シンキラゲーム配信。   作:バナハロ

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私個人が「こう言うことしそうだな」という妄想から来る捏造設定が結構あるので、それが合わない方は読まないことをお勧めします。


プロローグ

「……えっ、ゲーム実況?」

「はい♪」

 

 自身の邸宅にて、そんな話を恋人であり同棲相手のラクス・クラインに言われたキラ・ヤマトは、普段からあまり変わらない表情を珍しくキョトンとさせた。

 

「どういうことかな? ラクス」

「いえ、一年前のファウンデーションとの戦争以来、コンパスの活動も少しずつ世界に広がり、世界は平和になりつつありますでしょう?」

「うん、そうだね。ラクスの頑張りのおかげで」

「そんなことありませんわ。キラやシン達が前線で戦ってくれてこそですもの」

「……うん、シンやルナマリア、アグネスも頑張ってくれてる。前線は僕だけの力じゃない。けど、外交の場はラクスじゃないとできないことも多い。ラクスの力だよ」

「キラ……」

「ラクス……」

 

 夕食の席で、そのままキスでもしそうな会話をしていたが、二人の間に食卓があるので出来ない。

 

「それで、どうしてゲーム実況なの?」

「カガリが勧めて下さったんです。コンパスは最初こそ言葉で戦闘の中断を呼びかけますが、結局は戦闘による強引な武力で終結させてしまうでしょう? それ故に、結局は私達も圧政者のようなイメージがついてしまうような気がする、と」

「それは……そうかもね。常に圧政は反逆者を生み続けてきた。イメージだけでも払拭しないと、恐怖による支配のように思われてしまうかもしれない」

 

 実際、別に政治を行うわけではないし、こちらから指示を出して従わせることもないのだが、それでも「圧倒的な力を持つ奴がいるから暴れられない」と思われれば、こちらの存在自体が反感を買うだけになってしまうかもしれない。

 

「でも実際のキラやシン達はとても優しい普通の青年でしょう? なので、堅苦しい圧政者のようなイメージを壊す為に、最近流行っている『ゲーム実況』というものを配信してみて、戦うだけではないイメージを作りたいと思いまして」

「なるほどね……」

 

 なにが「なるほどね」なのか分からないが、何故かキラは頷いていた。

 

「うん、ラクスがやってみて欲しいっていうなら、僕はやるよ。戦う仕事よりも良いと思う」

「本当ですか? ……でも、キラはゲームをやったことがあるのですか?」

「あまりないけど……でも、色んな人を頼ってみるよ。そうしないと……またアスランに怒られちゃう」

「ふふ、そうですわね」

 

 そのままツッコミ不在の夕食は続いた。

 

 ×××

 

 翌日、ゲーム実況と言うものをよく知らないキラは、やはりまずは知っていそうな人を探すしかない。

 そういうのをよく見るのは、やはり10代の子供というイメージがあることもあり、まずは身近な人に意見を聞いてみた。

 

「えっ、ゲーム実況ですか?」

「た、隊長が……?」

 

 自分より少し年下の、シン・アスカとルナマリア・ホークに声を掛ける。

 

「うん。やってみようと思うんだけど、どうしたら良いのかなって」

「めっちゃ良いですね! オレ、キラさんの実況超興味あります!」

「じゃないでしょ!」

「痛っ⁉︎」

 

 握り拳を作りながら速烈で応援し始めるアホな彼氏の頭を当然のようにルナマリアは引っ叩いた。

 後頭部を押さえながら、シンは文句ありげな様子でルナマリアの方へ睨み返す。

 

「な、何すんだよルナ! 隊長がコンパスの為にする戦い以外の仕事をするってのに!」

「そう言われると応援したくなる気持ちはわかる! 叩いてごめん! でも聞いて!」

 

 そう言いながら、ルナマリアはシンの腕を引いて耳元でヒソヒソと話し始める。

 

「ゲーム実況よ? あの隊長が。普通に考えて上手くいくと思う?」

「行くに決まってるだろ。アスランなら失敗しそうだけど、隊長なら……!」

「バカ、実況ってのはそんな甘いもんじゃないでしょ。視聴者への配慮、ゲームへのリスペクト、どんなゲームをするか知らないけど、視聴者参加型ならプレイヤーへのマナーもある。普通の初心者配信者ならともかく、コンパスの隊長なら全部、最初から上手くやらなきゃいけないのよ?」

