【2巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話   作:ゲスト047562

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第92話 vs?四つ星ダンジョンアタッカー

「両者、構えて」

 

先輩の言葉と同時に、相手は両手を握り、中段辺りまで落とす。それを見て、俺も相手に全神経を集中させる。

世界が狭くなるような感覚。瞬きを忘れ、滴る汗さえスローモーションに見える世界で、敵の初動を見極めんとする。

 

“空手?”

“条心(じょうしん)流空手か?流派をスキルに昇華させる為に集団でダンジョンに潜ってるのよく見るわ”

“あー武術昇華軍団か”

“四つ星って事はもうスキルに昇華してるだろうな”

 

「これより、防御側はサークルから出れば戦闘不能と見なす。では……始め」

 

「ふっ」

 

合図と共に、一息で俺に詰めてくる。詰めて……詰め……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやおっそ!?オークキングならさっきの一息で五発は攻撃が飛んでくるぞ!?

待て焦るな俺。動きは遅いが、一応イレギュラーさんよりはほんの少し速い。それに動きからして、何かしらの武道経験者。一撃の威力は高いのかもしれない。

 

「シッ!」

 

無駄な思考をしている間に、小手調べとばかりに鋭い突きが飛んでくる。とりあえずそれを腹部で受け、攻撃力を確認する。

 

ゴズンッペキ

 

「ん?」

 

「……ッ!?」

 

“今何殴った!?”

“人から出る音じゃないんですが…”

“微動だにしてねえww”

“変な音しなかった?”

 

人から出たとは思えない音がしたが、俺の方は特に何も無いな。しかし相手の拳から、小さな枝が折れる様な音が聞こえた。俺を殴った拳が、僅かに震えている。

 

……え?折れた?今ので?いやいやまさかね。

 

飛拳(ひけん)!」

 

気とマナの塊が俺の顔に当たり、風が頬を撫でる。

………うーん、そよ風かな?

 

「飛刃連拳!」

 

完全に遠距離攻撃に切り替えたのか、今度は飛刃と飛拳の乱舞が飛んでくる。しかし、飛んでくるスキルのマナと気の練度は、俺や先輩に及ばない。全ての飛刃と飛拳を受けても、俺の身体を揺らす事はなかった。

へー、脚でも飛刃を放てるのか。手足を全部使ってスキルを放つやり方は、素直に勉強になるな。

 

“うおおすげえ”

“進化スキルやんけ!”

“え。普通に強いやん”

“尚スイッチの反応”

“ボケっとすんなww”

“爆風の中心にいんのに動かないの怖すぎだろwww”

 

「ッソぁあ!」

 

マナはまだ余力はあるが痺れを切らしたのか、再び突っ込んでくる。しかし、その顔には怯えの色が滲み始めている。

指を二本突き出し、俺の目を狙ってくる。流石に目は怖いので、額で受け止める。ペキ、と再び軽い音と共に、指があり得ない角度まで曲がった。

 

雷昇狼(らいしょうろう)!!」

 

それを意に介さず、雷を纏った掌底と膝蹴りが、顎と股間に向けて飛んでくる。膝蹴りは手で受け止め、顎への攻撃はそのまま受ける。

紫電が弾け、稲妻が爆発する。爆発は狼の形をとり、俺の身体を駆け巡って天へと突き抜けていった。

 

“ファッ!?”

“何だそのスキル!?”

“条心流ってこんなスキルあんの?凄えな”

“指折れてるのグッロ”

 

「それまで!」

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もう一分経ったんですね」

 

“はい絶望”

“知 っ て た”

“無傷なの草生える”

“全然効いてないやんけw”

“うーんこれは魔王”

“攻撃側の方がボロボロやんw”

 

顔に疲労と恐怖を滲ませ、相手が後ずさる。

 

「な、何で……スイッチって、オーバードウェポンに頼るだけの馬鹿じゃないのかよ…」

 

“は?”

“こいつ切り抜きしか観てないな?”

