配信の日にルナマリアの部屋に集まるのは、もう恒例行事のようなものであった。が、今日は一人だけメンツが違った。
「お久しぶりです、アグネスさん」
「久しぶりーメイリン」
地球にとどまっている事もあり、妹も混ざって三人で見ることになった。待機画面を眺めながら、またアグネスが持ち込んだ茶菓子を摘む。
「メイリンもシンキラよく見てるんだっけ?」
「はい。まだ私の名前は出されてませんし、楽しく見れてますよー」
「まぁ、割と炎上ギリギリの配信してるからね。他人事としては面白いわ」
「ちなみにアスランとカガリさんのドッキリですけど……あれ私、後ろから見てたんですよー?」
「えっ、あんたあれ見てたの?」
ルナマリアも引いたように呟く。見てたって、直接という意味だろうし、どういう気持ちでそれを見ていたのか気になった。
「見てたよー? まぁなんか二人がヤること始めたから扉閉めて逃げたけどー」
「ど、どういう気持ちで見てたわけ……?」
「? 別に見慣れたアスランだし何も?」
「あの人メイリンの前でもこんな感じで……何を人の妹に見せてんのよあいつ」
シンではないが、ルナマリアもアスランへの殺意が芽生えた。まぁ、もう子供じゃないと言われればそれまでなのだが、それでもやめていただきたい。
そんな中、メイリンがふと思い出したように聞いた。
「あ、そういえばお姉ちゃん。シンとは上手くいってるの?」
「別に普通」
「えー? それ上手くいってない人の発言じゃん」
「喧嘩してるわけでもないし、割と楽しくやってるわよ。この前も幕末見たりしたし、一緒にマリカーの練習したりしてたし」
「……高校生カップル?」
「な、何よその反応」
「アグネスさん、どう思います?」
なんか信用されなくなったのか、メイリンは余計なことしか言わない同僚に聞く。
聞かれたアグネスは呆れた様子で答える。
「まだ二人とも未経験なのよ? 上手く行ってると思う?」
「えっ」
「な、何よ! 良いでしょ別に⁉︎ 清純派なのよ!」
「こんな写真を隠して保存してる彼女の何処が清純なのよ」
そう言いながらアグネスが取り出したのは、女装中のシンやメイク前のシン、胸に詰め物を入れて巨乳になったシンなどのお宝写真だ。
それを見るなり、ルナマリアの顔は一気に赤くなる。
「ーっ! あ、あんたどこでそれ見つけたのよ!」
「ベッドの下。男子中学生かっ」
「う、うっさい! 勝手に見んな!」
「お姉ちゃんの性癖が……ネジネジと……」
「う、うるさいわよメイリン!」
とはいえ、捻れる気持ちはメイリンにもアグネスにもよく分かる。シンはガキだが、ルナマリアは普通に精神的にも成長している普通の女性だ。そういう雰囲気にならなくて手は出せないのに、隙だらけで性欲だけは育っていく女性の気持ちはよく分かる。
「お姉ちゃん、今後ご飯でも行く?」
「たまには私も付き合うわよ」
「ありがと……」
そんな話をしている中、また例のアニメーションが始まった。相変わらずミニキャラ化した可愛い最強二人がチョコチョコと動いた後、タイトルコール。そして、二人の画面が映った。
『はい、皆さんこんばんワンパンマンマ○ファイト。キラです』
『シンです!』
『二人合わせてシンキラでーす!』
『二人合わせてシンキリャです!』
三回目なのだから、いい加減噛むのはやめていただきたい。あれ自分の彼氏なのだから尚更のことだ。
まずはキラが隊長らしく挨拶を始める。
『この前のドッキリ動画、たくさん見ていただいてありがとうございました』
『本当に楽しんでくれてね。コメントまで……特にオーブの人から? 送られてきて、すごく面白かったです』
『シン、顔大丈夫だった? ていうかそれ、まだ腫れてる?』
