【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第63話 吸魔の墓・最下層

ダンジョンを掘り進めてすぐに、地面を破壊する感覚が無くなって宙へ放り出される。しかしそれは予想済み、すぐさま着地の体勢を取る。

 

「ヒーロー着地!」

 

「ふむ」

 

「エアバースト!」

 

俺は言葉通りヒーロー着地で、先輩はまるで重力が無いかの様に静かに、あまにゃんさんはマジックスキルで下に風の衝撃波を放つ事で、重力を相殺して地面に降り立った。

 

“ヒーロー着地は身体に悪いぞ”

“でもカッコ良いだろ”

“伽藍堂シスターはともかく、あまにゃんは良く飛び降りれたなw”

“こんな無茶出来る子じゃなかったような……”

 

「…ん?」

 

しかし、すぐに違和感に気付く。ここの部屋にいる筈の主がおらず、不気味な静寂に包まれているのだ。

 

「ここのボスはドラゴンゾンビの筈……」

 

「……おかしいね。私達以外にダンジョンアタッカーがいない以上、ボスモンスターはダンジョンに残っている筈だ。もしや……」

 

“あれ?ボスは?”

“ボス逃げた?ww”

“しゃーない。キングコングの襲来は誰でも逃げる”

“真面目に言うと、ボス部屋にボスがいないのは変だな”

“何でだ?”

 

コメントも異変に気付いた途端、ダンジョンが揺れる。ダンジョン内のマナが、あまにゃんさんがサモン・ファイアーエレメントを使用した時と同じようにコアを形成していく。

 

「……え?」

 

あまにゃんさんが呆けた声を出す。俺も、そのモンスターから目が離せなくなった。

現れたのは、人骨をそのまま巨大化させたようなモンスター。所々肉片が付いている骨と上半身しか無いが、ボス部屋の半分を埋め尽くす程に大きい。

異様なのはその頭部。人の頭に似ているが、額と頭から合計3本の巨大な角が生えている。顎の部分からは1対の黒い牙が生え、その異様さを加速させている。

 

「…先輩、これ」

 

「……イレギュラー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ォオオオオオオーーーーーッッ!!!!!』

 

咆哮が、空気を揺らす。

イレギュラー。ダンジョンが何らか理由で、今までとは違う新種のモンスターを生み出す現象。世界でも何度か確認されているが、依然理由は不明のままとなっている。

 

そして、イレギュラーの暫定的な危険度は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()+()2()である。

 

しかし、このタイミングで起こったって事は……。

 

“ああああああああああああ!?”

“何これ”

“ぎゃあああああああああああ”

“逃げろ!!イレギュラーだ!”

“イレギュラー!?嘘だろ!?”

 

「先輩!あまにゃんさん!!」

 

「あ、アタシは大丈夫です!!」

 

混乱しているコメント欄を気にする暇も無く、二人に声を掛ける。あまにゃんさんは動揺しているが、事態の深刻さは理解出来ているらしい。

 

「ボス部屋の出口は閉じられているね」

 

先輩は既に出口の確認をしてくれていたようだ。しかし、齎されたのは最悪の情報。抜けてきた天井は高過ぎる。俺と先輩はともかく、あまにゃんさんは厳しいだろう。

 

「……先輩なら、あの程度の扉は壊せますよね?」

 

「無論だ。イレギュラーの事は、既にDAGへ報告済みだ」

 

イレギュラーが発生した場合、すぐにDAGへ報告する義務がある。イレギュラーは、一度出ればそのままダンジョンから生まれ続けるが、ボスモンスターがイレギュラーになったという例は聞いた事が無い。どうなるのか、誰にも分からない。

 

頭がガンガンと内から殴られる様な痛みに顔をしかめながら、イレギュラーへ一歩踏み出す。

 

“おいどうすんだよ”

“逃げろスイッチ!”

“あまにゃんだけでも逃がせ”

“大丈夫かスイッチ”

 

「先輩はあまにゃんさんをお願いします」

 

「えっ!?アタシは大丈夫です!やれます!!」

 

「……君は?」

 

「コイツは、俺がやります」

 

“は?”

“いや何でやねん”

“伽藍堂がいるんだから任せろやw”

“お前とあまにゃんが逃げろや”

“でもスイッチならいけんじゃね?”

 

二対の強い意志を秘めた瞳が俺を貫く。でも、今回だけは譲るわけにはいかない。

先輩なら、こんな敵でも秒殺……いや瞬殺してくれるだろう。だが、それじゃ駄目だ。それだと、このダンジョンに特攻した責任の尻拭いを先輩にさせる事になる。あまにゃんさんは、俺がモンスターホイホイになってるのにも構わず付いてきてくれた。それには感謝しか無いが、流石にこれ以上危険に巻き込む訳にはいかない。

 

それだけじゃない。このイレギュラーから感じる肌を震わす圧力。オークキングと同等か、もしくは……とにかく、今のあまにゃんさんでは分が悪いとしか言えない。先輩もそれに気付いている。誰かがコイツを食い止めて被害を抑えながら、彼女を脱出させるのがベスト。そして、俺ならばある程度戦えて時間稼ぎが出来るし、先輩も護衛に専念出来る。だから先輩は特に何も言わないのだろう。

 

けど、本当の理由はそんな事じゃない。

 

「俺がやらなきゃ……」

 

もしコイツが生まれた原因が、俺のダンジョンへの侵略行為のせいだとしたら?

 

他のダンジョンでもまた同じような事が起こるのか?

 

俺がいるせいで無関係な人達を巻き込むのか?

 

 

 

 

 

 

それでは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ではないか。

 

「……あはは、なんてね。俺が買った喧嘩なのに、二人に任せるなんてダサい事したくないだけですよ。だから、後はお願いします」

 

「……彼女を送ったらすぐ戻ってくる。無茶は厳禁だぞ」

 

「…待ってますからね!」

 

先輩が出口の扉を切り開き、二人が逃げて行く。イレギュラーを見据えながらそれを横目で見届け、俺は安堵の息を漏らした。

 

「……すいません先輩、あまにゃんさん」

 

“お前馬鹿か?”

“はよ逃げろ”

“イレギュラーがどんなヤバいか分かってんのかよ!?”

“お前万全じゃねえだろ。どうすんだよ”

“あまにゃんを逃がしてくれた勇気はかうぞ”

 

……生きたいって思えたんだけどな。でも、『人が嫌がるような事はしてはいけません』って、父さんと母さんに言われてるからね。

 

だから俺は、ここで死んだ方が良い。

 

「……スレ民の皆さーん、ごめんなさい。コイツは外に出さないんで安心して下さいね」

 

“何故謝るし”

“おい”

“この感じ知ってるぞ?”

“スイッチ何する気だ”

“逃げろや”

 

けど、最期まで『人』として。誰かを守る為に死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は寂しがり屋なんだ。テメエを道連れにしてやるよ、イレギュラー」

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