シンキラゲーム配信。   作:バナハロ

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配信界に舞い降りた剣。

 ミレニアム内部では、ルナマリアが自室にてゴロンとベッドの上で寝転がっている。不安でいっぱいだった。あの二人の配信……最低限の注意事項はアグネスとしたが、果たしてあの二人が何処まで出来るものか。

 シンはやたらと自信満々だし、キラは何を考えているのか分からないし、正直何かやらかすんじゃないか、と言う予感しかしない。

 それでも、もう腹を括るしかない。一人でソワソワしながらパソコンの画面を眺めていると、部屋の扉が開かれた。

 

「ルナマリアー。いるー?」

「アグネス。ノックくらいしなさいよね」

「そろそろ隊長とシンの配信でしょ? あんたが不安だって言うなら、一緒に見てあげないこともないわよ」

「不安なのはあんたなんでしょそれ」

「……」

 

 何故か、ルナマリアには勝てないアグネスだった。この女、普段からシンの相手をしているからか、レスバトルがやたらと強い。

 

「まぁ、一緒に見るのは良いけど。ほら、そろそろ始まる」

 

 話しながら、隣の席を用意してあげるルナマリア。お言葉に甘えて、アグネスも隣に腰を下ろした。

 

「で、結局コンビ名はどうしたの?」

「シンキラ」

「そのまんまね……なんか語感が『新キャラ』みたい」

「分かるけど、言わないであげて。考えたのアスランだし」

 

 まぁ分かりやすいし、二人とも名前が短いからできたことなのかもしれない。

 配信画面では未だ「準備中です。20時から開始します」という文言と、ハロのアイコンが出ている。トリィじゃないんだ、と一瞬だけ思ったが、どっちでも良いかとスルー。

 

「そういえばアグネス、あんたの配信は良いの?」

「今日、知り合いが初回配信やるってわかってんのに、それに被せて配信する程図々しくないわよ」

「……いや、あんたはやるでしょ」

「るっさいわね! シンだけならやってたけど隊長もやるんならそういうわけにいかないでしょ!」

 

 やっぱり基本は嫌なやつである。ていうか、一年前のアグネスなら隊長がやっていようがやってただろう。

 そんな時だった。パソコンの右下の時計が20:00と表示される。その直後、画面が動いた。

 まるでCGアニメのようにハロが二つ転がってくる。青、白のハロとグレー、赤のハロだ。何処となくフリーダム、デスティニーっぽい。

 その二体のハロがふるふると震えた後、口の辺りから上が持ち上げられ、中からミニキャラっぽいキラとシンが現れた。

 ハロの中から足を抜いて外に出ると、キラがシンの腕を引いて走り始め、道端に置いてあるテレビとゲーム機の前に移動。

 そのまま地べたに座り込み、コントローラを握った直後、テレビの画面がついた。

 そこに表示された「コンパス☆チャンネル」のちょっとかわいいロゴが画面の外まで広がって来て、タイトルコールとなった。

 

「すごいわね……なんかちょっと可愛いし……」

「これ誰が作ったのかしら?」

「ラクス総裁とかじゃない?」

 

 ルナマリアが言った直後だった。右下に小さく文字が出ている。「アニメーション制作:アルバート・ハインライン大尉」と出ていた。

 

「律儀! コンパスの動画なんだからそれ要らなくない⁉︎」

「ていうかあの人、あの毒舌っぷりからこんな可愛い動画作ったの⁉︎ 嘘でしょ⁉︎」

 

 二人揃って声をあげてしまった。あまりにも意外過ぎた。

 そんな二人をよそに、動画は進められる。次の画面では、シンとキラが二人で並んで座っていた。

 

『皆さん、初めまして。キラ・ヤマトです』

『シン・アスカです!』

『二人合わせてシンキラです』

『二人合わせてシンキラでーす! ……あ、やべっ、シンキラです!』

 

 早速、語尾が微妙に合わなくてミスったシンが訂正する様子を見て、ルナマリアは思わず顔を赤くする。あれ、自分の彼氏なのだ。

 

「……シン、ミス1」

「アグネス、カウントしないで」

「テンション高いのね、あんたの彼氏」

「やめて」

 

 まぁ、初回配信だし仕方ないか、と思いつつ二人の話に耳を傾ける。

 

