「そんなわけで、アスランへのドッキリの案の選考会を始めます」
翌日、キラによって集められたシン、アグネス、ルナマリアの三人は、ホワイトボードの前に並んでいる椅子の上で待機していた。
ルナマリアもアグネスも「なんで私もなの?」と思わずにはいられなかったが、まぁもういつもの流れ過ぎてツッコミを入れるのもやめた。どうせやらされるのならば、流された方がマシだ。
「何が良いかな?」
「あの、まずなんであたしもなんですか?」
アグネスが狼狽えた様子で尋ねる。ルナマリアと違って、この子は流されなかった。
「? だってもう二人とも僕達の配信グループの一員でしょ?」
「あたしもう別でやってるんですけど⁉︎」
「でも、今度桃鉄か何かで出てくれるんでしょ?」
「や、まぁそれは……」
ダメだ。頼ることを覚えたキラは、これはこれでちょっと厄介かもしれない。ルナマリアも流石にアグネスに同情してしまう。
「それに、放送で収入が出たらちゃんとみんなに分配するから」
「何か考えます!」
おっと、思った以上にアグネスもチョロい。コンパスのパイロットをやっているというだけでかなり稼げるだろうに、ホントどこまでも強欲な女だ。
配られたノートに、それぞれ案を出し始める。ちょっとした大喜利大会のようになっていた。
ルナマリアも早く終わらせたいので作戦を考える。
「隊長、出来ました!」
そんな中、シンが手を上げた。それを見てキラはニコニコと微笑みながら頷く。
「はい、シン」
「アスランの椅子の下にブーブークッションを置く!」
そう言った直後、ノートを見せてきた。何故かロン毛だけ生えている棒人間が椅子に座り、ブッと鳴らしているイラストだ。何から何まで小学生である。
「うーん……面白いかもね?」
「えー? ちょっとしょぼくない? シンがやるんだし、もっと身体張ってもらわないと」
「なっ……ど、どういう意味だよ、アグネス?」
「動画にするんでしょ? 絵面が地味なのよ」
そう言いながら、アグネスは解説を始める。金が出ると分かった途端にこれである。まぁアグネスが頑張ってくれる分、ルナマリアは楽出来るので構わないが。
「良い? ドッキリをリアルで仕掛けるなら、まず面白い相手のリアクションとかが必要なのよ。可能な限り大きくて、素で、恥ずかしがらせる感じの。だけど、アスランの椅子にそんなクッション置いといても、リアクションしそうだと思う?」
「そ、それは……!」
そもそも踏みそうにない。気付かれそうだ。やるからには、うまいこと成功させないといけないのだ。
「そうだね……まぁ、一応ボードに書いておくから、他の人の案も待とっか」
話しながら、キラはホワイトボードに「ブーブークッション」と書き記す。まずルナマリアにとっては、ヤマト隊隊長がその単語を書いていることが面白かった。
「他には?」
「はいはーい!」
手を挙げたのはアグネス。それと同時に手元のノートを見せた。そこには、やたらと美人な赤い瞳に黒い髪の女性が描かれている。
「女装したシンが色仕掛け!」
「勘弁しろよ! バレたらアスハの首脳にも殺されるよ!」
シンがすぐに反応する。キラは少し困った顔をしながらもとりあえず聞いてあげる態度をとる。
「アグネス、説明を」
「やっぱり配信者なら、身体を張らないとって思うんですよ。その上、笑いも取れてテレビじゃギリギリ出来ないようなことをする事で、話題性を広げるんです」
「なるほど……?」
流石はアグネスである。どこまでも計算高い。だが、頼りになる。
「でもそれ、恥かいてるのオレもじゃないですか!」
「あんたの恥はどうでも良いのよ。どちらにせよ罰ゲームでしょうが」
「うぐっ……!」
「うん、面白いね。それも書いておこう」
「隊長⁉︎」
まさかの承諾にシンは大きなリアクションをしてしまうが、そんなこと知る由もなくキラはルナマリアに声をかける。
「ルナマリアは何かある?」
「えっ、わ、私?」
考えていなかった。なんかみんなイラスト付きで描いているし、自分もそうした方が良いのだろうか?
