【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第5話 続・魔猪の塔1F

不意打ちをかわし中に入ると、中央で羆サイズの猪、イジェクションボアが俺を睨みつけていた。こちらを威嚇しながら、口の横の穴からニョキニョキと新たな牙を生やしている。

 

「鮫みたいな生態してんな」

 

“言ってる場合かww”

“もう次弾装填完了しとるやんけ”

 

「ブモオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

黒い靄の様なものを噴き出しながら、イジェクションボアが雄叫びを上げる。

 

「先輩、あの黒いヤツについてスレ民に説明をお願いします」

 

“winner:マナ。我々の世界の動物とモンスターとを分ける要素。ダンジョンの物質は全てマナで構成されており、モンスターも例外ではない。モンスターが自身の体を修復する、もしくはスキルを使う時、体外のマナを自身の肉体に集める。その時、我々の目にはマナが黒い靄の様に見える“

“サンキュー先輩”

“先輩呼び気に入ったんかな?w”

“長文を打つなよ。理解出来ないだろ”

“自慢げに言うなやw”

“なるほど、牙を再生したからあの黒いヤツが噴き出して見えるのね”

 

イジェクションボアが再び牙を射出してくる。

だが、来ると分かってるなら対処は容易い。

 

「ふっ…!」

 

射線を避ける為、横に駆け出す。そのまま奴を中心に、円を描くように走る。

 

“おーはえー”

“スイッチのダンジョンアタッカーらしいとこ初めて見た気がする”

“winner:トチ狂った言動が目立つけど、ダンジョンアタッカーとしての最低限の基本は押さえてるようだね”

“先輩褒めてるようで貶してて草”

 

イジェクションボアの牙の射出は、自身の正面にしか出来ない事は事前に調査済み。そして次弾装填には、5秒程時間がかかる。

このモンスターの攻略の基本は、決して正面に立たず側面から攻撃する事。

 

しかし……。

 

「ぐぅっ……!?」

 

問題は、俺の方にある。

走り始めてすぐ、足から力が抜け、肺が酸素の供給を受け入れてくれなくなる。

スピードが乗った身体のバランスが取れず、思わず壁に手をついてしまう。

 

グギュルルルルルゥゥゥゥ……!

 

“どうしたスイッチ!?”

“何だ?何受けた?”

“あっ……”

 

「ハッ…、ハッ……!ヤバい……」

 

初ダンジョン、初戦闘でドバドバ出ていたアドレナリンが切れたのか、身体が配信直後に起こしていたクレームを再開し始めていた。

無意識のうちに、腹に手をあてる。

 

グゥウウウ……!!

 

「腹が減って……力が出ない……!」

 

“はああああああああ?”

“そうだ。スイッチ1週間も水しか飲んでないんだった…”

“何でダンジョンに挑もうと思ったんだコイツ?馬鹿なのか?”

“初見ニキ、まずはこのスレを見て、どうぞ。ーー”

 

「ブルル……!!」

 

「う、わ……ッ!」

 

イジェクションボアが、俺の不調を見抜いたかのように、牙を一本だけ俺の行手を遮るように飛ばしてくる。

反応が遅れ、慌てて反対側に走ろうとした所を、時間差で放たれた二本目が更に塞ぐ。

 

「あっこれ……」

 

“あ……”

“必殺パターン入りましたね…”

“実力過信したお間抜け新人ダンジョンアタッカーさんお疲れーっすwww”

“まあしゃーないね”

 

イジェクションボアが、勝ち誇った様に巨体を揺らす。そして……

 

「ブモォアアアアアアア!!!」

 

地響きと共に俺目掛けて突進してきた。

 

これが奴の必勝パターン。中央から決して動かず、冷静に相手の動きを止めて突進してフィニッシュ。

モンスターというのは、総じて見た目に反して知能が高い。力、技、狡賢さetc……己の得意を活かした戦法を、必ず持っているのだ。

 

故に、ダンジョンへ潜る時は、そこで出現するモンスターへの対策は必須なのだ。

それを怠った俺は、ここで圧死されて終わり……

 

「なぁんて、なっ……!!」

 

壁を蹴ってこちらからもモンスターに突進しながら、突き刺さった牙を力を振り絞ってぶっこ抜く。

 

「ぉぉおおおおおああっっ!!!」

 

牙の先端を敵に向け、お互いの突進の勢いを乗せた一撃をイジェクションボアの眉間に突き立てる。

 

“えっ”

“おおっ!?”

“いけええええええええええええええええ”

“壁に刺さった牙を引き抜いたぁ!?”

“火事場の馬鹿力w”

 

「ッッ……!?」

 

「ぐ、くっ……!?」

 

眉間に深々と牙が刺さったというのに、イジェクションボアの突進は止まらない。

足の踏ん張りも効かず、ズルズルと壁際まで押し戻され、背中が壁にくっ付いた頃に、ようやく自分が死んだ事に気付いた様に勢いが弱まり……完全に絶命した。突進してきた姿勢のまま、地面に倒れるイジェクションボアを見て、身体が疲れを訴え始める。

 

「………はぁぁあああああああ〜〜〜」

 

牙を手放し、その場にへたり込む。いや、力が入らず仰向けに倒れてしまった。

色々な思考が脳を支配する。極度の空腹、一か八かの賭け、最後の押し合い、初めてのモンスター殺し……一度に経験するには量が多過ぎる。

でも、それでも……

 

「……勝った…はは………生きてる…」

 

嬉しい。素直にそう思える。

そして、そう思わせてくれた掲示板のスレ民達には感謝しかない。

そう思って、上体を壁にもたれ、コメント欄を見る。

 

“やったぞぉおおおおおおお”

“ようやった……ようやった…泣”

“大袈裟すぎwww”

“まだ1階層やぞ”

“やばい、今ガチ泣きしてるわ”

“たかが一勝でお祭りムードで草。なんなんコイツ等”

 

「……んん…?あれ……?」

 

おかしいな。スレ民ってこんないたっけ…?

 

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