『本日から、コンパスチャンネルでは僕とシンの二人でゲーム実況をしてみることになりました』

『よろしくお願いします!』

『……シン、その前に概要』

『……あっ、そ、そうだ。これにて、えーっと……あれ、コンパスの事をみんなにっすね、えーよく知ってもらえればなって思うんで!』

『よろしくお願いします』

『します!』

 

 本当にやめて、とルナマリアはさらに顔が赤くなる。あれ、自分の彼氏なんですけど、と。

 

「シン、ミス2」

「だからやめてってば」

「あなたの彼氏、全然台本覚えてなかったわね」

「良いの!」

 

 バカなところも可愛いのだから、もう良いのだ。

 

『で、本日やるゲームですが、まぁ何をしようか、と二人で色々悩みまして』

『隊長、ゲームあんまやりませんからね』

『うん。こういう時、どんなゲームをしたら良いのか分からなくて』

『ちなみに隊長、実況とかも見ないんですか?』

『え? あ、うん。あまり見ないかな。ニュースとか、機械工作とか、そう言うチャンネルはよく見るけれど』

 

 正直過ぎない? と思わないでもないが、まぁイメージ的にはそんな気がするし、嘘をつくよりマシなので問題ないだろう。

 

『それで、えー色んな部下に話を聞いた所、アグネスがスマブラって言ってくれて……』

『隊長、名前出しちゃダメっす』

『あ……あー、ごめんね、アグネス』

 

 今度はキラがミスった。て言うか、思いっきり名前を言われ、今度はアグネスが顔を真っ赤にする番である。

 

「良かったわね、世界に名前知られたわよ」

「望んでるわけがないでしょ!」

「みんな好きになってくれるんじゃない? 『え、アグネスってスマブラとかやんの?』みたいなギャップで」

「それで好かれる時点で相手オタクじゃん! あたしオタクは嫌!」

 

 そこなんだ、ていうかすごい偏見、とルナマリアは少し呆れる。こいつが実はモテないのはそういうところだろう。

 

『そんなわけで、スマ○シュブラザーズをやろうと思います』

『隊長はスマブラ……あ、やらないんですよね』

『うん。シンは?』

『よくやりましたよ。ていうか、今もたまにルナ……あ、彼女とよくやってます!』

「何なのこの身バレコンビ⁉︎」

 

 もう思いっきり立ち上がってしまった。こいつら、なんで簡単に人の名前を言うのか。

 画面の向こう側のシンは、キラの方を見て声を掛ける。

 

『フルネーム言ってないし平気ですよね?』

「平気なわけあるかー!」

『大丈夫だと思う。ルナマリア、優しいから』

「隊長とはいえぶっ飛ばしますよ⁉︎」

「ふっ……ふふっ、世界デビューおめでとう……!」

「あんたも笑ってんじゃないわよ!」

 

 こいつら、ダメだ。もう後で説教、確定である。なんならアスランを呼ぼうか、なんて考えながらルナマリアのイライラが高まる中、端末にメッセージが届いた。メイリンからだ。

 

『世界デビューおめでとう』

『うっさいバカ!』

 

 こいつも配信見てんのかよ! と、八つ当たり気味の返事をして端末をベッドに叩きつける。

 さて、そうこうしている間にキラから話は進められる。

 

『一応、説明しておきますと、キャラクターは全て解放してあります。DLCも購入しました』

『さっきまで練習も兼ねて超やってましたからね』

『シンが途中で気付いてくれて助かったよ。ある程度、大乱闘しないと手に入らないキャラもいるって事』

『っ……は、はい……!』

 

 その場にいたルナマリア的にはそこもホッとした。今日、出撃がなくて助かった。任務があったら確実に全キャラ揃わずに配信開始していた。

 別にそれでも問題ないと言えばないのだろうが、スマブラを配信するならばやはりキャラクターは多くいた方が良いだろう。

 

『おかげで、配信前にスマブラの練習も出来たからね』

『じゃあ早速、始めましょうか』

 

 話しながらスマブラの大乱闘画面へ。初実況で二人で対戦する。そこにノルマとかも無いし、何かにチャレンジするとかも無い。緩くやるつもりなのだろう。

 話を聞きながら、アグネスがルナマリアに聞く。

 

「……隊長の部屋で何してるのかと思ったら、ゲームしてたわけ?」

「そうよ?」

「なんであたしも呼んでくれなかったの⁉︎」

「いや、もう四人いたから。隊長、シン、私、アルバート大尉で」

「なんでそこでアルバート大尉なの!」

「オープニングのアニメーション作るついでだったからだけど?」

「っ、つ、次からはあたしも呼びなさいよ!」

「良いけど……え、何寂しがってんの?」

「がってない!」

 

