ソードマンの聖杯戦争 作:永谷
凛SIDE
遠坂家の呪いともいえるうっかりを発揮してしまい、ランサーに再度命を狙われているであろう衛宮君を保護する為に夜の街を走る。
あぁもう!父さんの形見まで使ったのに呆気なく死んでたら絶対に許さないんだから!!
日本様式の武家屋敷のような屋敷が見えてきた―――衛宮君の家だ。ランサーが気付いていないように、気付いていても間に合っているようにと、希望を胸に走る。
瞬間、―――夜の空に光の柱が走った。
「んな―――」
まさかまさかまさか
混乱する私を嘲笑うかのように、私の目の前の空に青い槍兵が舞っている……。
「……………なに、あれ」
「ランサーだな。独創的な撤退の仕方だな」
呆然とした呟きに応えるのは私の傍に控えていたアーチャー。呆然と空を眺めていたが、直ぐにランサーが戻ってきた。「あんの野郎!殺す!」とか喚いている。こんなに近くに居るというのに私たちの存在はアウトオブ眼中だ。
さっきの光の柱はサーヴァントが召喚されたのだろう。んで、衛宮君の家には桜や藤村先生が出入りしているがこんな遅くまでは残ってない。つまり消去法で言うならば衛宮君がサーヴァントを召喚して、ランサーを夜空に吹っ飛ばしたのだろう。
え、ということは衛宮君って……魔術師だったってことよね。でもそんなこと私は知らない。私は冬木の管理者なのに。
→つまりもぐり。
「ふ、」
「凛、どうするのだね」
「ふふふふふふ」
「り、凛……?」
「あんの野郎……よくも今まで踏み倒してきてくれたわねぇ」
クツクツクツと笑う。アーチャーが何か青い顔してるような気がしてるけど霊体化してんだから分かるはずないわ。
「いいわ、そっちがその気なら私だってやってやろうじゃない…!」
拳に手の平を打ちつける。
「凛、今は聖杯せんそ」
「いくわよアーチャー!無害そうな顔して私の目の前でのうのうと過ごしてきた馬鹿の顔を見に!!」
「了解した、マスター」
勿論いくら怒りを覚えていても、今の衛宮亭(衛宮君の資金事情によっては私のものになる…まぁ桜の為に残しておいてもいいけど(学生の間だけ)にはサーヴァントが二体いるのだ。なんの構えもなしに突っ込むほど馬鹿ではない。状況はランサーの襲撃に衛宮君のサーヴァントが衛宮君を庇いながら対応しているというところだろうけどね。取りあえず状況を確認しようと、開けっ放しの門に向かう。………随分と無用心ね、衛宮君。
凛SIDE END
士郎SIDE
怒涛の展開って言うのはこういうものだろうか…。取りあえず状況が目まぐるしく、凄まじい速さで移り変わってくる。俺を土蔵で助けてくれた男は俺のお礼の言葉を聞かずに足早に外に出て行ってしまった。
「って!アイツ…!」
そもそも俺があの青い男に追いかけられたのは青い男を見たからだ。つまり俺の命の恩人である男も青い男に襲われる条件を満たしてしまったのだ。
……まぁ、なんで俺ん家の土蔵に突然現れたかは不明だけどさ。と、兎に角、恩人に現状を話さなければ。それに…もしかしたらまたあの青い男が戻ってくるかもしれない。鉄パイプをもっていったようだが、心許ないだろう。あっちは攻撃範囲の広い槍なのだ。土蔵を見渡して武器になりそうなものを探す。残念ながら木刀しかなかった……それに強化の魔術をかける。
「同調開始……っ、成功…した」
ほっと息をつく。しかし安堵している暇なんてない。
集中していたから気付かなかったが、音が戻ってきて耳に響く鉄がぶつかり合う音が聞こえる。
「くそっ!間に合うか?!」
俺は急いで男を追う。いきなりあの青い男を吹っ飛ばすほど強いかもしれないが、ほうってなんて置けなかった。急いで外に出る。戦っている音は止んでは始まり、止んでは始まり、ずっと留まっていることはない。見慣れた夜の帳が落ちた庭。そこは―――戦場だった。
「男前に穴が開いたらどう責任とってくれんだ」
「はっ、傷は男の勲章っていうんだろ、とっておけよ」
「断る」
戦場に立つ影は二つ。
予想していた通り、青い男はすぐに戻ってきたらしく、俺の恩人は足止めを食らっていた。戦闘をしているのに軽口をたたき合う……もしかして知り合いなのか?