『痛かったですよホントに……あ、いやあんな野郎の拳なんか俺には効かないんで、全然平気っすけどね!』
『そっか。じゃあもう一回やる?』
『えっ、いやそれは……』
鬼のようなことを言っていた。ちなみに動画だが、アスランとカガリと一瞬だけ映ったメイリンの顔にはモザイクの編集が入っている。一応、配慮は忘れなかった。ハインライン大尉が。
さて、そろそろキラがまた配信を進行させる。
『さて、では今回やっていくゲームですが……えー、実は対戦ものばかりではなく、たまにはこういうのもやりたいと思い、始めました』
そう言うキラが画面に出したのは、ペルソナ5 。まぁ知っていたので、ルナマリアもアグネスもリアクションをすることはない。
「へー、ペルソナ。なんか意外だね、お姉ちゃん」
しかし、メイリンはちょっと驚いていた。こういう新鮮な反応は今思えば見たことがなかったので、ルナマリアは覚えておくことにした。後でキラやシンに報告してあげれば何かの参考になるだろう。
「そうね。初めてのRPGだもの」
「まぁ、私達は知ってたんだけど。一応、色々手伝ってあげてるし」
「そうだったんだー。アグネスさん。配信慣れてますもんねー」
「えっ、なんであんた知って……る、ルナマリア! 言ったの⁉︎」
「お姉ちゃんからは何も聞いてませんけど……普通にザフト出身のみんなは気付いてますし」
「……」
「よかったわね、有名人」
「う、うるさい!」
アグネスも割と身バレしまくっていた。もうプラントには帰れない。
さて、配信はその間にもサクサク進んでいく。
『隊長、ずっとペルソナ気になってましたもんね。いや、ペルソナっていうかジョーカーに』
『うん。いや、実を言うと僕らの近くにですね、この前やったスマブラのジョーカーってキャラクターにとても声が似ている人がいまして。それで、ちょっと前々から気になってたんですね。それでまぁ……色々、協力してくれてる人から意見を聞いて見て、やってみようかと』
『ジョーカーってなんかカッコ良いし、普通に楽しみですよね』
『うん。じゃあまぁ……やりましょうか』
そう言って、ゲームを起動した。そのまま会社のロゴやら何やらが画面に映されていき、のんびり眺める。そんな中、オープニング映像が流れ始めたので、それを飛ばした。
『あ、そういえば協力していただいている方に「ペルソナのオープニングは割とネタバレがあるので見ない方が良い」と聞いたので、飛ばしたいと思います』
「あんたが言ったの? てかペルソナ5 やったことあるの?」
「あるわよ」
「どんなゲームなんですか?」
「言わない。あんたら見たことないなら、あんたらのリアクションも見たいし」
「? ゲームやってないで見てるだけの私達の?」
「そ」
それ程ストーリーが良い、ということだろうか? よく分からないが、そのままゲーム画面を眺めた。
『なんかすごいオシャレなゲームだね……もしかして、この赤い人影が登場人物かな?』
『そうっぽいですね。なんかちょっと不思議なシルエットですけど……なんで顔だけマスクついてるんだろ?』
『目だけ隠されてるマスクを見ると……ちょっと嫌な人を思い出しちゃうな……』
『? 誰ですか?』
『いや、名前は出さないよ。多分出さない方が絶対に良い人』
ラウ・ル・クルーゼやらネオ・ロアノークを思い浮かべているとは口が裂けても言えないし、見ている面々はそれを知る由もない。頭上に「?」を浮かべたままだ。
それを感じ取ったのか……いや、多分感じとっていないのだろうけど、シンが先に進めさせる。
『……あ、ちなみにコントローラーはどっちが持ちます?』
『あーそうだね。えーっと……まぁ、どんなゲームか分からないけど、ゲームオーバーになったら交代で良いんじゃない?』
『そうですね! じゃあ、まずは先に隊長どうぞ!』