 いや、がってんじゃん、とルナマリアは思ったもののスルー。というか、アグネスは配信でスマブラもやっているし、練習の段階でガチ勢を連れて来たらまずいだろう。

 

「……で?」

 

 まだ会話は続いてたらしく、アグネスがまた聞いてくる。

 

「何が『で?』」

「ヤマト隊長とシン、キャラは何使うの?」

「いやまだそんなの決まってないわよ。始めて一日も経ってないのよ?」

「まぁそうだけど……」

「あんたみたいに軽くやる時はホムヒカとカービィ、ガチでやる時はジョーカーとスティーブ使い分けたりしてないわよ」

「あんたどんだけあたしに詳しいわけ⁉︎」

「友達の配信だもの。時間があったら見てるわよ」

「っ……あ、あたしそっちのケはないんだけど」

 

 あ、ちょっと照れてる、とルナマリアは思ってしまったり。この子のこう言うとこが可愛いし、こう言うとこが男受けしそうだ。本人に自覚はないだろうが。

 そうこうしている間に、画面ではキャラクター選択が始まっていた。

 

『じゃあオレ、アイクでいきます!』

「うーわ……大雑把でガキっぽいシンらしい」

『じゃあ……僕は一先ずフォックスかな』

「それも隊長と合うかも」

 

 意外としっくりくるキャラ選択だ。

 そのまま設定に移った。

 

『アイテムとかステージはさっきやった感じで良い?』

『はい! キラさんにお任せします!』

 

 その設定はアイテム有りのステージ終点・戦場化無しという感じだ。それを見てアグネスはため息をつく。

 

「まだまだ甘ちゃんねー二人とも。ガチでやるなら、その辺の妨害無しでやらなきゃでしょ」

「でも本当の戦場ならむしろ色々とイレギュラーが起きるものなんじゃない? それらを無視した真っ向勝負に拘る軍人の方がなんかダサいけど」

「げ、ゲームの時くらい忘れさせなさいよその辺は! たまには真っ向勝負したくなるものでしょ!」

 

 スマブラのイレギュラーは割と理不尽なものが多いので、真っ向勝負を望むのもわかる。ちょっと分かってて揶揄うようなことを言った。

 画面では、二人のキャラクターがランダムに選ばれたステージに降り立つ。場所は「ポケモンスタジアム」。名前の通りスタジアムだが、時間経過で地形が変わるとラッキーなステージである。

 さて、その場で……戦闘が始まった。

 

 ×××

 

『ああああ! また負けたああああああああ‼︎‼︎』

 

 シンの絶叫が、パソコンから室内に木霊する。画面上では、ドクターマリオのメテオでアイクが落とされていた。これで、キラ7連勝目である。

 別に、シンは弱くない。アグネスの目から見ても、それは明らかだ。多少、攻めに重きをおき過ぎていたり雑な所はあったが、素人にしては上手い。

 ……だが、キラがおかしい。ステージギミックアイテムオンにしているにしても、キラの対応力と周囲を利用する応用力が光り、シンを弄んでいた。

 

「……ほんとに初心者?」

「そうだよ。すごいよね、隊長」

 

 いや、すごすぎる。当の本人はニコニコ微笑んで涼しい顔をしている。

 

『シンは、少し動きが直線的すぎるよね。あと周囲への対応力もイマイチかな。普段の出撃の時でもそうだよ。僕の助けになろうとしてくれるのはありがたいけど、僕達の任務では基本的に地の利は敵にあるんだ。罠に嵌められるようなことだってあるかもしれないんだから。周囲への注意力と冷静さがないと、いつか……』

『うっ……は、はい……!』

 

 一年前のファウンデーションとの一件以来、確かに周りを頼るようになってくれた。自分だけが先陣を切って味方を守るのではなく、隊員にも仕事を与えてくれるようになった。

 でも、その代わり説教が増えた。その時と同じような感じで配信中にも関わらず説教が始まっていた。

 

「ぷっ……なんであいつっ……ふはっ、説教されて……!」

「ちょっ、アグネス……笑いが移るからっ、やめっ……!」

 