そう思い、軽く適当に書いて適当な案を見せた。
「び、びっくり箱……とか?」
「ははっ、なんだそれルナ。結構可愛いこと言うんだな」
「ーっ!」
シンがそんなことを不意打ちで言うものだから、思わずルナマリアの顔は真っ赤に染まる。こいつ本当にそういうところだ。
「う、うっさいバーカ!」
「いや、びっくり箱でビックリするやつなんていないだろー。子供じゃないんだから」
「世界で一番、あんたにだけは言われたくないっつーの!」
「な、なんだよ! オレだって子供じゃないから!」
「まだまだガキよあんたなんて! 色んなところが!」
「る、ルナだっていまだにピンクのミニスカートたまに履いてるくせに!」
「あ、アレは……こう、ホントたまにしか履いてないし……! 流石に、年齢的にアレかなって自覚はあるし……悪かったわね、若作りしてて」
「え……あ、いや……に、似合ってないとは誰も言ってないだろ!」
「……」
「……」
揃ってもじもじし始めてしまう。なんかお互いに恥ずかしいことを言い合ったような感じがして。
それを見てアグネスは胸焼けでも起こしたようにため息を漏らす。キラはニコニコ微笑んでいる。
「……隊長、気持ち悪くなってきたんで部屋戻っても良いですか?」
「え、大丈夫? ついて行こうか?」
「いえ結構です」
「じゃあ……アグネスも具合悪いみたいだし、今日はここまでにしようか」
いやそういうつもりではないんだけど、とアグネスは少し冷や汗を流す。単純にコーヒー飲みに行くだけのつもりだから。
この会議をもう一度やって、また似たようなことになるのもしんどいので、一先ず提案してみることにした。
「そこまですることないです。ミレニアム内で、今の三つの案でアンケートをとったりどうですか? それを実行って事で」
「あ、良いね。じゃあ今日は解散」
と、いうわけで、アンケートを取ることになった。
×××
なんかちょっと良い雰囲気になった気がしたルナマリアは、少し嬉しそうに自室に戻った。なんだかんだ、シンもルナマリアの事を可愛いと思ってくれている……それを知れただけでも満足だ。
「〜♪」
ご機嫌なまま、鼻歌なんて歌いながら天井を見上げる。今にして思えば、こんな風にシンと少し恋人っぽいやり取りをするなんてなかった。
そういう意味でも、少し余裕が出てきたコンパスの活動は世界を良い方向に変えてくれている気がする。
……そうだ。ていうか、シンキラ実況の配信とはいえ、隊長の足を使ってアンケートをとるなんて良くない気がする。
ここは、自分もお手伝いしよう。そう思い、寝転がっていたベッドから起き上がり、廊下を移動し始めた。
隊長は今、何処にいるのだろう? そう思いながらフワフワと浮きながら移動していると、来た場所はMSの格納庫。何やら騒がしいので中を覗いてみると……。
「え? 大天空ってこんな感じでしたよね?」
「いや違うよ、シン。大天空はもっとこう……剣を高く投げて振り回すんでしょ」
「違いますヤマト隊長。大天空は出鱈目に斬りつけているようで実はアイクなりの型というものがありまして……」
シン、キラ、アルバートの三人が、無重力を利用してなんか遊んでいた。スパナを手に持って、真上に放ってからジャンプし、振り回す。何だろう、あれ。男子高の昼休みなのだろうか?
しかし、シンはともかくキラとアルバートの二人があそこまで楽しそうにしている姿は、もはや一周回って面白い。
「とりあえず……今はいいや」
アンケート調査はしばらく捗りそうにないので、自分はこのまま三人のやり取りを眺める事にした。
アイクの次は、ベヨネッタごっこを始める。あのトリッキーな足の動きを練習し始め、なんかちょっと男がやってもエロいな、なんてルナマリアは思ってしまったり。
次は、ドクターマリオ。割と動き回るあのキャラクターのアクロバティックな動きを三人で試している。
「……」
……しまった。少し楽しそうとか思ってしまった。おかしい。自分にあんな子供みたいな趣味はないのに。
まさか……実況を手伝ううちに趣味が少し幼くなってきたのだろうか?