交代制にするらしい。まぁ二人でやっているのだし、妥当と言えるだろう。
まずはフィクションである事の注意喚起が入り、そのまま同じ声でナレーションが続く。
【いま世界は、あるべき姿にあらず。歪みに満ち、もはや「破滅」は免れない】
『……えっ、なんか物騒ですね』
『戦争の、話なのかな……僕らの世界も、少し間違えるとそうだったんだよ』
『そう、ですね……』
『……』
『……』
「……この人達が言うとホント洒落にならないくらい重いわね……」
「開始5分も経たないうちにお通夜に……」
「ちょっと勧めるゲーム考えとこうかしら……」
三人とも引いていた。コメントでさえ静止している。
『大丈夫です、隊長! もうそう言った世界にしないために、オレ達コンパスがあるんですから!』
『……そうだね、ありがとう。シン』
『さ、先に進めましょう!』
「ナイス、シン……!」
「偶然だろうけど、なんかコンパスのPRにもなったわ!」
今日は褒めてやろう、とルナマリアもアグネスも強く思いながら、ゲームは進む。
【定めに抗い、変革を望む者……それは時にトリックスターとも呼ばれた】
『トリックスターだって。なんか怪盗みたいじゃないですか?』
『ルパンみたいな? そういえば、反逆ゲージが溜まるとアルセーヌってなんか変なの出すよね』
『あー確かに。もしかして泥棒なんすかね主人公』
『なんか……あまり気が進まないなぁ。戦時中の泥棒なんて……』
「そういうゲームじゃないわよ」
唯一、知っているアグネスからツッコミが入る間に、さらに画面は進む。
【汝、トリックスターよ……。今こそ、この世の歪みの深淵に立ち向かうがいい】
『あ、泥棒が歪みを正すんだね』
『どんなゲームなんだろ。ちょっと楽しみになってきましたね』
そんな話をしている時だった。画面が切り替わり、アニメーション風の景色になる。ヘリコプターが夜空を舞い、街の中に現れるのは一際派手なカジノ。天秤を持った女性が「CASINO」の文字の上に立っている看板が目立つ。
『カジノに泥棒か……まさにって感じ』
『そうっすね。そういえば、隊長ってカジノとか行きます?』
『行かないよ……友達とトランプしたくらいかな』
『トランプかー……オレ、苦手なんですよねー。毎回負けるし』
「顔に出るもの」
「顔に出るもの」
「顔に出るもん」
三人から全く同じ指摘が入る間にも、ゲームの映像は進む。
建物内部の様子が映った。本当に中はカジノのようで、スロットやルーレットを打つ客が映されていた。
その客達の間に動揺が走る。頭上を移動する人影が僅かな残影だけを残して宙を舞っているからだ。
当然、カジノにとっては邪魔な存在だ。それ故に、カジノ側の運営を遠回しき黒いスーツの男達が姿を現す。
『そういえば、キラさんってスーツ着ないっすよね』
『機会がないからね。シンもじゃない?』
『オレ、ああいう堅苦しいの苦手なんですよね。肩凝るし』
『シンもいつか、自分の部下を持つようになるんだから、こういう服を着る機会があるかも……あ、ジョーカー!』
『え? あ、ホントだ!』
呑気に話していると、電灯の上に降り立つスマブラでお馴染みのキザなコートと白いマスク、赤い手袋を装備した少年が姿を現した。
『おお……なんか、頭がモサモサしてるね』
『そういうとこもハインライン大尉みたいですね』
「いや髪色全然違うでしょ」
そんな時だった。ムービーが終わり、ゲームっぽい画面になった。左下に黒くて丸い影が現れ、その影から吹き出しが出る。
【よし、逃走開始だ!】
『お、なんか始まった』
『すごいね』
【行くしかない!】
『『えっ』』
次に続いた声に、思わず二人とも声を漏らした。ルナマリアとメイリンも同じように声を漏らしそうになる。今の声……聞き覚えがあるどころの騒ぎではない。