ふと過ぎった考えに、庭を覆い、二人の間に流れるピリピリとした、今にもぶつかりそうな空気にそれが間違いだと否定する。
「いきなり速くなったり、強くなったり訳がわかんねぇな、テメェは」
統一しやがれ、と不満を訴える青い男。対して恩人の方は呆れたように溜息を吐く。
「ばっか、んな魔力の無駄遣い出来るほど余裕じゃねぇんだよこっちは」
「あぁ?魔力供給されてねぇのかよ、そこの坊主に。何だそれ、そういう修行か」
初めてこちらに話が降られる、がすぐに戻される。魔力供給?どういう意味だ?
「アホか、んなマゾヒストな修行意味ねぇだろ。これ以上の成長はないんだから」
む。意味がないなんてことないと思う。頑張って、努力した分だけちゃんと報われるはずだ。と反論したくなる。勿論そんな暇などなく「何か勘違いしてると思うんだが」と恩人が気まずそうに頭を掻く。
「アイツは俺のマスターじゃねぇよ」
「は?」
「俺呼んだのあいつじゃねぇって、本人が否定してんだから契約してねぇよ」
俺は呼んでない。それに、マスターとかいう奴でもない。なのになんで二人とも俺のことをマスターとか言うんだ?訳が分からない。さっきから疑問ばっかり増えている。明らかに自分も関係しているらしい状況に疑問を投げかけたいんだが、肝心の二人がそんな状況じゃない。
「……お前、馬鹿なのか」
「いいんだよ、俺だってアイツはお断りだし。という訳で見逃してくれるんなら嬉しいんだが」
「馬鹿が…、お前はここで仕留めさせてもらう」
軽口は終わった。
士郎SIDE END
日本風の武家屋敷の飾り気のない庭。
月明かりがまっすぐに降りてくるその場に浮かぶ影は三つ。
その内二つは人ならぬもので、あとの一つは今夜の事件に巻き込まれた被害者。趣味の悪い戦争に呼び出された青いケモノが笑う。
「馬鹿が…、お前はここで仕留めさせてもらう」
対する剣を持たず、主も持たない剣士が笑う。
「馬鹿め、そんな簡単に首が取れたら英霊なんて廃業だ」
一触即発の空気が平穏だった庭を戦場に変えていた。
ドクドクドク、と血液が循環する。魔力が体に満ちている。
ザワザワと肌があわ立つ。ジワリジワリと身体から沸き立つ衝動が抑えられない。
俺を英霊にまで押し上げた衝動―――殺人衝動が抑えられない。
「お前は俺の敵か」
「何当たり前のこと言ってやがんだ!」
「ここで退いてくれれば良かったんだが…ま、無理か。俺もそろそろ無理だし抑える必要もないか」
相手が半神だったから押さえられていたが、もうダメだ。
後ろにいる赤毛の少年なんて目に入らない。入れない。
だってあっちの方が殺しタイ。でも目の前の奴は敵だ。テキダテキダ。
優先順位を、マチガエルナ。
コロソウ、コロソウ、コロソウ、コロシツクソウ。
世界が殺意に凍る。
身体の中で抑えていた魔力が溢れる。
異変にテキのアカイ目が見開かれたが知らナイ。
持っているものが鈍器?んなもの関係ない。兎に角血が見たい。
そう、血が見たい。だから血が出るまで。青が赤に染まるまで殴る。殺すために俺の手は付いていて、殺すために武器は握られている。それ以上の理由がいるか?
いいや、―――いらない。
俺の異変に気付いて直ぐに槍が振るわれる。こちらの命を仕留めようとする心臓を狙った刺突。
常人は勿論、英霊であっても容易く見切ることが出来ない域にまで加速された赤い軌跡は、
「ふへ」
がぎぃ、ん!
鈍い音がして明らかに俺の命を刈り取ろうとした今夜最速の槍はあっけなく捕らえられた。
真正面からの力のぶつかり合いに負けたのだ。純粋な力と力がぶつかり、押し負けた衝撃は槍を通してランサーの腕に負荷を掛けたはずだ。それでも槍から手を離さないところは流石と舌を巻く。
悪態を吐く隙も与えずに先程の槍にも劣らぬ速さで鉄パイプを振り下ろす。
「ぎ」
折角懐に入ったのだ。先程の様に打ち飛ばすなんて勿体無いことはしない。確実に動きを止めて、地面に這いつくばらし、―――あぁソウダ。ランサーは最速の英霊だからまずはアシを……。
キィ、ン……!