「キラさんなら大丈夫だろ」

「あんたたまには隊長に反論の一つでくらいしてみなさいよ!」

 

 全肯定過ぎて彼女としては複雑である。むしろこの男、キラに恋しているんじゃないかと思う程だ。まぁ軍人としてはある種、当然ではあるのだが。

 

「でも、総裁からの提案なんだろ? それならキラさんが断るはずがないじゃん」

「それはそうなんだけど……」

 

 そう言われると、辞めさせるのは無理な気がしてくるルナマリア。まぁ、イメージアップ自体は悪いことではない。……ていうか、これを提案したのはカガリとの事だが、本当だろうか? と思わないでもないが……。

 まぁ、なんにしてもそれならば協力して炎上だけは避けようと言う気持ちも分かる。

 

「はぁ……仕方ないわね……」

「?」

「好きにしたら?」

「ほんとか? サンキュールナ!」

「っ……」

 

 このお小遣いをもらった少年のような笑顔、ズルイ。フリーダムキラーだ元フェイスだ言われていても、結局この子の本質は素直で元気いっぱいとかいう小学生の学級目標みたいな所だ。

 でも、だからこそ応援もしてあげたくなるし、失敗しないようにしないと、という母性にも似た感情が芽生えてくる。

 

「隊長! 俺も手伝います!」

「うん、よろしく。シン。二人で実況、頑張ろうねっ」

「はい! ……はい?」

 

 あまりにも引っ掛かる言葉に小首を傾げてしまった。二人で? アドバイスとか手伝いが欲しいんじゃなくて? と。ルナマリアも一緒にキョトンとするしかない。

 

「えっと……お、オレもやるんですか?」

「勿論」

「もちろん?」

「一人でやっても隊長のワンマンに思われそうだし、部下との連携を大切にしている事も知ってもらいたいから」

 

 いやあなたこの前まで部下に防衛を任せて一人で暴れてましたよね、と思ってしまったり。まぁ今ではたくさん頼ってくれているから、別に気にしないけど。

 でもここでその頼られ方は複雑の極みである。

 ……いや、だが……ここは隊長と一緒にゲームが出来る機会だと捉えよう。そう思えば普通に楽しそうだ。朝まで徹夜ゲームとか。

 

「分かりました! シン・アスカ、隊長を援護します!」

「うん、よろしくね」

「シンンンンン⁉︎」

 

 まさかの返事に、ルナマリアは大声をあげてしまった。なんでこのバカまでやる気になっているのか。

 

「あ、あんたやんの⁉︎」

「ルナだって良いって言ったじゃんか」

「それは手伝いって意味で……」

「これも手伝いだろ。キラさんの!」

「いや、まぁ……」

 

 ……そう言われるとそうなのだが……普通に人気になってくれる分にはともかく、下手な配信者として有名になりすぎると、自分はその彼女に……。

 あ、ダメだ。やるならばルナマリアも全力で補佐しなくては。

 

「あ……あのっ!」

「何のゲームやります?」

「僕、あまり詳しくないから、シンに決めて欲しいな。でもなるべく人を殺すゲームとかではない方が良いかも。戦うにしても……こう、スポーツみたいな感じというか……」

「じゃあ……スプラ? スマブラ?」

「あ、あの! 聞いてください!」

 

 なんかすでに二人の世界に入りつつあったのを慌てて引き戻す。……というか、他の彼氏は彼女をほったらかして何なのか。

 

「どうしたの? ルナマリア」

「あ、ルナも一緒にやりたいのか?」

「シンは黙ってて」

 

 まずはバカを黙らせてから、改めて隊長に声を掛ける。

 

「一人……もしかしたら、配信に詳しい知り合いがいるかもしれないので、よかったらその子にアドバイスをもらったらいかがですか?」

「えっ、ルナそんな知り合いいたのか?」

「黙ってろっつったでしょ」

「それは……ありがたいな。是非、紹介してくれる?」

「はい!」

 

 向こうにも都合があるだろうが……まぁ何とかなる。そう思い、そのまま三人で移動した。

 

 ×××

 