 もうツッコミをやめた二人は、画面を見ながら揃って仲良く笑っていた。他人事だと思えば面白い配信である。

 ……とはいえ、だ。これは全世界配信中である。デスティニーにしてもフリーダムにしても、言っちゃいけないワードを言われたら困る。

 そろそろ、コメントでリクエストとかをかましておくことにした。

 

「? ルナマリア、コメント打つの?」

「このまま説教の流れでデスティニーの武装の話とかされたらどうすんのよ」

「なんて打つの?」

「リクエスト。ホームランコンテストしてーみたいな?」

 

 言うと、アグネスは呆れたように「はぁ……やれやれ」と言わんばかりのポーズとため息をする。

 その仕草に少しイラっとした。

 

「何よ」

「分かってないわね……他のコメントを見なさいよ。これだけ盛り上がってシンがボコボコにされてるのに、他のリクエストなんてしたら盛り下がるに決まってるじゃない」

 

 そうなの? とルナマリアは眉間に皺を寄せる。普段、動画見ていてもあまりコメントしないし読みもしないので知らなかったが、そうなのだろうか? 

 

「じゃあ……どうしたら良いの?」

「こうするのよ。ちょっとキーボード貸して」

 

 そう言って、アグネスは勝手にコメントを入力する。カタカタと文字列を入力した後、最後にタンッと小気味良い音を立ててエンターを押す。

 

『えっ、ちょっwwwシン雑っ魚wwwマジそんなんでキラ様に挑むとかマジ笑わせんなwwwヘソでお茶漬け作れるわwww』

 

「……いや、流石にそんな小学生みたいな煽りに乗らないでしょ」

 

 そう言いつつも、ルナマリアは嫌な予感。ていうか、ルナマリアの部屋のパソコンで入力したと言うことは、これはルナマリアが発したことになってしまうんじゃ……。

 その不安は的中した。

 

『はあ〜〜〜⁉︎ だぁれが雑魚だァ! キラさん、もう一回っす! 今度こそ俺本気でやりますから!』

『え? あ、うん。そういえば配信中だったね。良いよ』

「シンのバカ……ガキ……」

「ほんと簡単ね、あいつ」

 

 そのままゲームに戻った。配信画面では、キラはスネークを選択する。

 

『マジ今度こそ絶対負けねー!』

『うん。頑張って』

 

 さらにゲームは続き、シンの敗北も続いた。

 

 ×××

 

 配信を始めて、早二時間経過。負け続けているにも関わらず、やる気が一切落ちないシンを隣にしながら、心苦しくもキラは笑顔で告げた。

 

「そろそろ最後にしようか」

「えー⁉︎ も、もうですか⁉︎」

「もう二時間経過してるよ。そろそろやめないと」

「うぐぐぅ……さ、最後こそ勝ちますからね!」

 

 可愛いものだ、この子は。部下、というより部活の後輩? と言う感じ。いつまで経っても落ち着きがないし、騒がしい。

 とはいえ、だ。このままキラが最後も勝ってしまったら少し大人げないかもしれない。手加減して勝って喜ぶたちではないのだろうが、ちょっとヒントくらいあげても良いだろう。

 そんなわけで、過去に唯一、シンがキラに一矢報いた時のことを例にすることにした。

 

「ねぇ、シン」

「なんですか! 言っとくけど次は本気中の本気ですからね!」

「フリーダムを落とした時のこと覚えてる?」

「……」

 

 さぁーっと血の気が引いて真っ青になるシン。何をそんなに怯えているのか? と思ったのも束の間、そういえばあの時、落とされたのは自分だった。

 あれ以来、ザフトではシンは「フリーダムキラー」なんて言われていたらしいし、ちょっと無神経だったかもしれない。

 

「ああ、ごめんごめん。別にあの時のことを怒ろうとかじゃないんだ」

「……じゃあなんです?」

「あの時、シンは僕の対策をたくさん立てて挑んだよね」

「……自分のこと以外何も見えていないでね」

「その時のことを思い出して、今もやってみて」

「……その時の?」

 

 言われて、シンは少し腕を組んで考え込む。

 キラからの助言は素直に聞けるシンは、冷静にあまり思い出したくないことを思い返す。

 親友と一緒に、どうやってフリーダムを討つか、過去のデータから真剣に且つ正確に考えたものだ。

 今日、18戦ほどした。キラが使ったキャラクターはフォックス、サムス、スネーク、ファルコ、ダークサムス、インクリング、ドクターマリオ、ロックマン、ピカチュウ、ウルフ、ネス、ルイージ、ディディーコング、ベヨネッタ、ピット、ゼロスーツサムス、ロボット、むらびとだ。

 ……これ全部使いこなしているのはおかしいが、それでもやっぱりキラならではの戦略があったのではないだろうか? 

