【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第54話 周心輪の始まり

アタシが小さい時、お母さんが病気になった。

当時は不治の病と言われて、病院で延命する事しか出来ない重い病気だった。

 

『大丈夫よ、心輪。お母さん、病気になんか負けないわ』

 

ベッドの上で、食事もロクに取れないお母さんは、泣き続けるアタシを抱きしめていつもそう言っていた。

それが強がりだって事ぐらい分かってたから、アタシは泣き止む事が出来なかった。

 

『奇跡』が起きたのは、お母さんがいよいよ危ないっていう時だった。

お父さんのお友達の人が持ってきてくれた薬。エリクサーと呼ばれる、凄く危ないダンジョンの最奥にしか出てこない幻の万能薬が、お母さんを救ってくれた。

 

『ありがとう…!本当に、ありがとう……!!』

 

お父さんとお母さんは抱きしめ合って、嬉し泣きしていた。お父さんが泣く所なんて初めて見た。

 

『この恩は決して、決して忘れません……!私達の全てを掛けて返しますから…』

 

『なら一つだけ。家族を大事にして下さい。それだけ守ってくれれば、満足です』

 

そう言って、アタシ達を救ってくれたその人は何も要求することなく去って行った。

その大きな背中に強く憧れ、あの人の様になりたいと思った。

これがアタシの原点。夢を見ていられた、小さい自分。

 

 

 

 

お父さんは、少しでもあの人へ恩を返す為にガーランドウェポンズというダンジョンアタッカー達の為の装備を造る企業に再就職した。お父さんにお願いして、ダンジョンやダンジョンアタッカーの事を色々教えてもらい、アタシのダンジョンアタッカーへの憧れはどんどん強くなっていった。

 

「アタシ、ダンジョンアタッカーになりたい」

 

当然、猛反対された。お母さんは何となく理由を察してくれてたけど、GWに勤めてるお父さんは、ダンジョンがどれだけ危険な場所なのかを良く知ってるから特に反対された。

 

でも。

 

「アタシ、強くなりたいの。お母さんを助けてくれた、あのダンジョンアタッカーの人みたいに。強くなって、今度はアタシが皆を助けたい。これだけは、譲れない」

 

ずっと勉強してきた。運動だって。ダンジョンアタッカーが危険な職業なのは知ってる。でも、あの日泣いてるだけで何も出来なかったアタシみたいな人を、今度はアタシが助けたかった。

 

あの人みたいに。

 

 

 

 

 

 

 

何度も二人と言い合って、アタシの本気を伝え続けた。最終的にお父さんも根負けしてくれて、中学3年生の時、アタシは晴れてダンジョンアタッカーになった。DAGは、『中学生がダンジョンアタックする場合は必ず20歳以上の大人と一緒に行う事』っていうルールがあって、アタシはパーティを斡旋してもらった。

 

「初めまして!先週ダンジョンアタッカーになった、周心輪(あまねころん)です!よろしくお願いします!」

 

DAGで斡旋してもらったパーティは、大学のサークルの友達で作ったらしい。皆さん二つ星以上のダンジョンアタッカーで、リーダーのエリカさんはアーチャー、カズヤさんはパラディン、モモカさんはソルジャーのジョブを持っていた。

 

「よろしくー。初めてのダンジョンで緊張してるだろうから、無理しないでね?」

 

「サポートは任せてくれよ。突っ込みすぎなら引っ張ってでも戻すからな」

 

「まずは実際のモンスターの動きを学習していこう」

 

「は、はいっ!」

 

初めてのダンジョンは不思議で、怖くて、自分の常識じゃ測れない事ばかりだった。けど皆良い人達で、アタシがモンスターとの戦いにすぐ慣れる様に一生懸命手伝ってくれた。 

 

「カズ君!」

 

「ほいっ」

 

中でもカズヤさんとモモカさんの連携はとても上手かった。お似合いだと思ってたら、「二人は付き合ってるんだよ」ってエリカさんが教えてくれた。

パーティ内でカップルが誕生するのは良くあるらしい。二人の仲を邪魔しない様に気を付けないと。

 

 

 

 

 

 

「ストーンエッジ!!」

 

一つ星ダンジョンに慣れ、少しだけど命のやり取りに余裕が出てきた。そして、パーティメンバーのサポートが無くてもモンスターと戦える様になってきた頃、アタシはマジックスキルを覚えた。

 

「凄いじゃん!おめでとう!」

 

「ありがとうございます!皆さんのお陰です」

 

「もう少しで一つ星ダンジョンもアタック成功しそうだし、前祝いでもしとく?」

 

「良いねー。でも周ちゃん凄いね、ダンジョンアタッカーになってまだ一ヶ月でしょ?こんなに早くレベルアップして、一つ星ダンジョンを攻略しそうになるなんて」

 

「そんな!皆さんのサポートがあったからですよ。一人だったら怖くて、まだ一層目にいたかもしれないです」

 

「謙虚だねー。俺達とは全然違うわ」

 

アタシの成長を、自分の事の様に一喜んでくれるパーティメンバー。お父さんもお母さんも喜んでくれて、アタシの大好きなイチゴ大福でお祝いしてくれた。

二人がアタシの親で良かった、このパーティを選んで良かったって、心から思った。

 

 

 

 

 

高校受験を終えた頃、アタシは二つ星ダンジョンアタッカーになっていた。

そして迎えた入学式の日、福平でスタンピードが発生した。三つ星以上のダンジョンアタッカーは全員召集がかかったらしくて、エリカさんだけが福平に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰って来たのは、エリカさんの左足だけだった。

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