 場所は、今は一時的にプラントに降りているミレニアムの居住区。当然のことながら、いつ争いが起こるか分からない以上、パイロットの全てを休みにするわけにはいかない。

 その為、必ずパイロットの一人はミレニアムにて待機している。その唯一の人に会いに行った。

 部屋の前でノックをしたのは、キラ・ヤマト。そのおよそ5秒後くらい、ガラッと扉が開かれた。

 

「……はい」

「こんにちは、待機中にごめんね、アグネス」

「えっ、あ……や、ヤマト隊長⁉︎」

 

 死んだ魚のような目で出て来たのだが、キラの顔を見るなり慌てた様子で髪型を整え、笑顔を作る。一応、もう諦めた上司の前なのであの顔はマズイ。

 

「どうされたんですか? お休みの日に……」

「やっほー、アグネス」

「お疲れ」

「……あんたらも?」

 

 後ろのルナマリアとシンを見て、思わずまた死んだ目に戻りそうになってしまった。

 この少女を選んだルナマリアが、キラの後ろから前に出て声を掛ける。

 

「ね、アグネス。配信の事、キラさんに教えてあげてくれない?」

「はぁ? なんであたしがそんなことしなきゃいけないのよ」

 

 藪から棒な話ではあるが、アグネスの言うことは尤もだ。だからこそ、ルナマリアは笑顔を浮かべながら手元にある端末をアグネスに見せつける。

 そこには「フロック♡チャンネル」と書かれた配信者のチャンネルページが開かれていた。

 

「これ、あんたでしょ」

「っ⁉︎」

「「ええっ⁉︎」」

 

 アグネス同様のリアクションをキラとシンも見せてしまう。配信? アグネスが? と、意外なものを聞いてしまってポカンとしてしまう。

 当然と言うかなんと言うか、アグネスは頬を赤く染めたまま腕を組んでそっぽを向く。

 

「はぁ? そ、そんなわけないでしょ。なんであたしがゲーム配信なんてくだらない事しないといけないのよ」

「にしてもフロックって……月光のワルキューレから取ったんでしょ。あんたその二つ名気に入ってんのねー」

「う、うううるさいわね! 余計なお世話よ! ……あっ、な、何のことか知らないけど!」

「このアバターも。ピンク髪のツインテールって、まんまアンタじゃん。でもこの子、あんたのアカデミー時代くらい若いわよね」

「わ、分かったわよ! 認めるからそれ以上言わないでくんない⁉︎」

 

 顔を真っ赤にしてアワアワと両拳を振る。割と容赦がないルナマリアを前にして「ぐぬぬっ」と言わんばかりに奥歯を噛み締めていると、キラが感心したように呟いた。

 

「へぇ……チャンネル登録者数、6.5万人……すごいね。こんなにたくさんの人を惹きつけてるなんて……」

「っ、と、当然です。男達はみーんなあたしが好きになるんですから。彼女持ちとホモ以外は」

 

 褒められて、少し得意げになる。本来、裏切るどころか隊長を殺そうとしたアグネスは銃殺刑になってもおかしくないのだが、キラはそれを許してくれた。

 それはキラだけでなく、自分を助けてくれたルナマリアやシン、元アークエンジェルの乗組員みんなもだ。

 だから……まぁ、感謝しているし、そういう人達に褒められるとつい嬉しさが込み上げて来てしま……。

 

「どんな配信してるのか、見てみましょうよ」

「えっ」

 

 シンがルナマリアが開いているチャンネルページの動画をタップしたことで、大音量でボイスが流れた。

 

『みぃーんなぁ♡ 今日も元気にこんにちワルキューレ。戦うVtuberフロックちゃんだよ。今日はA○EXで「1ゲーム30キルチャレンジ」をしていこうと思うので、高評価とまだの方はチャンネル登録、よろしくお願いします♡』

「……うわっ、お前何処から声出して……」

「わっ、わー! わー! 見んなしあたしと隊長の前で⁉︎」

「しかも30キルって……エグい配信してるわねあんた……」

「良いから閉じなさいよー!」

 

 慌てて端末を取り上げて動画を切り上げさせる。何なのか、こいつら。いきなりやって来て人のプライベートをズケズケと荒らして……と、肩で息をする。

 その自分に、相変わらず容赦がないルナマリアは平然と続ける。

 

