シンキラゲーム配信。   作:バナハロ

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シン・ヤマトの行方(2)

 さて、場面は電車の中に切り替わった。どうやら、過去の話に戻ったらしい。

 その車内の映像だが、学生やら社会人やらがのんびりと揺られて運ばれる様子をジョーカー……シン・ヤマトの目線で映されていた。

 車内のポスターには「証拠隠滅、検察の闇」や「いじめ見過ごし」などのとても穏やかじゃない記事の雑誌のポスターが並んでいる。車内アナウンスによると、もう直ぐ渋谷に着くらしい。

 そんな中、シン・ヤマトの顔がアップで映る。そして、脳裏に焼きついた過去なのか、映像が流れた。

 

【うぃ〜……ん〜……!】

【あっ……た、助けて!】

【っ……!】

 

 酔っ払った男に絡まれる女性が、助けを求めて来る。その様子を見てしまったシン・ヤマトはその男の肩に手をおくが、倒してしまった。

 

【このガキ、訴えてやる……!】

 

 その直後、シン・ヤマトは警察と思われる二人組とパトカーに連行されてしまった。

 そして、また映像が車内の主人公の顔になる。少し寂しそうな顔を浮かべて俯いていた。

 その映像を見て、キラもシンも複雑そうな声を漏らした。

 

『訴えられちゃった、のかな』

『なんだよそれ! 絡まれてた人を助けただけじゃないか!』

 

 断片的な映像だったのでそれらが全てではないのだろうが、ルナマリアもメイリンも概ね同意だ。

 

【えー? いきなり人間がー?】

【あんたホントにオカルト話好きだよねー?】

 

 映像の中から、そんな女学生同士の会話も聞こえてくる。なんとなく分かったが、戦時中などではなく普通に平和な世の中らしい。

 この世の中に、あの急に足の化け物に変化する人間が現れるのかと思うとゾッとする。やはり、主人公が正義の側に立っているのかもしれない。

 

「なんか……いきなり主人公が捕まるなんて、割とショッキングなお話ですね……」

「しかも半年前ってことは……これ捕まったの二度目ってこと?」

「……っ」

「アグネス?」

「いや、あんたらも隊長達もホント良い反応するなって観察してるだけだから気にしないで」

 

 ニヤニヤしながら自分達姉妹と動画内の二人を見て、少し何か言いづらくなってしまった。

 さて、電車を降りた。降り立った地は渋谷という場所らしく、多くの人が大きな交差点を歩いていた。

 その真ん中で、シン・ヤマトはスマホを取り出す。地図アプリを開いたのだが、その前に赤い目玉のようなアプリのアイコンが現れた。

 

『? なんだろうこれ?』

『さぁ……』

 

 と、思ったのも束の間、周囲の人間に変化が生じる。全員が、まるで一時停止ボタンでも押されたように動きを止めた。

 

『! これは……!』

『時間停止兵器? そんな真似したら……!』

「この二人、何でもかんでも兵器に例えないと気が済まないわけ?」

「ビックリするのはわかりますけど……なんですぐに兵器って言うんでしょうね……?」

 

 その後、その交差点の正面に、青い炎が灯される。そしてその炎の燃え盛る中心に、シン・ヤマトが悪魔のような笑顔を浮かべて現れた。

 それを最後に、いつの間にか炎は消え、周囲の人間達も普通に動き始めた。まるで、何事もなかったかのように。

 

『……幻覚を見せる兵器なのかもね』

『アコードみたいな奴が主人公を狙っていたのかもしれません』

「ホログラム兵器かー……面白いかもしれませんね?」

「メイリン、乗らなくて良いから」

「えー? でも幻覚を見せて相手が動きを止めるならそれに越した事はないんじゃない?」

「パニックになってライフルを乱射し始めるから、被害は広がる一方よ」

「あ、そっか」

 

 残念ながら、敵のリアクションを考えると簡単にはいかない。

 さて、そのまま画面で主人公はその赤い目玉のアプリを削除。その後、アニメの映像からゲーム画面になった。

 四軒茶屋、と呼ばれる駅に到着し、電車から降りた。

 

