【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第58話 続々・吸魔の墓B2

「ごめんなさい、混乱しちゃって……」

 

「い、いえいえ。こちらこそ、急にすいませんでした」

 

あの後、「違います」を連呼しだしたあまにゃんさんの手で、俺の本日二度目の土下座は回避された。

でも何で急に泣き出したんだろう……先輩は相変わらず凄い殺気の籠もった目で俺を見てくるし、訳がわからないよ。

 

「あの、アタシ…あまにゃんって言います。ムーブで配信者をしてます……」

 

「あ、ご丁寧にありがとうございます。俺はスイッチと言います。俺もムーブで配信者をさせてもらってます」

 

「私は伽藍堂叶と言う。今は()()パーティを組んでるんだ、よろしく」

 

先輩が俺を押し退けて、あまにゃんさんに手を差し出す。

ていうか先輩、押し退ける力強くて脇腹めっちゃ痛いんですけど?あまにゃんさんのファンでもあったんですか?

 

「はい。こんな所で銀星(ぎんぼし)ダンジョンアタッカーの伽藍堂さんに会えるとは思いませんでした。会えて光栄です」

 

“てえてえ”

“てぇてぇなぁ”

“可愛いいいいいいいいい”

“何でだ?震えが止まらんのだが”

“画面が尊くて震えてるんじゃね”

 

二人が握手しているのを、画面外で眺める。

こういう、可愛い女の子達が仲良くやってるのって何か花の名前であったよな……何だっけ。てえてえ花?

でも、何かこう……言葉に出来ない不安感が、二人の間に漂ってる様な気がする。いや、どっちも笑顔だからそんな事無いんだろうけど。

 

「スイッチさん、魔猪の塔の配信を観てました。凄かったです、とても」

 

「あ、ありがとうございます」

 

何故か先輩との会話を早々に打ち切ったあまにゃんさんが、俺に近づいて来る。

 

“おい近付くなゴリラ”

“あまにゃんに触れたら◯す”

“↑やめとけやめとけ”

“コーン共は皆オークキングより強いんか?”

“最強の脅し文句やめーやww”

 

「えっと……さっきのは?」

 

「ああ、ダンジョン分からせパーリナイの真っ最中だったんで」

 

「え?」

 

“は?”

“何言ってだこいつ”

“事情知らねえ奴にも分かる様に言え”

“脊髄で喋るのやめてほしい”

“そのままの意味だぞ”

“マジで言ってる事しかしてないから笑える”

“既に腹痛いから勘弁してくれwww”

 

「グボァッ!?」

 

先輩が、再び俺とあまにゃんさんnいっだぁ!?吹っ飛ばされたんですけど!?

 

「彼は現在、吸魔の墓にモンスター扱いされた事に腹を立てていてね。()()()()()()()()ダンジョンをひたすら蹂躙している所だったんだ」

 

「あ、ありがとうございます先輩……オーバードウェポンって言って、今後GWで出す新製品らしいんですよ。さっきの火炎放射器とかもそうなんです」

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

あまにゃんさんが、吹っ飛ばされた俺に近付いてきて顔を覗き込んでくる。

 

「あ、はい。大丈夫です、ありがとうございます。あの……それで、先に通らせてもらっても良いですかね?」

 

ダンジョン内で別々のダンジョンアタッカーが出会した時、どちらが先に奥に進むか問答になる時がある。そうした場合は、先にダンジョンを進んでいた側に優先権がある。その人達に追いつき、尚且つすぐに進みたいという後続側は、先着側に伺いを立ててから進まなければならないのだ。

 

今回は、あまにゃんさんが先に吸魔の墓2層まで辿り着いていたので、後から来た俺達は彼女にまず「あまにゃんさんよりも先に進ませてもらっても良いか」を彼女に聞かなければならない。もし彼女が、コアモンスターの素材目当てで、俺達よりも多くモンスターを倒したいならば、彼女に配慮してあまりモンスターを倒さずにダンジョンを進まなければならないから、少し面倒なんだけど。

 

「………」

 

「?あの、すいません」

 

「あの、アタシも同行させてもらえませんか?」

 

「はい?」

 

「は?」

 

“えっ?!”

“何で!?”

“こんな奴に頼らなくてもあまにゃんは強いよ!大丈夫!”

“おいふざけんな”

“それはやめといた方が…”

“コーンじゃないがガチで止めとけ”

 

先輩からの殺気が一段と強くなる。……というか、さっきから感じてたけどこの人、先輩の存在を無視しようとしてないか?何でだろう。

 

それはさておき。あまにゃんさんが同行したいと言ってきたのは予想外だった。ぶっちゃけ、スレ民も言ってたけど止めるべきだろう。先輩やスレ民の反応を見る限り、俺の物理的に規格外な配信内容は、普通の人に付いて来れるものじゃないって事ぐらいは分かる。

 

それに、今の俺はモンスターほいほいと化している。コアモンスターの大群に彼女を巻き込むのは流石に申し訳ない。DAGのアイドル的立場にいるあまにゃんさんを傷付けたら、また羽場さんに怒られるかも……。

 

「すいません。折角の申し出なんですけど……」

 

「アタシ、貴方に救われたんです」

 

断ろうとした矢先、真剣な目が俺を射抜く。冗談や軽い気持ちで言っている訳じゃないのが理解出来る、強い瞳だ。

 

「アタシ、ずっと迷ってたんです。自分の理想を目指してた筈だったのに、どこかで間違えちゃったんじゃないかって……そんな時にスイッチさんの配信を見つけて、勇気を貰えたんです」

 

「あれは……」

 

そんな綺麗な動機で始めたものじゃない、という言葉をぐっと堪える。それは、彼女の経験してきた苦しさや想いを、否定する事になってしまうと思ったから。

 

「スイッチさんを見て、もっと強くなりたいと思える様になったんです。スイッチさん、ありがとうございます」

 

「………こちらこそ、ありがとうございます」

 

“あまにゃん……;;”

“俺達が付いてるからなあまにゃん”

“スイッチ良かったな”

“お前の頑張りは確かに届いてたぞ”

 

「だからお礼をさせて下さい。このダンジョンアタックを手伝う事がお礼になるか、分かりませんけど…」

 

「お礼なんて……」

 

あの配信では、俺の方も皆さんに生きる希望を貰ったんだ。その上、あまにゃんさんにお礼なんて貰ってしまえば、それは俺の中で借りになってしまう。

でもなぁ…ここまで強い意志で手伝いを申し出てくれる人を断るのは、それはそれで叩かれそうだよなぁ……あ、そうだ。

 

「あの、ご家族は好きですか?」

 

「え?はい、お父さんとお母さんは好きですけど……」

 

「なら一つだけ。家族を大事にして下さい。それだけ守ってくれれば、満足です」

 

目を見開いて俺を見るあまにゃんさん。当然か。そんな願いをされるとは誰も思わなかっただろうから、ビックリするよな。

 

“スイッチぃ……”

“お前さぁ…本当に……”

“そうだよな。スイッチにとって家族が一番大事だもんな”

“すまんちょっと泣く”

 

「……分かりました」

 

「あはは、良かったです」

 

「アタシ、貴方に付いて行きます!!!!!」

 

「何で?????」

 

あれ、言葉通じてる?どこか選択肢ミスった??

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