「ていうか、本職が戦うゲームなんてやったらそりゃ無双するわよ……この暴れっぷりでその声ってキャラブレブレじゃない」

「うっさいわね! てかブレてないし! 戦うVtuberって言ってんでしょ⁉︎ この可愛さから飛び出す強さがギャップを生み出して、みんなあたしを好きになってくれるのよ! ほら!」

 

 そう言いながら、動画のコメントを見せる。確かに「この可愛さでプレデターはエグい。でもやっぱり可愛い」「笑顔で敵を蹂躙していくのマジヤバい」「血まみれの天使」などと好意的なコメントが多い。

 

「にしてもあんた……キャラ作りすぎでしょ」

「良いのよ! 素のあたしなんて誰も相手にしてくれなかったんだから!」

 

 そこまで卑下しなくても良いだろうに……と、コメントしづらいセリフにルナマリアは黙り込む。

 まぁ、なんにしても成果が出ているのなら、ルナマリアもシンもキラも認めざるを得ない。実際、これで多くのチャンネル登録者がいるわけだし、こう言うキャラ作りも必要なのかもしれない。

 

「なるほど……じゃあ、シン。僕らもやってみる?」

「えっ、お、オレらもですか?」

 

 コホン、とキラは咳払いをすると、喉に手を当ててやたらと甲高い声を出した。

 

「みーんなー、こんにちラクス・クライン。戦うフリーダム、キラ・ヤマトです」

「声気持ち悪っ⁉︎ 圧政者のイメージを消すのにフリーダムの名前を使ってどうするんですか!」

「ていうか『こんにちは』とあの女の名前、全然かかってないし! あと声怖っ!」

「良いですね隊長! 俺もやります!」

「「ガキは黙ってろ!」」

 

 アホガキを黙らせる。ルナマリアとしても、そこは止めないといけない。叩かれるでは済まないだろう。

 ダメ出しを喰らったキラは、特に堪えている様子もなく顎に手を当てて呟く。

 

「そっか……難しいな」

「ていうか、キラさんもシンもコンパスの広報の一環で実況するんですよね? なら、キャラ付けとかいらないと思いますよ」

「あ……それもそうだね」

 

 ルナマリアが言うこともその通りだ。むしろキャラを作ると胡散臭くさえ見えるだろう。

 そこでようやく事情を知ったアグネスが引き気味に口を挟む。

 

「え、そ、そうなの? 広報で実況って……誰が決めたのか知らないけど、疲れてるんですか?」

「ラクスは大丈夫だよ。毎晩、きちんと眠れてる」

「総裁ですか」

 

 アグネスが引き気味からドン引きになった様子でつぶやく。何をやらせようとしているのだろう。

 ……とはいえ、シンはどうでも良いがキラが失敗するのは嫌だ。隊長が自分を頼って意見を聞きに来てくれたわけだし、それには応えたい。

 

「まぁ……それなら視聴者参加型じゃないゲームの方が良いと思います。大体、そういうのって対戦ものだし、ヤマト隊長がやったら暴れるだけになると思います」

「うん。それは分かってる」

「なら……そうですね。シンとの対戦ゲームとかはどうですか? 桃鉄とか、スマブラとか」

「あ……俺、隊長とスマブラやりたいです!」

 

 シンも元気良く手を上げる。基本、余程の実力差がない限りは盛り上がるのがスマブラだ。

 だが、それを聞いたキラはキョトンと首を傾げる。

 

「スマブラ? スマートなブラジャー? ラクスには似合わないと思うけど」

「ち、違いますよ! スマ○シュブラザーズです!」

「隊長、セクハラです。あと私にもスマートなブラジャーは似合いません」

「アグネス、張り合わなくて良いわよ……」

「任○堂のキャラクター達が宙に浮いているステージで戦い合う格闘ゲームです!」

 

 シンが説明をすると、キラは少しだけシュンっとする。

 

「……そっか。ゲームでも、戦いか……」

「い、いやいや! スマブラは色んなゲームのキャラクターたちが……こう、何? 何年に一度かの祭典みたいな感じで集まって戦うんで、基本的に人死には出ません。負けたキャラクターも戦いが終わった後、後ろで勝ったキャラクターを拍手で讃えてるんで」

「なるほどね……スポーツみたいな感じ?」

「そうです!」

 

 それはアリかもしれない、と言う顔をするキラに、シンはほっと胸を撫で下ろす。当然と言われれば当然かもしれないが、ゲームでもこの人にとっての戦いに関する嫌悪感は強いらしい。

