お兄ちゃん枠は俺の筈……”
“様子のおかしい人です”
「はーい、スレ民の皆さんやっほーです。スイッチでーす」
“おーす”
“どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!!”
“声響くからうるさいな”
“え、ガチの兄妹? それともネタ?”
“ガチな訳ないだろ”
“おっすおっす”
“お、珍生物じゃん”
“よく寝れたかスイッチ”
「今日は、初めて他の人のチャンネルにお邪魔してまーす。後お兄ちゃんっていうのは勿論ネタだから、変な誤解はしないようにお願いしますね」
「そうよ! 血縁関係は無いから問題ないわ!」
“うん……うん?”
“winner:あ?”
“そうかな……そうかも”
“これアカンのでは”
“初っ端から飛ばすな”
“これ炎上案件か?”
“悲しいが燃えるかと言われたらうーん……”
「よろしくね、お兄ちゃん」
「うん……それは良いんだけど」
「今日は初コラボを記念して、
「スケールおかしくない?」
「え?」
“えじゃないのよ”
“そこショッピングモールかよwww”
“あー見たことあると思ったらジャイコかそこ”
“winner:良し分かった”
“名新屋のジャイコを貸切、だと……”
“分かっちゃいけない人がいるんですが”
「大丈夫。貸切と言っても開店前の時間だけで、普通にジャイコは営業するわ。それにジャイコにはトライティーも出資しているの。貸し切ってる間のスタッフの給料もこちらが負担するから、誰一人迷惑をかけてないわ」
「え? 俺がおかしいと思われてる? そうじゃなくて、ジャイコ貸切は聞いてないんだけど。コラボの規模じゃないよ?」
「あら? ゲストを迎える時はサプライズを用意するのが、お兄ちゃんの配信でしょ?」
「そんなノルマは無い」
“草”
“またしても何も知らないスイッチさんで草”
“サプライズの為に店舗貸切はやばすぎるやろ”
“ああうん、スイッチの視聴者だな”
“今日は大分はっちゃけてるな”
“この常識の振り切れ方は紛れもなくスレ民だわ”
“だから夏休みキッズしか観れない様な時間なのかよww”
“嘘やん”
“他をキッズ呼びするお前は何なんだよ”
“↑↑↑働け”
ジャイコは俺も知ってる超大型ショッピングモール。場所によってその規模は変わるが、名新屋にあるジャイコはかなり大きい。
それを、一部とはいえ貸切は俺の知ってる配信じゃないです。
そう思うと、オーバードウェポンを宣伝で俺に貸してくれた先輩って、金銭感覚はまともだったのか。
うーん、正直ここまで金銭感覚が違うと、将来が心配になってくる。いくらお金持ちでも、その財産は有限なのだから。
「……ヨルフィ。お金はもっと大事に、ちゃんと使わないと駄目だぞ?」
「え?」
彼女の肩に手を置き、目線を合わせる。
俺の言葉が理解出来なかったのか、彼女はキョトンと目を瞬かせた。
「そのお金は、全部が全部ヨルフィが稼いできた訳じゃないだろ? 父さんや色んな人達が頑張って頑張って、少しずつ積み上げてきた大きな山だ。それを削るばっかりだと、山はいつか崩れて無くなっちゃう。だから、もっと計画的に使おうな?」
「……うん。ごめんなさい、お兄ちゃん。
「あはは、俺はお金なんかよりも、その気持ちの方が嬉しいから。お金は使うのも良いけど、自分で貯めた時に初めて価値が分かるからな。今度は、もっとお金の使い方を知っていこうな?」
「うん!」
“てぇてぇ……”
“おいこらロリコンがよ”
“お兄ちゃん度高いですね”
“凄いな。まるで邪念が見えない”
“スイッチが真面目だと違和感あるな”
“俺の知ってるスイッチがいないぞ。偽者か”
“肩に手を置くのはやり過ぎでは?”
“兄妹なんだから良いだろ”
“おお、兄貴してる”
“いや逆に良くないでしょ”
“お金は大事と存じます”
“スイッチはその辺苦労してるからなー”
“winner:離れろ”
五月蝿いぞスレ民。俺はいつも真面目でしょうが。後ロリコンじゃない、期間限定お兄ちゃんだ。
「ん、良し! それじゃあヨルフィ、今日は一体どんな企画を持ってきたのかな?」
「はーい! 今回のコラボはズバリ! お兄ちゃんのファッションショーを開催するわ!!」
「おーパチパチパチー」
“ファッションショーか。無難やな”
“確かにスイッチずっと同じ服だもんな”
“DAGのTシャツシリーズしか持ってないからいんじゃね? w”
“スイッチのファッションセンスは気になる”
「それじゃあお兄ちゃん。まずは自分の好きな服を試着してきてくれる?
「ん? 分かった」
服かぁ〜、いつも買ってくれた物か、父さんのお下がりのダルダルな奴しか着なかったから、自分で選ぶのは初めてだな。
って言っても、所詮服でしょ? 何選んでも同じだと思うけど。
──数分後。
「じゃーん。どう?」
「……顔は最高だよお兄ちゃん!」
「服の感想は?」
“ええ……”
“赤青チェック+紫オレンジストライプのチノパンはキツイ”
“うわぁ”
“この服装にいつものバックが更に痛々しい”
“ダッッッッッッッッサ”
“ガラモノばっかやん”
“パッチワークが失敗したモンスターか?”
“お前視覚バグってんのか?”
“ごめんきもいわ”
“危険色発してる昆虫みたい”
“ダサすぎて滅っ!”
“色に統一性無さすぎて目が痛いわ”
「はぁ? スレ民だってどうせこんな服しか着てないでしょ!? 好きな色が全部入った服の何が悪い!」
“全部”
“全部や”
“服はお子様ランチじゃないのよ”
“草”
“お前と一緒にすんなカス”
“寧ろ良く見つけたなww”
“ガチでポンコツやんwww”
“流石にスイッチと同じ感覚で服選んでねえんだわww”
“お前……自分で服選んだ事無いな?”
“全部駄目だろ”
“凄いな。たった数分で株価乱高下してるぞ”
「
そんなマズイ!? 俺のセンス普通じゃないの!? 嘘でしょ!?
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