空気を押し退け、宙を走る音に動きを止める。避けなければ、でも死にたくないよりも殺したい。そんな相反する衝動まで来たことに危機感を覚え、ゆっくりと衝動を抑えていく。だが隙は見せない。
「……」
死角からの完璧な不意打ち。
まっすぐに俺の頭を狙った必殺の矢は俺に届かなかった。
「んなっ…!」
というか、届く前に打ち消された。今の俺の能力値ははっきり言ってチートだからな。
俺が生きてた頃は……まぁ、あまり変わらなかったが、チートに拍車が掛かった。
不意打ちをしてきた新たな参入者の顔を見るために振り返る。
ビクリと震える様を見て(怯えさせちゃって悪いなー)とか思いつつも、その反応が面白くて溜まんなくて、ペロリと口端を舐める。主を守る為に身を乗り出した赤い男の敵意に納まりかけた衝動が再燃する。
「へぇ、獲物が増えたな……今日は血に事欠か無そうだ」
赤い主従。
女とか男とか関係ない。
人間かそうじゃないか。
敵か味方か。それだけでいい。
「んで、あんたらも俺の敵でいいんだよな?」
というかあの赤毛少年一体どんだけサーヴァント連れてくれば済むんだよ。なんだ。サーヴァントホイホイか。良かった、契約しなくて。めんどうだな、と思いつつもやっぱり人を殺すことがタノシクて笑う。
凛SIDE
今までの攻撃なんて、やりとりなんてままごと。
衛宮君が呼んだであろうサーヴァントの本質はこの絶対的な死だ。
長身ではあるが、アーチャーやランサーよりも低く、無駄な筋肉などないスラリとした体型。見た目でいえば屈強な戦士ではない、のに。向けられていないのに、殺気を向けられている。いや、視界に映してはいないが、向けているのだ。遠坂凛という存在を殺そうとしているのだ。
そしてここは彼の射程なのだ。
剣を持たないセイバー。
剣を持っていなくとも、無骨な鉄パイプだろうとも―――彼は最優のサーヴァントだ。
「凛、アイツはヤバイ」
「ゎ、か…て」
アーチャーの忠告なんて必要ない。どうみてもヤバイ。分かっている。その言葉すらいえない。
撤退すべきだ。
しかし……今まで私が培ってきた直感が告げる。
このままにしておけば衛宮君は死ぬ。
そう、他ならぬ自分が召喚したサーヴァントによって、生きながらえた命は刈り取られる。
令呪がある、とかそんなのは関係ない。理解できる。令呪なんて魔術師が作ったものでしかない産物に止められるものじゃない。確実に衛宮君はここで死ぬのだ。そして、私たちも。
「アーチャー、ランサーを援護して。セイバーの戦意がなくなるまでで良いわ」
「正気かね」
「手加減はしないで、殺しても良いわ」
「手加減などできる相手ではない」
そんな会話をしている間にも勝負が始まり、ランサーを地に叩きつけるセイバーがいる。
先程までのやり取りでは拮抗…いや、ランサーの方が余裕があったというのに数分でこの結果。
キリ、と弦が引かれる。
キィ、ン…!
空を切ってセイバーの頭目掛けて飛んでいった矢は、届かなかった。防御なんてしていない。硬いのだ。途轍もなく。ダメージがセイバーに届いていない。死神が振り返る。
「へぇ、獲物が増えたな……今日は血に事欠か無そうだ」
ペロ、と獲物を見るような目で見て口端を舐める。
「んで、あんたらも俺の敵でいいんだよな?」
人間みたいにちょっと困ったように笑った。
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保有スキル
魔力放出A
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、
瞬間的に放出することによって瞬間ではあるが幸運を抜かした全ステータスを2ランク上げる。
魔力によるブースター。
常時放出することによって常時ステータスのランクを上げていられるが、
2ランクの恩恵は並の魔力放出では得られない。
その為魔力供給がない今は瞬間的に、決め手となる時のみ放出している。
補正済み能力値比較
筋力D+耐久C敏捷D+魔力B幸運E-宝具EX
↓
筋力B+耐久A敏捷B+魔力EX幸運E-宝具EX
殺人衝動A
人間・人間の血が混ざっている存在全てに対する殺戮衝動。
対象となる存在と対立する場合のみ全ステータスがワンランク上がる。
人間に対する限定的な狂化である。
制御する伝承が失われている為、魔術的封印(令呪含む)も不可能なので自我による制御しか出来ない。
無理矢理に抑えている為、恩恵が得られない上基本ステータスも下がり、計2ランク下がっている状態である。
つまり、殺人衝動を抑えず、魔力放出を使えば現在の能力が幸運を除いて全て4ランク上がる。
ぶっちゃけ士郎に呼ばれず、能力値だけをみれば最優・最強の名をほしいままにしていただろう。
補正済み能力値比較
筋力D+耐久C敏捷D+魔力B幸運E-宝具EX
↓
筋力EX耐久EX敏捷EX魔力EX幸運C-宝具EX
能力値だけで既にチートである。
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