 その二人に、アグネスは口を挟む。

 

「あと、二人のコンビ名も考えた方が良いですよ」

「コンビ名?」

「チャンネルは『コンパスチャンネル』みたいになるとは思いますけど『コンパスの中の誰なのか』って覚えてもらうために」

「あーなるほど……」

 

 やはり、実況をやっている人は目の付け所が違う。というか、そういうところを理解しているから人気Vtuberなのだろう。

 

「コンビ名……フリーダム&デスティニーとか?」

「隊長、モビルスーツの名前を使うのはやめましょう」

 

 この隊長のネーミングセンスにルナマリアがツッコミを入れたのを見て、アグネスは察した。この話を続けさせると長くなる、と。

 

「まぁ……その辺は二人でゆっくり決めて下さい」

「うん、ありがとう、アグネス。ごめんね、待機中に」

「いえ」

 

 キラにお礼を言われ、アグネスは小さく一息つきながら扉を閉めようとする。そこに隊長が「アグネス」と声を掛けたことで動きを止めた。

 

「君は、とても魅力的になったと思うよ。だから、キャラクターを作らなくても君を愛する人は必ず現れる」

「っ……〜〜〜!」

 

 キラとしては普通に思った事でフォローしただけのつもりだったのだろう。だが、そのイケメン力から放たれた言葉はアグネスを一瞬で溶かすどころか、ルナマリアだけではなくシンでさえ軽く引かせた。

 

「……今の、総裁に聞かれたらヤバい奴じゃない?」

「シン、絶対に口を滑らせちゃダメよ」

 

 それを最後に、アグネスの部屋から離れて配信の準備を進めることにした。

 

 ×××

 

 仮にもコンパスの総裁と隊長なので、金はある。配信の場所はミレニアムかキラとラクスの邸宅を使うので、今日はその自宅に大きめのモニターやゲーム機などを設置しないといけない。

 それらの準備を済ませ、後は配信をするだけの状態にはなった。だが、一つだけ決まっていないものがある。

 

「コンビ名、どうしますか⁉︎」

「キラ・アスカとか?」

「良いですね!」

「ちょっと! その苗字は私のじゃなかったの⁉︎」

 

 こいつらの価値観本当に! と、ルナマリアは思わず食ってかかる。だが、言ってからハッとした。今のはほとんど逆プロポーズだ。

 思わず頬を赤らめながらも、今のでシンがどんな顔をするのか興味がある。俯きながらも顔を覗き見るようにチラ見すると、シンは頭に来るほどキョトンとした様子で小首を傾げた。

 

「え、でも『ルナマリア・アスカ』って言いづらくないか?」

「いや語感の問題じゃないでしょ!」

「? じゃあ、何の問題?」

「な、なんで分からないのよ!」

 

 ホント純粋無垢にも程があった。なんで分からないのか分からない中、自分とシンのやり取りを微笑ましく眺めていたキラが、マイペースに口を挟んだ。

 

「じゃあ、ラクス・ホークとかどう?」

「あ、二人の恋人を合体させる感じですか? 良いですね!」

「良くないでしょ! なんで私達にまで飛び火するんですか!」

 

 ていうか、シンとルナマリアの論争とまったく関係ない話題である。この隊長、もしかして割とコミュ障なのではないだろうか? 

 なんにしても、このままでは碌な案がでなさそうだ。この二人をなんとか制御しないと……と、ルナマリアは考えるが、どう考えても荷が重い。

 ……と、そこで妙案。いた、制御し得る人が一人。

 

「あ、あの……他の人の意見も聞いてみませんか? ほら、アグネスにも色々と意見とか聞いたし、その方が良いかもしれませんよ」

「あー、確かにそうかもね」

「お、ルナまた誰かそう言うの得意な人知ってんの?」

 

 アグネスの件があったからだろう。シンがウキウキになって聞いてくる。可愛い。撫でたい。

 

「まぁ、一応ね。とりあえず……電話してみよ。もう夕方だし」

「うん、そうだね」

 

 キラがテレビ電話をかけようとした時だった。その前にキッチンから声が届く。

 

「お二人とも、よろしければ御夕飯を食べて行かれますか?」

 