「いやいやいや……いやいやいやいや」
首を横に振るう。ダメだ、このままでは。ただでさえ彼氏がガキなのに、自分までガキになってどうするのか。
そんなことを思っている時だった。自分に気がついたシンがこちらに顔を向けた。直後、パァッと嬉しそうな顔をされる。可愛い。
「あ、ルナー!」
「シン……大きい声出さないの」
なんかちょっと大人ぶったようなことを言いながら、気付かれてしまった以上は仕方なく自分も下へ降りた。
「何してたんだ? あんな所で」
「こっちのセリフよ。三人で何してるの」
「スマブラごっこに決まってんだろ。ほら、フォックスのステージで飛行機の上で戦う事もあったじゃん? ミレニアムの上もスマブラのステージになることあんのかなって話から盛り上がってさ」
その話からごっこ遊びに展開されたらしい。適当に聞き流しながら、アルバートとキラに「お疲れ様です」と挨拶をすると、同じような挨拶を返される。
「ルナは何しに来たんだよ」
「ヤマト隊長がアンケート取ってるから、手伝おうと思って来たのよ」
「……アンケート? ……あ、そうだった」
「忘れてたんですか?」
「あ、あはは……ハインライン大尉があまりにも色々知ってるから……あ、ハインライン大尉はどのドッキリが良いと思いますか?」
そう言いながら、キラは紙を手渡した。それを受け取ったアルバートは「ふむ……」と顎に手を当てる。
その隣から、シンが懇願するように言う。
「オレの女装の奴は選ばないで下さいよー?」
「それはフリか? シン」
「フリじゃないです!」
「私ならそうですね。ルナマリアのびっくり箱を推します。私ならばどんなに肝が据わった者でも確実に失神させるびっくり箱を作ってみせましょう」
「えっ、わ、私の⁉︎」
「ブーブークッションでも構いません。オーブ全域に響き渡る音が鳴るクッションを作ってご覧に入れましょう」
「それ新兵器ですけど⁉︎」
ルナマリアのツッコミも無視して、紙を返すアルバート。「ありがとうございます」とお礼を言いながら、キラは紙に線を入れる。
「途中経過はどんな感じですか?」
「こんな感じだよ」
話しながらキラが紙を見せると、シンの女装の横に「正」の字が五つ並んでいた。他のは良いところ正一つである。
「あーあ……圧倒的ね」
「え、な、なんですかこの結果⁉︎ オレ、女装するんですか⁉︎」
「アスラン・ザラへのドッキリと言うよりもシンの女装に興味があるような結果だな」
「鬼しかいないんですか、この艦は!」
頭を抱えるシンは、ハッとしてルナマリアの顔を見る。そして、懇願する仔犬のような顔で手を握って来た。
「な、何……?」
「頼む、ルナは他のに入れてくれ……!」
「いや今から私が入れてもこれは逆転不可でしょ……」
「じ、じゃあアークエンジェルからも票を取ってきてくれ!」
「なんでよ……そんなに嫌なの?」
「嫌に決まってんだろ! 女装って……る、ルナも見るんだろ……?」
それはまぁその通りだが……あ、もしかして自分にカッコ悪い姿を見せたくないとかだろうか? まぁ他にも普通に男としての矜持みたいな理由はあるのだろうが……何にしても、そこまでお願いされると叶えてあげたくなってしまう。
「分かった、分かったから……」
「頼むぞ……!」
話しながら、ルナマリアはキラの方を見る。
「すみません、アークエンジェルの皆さんに聞いてみても良いですか?」
「うん、構わないよ」
アークエンジェルはファウンデーションにて沈まされてしまったが「アークエンジェル弍式」として復活を果たした。乗組員も今まで通り、マリュー・ラミアスを艦長として、ムウ・ラ・フラガ、アーノルド・ノイマン、ダリダ・ローラハ・チャンドラⅡ世が揃っている。
そんなわけで、とりあえず電話をしに行くことにした。
×××
「結果発表をします。厳正な調査の結果、シンの女装ドッキリに確定しました」
「なんでだよおおおおおおおおお‼︎」
翌日、再び集められた会議室において、シンは頭を抱えて絶望した。当然、提案した張本人であるアグネスは、とても嬉しそうにニヤつきながら口元を手で押さえて笑う。
「ぷふふっ……よ、良かったじゃない、シン。あんたの手、自らドッキリを完遂できる唯一のものよ?」
「嬉しくねーよ! こんな事なら正面切って殴り合った方が良かったわ!」
「いや、それだと一方的になるだけだよ、シン」
「分かってますよ!」