『あ、もう動かせるよ』

『右上になんか出てますね。地下鉄から出ろ、だそうです』

 

 言われるがまま外に出た。普通の街並みが広がり、完全に平和な世の中が映される。ちょっとレトロな雰囲気のある街並みだが、割と嫌いではない。

 噂話とかが聞けるとのことで、途中で立ち聞きしながら「佐倉惣治郎」という人の家に向かう。

 

『なんか……噂好きというか、冷たい人が多いね……』

『そうですね。一々、返しがむかつくというか、やたらと噂好きというか……』

『まぁでも、戦争中の街よりはマシだよね』

『そうですね。誰かが誰かを殺さないといけない、なんてこともありませんし』

「ホントこの二人のコメント重たいわね……そこはすごい新しい配信者かも」

「当たり前じゃない。この二人がどんな地獄を体験してきたと思ってるのよ」

「私とお姉ちゃんがやってもそう思うと思いますよ?」

 

 アグネスの反応に二人が返す。いや、本当に軍に入っておいてこんなこと言って良いのかわからないが、戦争というのはクソだ。またインパルスに乗る事になったルナマリアも、本当ならば引き金を引かない世界に戻ってもらいたい。

 そんなことを呟きながら、お宅に向かった後、店の方にいるという運送会社の独り言が聞こえ、そっちに向かった。

 ルブラン、という店の扉を開けると、中で待っていたのは髭面のおじさんだった。

 

『ここか。着いたね』

『なんか、ちょっとダンディー? な人じゃないですか? ム……不可能を可能にする人とか年取ったらこうなりそうな』

『あー分かるかも少し。ミレニアムの艦長もだよね』

 

 一応、配慮して名前を挙げていたが、そもそもそれなら視聴者には伝わらない。内輪ネタで盛り上がっているだけなので、その辺は次回注意しよう、とアグネスは頭の中にメモを残す。

 そのおじさんはこちらに気が付き、声をかけてきた。が、すぐその後に店内のお客さんが帰ろうとお代を置いて立ち上がった。

 

【この店は裏路地だし、車突っ込んだりはしなさそうだね】

【突っ込む?】

『え、どういうこと?』

『事故、ってことですかね?』

【変な暴走事故が続いてるじゃない。この辺でも起きなきゃ良いなってね】

 

 そういえば、噂でもよくそんなことを聞いていた気がする。平和になったとしても、そういう事故は無くならない。そう思うと、やはり完全な平和というのは難しいものなのかもしれない。

 

『そっか……事故、か……』

『そればっかりは、コンパスにもどうしようもありませんね。各国の治安維持部隊の仕事です』

『うん、それはそうかもね……』

 

 とはいえ、少しやり切れなさそうな顔でキラは俯く。なんとかしたい、という気持ちが漏れていた。

 ……いや、やはりこの二人の実況は実感がこもりすぎていて重たい。

 さて、客との談笑を終えた後、ようやくおじさんはシン・ヤマトと話すことになった。

 

【佐倉惣治郎だ。一年間、お前を預かることになってる】

『サクラソウジロウさん、か……』

『なんで預かるんですかね?』

【どんな悪ガキが来ると思ったら、お前が、ねえ】

『悪ガキ? ……あ、そういえばさっき捕まってたし、シン・ヤマトは前科あるんですもんね』

『そういえばそっか……え、でもアレで本当に罪がついちゃうんだね……』

 

 少し残酷なのは分かる。そのまま部屋に案内された。随分と汚い部屋だが、まぁ事情をソウジロウが知っているのかは分からないし、知らなかったとしたら主人公は平和な世の中で暴行事件を起こした前科持ち。

 部屋を用意してもらえているだけでも感謝しなければ……。

 

【一応、事情は聞いてるよ。確か「男の言い寄られている女を庇ったら、男が怪我して訴えられた」だっけか? 大人相手に余計なことをするからだ。怪我させたのは事実なんだろ?】