 ラクス・クライン……キラの恋人であり、自分達が所属する組織の総裁からお誘いの声だ。

 お話はありがたいが、そんなに長居する予定はないルナマリアとしては、お断りした方が良いだろう。ただでさえ、たまの休日にお邪魔しているのだから。

 それに、明日はルナマリアとシンとキラの三人はミレニアムに乗り込み、宇宙に戻るのだ。

 ミレニアムでも配信の準備があるので、ここは早めに帰った方が良い。

 

「ありがとうございます。でも、それはまたの機会に……」

「良いんですか⁉︎ ちなみにメニューは?」

「エビフライ、ポテト、きのこのオニオンスープ、だし巻き卵、南瓜蓮根の煮物、海鮮サラダ、ローストビーフ、ハンバーグ、ロールキャベツ、カニクリームコロッケ、あと……黒マメですわ」

「マジですか! ごちになります!」

「犬かあんたは!」

「痛ぁっ⁉︎」

 

 また引っ叩いてしまった。こいつは本当に何処までもガキだ。何年経っても躾ができる気がしない。

 あと……メニューを聞いてドン引きである。その量を人数分作るのって正気じゃない。カロリー的にも。絶対、遠慮しなくては。

 

「あの、私とシンはそろそろ……」

「ふふ、これからお電話なさるんでしょう? いつもこのくらいの量は作っていますので、遠慮はいりませんわ」

「えっ、い、いつも……?」

 

 チラリとキラの方を見ると、笑顔で頷いていた。心なしか、助けて欲しそうに見える。なんならこの為に自分とシンを家まで招いた説ある。

 何にしても、もう逃げられない。仮に強引に自分がシンの腕を引いて家から飛び出そうとしても、この人には勝てない。

 ……こうなったら、腹を括ろう。

 

「じ、じゃあ……ご馳走になります」

「ふふ、たくさん食べてくださいね」

「……明日からダイエット頑張らないと」

 

 そう告げて、そのままラクスは料理に戻った。

 

 ×××

 

 余計な一幕はあったものの、とりあえずルナマリアの言う「二人をよく知る人物」に電話を掛けた。

 

『……は? 配信?』

「そ、そうなんです……それで、二人のコンビ名を考えていて……」

「なんだよルナ、オレ達を知ってる奴ってアスランかよ」

 

 失礼な事をほざくシンを引っ叩いておきながら、ルナマリアは引き攣った笑みで画面の向こうのアスランと一緒にいるカガリに声を掛ける。

 

『……カガリ、どういうことだ?』

『すまん、ラクスの相談にトーヤが冗談を言ったら真に受けてしまったらしい』

『……まったく』

 

 ため息をつくアスラン。だが、決まってしまったものは仕方ない、と言うように声を掛ける。

 

『で、シンとキラだったな?』

「うん。何か良い案はないかな?」

『何でも良い。そんな事で電話をかけてくるな』

「えっ……」

「おい、アスラン! 隊長が久しぶりに声を聞こうと思って電話したのに、なんだその態度は!」

『知るか。俺はこれからカガリと朝までベッドにいる予定なんだ。話しかけるな』

『おい、アスラン!』

「せめてヒントくらいないのかよ!」

 

 よくなんかすっごく意味深なワードが入っていたのにスルー出来るものだ。ルナマリアは顔を真っ赤にしていると言うのに、シンは怒りで顔を真っ赤にしている。

 

『あー……じゃあ、シンキラで』

 

 そんな適当にも程がある案を最後に、通話は切れた。これから電話の向こうでは二人とも全裸でハッスルしているのだろうか? 考えれば考える程、ルナマリアも目の前のシンを見てムラムラして来るのでそれを頭の中で消すために話を続ける事にした。

 

「し、シンキラらしいけど……お二人とも流石にこれは……」

「うん、良いんじゃないかな。覚えやすいし」

「お、オレと隊長が合体……間違いなく最強ですね!」

「この流れで合体とか言わないで」

 

 ちょっと想像したくない。メイリンは好きそうだが、ルナマリアにそっちの趣味はない。

 まぁ、でも二人が気に入っているのならそれで良いのだろう。

 

「じゃあ明日、スマブラ配信。ミレニアムからだね」

「ルナ、ちゃんと見とけよ! オレと隊長の勇姿!」

「た、楽しみにしてるね……」

「夕飯出来ましたよー」

 

 あんまり見たくない配信が、明日から始まろうとしていた。

 

 

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