【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話 作:ゲスト047562
「ここからは、伽藍堂結城さんに案内してもらう事になります。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
手足の縄を容易く引きちぎり、伽藍堂さんが埃を払いながら立ち上がる。その姿には、先輩から受けたダメージは欠片も見られない。
“貴方先輩の化け物キック何発も喰らってましたよね?”
“無傷…だと…”
“何で綺麗なままなんですかね……”
“流石世界最強と言われるダンジョンアタッカーだ、心配するのも烏滸がましい”
スレ民の皆さんが心配してるけど、伽藍堂さんに無理をしてる雰囲気はまるで無い。
まあ、それはそうだろう。DAGが明示してないだけで、ダンジョンアタッカーには、星の数以外にも純粋な強さのランキングが存在する。
今は伽藍堂兄妹が1位2位を取っている為、『最強家族の伽藍堂』と称されているが、実態は違う。事実は、
「心配してくれてありがとう。けど僕は平気だから、進んでいこうか」
“ヒエエ顔がいいいいいいい”
“いやマジで顔面偏差値高過ぎるこの配信”
“やばい濡れちゃう”
“さっきまでの阿鼻叫喚が嘘のようだ……”
伽藍堂さんが先導し始め、先輩が俺の横にピッタリくっ付く。
……いや近いな。伽藍堂さんとのイザコザの原因になったし、離れて欲しいんですけど。
「先輩先輩。近いです」
「良いじゃ無いか。私達の仲なんだし」
「駄目です。親しき仲にも礼儀あり、です。使い方合ってます?」
「……仕方ないね。そこまで言うなら、続きはまた後にしておこうか」
先輩が不満げに身体を離す。
うん、前方から感じてた殺気も消えて、息もしやすくなったな。しかし、都会に住んでる人って、皆これくらい距離が近いのか?進んでるなぁ。
“使い方合ってる”
“意見言えて偉い”
“よく言ったなスイッチ”
“私もスイッチの横にくっ付きたい”
“↑やめとけやめとけ”
「コホン。それではスイッチ君、DAG極東本部へようこそ。同じダンジョンアタッカーとして、我々は君を歓迎するよ」
自動ドアを抜けると、大きなホールが出迎えてくれた。外観で分かってはいたが、やはり中もとても広い。中央にある『総合受付』を中心に、ソファやテーブル等の寛ぐ為のスペースがあるフロア、用途別にタッチパネルが沢山置かれているフロアが見える。奥には階段が見え、それぞれ2階と地下へと続いているようだ。
「うおお……!」
“すっげえデケエ”
“DAGの中は普段は撮影禁止だからな。滅茶苦茶貴重だぞこれ”
“左側のスペースにあるの食堂か?”
“右のタッチパネル何や?”
山櫛のDAGと違い過ぎて、キョロキョロと辺りを見回す。周りの人達は、珍しそうに俺達を……いや、伽藍堂兄妹を見ているな。二人のオーラが凄すぎて、俺と羽場さんは見向きもされない。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。伽藍堂様よりお話は伺っておりますので、DAGの資格証の提出をお願いします」
「あ、はい」
「……はい、確認が終了しました」
総合受付のカウンターで様々な書類が入った封筒を貰い、転居の為の簡単な説明を受ける。
「ありがとう、後は僕達に任せてくれ。お仕事頑張ってね」
「は、はいっ!ありがとうございました!!」
“に、ニコポだああああああ”
“リアルにあるんだなwww”
“いやぁイケメンすぐる”
“クレイジーでサイコなシスコンでなければ間違いなく惚れてた”
伽藍堂さんのスマートな対応で、受付の女性が顔を真っ赤にする。
おお、人が惚れる瞬間を初めて見た。流石伽藍堂さん、大人の対応と風格だぁ。
「さて、君の入居の手続きも済んだから、そろそろ説明をしようか。こっちのタッチパネルの所からいこう」
「あ、はい。お願いします」
タッチパネルが沢山置かれた場所に行く。近くに行くと、上に文字が書かれたプレートがあるのに気付いた。
「『パーティ加入リクエスト』、『調達クエスト』……?」