 

「……よし、やりましょう」

「うん。じゃあ、次は僕このジョーカーって人にしよう」

 

 ジョーカー……と、そこでシンはハッとする。もしかしてこの人のキャラ選択……。

 よし、今ならやれる気がする。相手の動きを読んで、攻撃パターンを掴む。

 そうこうしている間に、またゲーム開始。ステージはハイラル城。アイクで、まずは挨拶代わりに……いや、ここもわざわざ居合斬りなんていく必要はないのだろうか? そこもさっきからキラに読まれている気がする。ずっと同じことをしていたから。

 

「はぁっ……!」

 

 居合斬りをいくふりをして、ダッシュで接近した。

 するとこの後、この人は遠距離攻撃を放ってくる。ジョーカーの場合は……エイハかトカチェフか……。

 

「おっ、と」

 

 エイハが飛んで来たので緊急回避しながら懐まで潜り込んで、1発Aボタンを押す。

 が、ガードしたジョーカーはカウンター気味にスマッシュを放ってくる。それも読めていた。さっきから近接戦闘はずっとこちらに先手を打たせて後から倍返ししてくる。

 それを、さらにアイクの↓+Bでカウンターを放った。

 

「!」

「こんのおおおおおお‼︎‼︎」

 

 若干、吹っ飛ばしたが、まだまだ外へ吹っ飛ぶほどのものではない。なので、空中にいる間に天空を放った。

 下から剣を放り投げ、斬り込みながら地上に叩きつける。さらに吹っ飛んだので、空中へ追撃……と、思ったが足を止めた。ここで安易に攻めると、また手痛いカウンターをもらう。

 良いダメージは出たし、必要以上に攻めない。……と、そこで後ろにアイテムが落ちた。そうだ、そもそも今までうまくアイテムも使えなかったのは、そもそも取れなかったからだ。

 後ろのアイテムは、ホームランバット。それを手にして、復帰して来たキラと向き合う。

 

「ナメるなアアアアアア‼︎‼︎」

 

 拾ったバットを、ジョーカーに放り投げた。それに対してジョーカーは銃を撃って投げられたバットを止める。

 その隙に、後ろから今度こそ←+Bの居合斬りで急接近し、ステージ外吹っ飛ばす。

 

「グッ……!」

「うあああああああああ‼︎‼︎」

 

 かつてないほど上手くいっている状況において……キラの中でSEEDが弾けた。拡散するように割れ、それと同時に集中力と判断力が向上する。

 ジョーカーが外にいる間に、またバットを拾ってジャンプして追撃した。同じ事をするのは嫌だが、遠距離がないアイクはアイテムを使うしかない。

 座標を合わせると、またバットを投げ込む。すると、ジョーカーは真下へ落ちて避けた。

 予想通りだ。ジョーカーの復帰技は一つしかない。ワイヤーアクションで下から逃げる。それを狙い、アイクも下に降りた。

 

「あんたはオレが討つんだ! 今日、ここで‼︎」

「ッ〜〜〜!」

 

 チャンスは一回。急接近してから……メテオだ。真下へ剣を斬り払い、ジョーカーはヒットさせる。

 

『うわああああ!』

 

 綺麗に決まり、先制した。そうか……動きを読むってこう言うことか、とシンは一息つく。

 ふと隣を見ると、キラはニコッと微笑んだ。

 

「そう、やるね。シン」

「……は、はい!」

 

 そのまままたゲーム再開。この勢いに乗って、一気に倒してやる。

 

 ×××

 

 ほぼ互角。ジョーカーとアイクの鎬を削り合う戦いは、お互い残り一騎になってからしぶとく拮抗した。

 ダメージはジョーカーが281%、アイクが290%。ダメージでは負けているが、そもそも重量が違う。まぁこの%になればどっちにしろスマッシュが決まれば終わりだ。

 ジョーカーの射撃をガードして接近し、ダッシュAをかますがジャンプして避けられ、後ろからエイハ。

 それを緊急回避して一発入れようとするが、後ろに下がりながら銃撃される。

 回避してまた近づいて斬った。

 避けられて反撃された。

 ガードして斬り返した。

 防御されて距離を置かれて射撃された。

 すると、お互いに落ち着くためかステージの両端へ一時退避した。

 