『い、今の声……キラさん?』
『ぼ、僕に似てたね……?』
『いや似てたなんてレベルではありませんが⁉︎』
『た、たまにはそういうこともあるよ』
そうは言うが……いや、ミーアの例もある。確かにあり得ない話ではない。
「ビックリしたぁ……いくらなんでも似過ぎじゃないのこれ?」
「そうだよねー……え、アグネスさん知ってたんですか?」
「いやあたしも似てるなーとは思ってたわ。まぁでもそういうこともあるし」
そう言われればその通り。画面の中の二人はまだ納得いっていないのか、シンがログを開いた。
【行くしかない!】
【行くしかない!】
【行くしかない!】
『いややっぱキラさんだってこの声!』
『連呼させなくて良いから』
それはルナマリア達も思って少し笑いを堪えてしまう。あまりにも似過ぎていて面白くなってきた。
さて、続きを見る。
【慌てないで。今なら逃げられる!】
【アタッシュケースは、こっちで回収しておくわ!】
と、会話が続く中、シンがゲームの雰囲気に早くも飲まれてキラキラした瞳でつぶやく。
『なんか……急にクライマックスですね!』
『うん。何が何だか分からないけど……とにかく切迫した状況だっていうのは分かる』
とにかく、逃げなければならないらしい。カジノ内の電灯の上を跳ね回り、そのままジョーカーはとある高台に降りた。
すると、またムービーが入る。目の前に黒服が二人立ち塞がった。
『! 回られた!』
『え、ていうか……あれ人間じゃないの?』
何せ、グムグムっと上半身が急に肥大化し、顔に仮面が現れたから。さらに、背後にもう一体、同じ奴が降り立った。
それに対し、ジョーカーは……不的な笑みを浮かべると同時に、大きく跳躍し、一体の肩の上に飛び乗った。
『! なんて脚力……!』
『アスラン並みだ……!』
そんな呑気な感想を漏らしている時だった。敵の画面を外したと思えば、人型MSだったはずの敵は破裂して姿を変え、尻尾を生やした二本足の牛のような形のMAへと変化した。
『可変機⁉︎ なんて悍ましい形の……!』
『いやどう見ても体積が違う……』
「まずどう見ても機じゃないわよね」
「シン、ツッコミを入れなさい」
急に画面が割れるエフェクトと同時に戦闘が始まった。化け物を前に立つ黒いコートのジョーカーは構える。すると、コマンドが出現した。
『あ、戦いみたいだね』
『「スキル」「攻撃」「防御」「アイテム」「銃」だそうですけど……どうします?』
『まずは射撃で牽制して近付こう。敵は尻尾以外に大した兵装はない。武器になりそうな所から斬り落とすんだ』
『え、そんなことできるんですか? これどう見てもターン制バトル……』
『できるできないじゃない。やるんだよ、シン』
そう言って、ジョーカーは銃を抜いた。直後、銃を構え始める。
『どうするんだろう?』
『え? いや、とりあえず撃てば良いのでは?』
『うん』
SHOT! とあったので、とりあえず撃ってみた。一発弾が飛び出て敵にダメージを与える。というか、シンが困っている。
『あ、連射できるみたいですよ』
『ダメだね、これは牽制だから。この戦いで弾を全て使い切るわけにはいかないよ』
そう言って、もう一発撃って銃をしまってしまう。その様子を見て、アグネスは思わず笑いを溢す。
「ぶはっ……! か、完璧なターンの無駄遣い……!」
「一応聞くけど、このゲーム銃での牽制とか意味あんの?」
「あるわけないじゃない! あはっ、あはははっ……!」
「ふふっ……た、ターン制バトルをリアルに考えすぎですよね……!」
笑いがメイリンにまで移り、笑い始めた。気持ちは分かるけれど、この子達性格悪い。