『っ! なんなんだよこの人は! じゃあ見捨てておくのが正しかったって言うのか⁉︎』

『シン、落ち着いて……気持ちは分かるけど』

 

 その冷たさにシンが声を上げるのをキラが宥める。戦争中じゃないので暴力は必要ない……だが、それでもそう言った小競り合いは起きる、ということだろう。

 さらにその後、前歴がついて退学処分になり、裁判所の指示で転居を迫られて保護観察処分となりここに来たことを知り、さらにシンのイライラは高まっていた。

 

「いや、キレ過ぎよ、シン」

「ーっ……! ーっ……!」

「あ、アグネスさんも笑い過ぎでは……?」

 

 そのリアクションがあまりにも面白かったのか、アグネスも笑っていた。何より腹が立っているのは、両親でさえそれを受諾している事だ。自分の子供を何だと思っているのか。少しは庇おうとか、そういう風にはならなかったのか。

 

『っ……平和な世の中になっても、こういうことになるんですかね』

『うん……あり得るかもね。でも、これでも戦争なんかする世の中よりはずっとマシだよ』

『それはそうですが……!』

「あの、一々戦争を引き合いに出すのやめさせない?」

「いや、一応はコンパスの実況だし、戦争をなくさせるって意図とは噛み合ってるわよ」

「そ、そう言われたら割とこの二人、適任だったのかもしれないですね……?」

 

 にしても、やはり一々重たい。

 さて、そのままゲームは進んだ。掃除をして明日、転校先の高校で挨拶するって聞いて、ベッドの上に寝転がる。

 その後の、逮捕の時の回想シーンを見て、シンのボルテージは上がった。

 

『! 警察なんて俺の犬だぁ? ってことはこいつ、権力者なのか⁉︎ 何で簡単に酒に溺れるような奴に権力を渡すんだよ!』

「それはそう。バカに権力渡したら大変なのよ。ホントに」

 

 核をポンポン撃ったりとか平気でする。そういうのをさせては絶対にダメなのに。

 

「ていうか、隊長少し静かじゃない? こういうの嫌いそうじゃん」

 

 そんな中、アグネスがそんなことを呟いた。ノーリアクションが気に食わなかったのか、それとも単純に不思議だったのかはわからないが、言われると確かに気になる。

 シンも同じことを思ったのか、キラに声をかけた。

 

『そう思いませんかキ……キラさん? どうしました?』

『いや……あの髪の毛がない方の人の声、誰かに似てない?』

『え?』

『酔っ払ってる声出してるからかな……なんか、こう……聞き覚えがあるような……』

『そうですか? てかまたですか?』

 

 言われて聞いてみれば、確かに聞いたことあるような気もしないでもない。

 そのままストーリーは進んでいった。

 

 ×××

 

 さて、主人公の夢の世界の話が終わり、学校への挨拶も終わった。進む度に大人達の対応は揃いも揃って冷たく、主人公へのヘイトは高まる一方だ。

 

「街中で女の人を助けるってこんなことになっちゃうものなんですかね……」

「相手によってはそうなのかもね……?」

「まぁ、正直プロに任せるべき、というのも分かりますけど……なんか、可哀想っすね、良かれと思ってした行動に誰も共感してくれないの」

「うん……そうだね」

 

 シンは、それはもうシン・ヤマトに同情してしまっていた。別に悪いことはしていないのに。相手の方がよほど悪いことをしていたのに。それを誰にも理解されることなく結果だけで処罰を受け、そういう扱いをされている。

 ザフトであれば、ディアッカ・エルスマンという結果的にはザフトを裏切ることになってしまった彼も、デュランダル議長のお陰で多くの人に理解され、赤服というステータスこそ奪われたものの、軍に戻れた。

 それなのに……この世界の大人は理解しようとさえしない。

 

「……平和になっても、小さな争いは続きそうですね」

「その辺のこと、ラクスとも少し話してみるよ」

 

 ゲームから、まさかの新たなコンパスの活動指標が生まれるかも、ということになってしまった。

 さて、そのまま画面は初の登校日。四軒茶屋の駅で電車に乗り、渋谷で乗り換えである。

 とりあえず改札を出たのだが……そこで、キラはシン・ヤマトの足を止めさせてしまう。

 

