魔防隊御用達の休憩所 作:八百万のスレイブ
「──なるほど、ではこちらで条件に合う職場を探してみましょう。いくつか見繕ってリストアップしておきます」
「あ、ありがとうございます……」
本日はお仕事。
リストラされたリーマンが職を探してとやってきた。
まあ、相談所なんでこんなもんだ。
浮気調査やら肩こり腰痛のお悩み、カウンセリング等々……探偵業からマッサージ業まで幅広く。
もはや相談ってなんだろう?普通に専門家の方に行けばと思うがお金もらえるしまあいいかと開き直ることにした。
「ではそうですね……とりあえず今日のところは一旦お引き取りして頂き──」
──コンコン……
扉……ではなく窓を叩く音が1つ。
目を向けてみると……
「……!」
──すぐさま立ち上がりカーテンを閉める。
「……え?あの…?」
「ああ、なんでもないですよ。少し日差しが強くて」
「え?今日は曇って……」
「話しを続けましょうか」
ニッコリ笑ってソファに腰かけた。
直後パリンと割れる窓。
そっちに顔を向けようとする客の視線をノートで遮る。
「あ、あの……」
「話を続けましょう」
「は、はい……」
「仕事中に来るな」
「あら、ごめんなさいね。気づかなかったわ」
そう言って優雅に紅茶を飲む山城。
嘘つけやい。気づいてたろ。
まあ、部屋に無理に入って来なかったのは成長したな。そのまま俺のとこに来ないようになることを祈る。
「それにしてもお茶菓子は無いのかしら?」
「ポテチしかない」
「来賓用のものは無いの?」
「俺のおやつしかない」
「……ほんとに社会人?」
「文句言うなら帰れ」
そう言うと立ち上がり、事務所裏の台所の方へ。
戸棚を開ける音、ガサガサと物音が立ち何かを探してる様子。
へいへーい、彼女さんよぉ。勝手に他人の家のもの漁らんでくれよぉ。
「あら、ケーキがあるじゃない」
「待てコラ」
あわてて立ち上がり台所に向かう。
それは俺が後で食おうとしてたとっておきだろ。
常に行列の人気店で朝から並んで買ったやつだろ。
勝手に食わせるか。
「これはダメ」
「ケチんぼはモテないわよ」
「少なくともお前にモテたいと思ったことない」
「………………あ、そう」
そう言ってすんなりと引き下がる山城。
マジか、あのじゃじゃ馬がこんな大人しく身を引くとは。
……………。
「……1切れだけな」
「じゃあ私はお皿を用意しておくわね」
一転して機嫌が良くなる。現金なヤツめ。
鼻歌交じりに食器を取り出しおって。
「ついでに俺のコーヒーよろしく」
「ブラックでいいかしら」
「砂糖とミルク大量だ馬鹿野郎」
甘党ナメンナヨ。
「そうそう、あなたに紹介したい子がいるのよ」
「んー?紹介ー?」
ケーキタイム中の雑談。
まさか山城の口から紹介したい人がいるなんてことを聞くとは思わなかった。
そもそも、こいつ友達って俺以外……。
「そうかあ、俺以外にできたんだな友達が。あの高飛車じゃじゃ馬プライドクソ高女王様モドキのお前が…」
「喧嘩売ってる?」
喧嘩?なんで?
そういえば人って事実を言われて言い返せない時に1番怒りが湧くらしいね。
「はあ、まあいいわ。あなたカウンセリングとかもやってるでしょ?」
「ん、まあ」
「その子、少しメンタルが弱くてね。ちょうどいいから頼んでもいいかしら?」
「へー、部下か何か?」
「組長よ、三番組の」
「……組長でメンタル弱弱とか大丈夫?てかなんでそれで組長に選ばれたのよ」
「能力が強いのよ。前任の総組長がスカウトしてそのまま特別待遇」
「あー、なる」
あの人そこら辺適当だもんなあ。
実力は良くとも管理能力クソ雑魚なめくじおばちゃんだもん。そりゃ山城に総組長の座を取られますわな。
……いや、まあ本人にもやる気がなかったんだろうけどさ。
「ついでに雅と要も連れてくるわね」
「ワンちゃん達か。俺の事覚えてるかなー」
「覚えてるでしょ。かなりあなたに懐いていたし」
「大きくなってんだろうなあ」
最後に見たのはいつだったか……2、3年前くらいか?
山城家唯一の癒しだよあの二匹は。
「……もうこんな時間……そろそろ行くわ。次来る時はお客なんだからもてなしなさいよ」
「お前の態度次第です」
「……相変わらず腹立つわね」
首を振り呆れたように吐き捨てる。
そのまま頭を押えながら直したばかりのドアを蹴り壊して外へと出ていった。
……嫌がらせかな?
話の作り方も文も適当すぎるなあと我ながら思った。