だが、決まってしまったものは仕方ない。自分の女装姿が全世界に配信されてしまうわけだが……いややっぱ仕方なくない。絶対に嫌だ。
「お願いだから勘弁してください! 謝りますから!」
「ダメよ。決まったんだし」
「アグネス! そもそもお前なんてものを提案してくれてんだよ!」
「配信的に盛り上がるものよ。あと暴力が一番、生まれなさそうなの。コンパスが暴力を振るわせかねないような事したらダメでしょ?」
「うぐっ……!」
確かに、ブーブークッション(アルバート製)でもびっくり箱(アルバート製)でも使えばアスランのCQCが猛威を振るう。というか、殺人動画になりかねない。
しかし、女装という笑いの種になるものなら……。
「お願い、シン。また今度、うちにご飯食べに来て良いから。ルナマリアもアグネスも一緒に」
「えっ、あ、あの超美味い総裁の手料理、また食べられるんですか?」
「あたしは絶対に行きませんよその催し」
アグネスが拒否するのを無視して、少しシンは悩む。正直、美味しかったあの手料理を食べられるなら……と、思わないでもない。
しかし、それでも女装が世界に放送されるのは少し悩むというか……。
「じゃあもう一つ。シンとルナマリア版のトリィとブルーも作ってあげる。アスランと」
「やります!」
やる事になった。
さて、そうと決まればプランである。女装姿でアスランの前に何も考えず現れるわけにはいかない。やはり、何かしら盛り上がるイベントを起こさなければならないし、アスランからリアクションをもらうにはクオリティも大事だ。
そんな中、ルナマリアが手を上げた。
「シンのメイクは私がやります」
「え、ルナなんでそんなやる気なの?」
「私がやらなきゃアグネスがそこやるんでしょ? 仮にも彼氏の顔を他の女にいじらせるもんですか」
「あたしそんなガキ興味ないわよ」
「ガキじゃない!」
「私が嫌なの!」
ルナマリアは少しご立腹だ。まぁ、とはいえシンとしてもルナマリアが男装するって言ってアスランに顔とか弄られたらデスティニーを持ってきてしまうので分からなくはない。
さて、方向性は決まった。
「じゃあ、どんなドッキリにするか考えよう」
「そうですね」
「はぁ……少し憂鬱だ……」
なんて話している時だった。キラの携帯電話が震える。ラクスからかと思ったが、意外な人物からだった。
「ムウさん……? ごめん、ちょっと電話。三人とも待ってて」
「あ、はい」
もしかしたら、急ぎの用事かもしれない。携帯を耳に当てがい、応答しながら廊下に出る。
「もしもし、ヤマトです」
『よう、ヤマト隊長。元気か?』
「お久しぶりです。そちらは?」
『まぁまぁだな。最近は平和だから、あまり出撃の機会もない。平和に越したことはないが……腕が鈍っちまうといざという時に困っちまうよな』
「では、今度僕らと実戦形式の演習でもいかがですか?」
『ああ、そりゃありがたい』
話しながら、挨拶を終える。それで……用件は何なのだろうか?
「それで、何かご用事ですか?」
『ああ。昨日、そちらの嬢ちゃんから電話があってな。面白いことになってるみたいじゃないか』
「はい。アスランへのドッキリですね」
『それについてなんだが……一つ、面白いのを思いついちまった。乗るか?』
「聞かせてください!」
言われて、キラは瞳を輝かせた。この人の考えるドッキリ……楽しそうだ。
×××
それは、ある日の夜のこと。アスランはオーブに帰還し、軽く伸びをする。ここ数日は紛争も小競り合いも無くなってきて、潜入先は減って来ている。
それでもきな臭い国がないわけではない。内乱、あるいは宣戦布告をしかねない国の内定を行い、報告することがなくなるわけではないのだ。
とはいえ、今日はとある任務でミレニアムが地球に降りてくる日。それ故に、少し早めの帰還をしたのだが……。
「キラもシンもルナマリアも、ミレニアムにはいないなんてな……」
「そうですねー」
一緒にいるメイリンがため息をつく。同じくため息をつきたいアスランは、呆れた様子で呟いた。
「ま、どうせ俺へのドッキリとやらで留守にしているんだろう。メイリン、俺といると危ないかもしれない。君は帰っても良い」
「いえいえ、逆に言えば私がいれば狙われないことだってありますよ?」
「まぁ……それもそうか」
バレバレだった。来るということが。まぁあれだけ放送で言えば当然なのだが。何が「明日、ランドセルを背負っていそうな男」だ。頭が悪過ぎてコンパスの任務が心配だ。