「何線に乗り換えだっけ?」

「え? あ、見てませんでした」

「蒼山って駅だったのは覚えてるんだけど……」

「とりあえず、探そうか」

 

 とのことで、狭い地下での旅が始まった。以下、音声でのみお楽しみください。

 

「あ、シン。なんかジュース屋さんあるよ」

「ありますね。美味しいんですかねこういうの」

「分かんないけど美味しいんじゃない? これ飲めるのかな」

「押してみましょうよ」

「あ、ダメみたい。まぁ登校中だしね。それよりホームを探そう」

「そうですね。あ、上! 上に看板ありますよ!」

「うん。でも何線だか忘れちゃったから」

「あ……そ、そっか。すみません」

「ううん。人に聞いてみようか」

「あ、そんな機能が……あ、噂に聞き耳立てる的な?」

「あ、駅員さんいるよ。話聞いて……あ、ダメだ。何処が何処かは教えてくれない」

「あ、キラさん! 改札ありますよ! そこからでは?」

「ホントだ! 行ってみ……ダメだ。ここ井頭線だって」

「もう普通にMSで行きましょうよ。オレのデスティニーならマッハで着きますよ」

「いや、僕のフリーダムの方が速いと思うし、使うならそっちかな」

「は? いやオレの方が速いです。分身できるんですよ?」

「技量の話だよ。この前のマリカーでも結局は僕が勝ったじゃない」

「上等ですよ! 今度やってやりましょうか⁉︎ オーブからユーラシアまでどっちが早く着くか!」

 

 と、徐々に脱線する一幕はともかくとして、とにかく話は進んだ。

 ようやく到着し、蒼山一丁目の駅から出た。そこでムービーが始まった。雨宿りをしていると、隣に女子生徒が現れたのだ。

 

「お、新キャラですかね」

「綺麗な子だね」

「そうですかー? オレのルナの方が綺麗ですよ。あいつ、ああ見えて毎日肌とか髪のケアを欠かしてないんですから!」

「それはこの子もかもよ?」

 

 その二人の会話の後に、コメントで『ラクス・クラインという人の方が綺麗では? (怒)』というコメントが通るが、二人とも気が付かなかった。そのまま動画を見る。

 すると、二人の前に車が止まった。さっきのムービーでも少し出て来た、顎がすごいジャージの男性教員だ。

 

「あ、この人……」

「なんかすごいですよね、顎。アッパーとか効かなさそうじゃないですか?」

「すぐ闘いに例えないで。少なくとも今は平和そうな世界なんだから」

「あ、すみません」

 

 さっきまで世界を巻き込んだレースを繰り広げる、みたいな会話をしていた片割れとは思えないセリフだった。

 そのままツッコミは不在で話は進む。そのまま体育教師は女子生徒だけを学校まで送ってしまった。

 その後で、その場に金髪の少年が走って来る。

 

【クソッ、変態教師が!】

【変態、教師……?】

「誰だろ、この子」

「さぁ……なんかディアッカさんに似てる」

「ぶはっ……!」

 

 キラの何気ない一言に吹き出したのはシン。金髪だしオールバックと短めの髪がぱっと見似ているし、分からないでもない。……それにしても面白過ぎた。

 シンが過呼吸になっている間に話は進み、ムービーが終わって金髪の少年がシン・ヤマトに声を掛ける。

 

【なんだよ。カモシダにチクる気か?】

「あ、選択肢だよ、シン」

「ーっ! で、ディアッカさっ……ーっ! 柄悪っ……! ッ、ッ、ッ……!」

「うん、僕が選んじゃうね。カモシダって誰のことなんだろ」

 

 さっきまでは選択肢が出る度に二人で相談してから選んでいたのだが、今回はキラの独断で選ぶ。

 ・カモシダ? 

 ・何の話だ? 

