魔防隊御用達の休憩所 作:八百万のスレイブ
──この世は女尊男卑の世界だ
図らずとも自然とそうなってしまった世界。
男女平等なんてものはもはや無い。魔都と呼ばれる現世とは違う異空間が出現してから世界は変わった。
そこにしか実らない果物、"桃"。
それを口にすることで摩訶不思議な凄まじい能力を手にすることが出来る。
だがしかし、その恩恵に与れるのは不思議なことに女性のみ。
力を手に出来ない男と力を手に出来る女。そんな格差が今の世の中を作り出してる。
………とは言ったものの、別段生活に支障は無い。
下手な騒ぎを起こさない、もしくは巻き込まれない限り普遍的で平凡な平和な日常は過ごせる。
さて、そんな平々凡々な日常を今日も謳歌しようか。
そんなことを思いつつ事務所で悠々とコーヒーブレイク。
窓から差し込む暖かな日差しを受けながらのこの時間は心が休まるものだ。
そんな時だった。
──コンコン……
扉を叩く音がひとつ。
どうやら珍しくお客さんが来たようだ。
伸びをして気合を入れる。さてお仕事お仕事。
そんなことを思いながら扉を開けそこにいた人物に声をかけようと──
「遅い」
──パタン…
さて、書類仕事しようか。
少し溜まり気味だから消化しとかないと。
え?お客さん?
そんなのおりません。気の所為やろ(ハナホジ)
気を取り直して仕事仕事ドゴンッ!……へ?
吹き飛ぶ扉。そこから入ってくる一人の女。
「いきなり閉めるなんて失礼ね」
「……ひえぇ…」
そう言って髪を手で流す【山城恋】
……扉の修理費いくらだろ。
「──久しぶりに会う幼なじみを締め出すなんて教育がなってないわねほんと」
「久しぶりって言うけど先週来たやん。……てか、いきなり来んなよ。あとなんで来たんだよ」
ソファにドカッと腰掛ける我が幼なじみ。
差し出したコーヒーを飲んで美味しくないわねなんて言ってる。帰って(切実)
「近くに来たから顔出して行こうと思っただけよ」
「無理に来なくていいって。忙しいんじゃないの?」
「そうね。さっきまで総理大臣と面会してこの後ワシントンの方に行くわ」
「……うわぁ」
あまりのスケジュールにドン引き。
山城恋。
魔防隊という、異空間魔都の防衛を生業とする組織。そこの長中の長、魔防隊総組長を務める彼女。
こんな大出世した幼なじみ。ごく最近に総組長になったらしいがもはや風格は新任のものとは思えないほど。
昔から完璧超人だったから不思議では無い。桃の恩恵で得た能力もまさしくチートで総組長に選ばれるのもわかる……いやはや、天から二物も三物も与えられたものは違うなあ。
「そういえば、天花や前総組長があなたに会いたがってたわよ」
「……はあ」
山城の口から出た2人の人物にため息がこぼれる。
なんか頭も痛くなってきたゾ。
「苦手なんだよなあ、あの2人」
「あら、2人とも私には及ばないけど美人じゃない。本当は嬉しいんじゃないの?」
「距離感近すぎるんだよ。最初はうっひょーだったけど時間経つ事にエスカレートしてきてもう怖い。てか逃げるために定期的に事務所も変えてるし……場所とか言ってないよね?」
「言ってないわよ。言う機会も無いし。……まあ、バレるのも時間の問題でしょうね」
「……うへぇー」
そろそろ事務所の替え時かな。
新しいとこ探しておくか。
「それで?最近はどう?」
「どうって?」
「何か"情報"は無いの?」
「別に……まあ、あるにはあるけど今持ってる手札で別のとこにも行こうと思ってるからまだ言えんな」
「そう……」
「………」
「………」
そんな会話を最後に無言の時間が始まる。
まあこっちも山城も普段からおしゃべりという訳じゃない。何気こんな静かな時間は気に入ってたりするから苦痛は無い。
そんなことを思いながらコーヒーを1口。
うむ、美味い。
「……見た目からして甘そうね。あいかわらず、子供舌は変わらないみたいで」
「子供舌じゃないですぅー、甘党なだけですぅー」
「砂糖とミルクどれだけ入れたのよ」
「うーん、正確な量はわからんが……大さじ3杯ずつくらいじゃない?」
「………」
俺の言葉にドン引きの表情を浮かべる山城。
「ありえない。あなた人じゃないでしょ」
「やかましい。生きてたら苦い事の方が多いんだから飲み物くらい甘いもの飲ませろ」
全く、失礼しちゃう。
そうして一気に飲み干すコーヒー。……美味いんだけどなあ。
「はあ、呆れた。まあいいわ。私はそろそろ行くから……また来るわ」
「はいはい、次は連絡しなさいよ」
「考えとくわ」
あ、これは連絡してこないやつ。俺はわかる。
そう言って山城は窓を開け空の彼方へゴートゥーフライ。行ってしまった。ワシントンだっけ大変だなあ。
「………………あ」
扉の修理費、請求すんの忘れた。
続けたいなー。
続いたらいいなあー、