そうこうしていると、今度は敵の攻撃。アギダイン、という文字の直後、地面から炎柱が上がった。
『⁉︎ じ、地面から炎⁉︎ そんなの、避けようがないじゃないか!』
『いや、それは確率次第で……』
『ジョーカー危ない!』
『いやだからターン制バトルなので……』
攻撃を受ける。103、という数字が出た。ダメージ表記だろう。
そんな事よりも、シンが超困っている。おかげでアグネスもメイリンも笑いを堪えることなく爆笑し続けていた。
『クッ……攻めあるのみだ!』
『いやあの……まずスキルを見……』
『近接攻撃ができるなら、部位を少しずつ削れるはずだ!』
シンの言うことなどまるで無視。近接攻撃を放つ。ナイフを持って三回斬った後、後方にバク転しながら下がり、銃を放った。クリティカル、の文字の後に「1more!」と文字が出る。
『あ、もう一回攻撃出来るみたいですよ! クリティカル出るともう1ターンってことですかね?』
『それより、なんで正面から攻撃するんだろう……銃も使うなら先に撃って近付きながら回り込んで斬れば、後ろも取れるのに……』
『き、キラさん! それ以上は多分ダメな奴! これゲーム、ゲームですから変なツッコミ入れないでください!』
『あ……そ、そっか。そうだよね』
流石にシンが止めた。他人事だから、メイリンもアグネスも笑っているけれど、唯一そのうちの片割れの彼女のルナマリアは心配が止まらない。これ、炎上しないだろうか?
『スキル、使ってみましょうよ』
『そうだね。どんな技が……』
話しながら、スキルボタンを押してみたときだ。
【ペルソナァッ‼︎】
『『やっぱりハインライン大尉だ!』』
声が似過ぎていて、思わず二人とも大声を上げてしまっていた。あまりにもそっくりだ。
「いや、ホントに似てるわね……」
「ていうか一緒じゃない? あの人、副業で声優とかやってたのかしら?」
「それ言ったら、ヤマトさんも副業してそうですよね」
そんな呑気な話をしながら、実況を眺め続けた。
×××
さて、そのままストーリーを進ませることしばらく……キラもシンも呆然としてしまった。
「捕まっちゃったね……」
「はい……オレもこれにはビックリです……」
主人公なのに……と、思わずにはいられなかった。まさかの逮捕である。
そのまま話は進む。ふと気がつくと、画面の中ではパイプ椅子に座らされ、背もたれの後ろで両手を手錠で縛られていた。
【クスリが効き過ぎたか……起こせ】
その少年を、頭から水をかけて起こしていた。この少年が悪いことをしたのかもしれない今では、この尋問の様子に二人とも疑問は浮かばない。自分達は受けたことは無いが、軍人であれば普通に薬もやるだろう。
【寝るな。まだ分からないのか? 無駄なんだよ!】
直後、ボディに蹴りが入った。対抗する術のない少年に、遠慮なくだ。その様子も、キラもシンものんびりと眺める。……とはいえ、見ていて気持ちの良いものではない。
「……こういう尋問の仕方、少し前では当たり前にあったんだろうね」
「オレもそう思います。……やっぱり、こんなの間違ってる」
ゲームの戦闘にはケチをつけていた癖に、こう言ったシーンでは一々、重たい感想を漏らしていた。
そのまま話が進む。さらに踏まれたり蹴られたりする様子を見て、思わずシンも奥歯を噛み締めてしまう。
【誹謗に脅迫、名誉毀損に凶器及び集合罪。本当は殺しもだろ? フルコースだな】
「……え、そんなに悪いことしてるの?」
「だからって暴力は良くないけど……ジョーカーも若いのにかなりやっちゃってるんだね……戦時中なのかな?」
「なんなら、こいつらの所為で戦争が起きたって見方もできますよ」
キラの見立てでは、おそらくあのカジノとこの主人公と今、暴行を振るっているスーツの連中は三つ巴。あまりにも主人公達が暴れていたこともあり、カジノとスーツが手を組んだのだろう。