 のうち、上を選んだ。

 

【あ? 今の車だよ。鴨志田だったろ。好き放題しやがって、お城の王様かよ。そう思わねえか?】

 

 どうやら今の男は鴨志田というらしい。しかも、どこかに城を持っているという。何だか色々ときな臭く思えてきた。

 ・お城の王様? 

 ・どこのお城? 

 どこのお城かを聞いてみる。

 

【いや例えだろ】

「あ、例えなんだ」

「あっはっはっはっ! たっ、例えに決まってんでしょキラさん!」

「ちょっ、笑い過ぎだよシン」

 

 ただでさえツボに入っていたこともあり、さらに笑わせてしまう。なんか……こうしているとさらに笑わせたくなるな、と思ってしまったキラは、とりあえず思ったことを適当に言ってみた。

 

「髪の色と髪型的には、シン・ヤマト+この子でハインライン大尉かな」

「あっはっはっはっ!」

「さっきの鴨志田は顎が発達したアスラン」

「あっはっはっはっはっ!」

「……ふとんがふっとんだ?」

「あっふぁっふぁっふぁっふぁっ!」

 

 だめだこれ、と判断したキラは、そのままゲームを進めることにした。

 

 ×××

 

「どこまで笑ってんのよ、あのバカ……」

「まったくだよね」

 

 目の前で場面が切り替わり、新島冴との尋問の場面となる中で、ルナマリアとメイリンが呆れた様子で呟く。

 

「あっははははは! 確かにっ、確かにディアッカさんに似てるっははははは‼︎」

「こっちのバカもね……」

「まったくだよね……」

 

 隣にいるアグネスにも呆れていた。いや、正直に言うと二人とも吹いた。だが、ここまで馬鹿笑いするほどではない。

 それはさておき、動画を眺める。すると、新島冴の尋問が終わり、またアニメーションが始まる。さっきのムービーで「鴨志田」「城」「変態教師」のワードを音声で拾っていたスマホが反応する。

 何かが起動したが、景色が変わらないため二人は気が付かない。わずかな違和感に主人公が反応する場面はあれど、やはり何も起こらずに進んでしまう。

 そして……到着した先は、文字通り西洋風のお城だった。

 

「え、何これ……どんな学校?」

「垂れ幕下がってるし、学校は学校なんだろうけど……」

「学校よ? 勿論」

 

 1人だけ何もかもわかっているアグネスがドヤ顔で語る。何でこいつは少し誇らしげなのか。……いや、そんなの聞くまでもない。

 

「もしかしてあんた、ペルソナ5好きなの?」

「は? 別に好きじゃないから。こんなオタクしかやらないようなゲーム別に普通だし。ちょっと総プレイ時間900時間超えてるだけ」

「めちゃくちゃ好きじゃないの……」

 

 一体、何周しているのか、それは。というかこの子、ゲームやりすぎではないだろうか? 一年前のファウンデーションとの一件で女としてのプライドを傷つけられて始めたゲーム実況なのだろうが、少しなんか負の連鎖に陥っているような気がする。

 

「メイリン、今度アグネス誘って合コンでもしたら?」

「どういう意味よその提案⁉︎」

「えーやだよ。そんな暇ないもん」

「私が暇だって言いたいんか小娘!」

 

 なんて騒ぐ中、物語は進んでいった。どうやらあの金髪の少年にとってもこの学校は異常なようで、狼狽えている。……ていうか、前日の挨拶回りで主人公も学校には一度、顔を出しているし、どちらにとっても異常に見えていることだろう。

 さて、そんな中……二人の元に近づいてきたのは、明らかに人間ではない鎧の男。

 

【つーか、カッコすげぇな。鎧、ホンモンか?】

『いや、どう見ても普通の人じゃないだろこれ!』

『あ、シン戻った』

『スミマセン……笑いすぎました。ちょっと顎痛いです……』

『まぁそれだけ笑えばね……』

 

 そのまま話は進む。そのままさらに二体目の鎧まで現れ、二人は捕まってしまった。

 しかし、これが平和になりすぎた世界の子供、ということだろうか? 課題は多く残るものだ。危機が目の前に迫っていても、それに気づけない。危険だと認識しづらいのかもしれない。