「はぁっ、はぁっ……や、やるね、シン……!」

「そっちこそ……! はぁ、はぁ……!」

 

 中々、決着がつかない。致命傷になる攻撃は避けている為、簡単には勝負が決まらなかった。

 

「でも、そろそろ終わらせよう」

「何……⁉︎」

 

 そう言った直後、キラの瞳の奥が光った。頭の中でSEEDが割れ、それと同時に画面のジョーカーの反逆ゲージが溜まった。

 

『アルセーヌ!』

「!」

 

 ヤバい、と冷や汗を流す。と言うか、このキャラの声何処かで聞いたことある気がする。身近な何処かで。

 いや、そんな場合じゃない。とにかく、今はこの戦いに決着をつけなければ。

 

「行くよ、シン」

「来い!」

 

 そして……お互いにステージの両端から真ん中へ走り込んだ。

 ジョーカーの射撃を避けながら接近したアイクは、途中で拾ったカプセルを投げる。

 それを避けたジョーカーはエイハで牽制しながら近接戦闘へ。また、近距離からの斬り合いとなった。

 ピョンピョンと跳ね回るジョーカーを一撃で粉砕しにかかるアイク。途中、ステージギミックの竜巻が発生する。

 それを見るなり、大技のフェイントをした。ガードしたジョーカーを見てキャンセルし、投げ技で掴み、竜巻の方へ投げる。

 が、ジョーカーも上手いこと対応して近接し、ダッシュA。割と吹っ飛んだが、壁に当たったことで助かった。

 

「こんのっ……!」

 

 やっぱり強い。このままでは速度があるジョーカーには勝てない。何かきっかけがあれば……と、思っている時だった。

 真上から、スマッシュボールが漂って来た。

 

「!」

「しめた……!」

 

 そのスマッシュボールに天空を放つ。ヒット数が多いこともあり、一発で取ることができた。

 後は、こいつを当てるだけ……使い時を冷静に判断しろ。そう思いながら、ジョーカーへ接近した。

 ジョーカーはあからさまに引き気味に戦う。遠距離攻撃も豊富なのだし、当然と言えば当然だろう。

 おかげでどう接近するか悩ませる……そんな時だった。ジョーカーの背後に、竜巻が発生した。

 

「!」

「そこだあああああああ‼︎‼︎」

 

 これ以上、後ろに下がれば竜巻に捕まる。それを生かしてダッシュAで一気に距離を詰めた。

 そうすれば、ジョーカーは真上へ逃げる。それも分かっていたので、真上にスマッシュ……をすれば真横に空中で緊急回避するのも読めていた。

 フェイントを掛けて、向こうが回避を使ったのを確認して、一気に必殺技へ。

 

「いっけえええええええ‼︎‼︎」

「しまっ……!」

「『大・天・空ッ‼︎』」

 

 シンとアイクの声が重なると同時に連続斬撃が炸裂し、ジョーカーをリングの外へ弾き出した。

 それと同時に、ゲームセット。リザルト画面では、ようやくアイクが拍手ではなく勝利ポーズを飾ってくれる。

 そのことで、一気に嬉しさが込み上げて来た。

 

「っしゃ──ー! 勝ったああああああああああ‼︎」

「はは……最後の最後にやられちゃったな」

 

 キラも頬をぽりぽりと掻く。本当に最後に勝てた、とやたらと達成感があった。

 

「最後は完全に僕の動きを見切ってたね」

「はい! 隊長のアドバイスのおかげです!」

 

 確かに、今思えば最初の方は熱くなって直線的に動きすぎていたかもしれない。

 それに、学ぶこともあった。たかがゲームとはいえ、視野を広く持つことや、よく相手を観察し、どう動くかを頭に入れておくことが重要だ。

 アコードみたいな心を読むなんてトンデモ能力者が相手の場合は空っぽにして直観に委ねることも大事かもしれないが、やはり基本的には全力でいかなければ。

 

「じゃ、そろそろ寝よっか」

「ですね。もう割と良い時間ですし」

「明日も朝早いからね。それにしても、最後のジョーカーって誰かと声似てる気がするだけど……誰だっけ?」

「あー確かに。俺も途中、何度かそれ思ってました」

 

 そんな呑気な話をしながら部屋を後にし、配信中であることを忘れて部屋を後にした。

 

 




切り忘れた配信はトリィが切ってくれました。
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