“まあスイッチの配信観てたら地雷原を踏み荒らす様なことせんよな”

“切り抜きだけで判断するからこうなる”

“馬鹿しか合ってない”

“その子頭は一つ星だけど肉体は五つ星以上なんですよね”

 

「頭一つ星言うな。あのー、いつ言おうか悩んでたんですけど。俺、ジョブはモンクなんですよね。お金無かったので、最初は素手でモンスターと戦ってたんですよ」

 

「は、はぁ?」

 

会話しながら、身体の調子を確認する。

うん、雷は驚いたけど特に痺れとかは無いな。思い切り伸びをして、意気消沈している相手と対峙する。

 

「……ワリ。切り抜きしか観てなくて、ぽっと出の癖にチヤホヤされてるお前が気に食わなかったんだ」

 

「はぁ……」

 

“言えたじゃねえか…”

“勝ち目無しと判断するの遅過ぎ”

“まず喧嘩売るなよ”

“謝れるのは偉い”

 

「手もオシャカになっちまったし、もう無理だわ。降s」

 

「駄目だが?」

 

「え?」

 

「え?」

 

先輩の凍てついた声が、相手の言葉を遮った。俺も驚き、先輩の方を見る。

 

「もうルールを忘れたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()と言っただろう?スイッチ君が攻撃してない。その宣言は無効だ」

 

“ファーーーーwwww”

“そういう事かよwww”

“宣言するのは一巡した後やな!”

“どうりでブチ切れてるのに自分で処さなかったわけだ”

“最初からこうするつもりだったのか…怖”

 

そういえばそんな事を言ってたな。確かにムカついてたし、一矢報いてやろうとも思ってたけど、負けを認めかけてる人に攻撃って、それはある意味弱いものイジメなんじゃ……。

 

「スイッチ君」

 

「あ、はい」

 

俺の気持ちを察してくれたのか、先輩が微笑みかけてくれる。しかし、先程まで隠していた圧が再び放たれ始めていて、思わず背筋がシャキッと伸びる。

 

「君は理不尽に難癖をつけられ、合意の上で相手の攻撃を受け続けた。それだけで褒められるべきだ。彼が弱り、満身創痍となっているのは、彼自身の愚かさの結果に過ぎない。君自身が手を下していないのだから、()()()()()()()やり返しても文句は言えないさ」

 

「……まあ、確かに。一発だけなら……」

 

“敵への甘さを捨てろ”

“スイッチの性格理解してんなぁ”

“そうだそうだ!”

“一発と言わず1分間殴り続けて良いぞ”

“ミンチになっちゃ^〜う”

“実際にやったらマジで洒落にならねえから煽るな”

 

まあ実際、俺はこの人には嫌な目にしか遭わされてないしな。戦意喪失状態で謝られたが、それでさっきの無礼を全部許せるかと問われれば、未熟なガキである自分は許せない。

だから、この心のモヤモヤのままに身体を動かす事にする。

 

俺は無言で軽く構える。相手も覚悟を決めたか、自陣のサークルに戻って両腕を盾にして待ち構えている。

 

 

 

「……では、は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩の合図と共に、一息で懐へ。

 

「じ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。拳よりも、手を開けた方が痛くないか?

見様見真似で作った掌底を腹部に押し当てる。相手はまだスローモーションの世界にいるが、俺は構うことなく()()()腹を打った。

 

「め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボヂュン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

柔らかくて大きなパンを強く押し込む感覚と、水風船に折れた枝が刺さる音。相手はまるで弾丸の様に吹き飛び、壁に大きなクレーターを作ってめり込んでしまった。

 

「それまで!!」

 

一瞬遅れて、先輩が声を張りあげる。

 

“ヒエ……”

“何があったし”

“あ、4んだ”

“アカン(アカン”

“待って理解が追いつかない”

“今絶対ヤバい音した”

“いやエグイエグイエグイ”

“え?マジで何した?”

 

呆然とする俺とスレ民。スレ民は俺の攻撃が見えなくて混乱しているらしいし、俺はこんな呆気なく四つ星ダンジョンアタッカーの身体が飛ぶなんて思ってなかった。

 

お、おおおおおおおお落ち着け。こういう時は魔法の言葉で……。

 

「や、やったか!?」

 

「………」

 

“ヤッちまった”

“へんじがない。ただのしかばねのようだ”

“良いから救助しろ”

“加減しろ馬鹿!!”

“お前毎回放送事故起こさないと◯ぬ呪いにでもかかってんのか?”

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