「ここは、出発ロビーだよ。同じダンジョンに行く人を探してパーティを組んだり、パーティが今欲しいジョブの人を探したりするんだ」
「へー。全部タッチパネルで出来るんですね」
「うん。そして、後ろの談話スペースで会って、そのままパーティを組んでダンジョンに向かう事が出来るんだ」
“楽そう”
“東城ってこんなのあんのか。
“唯休憩するだけのスペースじゃなくてパーティの面談も出来るようにしてるのか”
『パーティ加入リクエスト』のタッチパネルの前には、人が多く並んでいる。1階に大きく休憩スペースを取ってるのは、出発準備の為にここが1番混み合うからか。
というか、人凄いな。流石東城、山櫛とは人の数も施設の規模も大違いだ。
「じゃあ『調達クエスト』って何ですか?タッチパネル以外にも、スクリーンで何か色々出てますけど」
「需要の多い素材や、DAGの提携先の企業が必要としている素材に対して、懸賞広告を出している事さ。クエストは数も多いし、早い者勝ちだからね。沢山必要とされる素材はスクリーンに、危険なコアモンスターの素材や希少な素材はタッチパネルで確認出来るんだ」
「すっげえ……皆でやるお使いですね!」
“お使いは草”
“でもマジで凄いわ。こういう風になってんのね”
“どんな素材があるのかめっちゃ気になる”
“東城はダンジョンアタッカーの数も桁違いだから一々並んで確認してられんからな”
「見てみるかい?」
「良いんですか?ありーー」
「あ、マジでスイッチじゃん!」
「ん?」
突然、男性の声が俺達に向けられる。振り向くと、髪染めを失敗したのか、やや黒が残った金髪の男性が近づいてきていた。
「うっわ伽藍堂さんまでいる!すげ〜!!」
“は?”
“何だこいつ”
“急に出てきたけど誰?”
いやに馴れ馴れしい態度に、首を傾げている。俺は東城に来たばっかりだし、勿論知り合いなんて殆どいない。それとも、山櫛で……いややっぱり見たことないな。誰だ?
「スレ民……の人、じゃないですよね?陽キャっぽいし」
“は?”
“スレ民が皆陰キャだってのかこのやろぉ!!”
“平日の昼間っからスイッチと騒いでる奴等だ。面構えが違う”
“うーんこの”
“スイッチ知ってるならスレ民だろ”
「伽藍堂さん、知り合いですか?」
「いや?」
「え、ドローン動いてんすけど、撮影とか良いんすか?てか何でスイッチと伽藍堂兄妹が一緒にいんの?」
俺以上にキョロキョロと顔を動かし、矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる。敬語も外れるし、俺と喋ってるのか伽藍堂さんと喋りたいのか分からなくなってきた。
「いやいやいやダメっしょスイッチさー、こんな凄い人ら独り占めしちゃ。まだ二つ星っしょ?強い人と組んで自分の実力過信してんじゃね?」
「あ”?」
「ほう」
「ヒエ」
“あっ”
“誰かコイツ止めろ”
“やばいやばい”
“せ、先輩ステイ!ステイ!!”
“おい馬鹿よせ!!”
何となく分かってきた。俺は喧嘩を売られているのだと。
確かに、俺はまだ新参者。それが配信でいきなり結果を見せて、更に先輩やあまにゃんさん……いや、
確かに出来すぎた話ではあるけど、別に独り占めとかをしてる訳じゃないんだよなぁ。皆さんの方から来てくれたんだし、その好意を否定されてる様な言動は少しムカつくし、悲しい。
しかし、それ以上に俺の後ろから感じる圧がヤバくて言葉が出せない。
先輩の周囲が、いつもの如く歪み始めている。伽藍堂さんは俺の反応を見る様に見つめてくるし、周囲の人は目を合わせない様にしながらこちらを窺っている。男性はそんな周りの様子に気付いてない。いや気付けよ!?
頼む。これ以上変なこと言わないでくれ……!お願いします!気付いて下さいよ先輩の存在に!伽藍堂さんも何か言っt
「初心者に本当の実力を教えるのも
あ、終わった。
「へぇ」
“あ(察し”
“救いようの無い阿呆ですね…”
“ダンジョンアタッカーって命知らずの集団なんですね(笑)”
“確かにレベルアップしていくと調子に乗る奴等が多いけどコイツ程じゃない……筈”
“もう終わりだ猫の人”