 戦時中の方が良いと思うわけではないけれど、平和ボケするのも考えものなのかもしれない。

 

「死んでからじゃ遅いのに……」

「何でもっと早く逃げなかったんだろ」

「平和になり過ぎるとこうなるって事なんじゃない?」

 

 ふと気がつくと、地下牢の中だった。しかし、この金髪の少年は優しい。まだ会ったばかりにも関わらず体調とか気に掛けてくれるし、捕まっているにも関わらず手段を模索し始めている。

 さて、そうこうしている間に、檻の前に鎧が2体、歩いてきた。

 

【喜べ、貴様らの処刑が決まった。罪状は、不法侵入である】

『あーやっぱり。そうなるよな』

『むしろ玄関で殺さなかったのが意外だよね』

 

 もう慣れた様子でシンもキラも画面を眺める。こういう何者か分からない奴らは、何を言い出すのか分かったものではない。

 鎧を着て剣と盾を持っている以上、この連中は戦う仕事をしているのだろう。つまり、王城を守る兵士。この城がなんなのかも分かっていないとはいえ、無断で侵入してきた奴らはそれは処刑されるよね、と思わないでもなくて。

 余程の危機でもないのに軍の敷居に一般人が入って来たら、時と場合によってはその場で殺されてもおかしくない。

 とはいえ、主人公と金髪の少年にとって災難なのも変わりない。二人はここが何なのかさえ分かっていないのだから。そもそも入るな、とは思うけれど、同情もする。

 そんな時だった。聞き覚えのある声が割り込んでくる。

 

【俺様の「城」で勝手は許されない】

 

 そう言う男の正体は、鴨志田だった。それも、さっきまでのジャージ姿とは違い、赤いマントに金の冠をつけた格好だ。声も何処かブレている気がする。

 

『この人……!』

『え、こいつ教員じゃなかったの? 王様ってことは……校長? いや、でも校長はあの鏡餅みたいな人ですよね……』

 

 二人とも狼狽える中、話はさらに続けられる。

 

【ただのコソ泥と思ったら……坂本、貴様だったとはな。また逆らうつもりか? 貴様、ちっとも反省してないな? え?】

『坂本って言うんだ、この人』

『みたいだね。また、ってことは、何か因縁でもあるのかな、この二人』

【我が城に忍び込んだ挙句、王である俺様に悪態をついた罪……死を以て償ってもらうとしよう】

 

 しかし、話を聞けば聞くほど傲慢な王様だ。入った二人も悪いとはいえ、この言い草は少し腹が立つ。人間性が見え隠れしているような気がしてきた。

 

『てか、マントの下何も着てないし……何なのこいつ。段々、ムカついてきた』

『まぁ……とにかくこれから戦いかな? 殺されちゃったら終わっちゃうし』

 

 命の危機に慣れていることもあって、二人とも落ち着いていた。このくらいの理不尽はもう経験済みと言わんばかりだ。

 そのまま檻の中に鎧の兵士が入ってくる。もちろん、やられるわけにいかない。坂本と呼ばれた少年は、タックルで押し返した。

 

『おっ、この子分かってる。武器持ってる相手に下手に距離取るとリーチでやられるだけだからな』

『盾も持ってるし、殴る蹴るも効かないからね』

 

 だが、褒めたのも束の間、近付いたもう一体の鎧にボディブローをもらってしまう。

 

『あれ……これマジやばくない?』

『確かにヤバいですね……ていうか、普段から銃くらい持ってないのかな』

『いやこれ極東の島国っぽいですし、あそこ確か銃の携帯いまだに禁止されてますよ』

『あ、そっか。……それでもし何かあったらどうするんだろ。悪い人なんて禁止されてても銃器は隠し持ってるに決まってるのに』

 

 それはルナマリアも思う。誰も武器を持たない世界、というのは理想だけど、理想でしかない。悪い奴は必ずいるし、そういう奴は法律なんて気にしないのに、その他の奴らから身を守る術を持つのが許されないのは単純に怖い。

