【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第4話 魔猪の塔1F

「いやいや。これにはね、深いふか〜〜い理由があるんですよ」

 

“なんやなんや”

“一つ星新人ダンジョンアタッカーがソロで二つ星ダンジョンに挑む深い理由…?”

“しょーもなさそう”

 

「色々あるんですけど…一つは、ここが立地の関係で人と殆ど会わずにすむ事。それと…1番近くて、お金かけずに行けるダンジョンがここしか無くて……」

 

“あー”

“あっ…(察し”

“そうか、魔猪の塔は割と変な位置にあるしなw”

“winner:は?意味わかんない”

“↑怒らないでやってくれ。彼は貧乏なんだ”

 

そうなのだ。

魔猪の塔は山櫛県の田舎の更に辺鄙な場所に現れたダンジョン。

周りに民家など無く、当然バス等もない。駅なんて以ってのほかだ。

近くの公園に住んで(野宿して)いる俺でも、最寄りのバス停から更に1時間近く歩かなければいけない場所にある、圧倒的不人気ダンジョン。それが魔猪の塔なのだ。

 

それでも、駅を使って山櫛の有名な一つ星ダンジョンに向かおうものなら、ダンジョンから戻ってDAGに行く前に俺の全財産が尽きてしまう。

 

「今、俺の全財産は200円……」

 

“200円まで減ってて草”

“ジュース飲んでんじゃねえよハゲ!w”

“また髪の話してる…”

 

「懐中電灯は高くて買えなかったので、灯り代わりのオイルライターと水を買って200円、行きのバス代で200円。後は帰りのバス代しか残ってないんです」

 

“winner:嘘でしょ…?”

“残念。これが現実…!現実です……!!”

“生きて幸せになってくれ……”

 

「という訳なんで、俺はもう後が無いんですよねー。このレンタルした機材も、ぶっちゃけギルドマスターに借金という形でレンタルして貰ってるので」

 

“何でコイツこんな明るいんだ?”

“スイッチ…もう、心が…”

“いかん、まだダンジョンアタック始まってないのに…スイッチの声が明るいせいで余計に泣きそうになる”

 

「だからタイトルに特攻って付けたんですよね。もう失う物は何もないので」

 

“待てスイッチ?!マジで死ぬ気か?!”

“嘘だろ……ホントに死ぬ為だけにダンジョンアタッカーの資格取ったのか…?”

“winner:何それ”

“スイッチが自分で立てたスレでそう書いてたんだよ。詳しくはーー”

 

「ああ、今は死ぬ気はないですよ。そういう条件なので」

 

“は?”

“何言ってだコイツ”

“地獄への片道切符持ちながら言うな”

“ギルマスとの後見人云々って奴か?”

 

「んじゃスレ民の皆さーん、逝ってきまーす」

 

“待てスイッチ!行くな!”

“いってきますのニュアンスおかしくなーい?”

“武器は何持ってくの?”

 

「あ、武器なんて贅沢な物ないです。拳で特攻かましていきますよ」

 

“はああああああ!?”

“素手で二つ星ダンジョン攻略出来ると思ってんの!?馬鹿か?!“

“この配信、スイッチの生前葬では…?”

 

 

 

 

 

ダンジョン。

形や中身は違うものの、人間世界には存在しない生物…モンスターが巣食う場所の総称だ。

ダンジョンは以下の2種に大別される。

 

・迷宮型…迷路の様な路を、モンスターとの遭遇を想定しながら最奥を目指していく。

・試練型…ダンジョンの攻略に、特定のアイテム、もしくは行動が必要となる。

 

魔猪の塔は、その中でも分かりやすいタイプの試練型ダンジョンだ。

直径50m程の円形のバトルフィールドに出現する猪型モンスターを全て倒す事で、次の階層への扉が開く。

それを塔の内部全5階層まで繰り返すだけの、非常にシンプルなダンジョンである。

 

「まあ、シンプルだから簡単かと言われると、全然そんな事ないんですけどね」

 

“分かってんなら引き返せと言いたいが…”

“もうスイッチには、このダンジョン攻略するしか生きる希望がないのか”

“winner:1階層のモンスターはイジェクションボア。巨大な牙を何本も射出して敵を追い詰めた後、突進して圧死させてくる”

 

「あ、情報ありがとうございます。もしかして、先輩ダンジョンアタッカーの方ですか?」

 

そういえば、さっき止められた時も新人アタッカーだから云々とかいう感じで止められたなぁ。思えばアレって、先輩からのありがたい助言だったのかもしれない。

 

「とか言ってる間にっと……」

 

目の前に聳える大きな扉。俺の身長の倍くらいはありそうな高さの鉄扉は、無骨ながらどこか禍々しいオーラを放っている感覚になる。

 

“有識者もよう見とる”

“安心しろ。お前の最期はスレ民が見届けてやる”

“スイッチの覚悟を見て、俺もグロ画像観る覚悟決めたぞ”

“骨は拾ってやるよ。DAGが”

“↑自分じゃなくて草”

 

「ははは、そうそう。所詮dちゃんで立ち上げたスレ民の集まりですからね。こういうノリで良いんですよ」

 

コメントを送ってくれるスレ民に、煩いくらいに鳴っていた心臓の鼓動が少し落ち着く。

 

「さあて、じゃあダンジョンアタックいきます……っ」

 

扉に手をかけた瞬間、悪寒が電流の様に全身を走る。

咄嗟に端っこに避難、直後…

 

ズダダンッ!!!

 

扉を剣みたいな鋭い何か…恐らく、イジェクションボアが発射した牙が突き出し、先程まで俺がいた場所を貫いていた。

 

「……っぶねええええええ」

 

“何してあああああああああ”

“始まる前に終わりかけてて草”

“ダンジョンのモンスターは平気で初見殺ししてくる”

 

こ、これがダンジョン……。

 

「やべ、ちょっと面白くなってきた」

 

“お、おう…”

“一つ星ダンジョンアタッカーの姿か……?これが…?”

“もう情緒ぶっ壊れてんだろコイツ”

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