その上、主人公達には主人公を売ったやつがいるらしい。余程念入りな策を使ったと見た。
……そして、売った奴がいるということは、やはり主人公達も悪事を働いていると見て間違いない。アスランもアークエンジェルも、自身がいた組織に疑問を感じて裏切っていたからよく分かる。
ただ一つ気になるのは……。
「罪状に窃盗はなかったね。怪盗とかじゃないのかな?」
「あーそういえば。じゃああのアタッシュなんだったんですかね」
なんかよく分からなくなってきた。
そうこうしている間にムービーは進む……というか、止まっていた。
「あ、難易度?」
「へー、五つもあるんだ……どれが良いんだろ」
なんてシンが声を漏らした直後だった。コメントが目に入る。前々からシンをやたらと煽って来る癖に毎回、放送を見に来るやつからだ。
『え、チャレンジ以外の難易度を選んで恥ずかしくないんですか? 仮にもコンパスの最強二人が。負けるのが怖いなら他の選べば良いと思いますけど』
「アア⁉︎ 負けるわけねーんだから怖くもねーよ! キラさん、最高難易度にしましょう!」
「え? あ、うん。分かった」
そんなわけで、チャレンジを選択。最高難易度である。普通ならやらないレベル。
さて、その後で主人公の名前を決める番となった。自白長所で名前を決めるというのは新しい気もする。
「名前、どうします?」
「ジョーカーじゃないの?」
「いや、多分違うでしょ……ジョー・カーってことですか?」
「でもその名前でスマブラにも出てたよね」
「多分違いますよ。あの……何? 黒コートの時はジョーカーって名前で、普通の時は普通の名前なんじゃないですか?」
「ああ……コードネームってこと? 月光のワルキューレとかフリーダムキラーみたいな」
「それは異名ですし後半は忘れて欲しいんですけど……まぁ、そんな所です」
そう言われて、キラは顎に手を当てる。シンと二人でプレイするのだから、片方だけの名前はやめたい。というか、こういう時こそシンキラの出番だろう。
「……じゃあ、キラ・アスカは?」
「良いっすね……あ、すみません。その苗字、彼女が自分のって聞かないので、逆でも良いですか?」
「じゃあ……シン・ヤマト?」
「はい! それで!」
「決まりだね」
そんなわけで、名前は「シン・ヤマト」となった。コメントの一つに「その苗字も他の誰かのものなのでは? (怒)」というものがあったが、キラは気付かずにゲームを進めてしまった。
その後、尋問室に「新島冴」という女検事が現れ、尋問が始まる。その際に青い蝶が羽ばたきながらシン・ヤマトの前を舞った。
【貴方は、囚われ……予め未来を閉ざされた、『運命の囚われ』。これは極めて理不尽なゲーム。勝機はほぼ無いに等しい。しかし、この声が届いているということは、まだ可能性は残っているはず……。……お願いです。このゲームに打ち勝ち……世界を、救って……】
「あれ、世界を救ってだって。やっぱり良い子なのかな、この主人公」
「そうっぽいですね……ていうか、だいぶ理不尽なこと言われてますけど」
【逆転の鍵は、絆の記憶。仲間と掴んだ、起死回生の真実。全ては半年前、ゲームが始まったあの日……。どうか、思い出して……貴方と世界の、未来の……ために……】
それを最後に、蝶々は飛び去ってしまった。どういう意味なのだろうか? 運命の囚われ、世界を救う、仲間との絆……それが、あまりにも気になる。
「……よく分からないけど」
「世界は救わないと、ですね」
二人で頷き合いながら、ゲームを進めた。
本当はこの話でペルソナ初回配信は終わらせるつもりでした。長引いてすみません。
世の中うまくいかないことばっかだぜ。