 そんな中、坂本という少年は主人公の方を見る。

 

【良いから逃げろ……! こいつら、マジだぞ!】

『うわ、この子自分の身より他人の心配を……』

『良い奴ですね、こんな状況下でパニックにもならないなんて』

【ほう、貴様逃げるのか? 随分、薄情な仲間だな?】

『うるせぇ。お前喋んなモジャモジャ』

『なんかブロッコリーみたいだよね、この人』

『「ぶはっ!」』

 

 その一言にまた笑いをこぼしたのは、放送内のシンと隣のアグネス。この子達、割と笑いのツボが同じなのかもしれない。

 坂本という少年は、その後もシン・ヤマトを気遣ってくれる。そのまま顔面やボディを殴られ続ける中、当然シン・ヤマトは逃げられない。この状況下で、置いていけるわけがない。

 

『っ……! 平和な世の中になっても、やっぱりこういうことが広がるのか……!』

 

 キラも少しずつ許せなくなったのか、奥歯を噛み締める。

 そんな中、地面に倒れた坂本と呼ばれた少年の処刑が、いよいよ始まろうとする。壁に押さえつけられ、鎧の兵士が剣先を向ける。

 主人公も止めようとするが、他の兵士に押さえつけられてしまった。そんな時だ。

 

『あ、これ……!』

 

 青い蝶が、主人公の前をよぎった。

 

【これは極めて理不尽なゲーム……勝機は、ほぼないに等しい……。しかし、この声が届いていると言う事は、まだ逆転の可能性は残っているはず……】

 

 このセリフは聞き覚えがある。取調室で聞いたものだ。つまり、やはりまだ逆転の芽はある。絶対に諦められない。

 そんな時だった。ふと、聞き覚えしかない声が耳まで届く。

 

【どうした……見ているだけか? 我が身大事さに見殺しか?】

『『! ハインライン大尉!』』

 

 さっきから主人公から漏れる吐息がまんまだったとはいえ、キラもシンも思わず声を上げてしまう。だってもうまんまだし。早口じゃないハインライン大尉にしか聞こえない。

 

【このままでは本当に死ぬぞ? それとも、あれは間違っていたのか?】

 

 その後に映された光景は、酔っ払いから女性を庇った際の過去。あの時もそうだ。こんな理不尽が許され、罷り通り、シン・ヤマトは酷い目に遭わされている。

 だが……だからこそ、それを見てキラとシンは声を漏らす。

 

『っ……確かに、社会的には間違っていたのかもしれない。周囲の人達も、誰も共感してくれなかった』

『けど……人間としての行動は、間違っていない!』

 

 それと同時に、選択肢の「間違ってない」を選択。その直後、ハインライン大尉の声が続いた。

 

【よかろう……覚悟、聞き届けたり】

 

 それとほぼ同時、もがく主人公の目が見開かれ、拘束を解くためではなく脳内に響く声に苦しんでいるように見えた。

 

【契約だ。我は汝、汝は我。己が信じた正義の為に、あまねく冒涜を顧みぬ者よ! その怒り、我が名と共に解き放て! たとえ地獄に繋がれようと全てを己で見定める、強き意志の力を!】

『お、おおお⁉︎ な、なんか超カッコよくないですか⁉︎』

『そ、そうだねっ。なんかすごく、こう……カッコ良い!』

 

 少年が二人に増えた。目をキラキラと輝かせて、ウキウキしてしまっている。シンなんか、デスティニーを見た時と全く同じ目をしていた。

 

【殺せーッ!】

『選択肢、どっちにが良いですかね?』

『動きを止めさせるためには短い言葉だよ』

【ふざけるな!】

 

 その一言で、鴨志田も兵士も動きを止め、坂本と呼ばれた少年は解放された。

 

【そんなに殺されたいか……いいだろう】

 