そのままカガリの部屋に向かう。今日の報告がこれからだから、それだけは済まさなくてはならない。
階段を上がり、廊下を歩いている時だった。ふとアスランは銃を抜き、天井に向けて発砲した。
「えっ……⁉︎」
一発で貫かれた天井から落ちたのは、超小型のカメラ。普通ならまず気づくはずがないものだ。
「……侵入者だ。メイリン、気を抜くな」
「は、はい……!」
メイリンも同様に銃を抜く。マズイのは、ここはカガリの部屋があるフロア。すぐに駆けつけなければならない。
その為にも、最速で走り始める。後ろをついていくメイリンが遅れてしまうほどの速さで。
その直後だった。パリィンっ、というガラスが割れる音が響く。その後に続いて、カガリの甲高い声が聞こえた。
「っ⁉︎ だ、誰だお前!」
「! カガリ!」
すぐに走り出す。何者かが大胆にも王手を打ちにきたと見て間違いない。すぐに駆け出して部屋の中へ突入した直後だった。
目に入ったのは……割れた窓と、二人のカガリだった。それに、思わずアスランは眉間に皺を寄せる。
「……⁉︎」
「! アスラン!」
「おい、誰なんだこいつ⁉︎」
「この偽物め!」
「偽物はそっちだろ!」
「なんだと⁉︎」
どうやら、カガリが増えたらしい。というか、すぐに察した。これは、ドッキリのそれらしい。
だが……それよりも気になるのは、もう一人のカガリ。どっちが本物かなどすぐに分かるが……まぁ、どうせ撮影されていることだろうし、仕方ないので乗ってやることにした。
首元にチョーカーをつけている方、恐らく変声機(アルバート製)でカガリの声を再現している。つまり……あっちがシン。
「化ければ俺を驚かせられると思ったのか? シン」
「っ……!」
息飲んじゃってるし。と思っても、スルーしてやることにする。そのまま二人のカガリに近付く。
冷や汗を流すカガリは、二人ともアスランの前に立った。
「アスラン、お前なら分かるだろ⁉︎」
「私が本物だ!」
「分かってる。今からすぐに判別してやる」
そう告げた直後、アスランは両手を二人に伸ばし、胸を全力で鷲掴みした。
「「っ⁉︎」」
りんごみたいにやたらと硬い作り物の感触と、バランスボールのような柔らかさに加えて掴もうとする指と指の隙間を縮めようとしても包まれたくないと主張しているかのような弾力を誇るとても男装をしていたとは思えない握力を鍛えること言い訳にしていつまでもモニュモニュし続けたくなる天然物の感触……と、すぐに見分けた。
最初から見抜いてたとはいえ、ニコりとチョーカーをつけている方のカガリを見る。
「窓の掃除はお前がしとけよ」
「え、いや、あのっ……」
メギッ、と顔面を軋ませる一撃を放って、割れた窓から叩き出した。吹っ飛んだ偽カガリの方を眺めていると、パンっともう片方の手が弾かれる。
「お、おい! アスラン! いっ、いいいいきなり何するんだ⁉︎ お、おお前、今どういう状況だか分かってるのか⁉︎」
「ん? 偽物のカガリをしばき倒した状況だろ?」
「ちっ……バカッ! そんな話じゃなくてだな! 今、部屋にカメラが……!」
「へぇ? てことは、カガリ。お前もドッキリの仕掛け人の一人というわけだな?」
「…………あっ」
まぁ、そんな事は最初から気が付いていた。カガリの声が出るチョーカーの時点で協力者なのは間違いない。というか、いくらアスランがいないとはいえ首長の部屋に一人でバカが入って来れるわけがない。
そのままカガリの方へ一歩近づき、今度は不意打ちではなく堂々と胸に手を置く。
「くだらないゲーム実況の罰ゲームに、一国のトップが手を貸すなんて……職権濫用も良い所じゃないのか? お仕置きが必要だな」
「っ、い、いや……その、それは……!」
「カメラが回っているぞ? 胸、揉まれたままで良いのか?」
「っ……!」
顔を赤くしたまま抵抗されない。どうやら、さっき揉まれた時にスイッチが既に入っていたらしい。
少し背伸びして瞳を閉じたカガリは、唇を尖らせて上を向く。そこにアスランは唇を重ねようとする……が、その前に、やる事がある。
銃を抜いたアスランは、この部屋にあるカメラに銃口を向けた。
「悪いが、見せられるのはここまでだ」
そう言って、引き金を引いた。
アークエンジェル弍式なんてものはありません。ただあの後、アークエンジェル乗組員なら新しい戦艦じゃなくてまたアークエンジェル作ってもらってそうだなと思っただけです。
どうせ戦闘シーンはやらない予定なので、見逃して下さい。