 相変わらず、腹立つニヤケヅラで鴨志田は主人公を見据える。その直後、兵士に顔面を盾で殴られた。メガネが地面に転がり、レンズが粉々に砕け散る。

 その後、アニメーションとなった。壁に押さえつけられた主人公に、鴨志田が処刑の合図を送った直後だった。

 シン・ヤマトから風が発生する。それにより、周囲の敵を吹き飛ばした。

 気がつくと……シン・ヤマトの顔には仮面が付けられていた。

 

『! あの仮面……!』

『ジョーカーの……!』

 

 まるで、放送1回目の仮面ライダーのベルトが初めて出たときのようなリアクションを二人はする。

 

「二人とも子供ですね……」

「男子っていつまで経ってもそうよね?」

「……」

 

 言えない、ルナマリアだけちょっと萌えたとは口が裂けても言えない。

 その仮面を、ジョーカーは剥がす。顔から血が垂れても、それでも強引に引き剥がした。

 顔からは、両目の周りを包むように血の痕が残る。その血を中心に、青い炎が広がった。

 

『や、ヤバっ! え、なんこれ、カッコよくね⁉︎』

『ーっ……!』

 

 炎はやがて全身を包み、主人公の服装を変えていく。制服から黒いコート、そして赤い手袋を纏わせ、鎖をはためかせて背後には彼のペルソナ……アルセーヌを顕現させる。

 

『うおおおお! あ、アルセーヌ! アルセーヌ!』

『これあれスマブラの時の反逆ゲージのあれ!』

 

 語彙力皆無のリアクションにも、今回ばかりは気にならない。確かに誰の目から見てもカッコイイが過ぎるからだ。

 周囲の敵を吹き飛ばした後、主人公はまるで悪役のような不適な笑みを浮かべながら、鴨志田を見下ろしていた。

 

 




私がペルソナゲロ好きなのでもっとリアクション見たいなーと思うシーンはあったのですが、割愛します。
以下、二人のリアクション集。

「一本道しかないのにどうやってここから出るの?」
「他に道ありました?」
「ないよね。え、どうしよう。敵来ちゃうよ」
「ホントですよ。てかもう閉じ込めたんだからあのパンツオヤジ殺しましょうよ」
「出来ないんだから仕方ないって。とにかく逃げよう」
「や、だから逃げようにも道が……あ、あの部屋の穴は?」
「あ、あれか」

「わっ、なんか猫が捕まってる」
「猫じゃないってよ?」
「いや猫でしょ頭がデカい」
「でも可愛いね。ラクス、こういうの好きそうだな」
「そうですね。ルナも……いや、ルナはそうでもないかも? もう少しピンクのものが好きだし」
「次作るハロはこんな感じでも良いかも」

「わっ、モナモナ! ペルソナ使える!」
「え、シン。そんなゆるキャラみたいな名前だったっけ?」
「強いですよしかも。……あ、弱点取るともっかい動けるんだ」
「これ覚えといた方が良さそうだね」
「へー、ペルソナって自分の心の仮面を自覚すると使えるんだ」
「オレならすぐ使えそうですね! 仮面なんてないし!」
「シンのペルソナは……なんだろ。何となく侍みたいな感じな気がする。沖田総司みたいな」

「あ、出られた。でもこの後は遅刻の指導とか入るんだろうなぁ……」
「学校、もう4限終わってるらしいですからね」
「まぁ、ちゃんと説明すれば信じてもらえるよ」
「いや無理だと思いますよ普通に……」
「頭おかしいと思われるのが関の山では?」

「うわ、鴨志田出た」
「普通の服になってる。……てか、普通に声かけてきてるけど」
「あ、やっぱ坂本と因縁あるんですね」
「陸上部だったんだ。道理でタックルの威力すごいと思った」
「今度、組み手の特訓、僕らもしようか」
「そうっすね」

「最初のターゲット? あ、そりゃそうか。カジノで捕まるんだし」
「鴨志田を倒す、ってことなのかな。まぁどう見ても良い人じゃなかったしね」
「うわ、欲に溺れた許されざる犯罪だそうですよ。悪いことしてたんだ城みたいな」
「欲って……なんだろう。王様になりたいみたいな?」
「さぁ」

以上。
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